山田風太郎『柳生忍法帖』
山田風太郎『柳生忍法帖』(上・下)
講談社文庫 山田風太郎忍法帖9 初版1999.06.15
講談社文庫 山田風太郎忍法帖10 初版1999.06.15
新刊書
風太郎忍法帖の第十作。地方新聞に1963年から『尼寺五十万石』のタイトルで連載され、講談社から1964年6月に現タイトルで単行本化。
風太郎ワールド最大最強のヒーロー柳生十兵衛の登場。
発端は鎌倉の男子禁制のおんな寺東慶寺。そこに匿われていた女たち二十人余りを無残にも虐殺したものがいた。会津四十万石加藤明成配下の芦名衆七本槍である。加藤家を見限って退転した元家老堀一族に対しての仕打ちだが、あまりにも酷すぎる。堀の女七人だけが通りかかった天樹院こと徳川千姫に救われて生き残った。
女の敵は女の手で討ち果たしたい。ご公儀の手も借りたくない。そうした千姫の意向を受けたのが将軍の師僧沢庵禅師とご存知柳生十兵衛である。
七人の敵は、刀、槍はもとより鞭、投網、鎖鎌、拳法、または猛犬使いなど各種武芸の達人揃い。その手練は十兵衛その人でさえも相対して勝てるかどうかというほど。そうした相手を女たちに討たせなければならない、この難題。
まずは江戸での両者の攻防。僥倖にも助けられ幾人かの敵を討ちはしたものの、加藤方は千姫を陥れようと群盗を行うほど卑劣である。敵地に乗り込んでの起死回生の方策の成否は逆転また逆転。花地獄の罠から辛くも生還し敵に吠え面をかかせる。
そして後半、舞台は敵の本拠地会津へと移っていく。道中での攻めぎ合い。そして、会津に入ってようやく敵が真の力を見せ出す。
芦名衆は会津を四百年に渡り支配していた一族である。加藤家も彼らの栄達に利用されているに過ぎない。その首領芦名銅伯は不思議な技を振るう百歳を越える怪老人であり、しかも幕府の要人南光坊天海僧正との因縁を持っていた。
虚々実々の駆け引きの挙句、さしもの沢庵禅師も銅伯の術中に陥ろうとする。それを一喝する十兵衛の台詞の明快さには胸がすくものがある。
なんと言っても理屈抜きに面白い。長いだけに様々なアイデアが盛り込まれている。味方をとんでもない窮地に追い込んで無事脱出させるのはお約束。だが、ときとして味方もばっさりやっちゃうのが作者のお家芸であるから安心はできない。さすがに十兵衛は死なないのがわかっているが、他の登場人物たちはどうなるか。沢庵の弟子の坊さんたちは堀の女を守っての見事な死に様を見せてくれた。果たして堀の女たちは本懐を遂げることができるのであろうか。
痛快。壮快。また欣快。小説の楽しみここにあり。
→冒頭
→山田風太郎目次
→読書日記
→表紙