知恵比べ

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 知恵比べ

昔々、日本のあるところに、とても意地悪な殿様がおり、突然「お触れ」を出しました。
『今年、収穫した米の七割を、年貢として取り立てる』
と言うものです。
これには、村の百姓衆も困りました。
「いくら何でも、七割の年貢なんて多過ぎる」
「お殿様に直訴するべえ」
「いや、直訴したって首が飛ぶだけだ」
「百姓一揆でも、起こすべえ!」
「いいや、大勢の百姓が死ぬだけだ」
「村の爺様に、相談するべ」

「村の爺様」とは、村で一番年長で頭も切れる、長老の「利平(りへい)」と言う老人でした。
利平は、村の百姓衆の話を聞き終わると言いました。
「心配せずとも、この年寄りに任せなさい」

やがて、その年の秋、稲の刈り入れが終わると、利平は城に向かいました。
利平の後ろには、荷車の行列が続きます。
「今年の年貢で御座います。どうぞ、お改め下さい」
荷車の中が改められましたが、藁や籾殻しか積まれていません。
殿様は驚き、そして怒りました。
「これは一体、何のつもりじゃ!」
利平は、涼しい顔をして言いました。
「お触れの通り、米の『七割』を持って参りました。
採れた米と言うモノは、刈り取った藁や籾殻を含んでおりますから、精米した米の『七割』の目方を量り、持参致しました次第です」
「たわけ者!、藁や籾殻が食えるか!」
「はて?、『お触れ』には『米の七割』とだけ、確かに書かれてありましたが・・・。
私が間違えたのかどうか、お触れの看板を、もう一度、改めたいと思いますが・・・」
と言う利平の言葉に、殿様は言葉を返す事が出来なくなりました。

その翌年、意地悪殿様は、また「お触れ」を出しました。
『収穫した【米粒】の八割を、年貢として取り立てる』
村の百姓衆は、またまた困り、利平の元へ相談に行きましたが、利平は言いました。
「この年寄りに、任せなさい」

秋も過ぎ、刈り入れが終わると、利平は荷車を引き連れて、殿様の城に向かいました。
荷車を改めると、袋が積まれ、袋の中には白い粉が入っていました。
「一体、この粉は何じゃ?」
殿様の問いに、利平は答えました。
「はい。【米の粉】で御座います。量り易いので粉に挽いて、八割の目方を量り、年貢としてお持ち致しました」
「たわけ者!、米を粉に挽いてどうするのだ!!。
毎日、団子ばかり食えと言うのか!!」
「はて?、米を粉に挽いてはダメだと、お触れの看板には書かれていましたかな?
私が間違えたのかどうか、もう一度看板を改めたいと思いますが・・・」
利平の言葉に、またまた殿様は返す言葉が無くなってしまいました。

そのまた翌年、意地悪殿様は念入りに考えた「お触れ」を、またまた出しました。
『米粒の九割を、年貢として取り立てる。
ただし、粉に挽く事はならず。
必ず、精米した白米である事』
今度こそ困ったと、百姓衆が利平の元に相談に行きました。
しかし、利平は言いました。
「この年寄りに、任せなさい」

また秋が過ぎて、米の刈り入れも終わり、利平を先頭に荷車が城に入りました。
今度は、自信満々とばかりに胸を張る殿様の前で、利平は言いました。
「今年の年貢で御座います」
荷車には、沢山の御櫃が積まれ、中には炊き上がった飯が詰まっていました。
「な、何と!。炊いた飯を・・・」
「さようで御座います。
【精米した白米】に間違い有りません。
今も村の衆が、どんどん米を炊いておりますので、この分では・・・。
薪が足りなくなる恐れがありますなあ・・・」
「たわけ者!!!、こんなに沢山の飯を、一度に炊いてどうするのじゃ!!!」
「はて?、お触れの看板に、飯を炊いてはダメだと、書かれてありましたかな?」
「ええい!、飯を炊くのを止めさせろ!」
殿様は、怒って立ち上がりましたが、利平は落ち着き払って言いました。
「お触れの看板には、飯を炊いてはダメと、書かれてありませんが・・・」

殿様は、とうとう土下座しました。
「わしが悪かった!、この通りじゃ!。
今までの触れも、無きモノとする。
だから大切な米を無駄にしないでくれ!」
利平は言いました。
「今のお言葉に、二言は御座いませんな?」
「ない!、武士に二言は無い!」

それからと言うもの、この意地悪殿様は、心を入れ替えて、無茶な「お触れ」を出すような事はしなくなったそうです。

         終わり



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