山田風太郎『忍法創世記』

山田風太郎『忍法創世記』


 単行本未収録作品を集成する山田風太郎コレクションの二巻目は忍法帖で唯一の未刊行長編だった『忍法創世記』。
 1969年4月から翌年2月まで<週刊文春>に連載された忍法帖最後の作品だが、作中年代では一番早くなる。作者がその出来を恥じて長年封印されていたのだが、読んでみると傑作ではないにしろ忍法帖では中程度の充分佳作である。

 時は室町中期。まだ柳生に剣法がなく伊賀に忍法がない時代。長年隣同士でいがみ合っていた柳生と伊賀は、柳生の三兄弟と服部の三姉妹を婚姻させることで和平を結ぼうとしていた。それも一組ずつ交合試合で勝ち負けを決めどちらが嫁に行くか婿に行くかを決めようというもの。
 だが、その試合は途中で中断される。柳生と伊賀のそれぞれに南朝方の別々の一派の剣士集団と忍者集団が助けを求めに来たのだ。三兄弟三姉妹の一人ずつが入れ替わったままで、柳生と伊賀は三種の神器の争奪戦に巻き込まれていく。

 最後の忍法帖であるが、室町ものの先駆けでもある。北朝方南朝方で争う上に同じ南朝方の同志でも敵味方が入り乱れるこの時代は物語をつくるのにまことにふさわしい。
 柳生も伊賀もまだプロフェッショナルではない。だから押し寄せてきた集団はまず剣法と忍法の修行をつけるところから始める。なんだか悠長だがそのために過去の忍法帖とは違った流れがある。また、伊賀の娘たちに稽古させる忍法が性をベースにしているが『くノ一忍法帖』などと違って極めてユーモラスである。兄弟姉妹夫婦好きあったもの同士が引き裂かれて戦う話であるのに陰惨さをあまり感じさせない。

 なぜ戦わなくてはならないのか。そう思いながらもそれぞれの大義に逆らえず衝突を繰り返す。だんだんと仲間は減っていき夫婦同士の直接対決は迫る。だが、……。
 終局へのなだれ込み方は実に凄まじいものがある。
 そうして男たちと女たちが駆け抜けた後に柳生には剣法が、伊賀には忍法が根付いていく。


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