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![]() 最新号の歌誌『HANI』(隔月刊)より抄出した、短歌と論を紹介しています。
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目 次
MICROPIC&MACROPIC
古い衣は脱ぎ捨てて青木 晶子
〈15首詠〉
田村 奈緒美
〈作品T〉
小原 起久子・宮澤 Y・宮崎あゆみ
関根さつき・鈴木 明子・他時 評
冥々な現代短歌
花城 和男
今日の一首
岡本 富子・細野 悦子
〈10首詠〉
細野悦子・四ツ柳富子・遠藤キヨ
熊谷淑江〈2月集〉
現代短歌作品解析(74)
「描く歌」から「言う歌」まで山下 和夫
追悼 福地典代さん 鈴木 明子・福島 光江・仁歩 きしの
四ツ柳富子・山下 和夫〈作品U〉
水原紫苑の一首
水原紫苑の歌 魂と命
佐藤 佳子
『いろせ』
浅田 隆子
紫苑の視点
関根さつき
沈美的幻想派 宮崎あゆみ
時分の花
福島 光江
『くわんおん』
堀口 栄 黄落のいちやう 森 たま江 強靭、先鋭な美意識 瀬川 浩 〈題詠〉月
ことばのページ(29) 「や」「よ」「を」など
青木 晶子
ONE MORE ROOM(5)
幻想は現実につながれ詩化される山下 和夫
『埴』秋季研修会報
小原 起久子 徒然抄(7)
小野関浪夫
前号作品評
宮崎あゆみ・花城 和男・宮澤 Y 新刊紹介
編集後記
表紙・カット 若山節子
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この世より少しだけ遅い時をまとい古井の中へ雪は降りいる |
堀江 良子 |
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彼のとおき世に会いたるを忘れはて人は初めてのひとみ向けあう |
山下 和夫 |
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還るべき土にかあらんコスモスの中より老母が立ち上がりたり |
堀口 栄 |
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百鬼棲む肋のあたりしなやかに淡き春色のスカーフ結ぶ |
宮澤 Y |
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たっぷりと熱めの終い湯あふれさせ子の捨て台詞考えてみる |
伊藤 三枝 |
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はなびらがいっせいに谷を駆け下る一色というは罪の匂いす |
小原 起久子 |
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紅葉は谷へと崩れ落ちゆくにひとつ紛れて黄蝶ゆきたり |
木村 静子 |
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君のこころ獲られず指のピストルに杜のこころのふかきを狙う |
佐藤 佳子 |
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恐竜の絶えてしまった草原に高く積み上げている干草ロール |
関根 さつき |
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さくらサクラ出撃したる戦友の花 はらはら浴びるハラハラ拾う |
花城 和男 |
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真白なる木蓮がほたりまたほたり落ちてかすかに闇が歪みぬ |
福島 光江 |
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乙女子の婚遠ざかり寂しさがふいに湧きくる冬ざくら道 |
宮崎 あゆみ |
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渓埋めわれを埋めて霧深し何も見えねど美し日本は |
茂木 タケ |
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手操る蔓より痛くこぼれる雫余子の実秋天無窮の望郷ふかし |
仁歩 きしの |
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町並をつとそれ入る竹林に長脛彦の人力車くる |
船岡 与茂子 |
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かわきたる葉ずれの音をひびかせる蒼深きより秋はおりくる |
細野 悦子 |
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サルビアの朱おとろえて移りゆく野辺の地蔵の前だれの濃し |
本山 秀子 |
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食卓にひろげし新聞に仕切られて近づきすぎない一日が始まる |
森 たま江 |
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さりさりとみょうがをはめば忘却のかなたより還りくる人のある |
矢代 康子 |
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つぎつぎに夫の穫りくる夏野菜ときに重荷と厨に運ぶ |
横堀 幸子 |
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手にも触れずきみは逝きたり「大切な人ゆゑ」と言ひし 忘れず |
板垣 志津子 |
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ひとつだけ生りたる糸瓜ほめをれば振り返るなり写真の子規が |
反町 光子 |
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わが足のサイズを測りゆっくりと尺取虫はとおりすぎたり |
矢島 由美子 |
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魂と命、命は生きている間のものであり、魂は消えうせぬもの。つい最近、こういった文章を読み、なるほどと思ったのだが、どこでだったか覚えていない。水原紫苑についてのこの原稿を書くにあたり、この魂と命についての文章を思い出していた。多くの歌人は歌に今を生きる自分の命を託そうと四苦八苦している。だが水原作品に感じるのは命ではない。あるのは圧倒的に魂の存在である。 |
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〈論〉水原紫苑の一首 |
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◇水原紫苑の一首 浅田 隆子 |
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榛名湖にまなざし注ぐ榛名富士いろせとよばばふり向くらむか |
『いろせ』
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「いろせ」とは姉妹からみて同母の兄または弟のことをいう。歌集名『いろせ』は万葉集大伯皇女の歌 |
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うつそみの 人にあるわれや 明日よりは 二上山を 弟世と わが見む |
第二 一六五 |
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から選んだそうである。榛名富士の端麗な姿が湖に映っている。それを「まなざし注ぐ」と言いあてている。これを擬人化と言ってしまえばその通りであるが、何とも艶やかな感じのする表現である。また、四句に「呼ばば」と「ば」が重なり調べが強められ、呼んだならばと一呼吸するので、次の言葉が待たれる。そのため結句の、ふり向くだろうかという思いがじんと伝わってくる。 |
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◇紫苑の視点 関根 さつき |
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水銀のごときにまろき玉ならむきみに捧げてこぼれしこころ |
『いろせ』 |
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連作「転生」の中の一首であり、三句切れの歌。結句に最も重要な作品の主体の「こぼれしこころ」と意志を明かしている。 |
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◇強靭、先鋭な美意識 瀬川 浩 |
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こぼれたるミルクをしんとぬぐふとき天井天下花野なるべし |
『客人』 |
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一読した直後に優曳感、もっと身体的に言うならば目眩がした。この不思議な感覚は何によってもたらされたのか、再読してみて気がついた。上句と下句では状況(場面)が全く異なっているのだ。オーソドックスな歌作りであれば、通常状況は一つである。たとえ重文であってもほぼ視覚で追える範囲内で二つの状況が存在する程度だろう。それもどちらか一方に収斂するはずだ。ところがだ。掲載歌にはその整合性が無い。 |
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HANI162号(2003年12月号) |