ベートーヴェン 交響曲第5番
2000年5月10日 ザ・シンフォニーホール
朝比奈隆の「運命」は、いつも期待はずれだった
決してへたくそでもなく、堂々としているのだが、
おとなしすぎるというか、
枯れた音楽というか、
要するに、「熱さ」が感じられなかったのである
2000年のベートーヴェン・チクルス
朝比奈の最期のベートーヴェンになってしまったこのコンサートシリーズで、
はじめて朝比奈の「運命」に感動した
それがこの録音である
この録音は、もうすぐ92歳になる朝比奈が若く感じられた
とにかく熱いのである
強烈な魂と弾ける力が演奏に感じられた
いわゆる冒頭の運命の動機
ジャジャジャジャーンがそろっているわけではない
とくに再現部はジャジャジャジャジャーンになっている
演奏家たちはアンサンブルの乱れ、として気になるだろう
しかし私は気にならない
アンサンブルが整っているよりも、力がこもっているべきなのだ
力とは音の大きさではない
想像してほしい
ピアノ(弱く)の指示のあるメロディ
音量は弱くても力のこもったピアノのフレーズと
音量も弱く、力のないピアノのフレーズでは
聴衆に与える印象が違う
この録音で聴くことのできる演奏には
大きさだけではなく、力のある音がみなぎっている
それがこの濃縮された息詰まる曲の推進力になっている
ブリッジパッセージに続く第4楽章冒頭のはじける熱い力
当日会場にいて、頭に強烈な電流が走った記憶がある
勝利の音楽を彩る魂の力を、ぜひ感じたい