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東京寿司情報

江戸前鮨。大人の世界だからこそこだわりたい。東京で多数あるお寿司屋の中から、超厳選した特別な店を、個人的見解でもって紹介します。 INDEX  リヴァロの寿司談義






 松波   東京都台東区駒形1-9-5  03-8341-4317
主人 浅草の下町にこじんまりと一昔前のモダンな建物。ドアを開けると、玉砂利が敷き詰められていて、赤と黒が印象的ならせん階段がある。2階から聞こえる「いらっしゃいませ」という声をたよりに階段を上ると、松波さんと奥さんが迎えてくれる。
昔、1階は宴会場だったが、今は2階カウンターしか使用していない。
2階は、細長いカウンターで12、13名。カウンター右端にはちょっとした工夫があるんだよね。そこだけ正方形になってて、松波さん側にも椅子がおかれている。つまり、ちょっとしたテーブル感覚で、4~5名が向かい合って頂くこともできるんだ。

小さなざるに本日のネタが綺麗に並べられている。その中からお勧めの刺身を切ってもらうんだ。薄く切られたカンパチは、脂がのっているにもかかわらず繊細でしまっている。縁側とともに頂く星かれいも秀逸。タコは柔らかく旨みが凝縮されているよ。細長く切ったあおりいかには練り梅、サバには酢みそなど、随所にこだわりがうかがえるも、「好きなように食べて結構ですよ」と一言添えるのを忘れない心配り。

期待が高まったところで早速握ってもらう。形は見事なまでに綺麗な流線型。口に運ぶ時にはボリューム感を感じるけど、口に入れると人肌のシャリがゆっくりネタと混ざりあうんだ。シャリの1粒1粒は固めだが、それが柔らかくまとまっている。次郎の「泡雪」、おけいの「男性的な味わい」ともまた異なる、「バランスの妙」だろうか。
大とろ、アナゴはそれ自体とろける感じ。海老のすり身と山芋をふんだんなく混ぜて、ほんわりと焼いた卵はスフレのよう。北海道産のウニはシャリとともに口の中で消えていく。
柔らかい握りに、やはり柔らかい味わいの日本酒「賀茂鶴」が実によく合う。

江戸っ子らしい、しかし優しい松波さんのやわらかな話しぶりで、下町風情を味わいつつ、伝説の京橋「与志乃」譲りの最高の江戸前が頂ける店。





 鮨 水谷   東京都中央区銀座8-2-10銀座誠和シルバービルB1F  03-3573-5258
主人 京橋の「与志及」、「すきやばやし次郎」を経て、「次郎横浜店」の水谷氏が銀座に出店した「鮨水谷」。日航ホテル前の横断歩道を渡った正面、こじんまりとしたビルの地下1階にひっそりと清潔感あふれる店内。

マコガレイはまずまず。アオリイカはねっとりとしておりしゃりを混じり合う。続いて、すきやばし次郎と同じくマグロ3連発。赤身、中トロ、大トロ。コハダを挟んで、赤貝、ミル貝、トリ貝と貝類が続くのにちょっとびっくりするも、トリ貝はその独特の肉質がすばらしい。「江戸以来、戦後昭和30年までの永い間、握り寿司の品数には変化がなく、シラウオ、コハダ、キス・・赤貝、ミル貝、タイラ貝、トリ貝、あさり、アオヤギ・・といった寿司が普通だった」というから、古典に忠実ともいえるだろうか。


ネタに関しては、爽やかな酸味と脂がすばらしいマグロ、美しい宝石箱のような小柱・ウニの軍艦巻、デザートのような卵焼きは、すきやばし次郎と同じ印象。ただ車海老は次郎のそれよりかなり小さく、茹でてからやや時間が経っており、冷たく感じた。かんぴょう巻きは、次郎ほど甘くなくこちらの方が好きだった。ガリも次郎より甘みが感じられず、上品な酢がツンと立っておりおいしい。

必要以上に口を開かない水谷氏の握る姿勢は美しい。捨てシャリをかなり神経質に(多い時はひとつまみ、ふたつまみ、そしてまたもう1回と)行う。そして2本の中指・人差し指がきれいに反り返り、押さえていく。できあがりの握りは小振りで非常に美しいが、扇型ではない。細長いというか、長方形というか、独特の流線型。ほのかに暖かさを感じるシャリは、バランスよく切られたネタとともに、ゆっくりと、しっとりと、口の中で混ざり合う。

当代有数の握り手といわれる水谷氏の握りは、非常に「謙虚」というか、オーソドックスで古典的。派手さはないが、時間が経つとまた食べたくなる感じだろうか。「握る人間の味は、すしの味のなかに消せ」といわれるが、まさにそんな握りが食べられる店である。

「リヴァロ家の食卓」
鮨 水谷





 おけい寿司   東京都中央区八重洲1-8-11  03-3271-9928
主人 L字型10席のカウンターの奥、ご主人の左斜め前に寿司だねがある。寿司だねといっても長方形の檜の箱で、真ん中の小柱を中心として、ぐるっと新鮮なネタが並んでいて、カウンター客の目も喜ばす。時々、「ピシ」「パリ」と音がするのは、寿司だねの下の氷が割れる音で、食欲をそそるよ。

お任せの握りはトロからスタート。スズキ、アジ、ミル貝、穴子、車エビなどが続く。ここの握りは非常に小さめのシャリの上に、上品にネタがのっていて、まず見栄えが優雅で美しいんだ。ところが口に入れると、黒酢を使った堅めのシャリの一粒一粒がしなやかにほぐれるものの、最後の最後まで口の中に残って、ネタと混ざり合うのさ。次郎の寿司の「泡雪」のように口中で消える感じを女性的と表現するなら、おけい寿司のそれは非常に男性的といえるかもしれないな。

江戸前ならではのネタとしては、ハマグリが良かったね。こちらは大ぶりのハマグリに煮詰めをトロっと塗ってある。小さめのシャリの上にこのハマグリを載せると、シャリが見えなくなり一見バランスは悪く、つまむのはやっとこさ。ところが口に入れると、シャリの粒のほどけ具合・一粒一粒の強さが絶妙にバランスを取るんだ。
それからウニや小柱の軍艦巻き!これが小さくて本当に芸術品のよう(笑) 指の第1関節、第2関節に乗っかるぐらい。普通の軍艦巻きと比べると、高さがないんだね。普通の握りとほとんどおなじ大きさのシャリに、本当に少しだけの海苔で巻いて、軍艦巻きにしあげてる。苦労せずに口に入れることができて、軍艦巻きとして食べたことを忘れてしまう位だ。

今回は残念なことにシンコがまだだった。ここのシンコ、コハダを楽しみに訪問する人は多いようで、「シンコがまだなら、また来なきゃ行けないじゃないか」という常連に、「そうですよ、また楽しみが増えたでしょう」と軽妙に答える大将。

おけい寿司の歴史は昭和8年創業の銀座「御慶ずし」に始まり、魯山人ごひいきだった寿司屋としても有名だが、そんなことを露とも感じさせない、ご主人の気配りは居心地が良いね。
なお、おけい寿司の主人は、平成20年8月に引退したため、現在は代替わりしている。

「リヴァロ家の食卓」
夏の訪れはシンコで。(2)








 すきやばし次郎   東京都中央区銀座4ー2ー15塚本素山ビル地下1階  03-3535-3600
主人 現代寿司の最高峰と賞賛される「すきやばし次郎」。1994年、フランスのヘラルド・トリビューン紙が連載した「世界の十大レストランを選ぶ」という特集では、1位「ジョエル・ロビュション」、3位「アラン・デュカス」などに続いて、堂々5位にランクインされた経歴を持つ。

お昼に銀座「すきやばし次郎」にてお任せを頂く。握るのは次郎さんではなく息子さん。次郎さんはといえば、箸を並べてくれた(笑)
ネタは素晴らしい。評判の車海老はとんでもない大きさで、ジューシーで圧倒的な存在感を示す。コハダははっきりいって今まで食べた中で一番うまかった。口に含むと身に厚みがあり、歯でかむとジュワっと酢が染み出てきて、シャリと混じり合う。鮨水谷もジュワっと染み出てうまいが、厚みが倍あるほどに感じた。トロは赤身が、美しく赤光りして酸味と甘みと香りのハーモニーを感じる。終盤の小柱、ウニ、いくらの軍艦巻も素晴らしい。
一方、シャリはというと・・・・まず昼早い時間のせいか、かなり熱を持っておりゆるい。そのせいか、穴子の握りを手で持つと折れかけたため、あわてて口に運んだ。これは致命的。形もバラバラで、中にはよく町中の下手な寿司屋によくみかける、不揃いの飛び出し部分がある。

サービスはいい。確かに緊張感はあるが、客の動きをよくみており、合わせた仕事をしてくれる。前半はこちらのスピードに合わせ手早く握り、後半ややお腹がたまってきた頃にはゆっくりと握ってくれる。また食べっぷりに合わせて握りの大きさを変えているのか、途中から大きめに握ってくれたのが分かった。かんぴょう巻を追加して2万4000円。

ネタはとんでもないレベルだが、少なくとも次郎さんが握らなかったその握りの「完成度」は、世評のレベルにはとうに及ばない。
次郎さんは勘定する際、店の外に出て見送ってはくれたが、次郎氏も80歳を越え代替わりを図る必要は理解できるものの、寿司ファンは「次郎の握り」を求めて押し寄せてくる。そんなジレンマの中、店全体の評価としてはやや下り坂といわざるを得ないだろうか。

一方、六本木ヒルズ支店では次郎氏のご子息・隆士氏が握っている。お昼は、お任せ握り・一人1万5000円のみ。
シャリは、「炊き立て」のようにあたたかく、かつ「つや」がある。パラパラでもなくシットリでもなく、ふわふわと言ったところ。
ネタとのバランスは取れている。こちらの息子さんの方が指が綺麗で長く、その影響もあるのか、握りの形は美しい。ビール1本、お任せ2人前に、握りの追加数貫、巻物2本で4万円弱。





 あら輝   東京都世田谷区中町4-27-1上野毛リトルタウン102  03-3705-2256
妻 夜は二巡目の8時以降を指定されたわ。中心部からタクシーで30分はかかるので、とにかく遠い印象だっだわ。
華やかな明るさで美しい、開放感のある店内は12名の客で満員。真っ赤なイスが粋な感じね。
イメージした印象と異なって、大将はかなり快活で多弁に振る舞ってたわ。お客は皆思い思いに楽しんでいて、心地よい社交的な雰囲気がいいわ。

主人 つまみは、鯛、アワビの肝、アジ。特にアジが抜群のとろけ方で素晴らしかった。鯛は東京ではなかなかお目にかからない品質。
握りは、佐渡の鮪が赤身2貫、大トロ2貫。Vの字に開いて美しく差し出される。イカ、車海老、手渡しされる小振りのアサリ、ウニ、穴子。玉子は出なかったね。10貫前後。ネタはコハダなど光り物が少なく、量ともに、「え、もう終わり?」って偏った印象を持つ。
強く印象に残ったのは、抜群の旨味の人肌よりやや温かいシャリ。ハラケルというよりゆっくりとトロケル感じ。塩・酢加減を濃いネタに合わせているのかもしれない。シャリを思い出すとまた食べたくなる感じがするね。
握りの形は基本的にはきれい。ただ時々常連客と話し、笑いながら握る時が数回あって気になったな。案の定、そういう時の握りは形が崩れており、ころりと台の上で転がるんだ。
シャリのうまさは特筆すべきだが、ネタのバランスや偏りからすると好みは分かれる店だろうか。むしろ如才のない接客が印象に残る。男女1名ずつの弟子の方も一途で一生懸命なサービス。このエンターテイメント性は、屋台から始まった江戸前寿司の伝統を引き継いでいるともいえるかもしれない。2時間きっかりで4万4000円。都心からのタクシー代金を考えると既に銀座値段かな。





 鮨 喜寿司   東京都中央区日本橋人形町2-7-13  03-3666-1682
主人 大正12年創業の老舗「鮨 き寿司」。日本橋人形町の大通りからはずれた小さな通り沿い、木造瓦葺きの昔ながらの店構えだ。
年期の入ったL字型のカウンター。テーブル、座敷もある。お昼だったがおまかせをお願いすると、「8個にしましょうか。10個にしましょうか」と尋ねられたので、とりあえず8個をお願いする。
3代目になるご主人油井さんは、背筋をピンと張り姿勢良く握る。こちらの食べ具合を確認しながら握ってくれる。他のお客さんの注文が重なり少し時間を取らせるときは、「少々お待ちいたけますでしょうか。」ととても丁寧だ。きちんとした人柄が伺える。

綺麗だが深みのある酸味の赤身。なかなか上質の真鯛はかぶすを軽く絞って供される。酸味が爽やかだ。イカ、トロ、シンコ。シンコはもう大振りになっているが、とても旨みにあふれたシメ具合。車海老、アナゴで一通り。
もちろん追加で、赤貝、いわし、あじと頂く。ほんのりとした温かみのあるシャリは、やや大きめのネタとゆっくりと交じり合う。口の中でのバランスがとてもいいから素直に味覚に響いてくる。おいしい。
更に、ご主人にお勧めを聞くとイクラを勧めてくれる。優しく漬け込まれた自家製のイクラは、とても小さなミニどんぶりで。上品な味わいにスッ、スッとあっという間に平らげてしまう。

現代の寿司の「美しく小ぶりな形の握りが、口の中でハラリほどけて、ネタと調和するおいしさ」とは違う。しかしこちらは、「お寿司って、色々考えずにおいしく頂いていたなぁ・・」と昔ながらの握り寿司のおいしさを思い出させてくれる。
話し込んでいる客には話しかけず、一人客にはそれとなく目配りするなど、丁寧で目配りの効いた接客は、いかにも下町の江戸前寿司らしい。
店内は一昔前の相撲取りの写真が張られたり、寒川神社の神棚があったりと風情がある。昔は良く関取が来ていたとか、油井さんも2~3歳の頃に抱っこされていたとか、80代の常連さんとご主人との会話が盛り上がるにつれ、店内の雰囲気が和らいでいく。タイムスリップしたかのような心地よい風情に身を任せていただく、昔ながらの握り鮨を堪能した。





 ほかけ   東京都中央区銀座4ー7ー13  03-3564-2491
主人 銀座三越の横裏。銀座のど真ん中に時代から取り残されたようなたたずまい。白地に「ほかけ」と書かれた暖簾を押して、古い木製の引き戸を開けると、時代スリップしたような居心地の良い空間が広がる。
少し腰の高い椅子に座ると、目の前には雑然とした棚、飴色に変色したツケ台、ツケ台に古めかしいガラスが埋め込まれており、そこにはネタがおかれている。
しばらくすると奥から高齢の大将がゆっくりと登場。「あ~これはいい店に違いない」という期待感が広がる。初めての店で妙な緊張感を感じずに、むしろ安心感を感じるのは松波以来。これがキャリアというものだろうか。

カウンターの横には、仕込み中のザルにあげられたコハダとアジが綺麗に並べられている。カウンターで仕込み中のネタを見たのは初めて。
そのアジ、コハダ、そしてあなご、煮アワビはオーソドックスな江戸前の仕事。かすご、赤身、トリガイ。うに、小柱は軍艦で。そして海老のすり身入りの卵でしめ。これは、というものはないものの、総じて安心して頂ける。
お昼時にうかがったが客はおらず貸し切り状態。大将はこちらの食べるペースを見ながら、頃合いを図ってあっという間に握る。そのスピードの早いこと、早いこと。シャリの形は平べったく、また時には崩れていて決して美しい握りとは言えないし、ネタもやや大きめだが、口に含むとほんのりと暖かいシャリがネタと軽妙に混ざり合う。安心できるうまさ、という感じか。

大将は余計な口ははさまないが、「光り物がお好きなんですか」「もっと食べられそうですね」など話しかけてくれる。その表情がとっても柔らかい。お茶を運んでくる奥さんの身のこなしも優しく柔らかい。脈々と引き継がれる江戸前の伝統寿司を、昔の下町のような雰囲気の中で心地よく味わえる店。





 銀座 青空   東京都中央区銀座8-5-8 かわばたビル3F  03-3573-1144
主人 「すきやばし次郎」で12年修業した高橋青空氏が2006年に独立した「銀座 青空(はるたか)」。若い寿司職人の握りに期待満々?の男性一人客、接待らしきグループ、大人の落着いたカップルなどでL字型のカウンター10席に、掘ごたつの小さな部屋も満席だ。掛け軸が飾ってある小奇麗な内装の中に、主人はキリリと美しい立ち姿。的確な所作で客のペースにあわせて握っていく。

数日熟成させたスミイカは、ネットリ感と新鮮さのギリギリの着地点。赤身、中トロ、大トロも熟成感がある。シャリの形自体は、「すきやばし次郎」とも「鮨 水谷」とも異なり、長方形の台座型で決して美しくははない。ただ、きりりとした酸、やや強めの塩加減は男っぽく、ネタとのバランスが良くて美味しい。
何と言っても抜群なのは「次郎」譲りのコハダと車海老。流線型も美しく切り付けられたコハダは、噛み締めるとジュワーと心地好い酢がしみでてくる。
客に出す直前に茹でられる車海老は、どの寿司屋よりも大きい。二つに切られて供せられ、それぞれ味噌とおぼろが一緒に握られている。みその香り、甲殻類の独特の甘さがシャリと混じり合う。抜群のハーモニーだ。

冷酒は「手取川」を頂く。コクがありながらキリッとして上品な酒質が[青空」の粋な握りと良く合う。「次郎」と違ってゆっくりと酒も飲める。24時までと遅い時間までやっているので、ふらりと訪れやすいのも便利だ。
美しい立居振る舞い、自分なりの色を出していこうとする向上心、奢らないがおもねりもしない接客、そして抜群に上質なネタ・・・訪れる者に、これからも成長する姿を応援したいと思わせる、そんな魅力がある店だった。








 鮨処 しみづ   東京都港区新橋2-15-13  03-3591-5763
主人 烏森神社新橋鶴八」で11年修行後、若くして独立した30代の大将が握っている。場所は新橋鶴八の近く、烏森神社の横丁の、「えっ!?こんなところに?」っていう場所にある。

店の中は、8席程度のカウンターで清潔な店構え。大将も30代とはいえ、大柄で落ち着いている一方、気さくに客に声をかける努力をしているなど好印象。客の年齢層は高く落ち着いている。

仕入れには力を入れている様子かな? 鶴八が古典的なネタもシャリも大ぶりで、喉につまりそうな感じだとすると、ココは古典的な点も残しながらも、現代的な点も入れていこうとしている感じ。シャリの堅さは鶴八譲りで堅めだが、若干小さめ。

ネタの車エビは次郎と同じく、握りを2つに切って出てくる。鰹のたたきも次郎と同じく藁であぶるなど、スモーキーな味わいを出していたね。ウニは、鶴八が2種類を軍艦巻きにすることを売りにしているけど、ココはあえて握ってみせる。鮑蒸しはココの売りの一つで、他の客も全員注文していたよ。握りよりもつまみの方が美味しい。

師匠の技術を前提に、いろいろな工夫を見せている点は非常に好印象だったなぁ。場所も新橋駅近くと使いやすいので、また行ってみたい店の一つ。期待も込めて「新橋鶴八」より★を多くした(笑)

「リヴァロ家の食卓」盛夏、江戸前鮨で楽しめ!





 銀座 久兵衛   東京都中央区銀座8‐7‐6  03-3571-6523
主人 銀座・九兵衛1階のカウンターが一杯でも、2階、3階にそれぞれカウンター。どの職人にあたってもそれなりに楽しめるのが強み。一方で、あの人の握りを食べられる、という楽しみはないのが弱み。

刺身は薄く切ったマコガレイ。ここはいつも白身を透き通るようにうすく切るが、これではあまり白身の旨味が味わえないと思う。生のトリガイは海の滋味が広がる。大トロ・赤身は普通。コハダはまずまずのしめかた。穴子の肝を焼き鳥のように棒状にして。三千盛が進む。
握りに移行して、マコガレイ、アジ。サバは時期終わりで細っているが特有の香りが楽しめる。アオリイカ、サヨリ、車海老、ウニ、イクラと続くが、特に特徴がないものの、おいしくは頂く。アナゴは恒例通り、塩とタレの2種類で。
シャリのはらけ具合、シャリとネタのバランス・・云々を言う前に、様々なネタで酒が進む店。ネタ重視の博多前寿司に慣れている九州人には分かりやすい寿司といえるかもしれない。
握りそれ自体は、印象に残らないものの、安定した中庸の寿司。なお、職人は等しくサービス・接客に優れており、楽しく安心して時間が過ごせる意味では非常に優れた店(なお、仲居の女性はびっくりする位態度が悪い。接客ウリの店なのだから、仲居の接客態度は改善して欲しい)。接待はもちろんだが、デートや女性客も多い。

魯山人は昭和28年に、秀逸な寿司屋として対照的な2店をあげている。1店は一人で仕事をする「新富支店」、もう1店が久兵衛である。
「西銀座にすばらしい店舗を持つ久兵衛は、古くさい寿司屋形式を排し、一躍近代感覚に富むところの新建築をもって唖然たらしめるものがある」
「久兵衛のは贅沢寿司として文句なし。握り具合はほどよい特色を有し、酒の肴になる寿司である」
「一方、新富支店はイナセな名人肌というものを受け継いでいる。久兵衛も鮨となると平均して新富支店には及ばない」
「新富支店は遠慮の固まりのごとく細々としながら、どぎった寿司を作るのがおもしろい。久兵衛は全く違い、その明快な性格に惚れ込み客が次々に訪れる」

「新富支店」を「おけい寿司」や「はしぐち」に置き換えると、平成の世の「江戸前界」でも50年前のその指摘は正鵠を得ている。その意味では、久兵衛も伝統を守っているといえるのだろう。

「リヴァロ家の食卓」久兵衛の寿司をニューオータニ店で親孝行だね、「鮨 久いち」





 はしぐち   東京都千代田区麹町5-7紀尾井町タワービル2F  03-5275-5877
主人 故・里見真三氏がお気に入りだったという「はしぐち」。カウンター6席、夫婦2名だけでひっそりと佇むお店。ビル自体は、女将さんが「タワービルっていうけどタワーじゃないんですよね」と笑うほど小さな古いビルの2階。しかし店内は清潔そのもので好印象だね。
目の前の寿司だねには、品数は少ないものの上品かつ新鮮なネタが綺麗に整列して並んでいる。ここの寿司は美しい流線型。大将がゆっくりした動きで握った後に、目の前に置かれる寿司は沈み込むんだ。生きているかの様に「フー」と息を吐いて、寿司が高さを変えるんだよ。
その昔「すきやばやし次郎」の寿司は沈み込むという伝説があったけど、少なくとも私が食べた時は沈まなかったが(笑)、ココはしぐちのそれは確かに沈んでいたね。
その味わいは非常にや柔らかい。江戸前特有のあのハラハラやパラパラというより、優しく口の中でネタと混ざり合うね。沈み込むほどに柔らかく、シャリの中に空気を入れて握っているからだろうね。
夫婦2人で真面目に取り組む姿勢がそのまま「寿司」に表れている感じがして好印象だったよ。

妻 夏の暑さや不快感を、冷房ガンガンでごまかすお寿司屋さんがあるけど、ココは冷房も適度・サービスも適度でほっとするわぁ。身体が自然に冷えて、お寿司を頂くうちに自然と温まるような・・・そんな穏やかな感覚がするお店。女性にも過ごしやすいわ。

主人 おつまみはそれほど多くはないけど、穴子は煮詰めがほどよい甘さで美味しいね。握りはこの日、中トロが中トロとは思えない位の旨味が出ていて良かったよ。新イカは新鮮なだけでなく見栄えも良いんだ。包丁をいれずに柔らかなカーブを帯びた真っ白なイカがシャリに乗って流線型を形作っていて、しばし目で楽しんだ後、口の中に放り込むととろけていったね。シンコの4枚付けはシンコらしい柔らかい食感が、柔らかいシャリと渾然となって本当に秀逸だった。シンコは今年は市場でも高値が付いてしまいどの寿司屋も苦労していたけど、この夏食べたシンコの中では一番だったね。
ココの芸術的な握りを思い出すとまた食べに行きたくなるね。






 すし 與兵衛(よへえ)   江東区大島2-24-5 コーポ高橋1F  03-3682-3805
主人 席に着くと、皿に盛られたおつまみ盛り合わせが供せられる。牡蠣の煮びたし、海老頭、煮ホタテなど。それぞれ味わい深く、これから始まる握りへの期待が高まる。

ご夫婦で軽妙に客あしらいをしながら、てきぱきと握っている。握りの形は綺麗。強めに握っているのかかなりシャリが詰まっている感じを受ける。ガチッとした骨格を感じる男っぽい握り。
珍しい北寄貝はその食感が楽しい。ミル貝もジューシー。そして何と言ってもサヨリが抜群に良かった。肉厚があり噛みしめるとじわっと酢がにじみ出てくる。
名店のコハダで感じる感覚。煮ハマグリはハマグリらしい心地よい苦みがシャリと混じり合う。アナゴには煮ツメがトロリと。見た目にも味わい的にもかなり濃いツメ。個人的にはもう少し軽やかな感じが好きだが、いかにも昔ながらの仕事という感じで嬉しい。

西大島のうらさびしい商店街を抜けたところポツリとあるロケーションがまた一興。こんな寿司屋が近所にあったら・・・と思わせる。昔の伝統を引き継ぐ江戸前の仕事と江戸っ子らしい明るい接客がすがすがしい寿司屋。
銀座「久兵衛」で10年近く修行し、ドイツで職人をした後、ここ西大島の地に與兵衛を開いて既に20年以上になる。








 すし善 汐留店   東京都港区東新橋1丁目8-1 電通本社ビル・カレッタ汐留46階  03-3569-0068
主人 北海道札幌の人気寿司店「すし善」のカレッタ汐留店。電通本社ビル、カレッタ汐留の46階にある。
広々とした清潔感ある店内。入って右側は、窓から見える高層ビル群の景色が素晴らしいテーブル席。左側に、カーブを描く長いカウンターがどっしりと構え、品の良い清潔感がある。スタッフも優しく礼儀正しい、敷居は決して高くない。

ネタはやや大振りにきりつけるため、握りの見た目はあまり良くないが、ネタ自体は薄めなので、口の中で交じり合うバランスは決して悪くない。
シャリも柔らかく握られるので、パッとはらける感じはないものの、ネタとスムーズに交じり合う。シャリの味付けも品が良く全体的に安心して食べられる握りだ。
マグロもなかなかの品質だし、コハダもいいシメ具合。赤貝トリガイは本来の旨みと風味がふくよか。アラも博多で頂くのと負けない味わいだ。

江戸前の仕事を取り込みながらも、やりすぎてない適度さ。素材の新鮮さを全面に出す北海道寿司の良さを感じる事ができ、とても楽しい握りだった。
最後に出される「元祖とろたく巻き」は、トロとたくあんを巻いて白ゴマをまぶしてある巻物だが、満腹なお腹でも、カリコリとたくあんの歯応えが楽しく頂ける。薄く綺麗に切られたガリはきりっとした味わい。

夫婦やカップル・家族で安心して通える寿司屋は意外と少ないのだが、ここ「すし善」は安心して利用でき、満足感も高いだろう。
「ネタの一覧」をそれとなく目立たないようにカウンターに置かれているのも、敷居を低くしてくれるのだろう。「久兵衛」の、水商売らしい世慣れた敷居の低さではなく、地方の良い意味での敷居の低さが好印象だった。





 新橋 鶴八   東京都港区新橋2-16-1ニュー新橋ビル2階  03-3591-1551
主人 博多でも見なくなったような、恐ろしく古い新橋の駅前雑居ビル。中には、飲食店・チケット屋・安売り紳士服屋などが入り乱れているんだ。その2階の片隅に、江戸前の伝統を引き継ぐ「新橋鶴八」がある。
大将は16歳から神保町の名店「鶴八」で修行して、この新橋に店出して20年以上たつらしいよ。今では本店の「鶴八」よりもココの方が名声高くて、江戸前寿司の5店の1つに上げる人も少なくない。

お昼13時10分くらいに訪問した。客は誰もおらず、既に店じまいの途中だったようだね。こじんまりとした古い店は「名店」との予習がないと、入ったことを後悔しそうな造りだよ(笑) カウンター横には雑然と、ビールの空きケースが置いてあったりしてね。

無言で弟子がワサビをすり出す。出された握りは、シャリは堅めでやや大ぶり、酢のシメ具合は適度。ネタも大きい。グイと喉に押し込むと、ワサビがツーンと鼻をつく感じさ。次郎もそうだが、江戸前には博多寿司にはない、ワサビの味があるよね。
それから、コハダは大きい!博多の2・5倍はありそうだよ。ウニはてんこ盛り。「江戸前はウニなんか握れねえよ」なんて言ったのは一昔前だね。今では博多で食べる寿司屋よりウニの量は多いよ。
どんどん握ってもらううちに、時間は13時25分を過ぎてしまった。のれんがしまわれ、店内には大将と向き合う私だけ。
アナゴに合わせて再度コハダを注文。大将もノってきたのか動きが大きく、笑顔が出てくる。「それでは!」と鶴八名物の「トロの鉄火巻」を注文。ドンと出された巻は4つ。海苔からはみ出るように、トロが入っていたね。そしてやっぱり最後は玉。今までの大味な握りとは違い、非常に繊細で甘いデザートのようさ。

「握り寿司」は周知のように、江戸市中でうまれたファーストフードだったんだ。当初は旅路を急ぐ江戸商人なんかが、出店屋台でパク付いたのが発祥。今回は、まるで江戸市中の屋台にいるような不思議な気分だったな。
30分で寿司12貫、トロの鉄火巻と玉。しめて1万1000円。「寿司」に値段を払ったというより、江戸前の「伝統芸能」にお金を払ったという感じだろうか?「ごちそうさまでした!」と声をかけると、上機嫌の大将が「ありがとやした!」と2度大声。

大きめのネタ、堅めでのどに詰まりそうなシャリ、江戸市中の寿司?の面影を現代に残す・・・、その風情はフレンチでいうと、流行り廃りには目もくれずその代わりに星を落とし続ける、フランスのトュールダルジャン本店という感じかな・・・?デートや夫婦では決して使えないが、「江戸前の歴史」を勉強した一店ではあったよ。





 鮨 かねさか   東京都中央区銀座8-10-3  03-5568-4411
主人 銀座、建物入口に分かりやすい表示があるが、実際の入口は地下で狭い階段をぐるぐる降りて行く。店内もかなり狭く、入ってすぐのカウンター、左奥にずずっとまわったカウンターに分かれている。従業員の行き来もし辛い程のギリギリのスペースという感じ。必然、握り手に正対しない客が多くなり、座った席によっては違和感がある。ただ職人の仕事ぶりなどは横や後ろからよく見える事になる。
和でありながらモダンなデザインを意識して造られている内装。簾風の天井と飾られた緑が涼しげに合う。店入口右奥には寿司屋らしからぬ、赤いソファの小さなボックス席がある。

握りをお任せでお願いした。白身から始まり、トロを前半の山に持ってきて、こはだを境に後半がスタートしての山場というオーソドックスな、いわゆる「次郎流れ」で20貫弱。
白身は「まこがれい」「ほしがれい」。この時期、「まこ」を握る店は多いが、高級な「ほし」まで持ってくるところに素材に対するこだわりを感じる。しゃりは人肌よりやや温かい。塩がかなり強いため、食事初め、かつ、白身だとポンと浮く感じだ。

続いて「中トロ」「大トロ」「づけ」。佐渡のまぐろは普通。「すみいか」「コハダ」。コハダはかなり強い締め。強いシャリとは合うのかもしれない。「かつお」「あじ」には葱たたきをポンと載せている。「キスこぶ締め」、「白うお」にはカボス。
「車海老」はミソもあわせて。クリーミーなゆで加減。東京ミシュランが二つ星つけたのはこのあたりもあるだろう。フランスのフレンチは概していずれも塩がかなり強い。そしてラングスティーヌのサラダなど、トロリとした甘味を出した前菜も多い(日本人フレンチシェフだときちんと綺麗な火入れをしてしまいがち)。そんなフレンチ本場テイストを感じる車海老。
「はまぐり」。ツメを合わせない仕上がりだが、とてもジューシーではまぐり特有の旨み。「うに」「あなご」は塩とタレ。久兵衛譲り。巻物は「トロ」と「かんぴょう」。卵はとてもクリーミー。

ワインリストにはシャンパーニュ、白、赤の定番ものをそろえている。例えば、シャンパーニュは補糖しないリンとした酸味と辛味が和食にもあわせやすいローラン・ペリエを持ってきている。ワインクラースタンドも用意してある。
客あしらいも久兵衛出身だけにそつがない。握りはやはり久兵衛らしい、悪くいえば「ゆるい」、よくいえば「やさしい」握り。ハラリとしたシャリとネタの融合を目指す握りではなく、いわゆる、ネタとジュワッとした一体感を目指す握り。付け台から指で持ち上げる時に折れてしまう事もあった。

ミシュランの一つのパターンは、定評あるベテランないし著名店出身の若手に目をつけるもの。「かねさか」も、「鮨さいとう」(旧かねさか赤坂店)も、そのパターンで星を貰ったものだが、日本人の寿司基準からするとまだまだこれから。若手の範疇を越えないし、同レベルの寿司屋はいくつもある。








 寿司幸本店   東京都中央区銀座6-3-8  03-3571-1968
主人 1階、2階にそれぞれカウンター。1階はL字型のカウンターで10名も座れば、肩ふれあう感じでかなりギチギチだね。中に3~4名いる職人との距離も思いの外近く、まさに昔の屋台を彷彿させるよ。
客は場所柄、同伴はもとよりカップルが多いし、年齢層もかなり高い。
明治18年創業、銀座数寄屋通り沿いという敷居を全く感じさせない雰囲気。それとなく会話に入り込んでくる客あしらいは上手だね。そんな雰囲気が饒舌にさせるのか、客の方も思い思いに楽しんでいる様子さ。

「おつまみからお任せで適当に」とお願いすると、煮込んだしゃこの爪、かじきまぐろの焼き物、あんきもに白子の煮付けなど、日本酒に合うおつまみが出てくる。しろえびを和えたものは、甘みが芳醇でなかなかだったよ。
両隣を見ても、同じ品が同じペースで出ている。刺身は普通の小皿にのって出てきて量も少ない。やま中、河庄のおつまみに慣れている身にとっては驚きの一品はないね。

握りを頼むと、いいペースで握ってくれる。周りはまだおつまみをちびちびと食べており、握りをぱくつく客は少ないね。季節柄か、中トロ、赤貝はかなり新鮮かつ上質だった。
握りは適度の大きさ、バランスは悪くないが、印象はさほど残らない中庸の握り。しゃりの印象も薄い。客を選ばないという感じだろう。

値段的にはやま中河庄で思い切り食べた程度だから
(もちろん量的には少ない)、同じ銀座の「青木」などに比べると、かなり押さえている方ではないかな。
最近、丸の内ビル35階にも進出して、客に人気のあった、ふけた感じの愛想良い職人が移ったんだよ。





 吉野鮨本店   東京都中央区日本橋3-8-11政吉ビル1F  03-3274-3001
主人 創業明治12年という江戸前の老舗で、「トロ」握りの発祥の店。現在は4代目と5代目がこの老舗を守っているんだ。
サラリーマン・OLが行き交う日本橋の通り沿いに大きな看板。店内に入ると、左側にL字形のカウンター、右側には掘りこたつ式の小さな座敷2つと、小さなテーブルが3つほど。カウンターに座ると、やや高さのある、昔ながらの普通の透明ネタケース。

盛り込みを頼むと、赤身、中トロ、イカ、車エビ、穴子に玉など8貫と鉄火3つがスイと出てきた。冷たいシャリは固めで、一粒一粒に酢飯の味を感じる。子どもの頃、近所の寿司屋に連れられたときを思い出すよ・・「懐かしい~」というあじわい。

食べ終わったところでお好みで握りを追加。いきなりのギアチェンジで、暖かいシャリに繊細なネタを握ってくれる。アワビは切りこみを入れ、美しい流線型。
コハダは優しい酢の利かせ方で極上。小柱は新鮮でヒラメは旨みを感じるね。シャリはゆっくり優しく、温かさを保ちつつほどけていき、盛り込みで感じた固さをそれほど感じさせない。

そう、3代目の故吉野曻雄氏が握りの理想として指摘する「家庭でつくるおにぎりの握りかげん」という感じだ。
例えて言えば、盛り込みの握りは「遠足の日、朝早く親が作ってくれたおにぎりをお昼に頂く」感じで、お好みの追加握りは「遠足に出かける前に、あつあつをくすねて食べるできたてのおにぎり」って感じだろうか?個人的には、最初からお好みで通して頂いた方がより満足できると思うな。

従業員も明るくて敷居は低く、老夫婦、おばさんの集団、サラリーマンなどが、肩肘はらずに「食べている」。盛り込みだけだと2000円、ビール1本にお好み6貫追加で5000円弱という、驚く値段だったよ。気軽に寿司をパクッといきたい時、そんな時にはぴったりのお店だね。





 寿司 仙   東京都中央区銀座8ー6ー9  03-3571-3288
主人 銀座の三井アーバンホテルを右手に見ながらやや進むと、右手に日中にもかかわらず細暗く狭い路地。思い切ってすすむと寿司仙との看板。並びには小笹寿しもある。カウンター10席、70年近くの歴史を数える江戸前の店。

年輩の職人が2人たたずみにこやかに、違うネタを1個ずつ2個セットで、テンポよく付け台に置いていく。赤身と大トロ。冷蔵庫から出したばかりなのか、ひんやりしすぎており、赤身の酸が生きていない。カレイ・カスゴ。濃い煮キリが、白身に合う。青柳・あわび。青柳は色もキレイで、絶妙な味加減。コハダ・アジ。コハダの〆加減はあまり好みではない。アジは季節柄おいしいが、やや大振りすぎるのでシャリとのバランスが悪い。ウニ・煮あわび、穴子・卵。
最後の干瓢巻は、その強い醤油味がシャリと混ざり合いほどよい加減。
そのシャリは人肌、やや粘っこく、ハラリと崩れる感じはない。ここもほかけと同じような平べったい形で、時々形が崩れている。ネタはやや大振りなため、煮ツメや煮キリがトロリと付け台にこぼれ、口に運んだ後、毎回、職人がふき取る。その煮ツメはやや濃い。ガリは廻る寿司屋でよくみるような、薄い紅色の細切りで今ひとつ。

現代の江戸前寿司とは対局にある、昔ながらの江戸前寿司。特筆すべき握りではないが、年輩の店主の柔らかい物腰・風情など雰囲気のある寿司屋。カウンターや店内もキレイだし、場所柄接待に使える。ただし同じ風情の同じ味わいというくくりで、1人で握りを食べるのであれば「ほかけ」の方がお勧め。





 すし匠 はな家与兵衛   東京都新宿区四谷1-11陽臨堂ビル  03-3351-6387
主人 店入口JR四谷駅から四谷1丁目に向かう途中を左折するとすぐにある店。40歳前後と若い大将の中澤氏は、福岡・大阪を含め全国を流れ歩いてここに開業。現在新進気鋭の店の一つ。カウンターは15席程度、洗練されて清潔感のある店構え。

系統はつまみ系なんだけど、途中に握りをつまみのようにはさんでくるのが特徴。またおつまみも、河庄やま中などの割烹系とは異なり、目新しいものをほんの少しずつといった感じ。
この日は、あさりの甘辛煮から始まり、富山のしろ海老、イカの印籠巻、あげ巻き貝の串焼き、つぶ貝の肝、etc・・・とにかく次から次へと、ちょこちょことつまみが出て来る。飲兵衛には嬉しいかも?
日本酒も、まず料理に合わせた中庸から始め、それを基準に辛目・甘目のどちらが好きか・・・と面白い飲み方を勧めてくれた。握り自体にはさほど特徴はなく、印象に残らない。一通り出てくる握りは量ともに不満かな・・・。追加した玉は、江戸前の伝統をいかした海老をきざんでいれこんだものと、出汁巻きの2種で楽しめた。さらに北海道のバフンウニと唐津のアカウニをそれぞれ追加して味わい、食べ比べもできた(バフンウニに軍配。アカウニはかなり小粒で「やま中」のそれに完敗)。

2人で5万円(お任せ一通りにかなり握りを追加、日本酒3杯ずつ程度)で、満足度よりはやや高め。なお、つまみはかなり塩気が強いし、鰹のたたきやさんまの刺身につける醤油もかなり濃い。江戸前が濃いといっても、この店はかな~りしょっぱいんじゃないか? 途中から舌がヒリヒリしてきて、翌日は胃が疲れてた(笑)

妻
 サービスは好印象よ。大将以外の職人さんもフレンドリーで、一品一品の説明も詳しいし気が利く印象ね。でも「握り」をじっくり楽しむ感じはないので、好き嫌いはかなり分かれそう。お酒が得意じゃない人には向かない店かもね。





 鮨 青木   東京都中央区銀座6ー7-4 銀座タカハシビル2階  03-3289-1044
主人 先代が急死されて跡を継いでもう10年近くなる。銀座の寿司を代表する名声を維持している。二人客、一人客、そして銀座の女性を連れた客と様々な客層だ。
カウンターは奥行きが狭く、横に細長く、荒木のような赤い椅子が窮屈にそなえつけられている。一番奥に主人の青木利勝氏、そして真ん中、手前にもそれぞれ職人がたたずむ。いずれも若い職人だが客に目配りしてそれとなく声をかけている。
まずつまみから頂く。季節感あふれる鱧。やや水っぽく感じる。中トロにアジ。かなり大きめに切りつける。
お任せの握りはコハダからスタート。シャリはかなり小振り、ネタはやはり大ぶりなため、シャリを感じるまでもなくネタを食べる感じになる。ツメもやや甘みが強い。日本酒も吟醸系が多く、口の中に甘みが続いてしまう。
ウニを2種類食べさせたりと客を喜ばせる術は心得ている。そのせいか、常連客を中心にお酒が入り、華やかでそうぞうしい雰囲気だ。
寿司好き、握り好きが満足するかというと別だが、値段も含め「銀座のお寿司」を体現する寿司屋であることは間違いない。今宵も鮨青木では銀座の客が喧騒を奏でていることだろう。








 すし処 喜久好   東京都港区赤坂3丁目16−2 赤坂栄林会館  03-3585-2478
主人 赤坂見附の飲食店街、階段を降りていく。そこには「伝説の握り手、藤本繁蔵譲りの握り」が味える「すし処 喜久好(きくよし)」がある。入口横には石鉢に石狐で風情ある様子。「握」の文字の入った暖簾をくぐると右側に4名ほど座れようかという座敷、左側にカウンター。年期が入っているが広くて小奇麗は好印象。カウンターは綺麗にみがきあげられ、ステンレスも光っている。

おまかせでお願いする。ひらめ。熟成させ三日目の大間のマグロの赤身づけ。「この時期だから150キロ位だけど扱いやすく良いです」と言う。
続いて中トロ、いか。コハダは、大振りで美しく切りつけられてある。流麗で色気がある。すごく柔らかく仕上げてあり「九州産のコハダは固めですからね、これはかなりソフトでしょう」と大将。
車えび、うに軍艦、こばしら、赤貝、さば、しめたひらめ。変わったところでげそまき。げそのカリカリした歯ごたえが新鮮で、とろりとしたつめとハーモニー。
穴子は目の前のコンロでさっと火が通される。シャリに合わて低温に温められた大振りの穴子が、シャリをすっぽり覆い隠す。小皿で供せられるその出で立ちはふんわりと優雅。卵は最低二日間は冷蔵庫でねかせるという 、この日四日目の卵は独特の粘りと柔らかさだ。

独特の、とても早いペースで握っていく。昔ながらの大振りな握り。シャリは体温位の温みめの暖かさ。ふっくらたきあげられたシャリは、昔ながらの「お握り」を彷彿とさせる。
無口だが、尋ねると笑顔で色々と教えてくれる。握りの形、味わいは現代最先端のその握りではない。妻にはその大きさ、スピードはハードだったようだ(笑) デートには向かないこと請け合いだが、こんな昔ながらの仕事を続ける、江戸前の真摯な仕事ぶりに敬意を表したい。





 小笹寿し   東京都中央区銀座8-6-18  03-3289-2227
主人 本家「小笹寿し」の系統をふむ。
カウンター中央付近は大将が担当し、奥は年輩の職人が担当するんだ。その職人が担当した
(よって以下はその職人の握りの評価)

ネタがかなり大きく、シャリが見えなくなる。親指をあまり効かせていないね。軽く握るが握り終わった後、提供する直前に思い出したかのようにギューともう一度固めるんだよ
(普通見られる形を整える所作ではない)。だから(強制的に形作られた)そのシャリの形は悪くないが、口の中ではらける感じは全くない。ネタとシャリが口の中でバランス悪く混じり合うね。アジ、鯖など魚そのものを感じるよ。
握り終わった後、包丁をふいたフキンで、ネタからたれる煮きりをふいたりする。それもたまたま1回ではないんだ。
ちなみに大将には以上の所作はなく、軽やかに握るが親指はあまり効かせていないね。

二人とも意識的に余り客に目線をやらないようにしてて、そのため威圧感はほとんどない
(良い意味で、回転寿司のカウンターのような気軽さを演出している)。カウンターに座ったカップル、女性客はそれぞれにこやかに握りを楽しんでいるよ。
定評のあなごは確かに美味しい。江戸前のあのとろける穴子は苦手で・・という方も楽しめるだろう。おつまみとして、穴子をあぶった雉焼き(きじやき)を頂くのも一興だね。

握り方がどうの、シャリがどうの、清潔感がどうの、そんなことはさておき、日本全国津々浦々、地元で愛されているお寿司屋さんはたくさんあるだろう。そんなお店が、たまたま銀座にあり、たまたま銀座の住人に愛されている・・・・そんな感じの寿司屋かな。





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