横溝正史『大迷宮』

横溝正史『大迷宮』



 本書の角川文庫版の初版は1979年6月。
 怪獣男爵シリーズ第二弾で、金田一耕助の少年物初登場作。初読。

 軽井沢に避暑に来た中学一年生の立花滋は、いとこの大学生の謙三とともに夕立にあって丘の上の古めかしい洋館に一夜の宿を乞う。 そこには鬼丸剣太郎という少年が叔父の鬼丸次郎博士と家庭教師の足の悪い津川先生らと暮らしていた。 剣太郎の容貌は滋が軽井沢に来る途中で見たサーカスを脱走した鏡三少年とそっくりで、しかも剣太郎は自分そっくりの子供が家にいる気配を感じると言っていた。 その夜、怪しい事件が立て続けに起こり、巻き込まれた滋と謙三は眠り薬を嗅がされて、翌朝気がつくと洋館はもぬけの殻だった。
 二人はその体験をちょうど軽井沢で心安くなった名探偵金田一耕助に話す。二人に洋館に案内された金田一はその仕掛けを見破る。 さらに瀕死の重傷を負った剣太郎の爺やを見つけ、その現場から逃げ出す不気味などくろ男を目撃する。爺やは滋に剣太郎のものだと黄金の鍵を預ける。金田一はこの事件の背後にはサーカス王鬼丸太郎が隠した大金塊があるのだと推測する。

 流石は金田一耕助、偉い私立探偵なのに子供の目から見てもちっとも探偵らしくない。その一方で何でもなさそうなことによく気を配ることに一目置かれたりもする。
 等々力警部はシリーズ前作から引き続き登場する。長編で金田一との共演はこれが初だが、かつてからの顔なじみでいっしょに働いたことも一度や二度でないということになっている。 警部は、鬼丸博士が生理学者でその師が怪獣男爵であるという情報をもたらす。
 そして中盤から怪獣男爵登場。武蔵野の洋館のアジト、あかつき丸での戦いを経て舞台はサーカス王鬼丸太郎が心血を注いで建造した瀬戸内海の迷宮島へと移る。

 中盤まではちょっともたつく。特に軽井沢の事件は読み返しても意味不明の点が多い。
 怪獣男爵登場以降は一進一退の攻防でなかなか読み応えがある。迷宮島の設定が秀逸で、ここの部分をもっと長く読ませてもらいたかった。

 それにしても金田一耕助と怪獣男爵が直接対峙する場面が一回もない。やっぱり似合わないと作者も思ったのだろうか。



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