オール・タイム・ベスト書評
横溝正史
(1)『獄門島』
なぜこれがベスト・ワンに。それほどの名作だったでしょうか。私にはどうも知名度のせいだとしか思えません。もともと横溝正史が好きじゃないせいもあるのでしょうが。地方の旧家。その家系に綿々と流れる呪われた血。そして巻き起こる“血の惨劇”。こういう不健康な話は嫌いです。
この作品も御多分にもれずどころか、さらに輪をかけて島の住人がみな海賊や流刑人の子孫という設定。ひたすら暗いですなあ。
トリックの方は、見立て殺人の上に××殺人という趣向があってよし。けれどもあまり安心できません。『金田一さん、あなたの推理はまちがいだらけ』などという本が出るくらいですから。この作品もかなりやっつけられていたように思います。
なお、金田一耕助が獄門島に来たのは、戦友鬼頭千万太に妹たちを守ってくれと頼まれたからですが、その人もとんだ相手に依頼したものです。事件を未然に防ごうとするなら、金田一は最悪です。
80点。但し知名度84点。
(5)『本陣殺人事件』
これは、終戦後この作者が書いた長編第一号です。戦争中は探偵小説を書くことが禁じられており、そのうっ屈が一気に噴き出た形です。とくにディクスン・カーとの本格的な出会いの後なので、その密室トリックは合理的なものです。日本刀、琴柱、琴糸、鎌など日本的小道具ばかりを無理なく使っているところには感心しました。
でも、やはりこれも私の嫌いな“血の惨劇”ですな。
なお、これが金田一耕助のデビュー作です。
79点。但し封建度80点。
(8)『八つ墓村』
祟りじゃ、八つ墓の祟りじゃ……一時期流行りましたね。
この作品では、金田一耕助は最初から犯人を知っていました。それなのに八人も殺させてしまうなんていくらなんでもどうかと思います。
犯人の方も不可解です。あれくらいの動機でこんなに殺し捲くるなんて殺人狂としか思えません。だいたい同じ目的を果たすためには他の人間を一人殺すだけでよかったはずです。
トリックの出来が良かった分だけ、こんな点が目について仕方ありませんでした。しかし、なんで岡山県ってそんな変な村ばかりあるのでしょう。
64点。但し空中楼閣度71点。
(13)『悪魔の手毬歌』
おなじみ岡山の鬼首村で起きた事件です。二十年前の顔のない死体のトリックは出来がよかったけれど、童謡殺人事件そのものにはあまり感心しません。どちらかというと『獄門島』のトリックの方が上です。
あらを探せば幾らでも出て来るけど、面倒だからやめときます。
67点。但し人類は皆兄弟度87点。
(17)『犬神家の一族』
これは勿論SF研の一部で未だにえらく人気のあるあの映画の原作です。(すけきよ〜ってね。)
真犯人の他に(八字抹消)というトリックはわりと面白いのですが、偶然に頼りすぎるのであまり感心しません。“これもまた偶然であった。(中略)事実はいつもそんなものなのであろう。”と居直るのも考え物です。(私は横溝正史は色眼鏡で見ることにしているのです。)
69点。但し家系複雑怪奇度96点。
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