河出文庫の忍法帖シリーズ第三弾。残念ながらこれで打ち止めになってしまった。
風太郎忍法帖第五作。
<講談倶楽部>に1961年6月から1962年3月まで連載され1962年5月に講談社刊。
『くノ一忍法帖』の後で『外道忍法帖』の前。
時は八代将軍吉宗の治世、享保。
江戸日本橋の罪人の晒し場に裸体の三人の女が縛り付けられ、彼女らの背中には「公方様御側妾棚ざらえ」との真っ赤な文字が不思議な方法で焼き付けてあった。倹約を強いる吉宗の過去の行状をあげつらうこの大胆なやり口は尾張藩主徳川宗春のものだった。吉宗の紀州時代の側妾を探し出して晒そうとするのは、尾張御土居下組の甲賀忍者と尾張柳生の剣士たち。それを防ぐために必要とあらば側妾たちの命まで絶とうとするのが公儀隠密御庭番の伊賀忍者と江戸柳生の剣士たち。吉宗の側妾の生き残り七人を巡って十四対十四の壮絶な戦いが始まった。
忍者同士のチーム対抗戦は『甲賀忍法帖』以来のパターンである。今回は両者に柳生の剣士が加わっているがあまり役には立っておらず、むしろ忍者の足を引っ張っている。忍者同士のチーム対抗の場合もいろいろパターンがあるが、本書は忍者同士が一騎打ちして相打ちになる場合が多い。これがもっと顕著になると次作の『外道忍法帖』になるが、あそこまで極端だと忍者が能力を備えた記号にしか見えない。
本作ではそこまでは行かず、なかなかの名勝負が見られる。火を使う忍者に対する氷を操る忍者、夢に入り込む忍者に対する*鏡*に入り込む忍者、など。
忍法は完全に物理法則を越えてしまいもうSFの領域に入っている。
吉宗と言ったらご落胤を騙った天一坊の事件が有名だが、これがどう筋に絡んでくるかも読みどころ。
忍者が泰然として死地に赴くのはいつものこと。この作品の決して質が低いわけではないが、これでないとという特色には欠ける気がする。
[2009.01.20]
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