デートや食事会などには大人の和懐石がいい。福岡市中心部で、多数ある和食屋の中から、超厳選したお勧めな店を、個人的見解でもって紹介します。 INDEX |
博多でふぐと言えば「い津み」、創業80年を越える老舗だ。風格ある門構えに落ち着いたエントランス。2階にあがった靴脱ぎ場も広々としている。人数に応じてそれぞれ個室が用意されている。この季節は忘年会や個人的にも必ず訪れている店だ。黄金色の「煮こごり」は凝縮した旨みをたたえている。やや厚めに切られた二段引きの天然「ふぐ刺し」は、適度に熟成してほんのうっすらとした飴色。旨味をたたえ柔らかい触感の奥には厚めの刺身らしい歯ごたえ。ポン酢はふぐを邪魔しない味わい。 追加の「白子の塩焼き」が登場、熱々をぱくりと口に含むと、じゅわっと柔らかい白子が口の中にとろけ出し、あっという間に溶けてなくなる。火を入れて変質した外側部分をゆっくり噛みしめると、チーズのような風味が広がって余韻を形作る。 優しい味付けの「唐揚げ」はかなり薄い衣で、味わいはとてもしっかりしている。上品に仕上げているが食べ応えがある。そして、小皿にとりわけてくる「ちり鍋」も上品で、雑炊もふぐのエキスを適度に残しつつとても優しい仕上がりだ。ふく会席1万円から特選天然ふくコース3万円強までと幅があるものの、総じて量(刺身・鍋)が少なめ。そして、中途半端な握りや茶碗蒸し等の口休めを出さずに、ストレートに河豚で勝負。だから他県からの客人の中には「もう終わり?」とこぼす人もいなくはない。白子料理(塩焼き・白子刺・天ぷら・柚子味噌焼き)などを適度に追加すると、より満足感は高いかもしれない。 同じ「ふぐ」といってもお店によってコンセプトもかなり違う、ここは上品に落ち着き洗練された「大人のふぐ料亭」と言えるだろう。 |
福岡では老舗として知られているね。中洲に近いという場所柄か男性客が多いな。店内は小綺麗で、大将をはじめとして、スタッフは実に礼儀正しくて気がきくサービス。料理の出てくるタイミングも丁度いいね。質・量ともにかなりの満足度。今回の椀物はくハモ。たか野ほど包丁を入れてなく、皮の部分を少しあぶっているのだろうか?うまみのエキスが皮と身の間からにじみ出てくる感じに感心したよ。 夏大根と鱸のくずかけは、とろとろになるまで煮込まれた夏大根をほくほくと頂く。稲垣で最近定番の冷酒「平成の宴(うたげ)」の柔らかい甘みにぴったりだね。冷ご飯とアナゴの冷やし茶漬けは最高(笑) ほんの少しだけ頂くんだけど、胃がほっとする。冷やししゃぶしゃぶ、鮑・キスのてんぷらと続く。 |
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月半ばになると翌月のメニューを考案し始めるらしいわ。豪華な素材はないけど、とにかくメニューが重なった事がほとんどない。素朴な材料で色々素行錯誤して創作するのってすごいわ。主婦的には、経済的で腕やアイデアで勝負できるメニューって感じでワクワクするの。大将の穏やかな中にも芯が通った人柄が、うまく表現されてる料理の数々・・・ゆっくり邪魔されたくない、そんな大人の食事がココでは出来るわね。 |
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| 常連の中には、5000円の少ないコースで晩酌って感じに使う人も見かけるよ。そのほかに7000円、10000円のコースもあり。勿論カウンターがお勧めだけど、区切られた空間に落ち着いたテーブル席もいい。団体向けに奥にはお座敷もあり、10名前後だとゆっくり楽しめる。 |
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| 難を言えば女性にはトイレが旧式で使いにくいこと位かしら。いずれにしろ、稲垣さんの創造性あふれる料理が、主婦にもとっても参考になるし、男性だけでなく女性にも使って欲しいお店だわ。 |
渡辺通り郵便局隣の小路地を入ったところに、風情ある店構えの隠れた人気店。カウンター7、8名に、古い民家のようなお座敷。初めての方は古い薄暗い様子に驚くかもしれない。7000円から1万5000円程度の懐石。前菜はいつも工夫した盛りつけで楽しませてくれるよ。前菜の小蟹、天ぷらの鮎など季節感あふれるところも特徴。刺身(今回は、赤身、イカ、鯛)はいつも今一つなので、魚好きの方は予約時に伝えておかないと満足できないから要注意。 年輩好みとは言っても、薬院の「たか野」とは対極で、かなり塩など味付けが強いから、若い人にもいいかもしれない。 ![]() 今回は、煮あわびにとろっと甘たれをからめた1品などなど・・。肉料理の時もあるね。白子のシュウマイなんてのも珍しくて美味しい一品。自家製カラスミは秀逸。普通、塩漬けした後天日干しするので、ネットリした固目が多いんだけど、ここのはやわらかく匂いもチーズのよう。卵の粒が舌の上で微妙な食感を楽しませてくれて、ボラの卵であることを思い出させてくれる。 |
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| 誕生日や記念日など用途を伝えておけば、盛りつけにも工夫した一品を入れてくれるのよね(金粉入りの椀モノなど)。もうベテランらしい仲居さんはいつも不愛想で、平気でまだ残っているビールを下げたりする。大将とおかみさんは笑顔で、分け隔てない丁寧な接客。 |
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| カップルというより夫婦で使いたい店かな。カウンターはかなり手狭で落ち着かないから、座敷を予約した方がベスト。座敷は個室も1つあり。週末を避ければ座敷もがらんとして「大人の隠れ家」的風情を味わえる一方、料理は混雑している週末の方が勢いとやる気が感じられるから、一長一短。 |
![]() 以前は別の場所にあったけど、火事に遭って警固に移転してきた。警固小学校の向かい側道路を、斜めに入っていくわかりにくい道沿い。民家の玄関のように靴を脱いであがると、家庭的で明るい東洋的な店内。広くてゆったりとしている。緩やかなL字型のカウンターの背後には、個室にも大部屋にもなるテーブル席。 |
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基本的に、料理は店主の娘婿ほか若いスタッフがテキパキ動いている印象ね。粋で親しみやすいキャラクターの店主は、オリジナリティ溢れる「書」に親しんでで(笑)、厨房に立ってるのは見ない。若いスタッフの動きが悪い時なんかは、遊んでいる?と思いきや、それとなく「大将フォロー」が入ったりして。目配りとスタッフとの連携は見事よ。行く度に手書きの葉書くれるんだけど、皆に配ってまわるのが楽しそう。 |
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日本酒・焼酎もこだわりを見せて、料理もお酒に合うメニューが多いね。お刺身の量は少ないけど新鮮。季節の料理がお酒と楽しめるのは嬉しいよ。例えば1月はおせちっぽく数の子やおとそを用意したりね。ちょこちょこ出てくるつまみは、「からすみ」や「このこ」などを、客が自分であぶって食べたりする楽しみもあるし、御自慢の柚べしなんかもある。日本酒を注文すると「このわた」をさっと出してくれたり、酒飲みには嬉しい限り。他には・・柳川鍋風のとじモノなど風変わりな一皿も。毎回工夫がある。 食事の最後には、お抹茶に工夫した生菓子など。1万円で組んでもらうと、つまみの量が多すぎる感じなので、もう少し安い設定で十分かもしれない。 |
山口県の萩市の美味しいお店と言えば、誰の口からも筆頭で名があがるのが、和食の「あじろ」。開店当初はオコゼのコース料理を中心に人気を博したそうだが、現在は懐石コースが中心だ。店舗も人気の高まりにつれ順次移転し、菊屋横町近くの今の場所は3店目という。美しい中庭を挟んで二つの棟を上手く組み合わせた店舗は、隅々まで磨き上げられて清潔感溢れる。入口すぐ左にカウンターがあり、引き戸を閉めるとちょっとした個室のような感じになる。磨き上げられたカウンターの中には一人黙々と作業する貫禄の大将・田中利隆氏、その背後には見事な萩焼たち・・・期待感が高まる。 おまかせ(15000円)を頂くことにする。前菜は、海老・赤貝・ほたてぬた、かすかな酸味が素材の味わいを膨らませる。手毬モチーフで美しい輪島塗りの椀物は、薄く繊細な味わい出汁の中に卵でとじられたシロウオだ。萩名物で旬のシロウオを噛みしめる。大将いわく「シロウオは噛まないと意味がない」ということで踊り食いは出さず必ず手を加えて味わってもらうようにしているそうだ。 刺身はあじろ得意のオコゼと平目の縁側。春から夏にかけて旬を迎えるオコゼも、初春を感じさせる。脂が少なく淡白ながら上品な味わい、そして優しい弾力のあるオコゼ特有の身質を、美しい酒器の日本酒とともに味わえば、至福の時間が流れていく。 手毬寿司が素晴らしい萩焼の器に盛られてきた。大将はあーでもないこーでもないと盛り付けに一人思案しながら(笑)、花も一緒に美しく盛り込んでいく。こだわりの美意識が焼き物の本場を感じさせる。実はこの器、十一代三輪休雪(現・壽雪)のものという。萩焼の大家の作品をサラっと使う所がにくい限りだ。使いこなされたその器の角々は金色になり味わいを増している。伝説の「休雪白」で心も贅沢に食事を頂けた。しかも店の看板「あじろ」の字は、兄である十代三輪休雪の書という。兄弟で人間国宝という陶芸界の快挙が、「あじろ」ではこんな形で体感できる。 旬の筍は、京都で頂いたものに匹敵する繊細な甘さと適度な歯応えを残した柔かさ、そこに爽やかな木の芽が香る。「今の萩では一番の美味しい物で、どんな食材より高価だった」という。大きい甘鯛は脂がのっていて、付け合せのレンコンの酸味がアクセント。身が淡白なオコゼは唐揚げによって旨みが引き立ち、やはり酸味の利いた出汁がバランスを奏でる。締めはウニの名産地・萩ならではのウニどんぶり。ウニの上に半熟の卵が乗せられ、うにの甘味と磯の香りを殺さず引き出している。赤だしは赤味噌を生かした風味が良く、柚子の隠し味も効いている。デザートのくずきりは、ストレートで柔らかい甘味が懐かしくホッとする。 漁港らしい新鮮な食材はもちろん、初春という季節感をバリエーション豊かに奏でるコース。萩らしい酢ダイダイを隠し味に使うなど酸味の使い方も特徴的だった。 気さくに色々教えてくれる実直な大将の人柄が料理や店構えにもあらわれている。こんな和食店が福岡にあれば通うのになぁ・・そう思わせる素晴らしさだった。 |
他県の方々が来福すると「い津み」をお勧めするけど、やっぱりフグの取扱高日本一といえば下関。新幹線に乗って食べに行く甲斐はあるというもの。そんな下関の中でも、赤間にある割烹「奈可越(なかお)」。割烹とついているものの、創業50年近いフグ専門店、やはりここなら間違いない。今シーズンは漁獲量が少ないという天然もの。「天然とらふく」コースを頂いた。25時間熟成したという天然フグの刺身は飴色に色づきかけている。かすかな食感と繊細で澄んだ旨みが抜群だ。淡いけれども芳醇。その相反する二面性が日本人をフグ好きにする由縁だろう。濃厚な白味噌の味噌汁とふぐの巻きずしは、冷えた体と胃袋を満たし、満ち足りた気分にしてくれる。 別注文の「白子の刺身」と「白子焼き」、各5250円。こうやって極上の白子刺身を頂いた事があっただろうか?!と思う程、素晴らしい歯応えと、まろやかさと濃厚さと・・表現に限界があるのが悲しいおいしさ。 白子の焼き。キュッと身が適度に締まって、じっとりと火が入って焦げ目も絶妙。刺身・焼きともに濃厚でバターのような味わい、別格の天然白子だ。ふぐの骨付きの身は「から揚げ」と「焼き」から1つを選べるが、「それぞれ1皿ずつお持ちしましょうか」と女将。ふくよかな身質をそれぞれ堪能できた。どんなにかぶりついても少ない身しかないフグほど情けないものはない。ここ「奈可越」では、天然フグのふくよかな身質を思う存分に堪能できる。 鍋も目の前で上品に用意される。博多の店では、鍋ではなく取り分けて運んでくるところもあるが、やはり鍋は用意して欲しい。ただ雑炊だけは調味料の味付けが強く、フグ本来の繊細で澄んだ味わいが生かされておらず残念だった。 刺身から始まりふぐ焼き、茶碗蒸しなどバリエーション豊か。「ふぐ」の様々な側面を楽しませるコースは、ふぐ料理屋としては秀逸だろう(もちろん、味噌汁や茶碗蒸しも、日本料理という側面から光を当てると異論もあろうが、ここはフグ専門店だからよしとしたい)。 地元の常連客に加え、評判を聞きつけた県外からの客も多いようだ。女将は分け隔てなく丁寧で好印象な接客だ。日本酒も山口の酒だけではなく、料理との相性を考えて色々そろえてあり嬉しい。濃厚で香ばしいひれ酒は心も身体も温まる。ここは、博多からも通う価値のある「ふぐ刺身」「白子」に出会うことができる店だ。 * 残念ながら2010年閉店。 |
大分まで向かうは「臼杵ふぐ 山田屋」が目当て。明治時代に開業という老舗「料亭山田屋」本店は臼杵にあり、最近「西麻布店」が東京ミシュランで一つ星を獲得した。そして今回訪れた「大分都町店
山田や」という訳だ。小奇麗で清潔感があるものの、狭い敷地の中に建てられた一軒家の中はぎっしり座敷で仕切っているため、壁を隔てた部屋のざわめきは筒抜け(まぁ臼杵本店だと違うのだろう)。忙しさもピークの時期だ。仲居さん達もバタバタしている。ゆっくり味わうというよりも年末の喧騒と共にふぐを楽しむ・・そういった感じだ。 定番のふぐ刺の薄切りはやんわりと色づいている。まず何も付けずにそのまま口に運ぶ。程よい柔らかさの身を噛み締めるとふくよかな旨みが広がる。本店がある臼杵市の佐志生から朝届いたふぐという。大分特産のかぼすを使用したポン酢はやや甘めだが、肝を溶かして頂くとちょうどよい風味になる。2人分の刺身としてはかなりの量で食べ応えもある。「ふぐ刺しだけでお腹いっぱいになったのは初めてね」とご機嫌の妻。 コースとは別に追加したふくよかな「白子」は、クリームチーズのような柔らかい食感で、白子フリークの妻も感心していた。そう言えば今年正月に紹介した下関「奈可越」の白子の方が、同じチーズの表現でいうとハード系的コクがあったように思う。 から揚げは「揚げ物の大分」らしく熱々バリバリの皮。身は少ないが塩・醤油で味付けてあり、唐揚げらしいカラッとした強い味わいのため、食べ終わるころにはやや舌が疲れた。白子の茶碗蒸しと来て、ふぐ軍艦巻は、海苔の風味・肝の深み・ふぐの淡泊さが混じり合って適度な口直し。そして、上質の椎茸・おもち・野菜類などがたっぷりの「ふぐちり鍋」。もうここまで来るとお腹いっぱいでかなりの量を食べ残してしまった。「皆さん、お鍋の前までは調子がいいんですけど、このあたりからペースダウンするんですよ」と笑顔の仲居さん。締めの雑炊もやや風味や後味が強かった。 そうそう、「ひれ酒」も甘さが強いために2杯目を残してしまった。ひれにかなり強く火を入れて他店よりやや焦がし目なのは、甘い酒質とのバランスを取るものかもしれない。刺身・白子まではパーフェクト、その後の料理は良い意味で甘みも強い田舎っぽい味わいで、好みが分かれるところだろう。 コストパフォーマンスはどこのフグ料理屋よりも「山田屋」。大分都町店は一番高いコースが1万円、白子をつけても1万3000円。何より刺身の量が十分だし、鍋も迫力がありかなりの満腹感がある。 |