『山沢晴雄評論集』

『山沢晴雄評論集』



 <別冊シャレード>の山沢晴雄特集には今まで総タイトルがついていた。今回の特集5は「山沢晴雄評論集」ということでよいのだろうか。

 評論の部は、山沢の書いたものを商業誌は勿論、<SRマンスリー><密室>や<QUEENDOM>といった同人誌、果ては職場の大阪市水道局局報に寄せた随筆まで引っ張ってきている。 <別冊シャレード>は同人誌とはいえ、創作に限らず書いたものをこれだけまとめてもらえる作家というのは幸運ではないか。
 欧米の名作を詳細に解剖する手際は見事である。俎上にあげられたのは
クリスティ『愛国殺人』、カー『三つの棺』『囁く影』、クイーン『災厄の町』『ギリシア棺の謎』など。 これらの作品のどこが巧妙なのか、実作者の立場から鑑賞する。
 鮎川哲也天城一といった同僚作家についての文章は温かみがある。 また、長らく幻の作品だった連作『むかで横丁』に関する回想は興味深い。

 創作の部は初読のものについてのみ記す。
 「罠」では、小心な男が図面に寸法を誤記したミスを誤魔化そうとした小細工が大きな結果を引き起こす。 初期の作品で、山沢にはちょっと珍しい作風。異常心理による「奇妙な味」を狙ったそうだが、付記を読まないとそうとはわからなかった。

 犯人あて「双子座の女」は、双子の姉妹の棋士の姉と探偵作家の妹にまつわる事件。表題と同じタイトルの詰め将棋を残して姉が消えた。
 「扉2」は、自身の短編「扉」を踏まえたもの。金庫やロッカーの移動があって、たまたま成立してしまった密室の謎。
 「密室1952」は、SRの会創立50周年記念大会で行われたもの。竹下敏幸初代(前)会長が登場し、<密室>創刊号がキーになる。
 いずれも入れ替わりやアリバイ・トリックの著者らしい趣向が凝らしてあり、難しい。


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