山沢晴雄『砧最後の事件』

山沢晴雄『砧最後の事件』


 著者の第四長編。砧シリーズをこれで完結させるという題名どおりの最後の事件。だが、これは読者として評価に困る作品である。

 最初からいくつものテキストが併置されて同時進行して行く。探偵作家M氏と女流棋士佐川緋紗子のやりとり。そして彼らが読むという設定での推理クイズ、短編、長編。もうこれでくらくらしてしまう。いくつもの同じような密室や死体切断の事件が違う名前の同じような立場の登場人物で演じられ判別がつかなくなる。実に読みにくい。
 その中で中心となるプロットの長編は旧作『唄う白骨』である。これは後の『悪の扉』と『砧自身の事件』に昇華された原型である。これを披露するのが主目的で、旧作には手を入れないで、新人の幻の原稿という形でテキスト的に錯綜させたのだろうが、あまり感心しない。
 作中作として「見えない通路」「密室1952」も含まれているが、以上三作ともメイントリックが同じというのも何の効果を狙ったものなのかわからない。
 『砧最後の事件』であることは、『砧自身の事件』の後日談を語りたいということもあったのだろうが、それが返って『砧自身の事件』の衝撃的な結末の興を削ぐ方向に働いているような気もする。

 特にファンでもない場合は山沢の長編は『砧自身の事件 ダミープロット』と『知恵の輪殺人事件』だけ押さえておけばいい。この二つは文句なくお薦めできる。


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