WORKS


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最新号の短歌雑誌『HANI』(隔月刊)より抄出した、短歌と論を紹介しています。


リストマーク HANI167号(2004年10月号)

目    次
MICROPIC&MACROPIC 
         定型の中での自由
堀江 良子
〈15首詠〉 堀口 栄・宮澤 Y
〈作品T〉 小原 起久子・宮崎 あゆみ・堀江 良子・菊池 葩・井上 俊子・他
時 評   短歌の評価 花城 和男
今日の一首 横堀 幸子・細野 悦子
〈作品U〉  
現代短歌作品解析(78)
      しなやかな発想・春日井健の歌から
山下 和夫
〈10月集〉 吉田 貞子・吉田 佳図子・室岡 仙太郎・西村 英子・他
晶子の碑を訪ねて(5) 横田 峰子
〈10首詠〉 遠藤 キヨ・本山 秀子・牧口 静江・船岡与茂子
馬場あき子の歌 限りなき探究心 細野 悦子
時分の花 青木 晶子
あき子と母 森 たま江 
思い切る 浅田 隆子
優しい眼差し 井上 俊子
強く貫く精神 佐藤 佳子
水とりどり(サークルの歌)  
小野寺弘子さんを悼む 山下 和夫・仁歩きしの・堀江 良子・福島 光江
〈題詠〉土  
ことばのページ31 副助詞の働き(3) 青木 晶子
徒然抄(11) 小野関 浪夫

エッセイ

蓼沼 政子・池田 美智子 
「埴」秋季大会の報告 関根 さつき

前号作品評

小原 起久子・宮崎 あゆみ・堀江 良子
編集後記  
表紙 若山節子
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幼子は明日へわれは過ぎゆきし世へ並びこぎいる園のブランコ

山下 和夫

はなびらを踏みつつ階を下りゆく靴底よりこの世がはみ出してゆく

宮澤 Y

子を抱きて頬ずりをする兵士らの統べるも統べらるるも同じ形に

堀口 栄

玄室へ石段ひとつまたひとつ降りゆくほどに時代あかるむ

小原起久子

戦やまぬ国とほくあり雨の朝冷え冷えとして桔梗の紺

宮崎あゆみ

しだれいる枝にすがりて小雀が己が重さをゆらしみている

堀江 良子

夏の意志伝わりきます。放埓のかなしみに似る油蝉の声

菊池 葩

一人用の防空壕を掘りし野に今も咲きいるか昼顔の花

井上 俊子

封をきるペーパーナイフのHり老いたる父の鋸をひく音

細野 悦子

すいかずらは忍耐の花と病室のラジオに聞きぬ今日誕生日

熊谷 静江

海のいろの移り変わりをしたためてさみしいきもち言わず封する

佐藤 佳子

九十九折のけわしき坂をのぼり来て青きあじさいに涼しく染まる

関根さつき

見えぬもの我は追うらし語りいて時に見えない目をされている

田村奈緒美

黒き小蛇のひそみしあたりほんのりと秋海棠紅が揺れたり

仁歩 きしの

村捨てる男の眉の細うして今日また一人山を降りゆく

花城 和男

パエリアの灼ける匂いのほのかして少女の声の弾むはつ夏

福島 光江

絶え間なく頭上ゆき交うゴンドラに動ぜず草を食むカモシカは

村石 一子

もう一度水をかきたい胸ビレが活造りの皿をたたく

元井 弘幸

舗装路を横切らんとするかたつむりにわたくしの時間呼び止められる 森 たま江

大きなる幸福の木の鉢植えをどっかりと置き長く病みいる

吉田 貞子

子の忘れしゴム風船が部屋隅に差配受けねばぽつねんとある

室岡仙太郎

山椒の太郎次郎も摘みにけり太くたくまし三郎の芽は

蓼沼 政子

村外れの橋渡るまでを見送るや野面に小さき父の白シャツ

遠藤 良子




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馬場あき子の歌 




◇限りなき探究心〈抄出〉      細野 悦子


大工町寺町米町仏町老母買ふ町あらずやつばめよ

『田園に死す』

馬場の出発点は、素直な感受性ときびきびとした明るい旋律の好み、社会に対する率直な批判性と人間的なるものへの加担の情などである。『地下ともる灯』では、時代状況を反映した社会的支店が打ち出されてゆくが、より現実的な創作意識と結びつくのは『花限花序』となる。六〇年の安保闘争の過程で挫折を味わった馬場は、その後、ペーパーシアター「ハムレット」や「フェスティバル律」に参加。また戯曲や『式子内親王』の執筆など情念を劇的に普遍化する方法と主題を探りあててゆくのである。連作「橋姫」は能「鉄輪」に題材をとり男に裏切られ鬼となった「橋姫」に自身の挫折と情念を重ねたものであり、以後、古典と現代を往還しつつ、主題意識を核にした思索的叙情の方向で、作品は急速な成熟をとげてゆく。






 

〈論〉馬場あき子の一首


◇ 時分の花〈抄出〉       青木晶子


柿も小豆も枯れて枯れて雪もうまっ赤なるマフラー巻かん 『九花』

上句「柿も小豆も」と実りの秋を彩ったものを列挙しているが、単に秋のイメージを具体で示すというだけでなく深く心の内面にかかわっているものである。住居のある柿生の里の柿、人生の節目を祝う折りの小豆、そして自分を重ねての菊、それらはすでに枯れ果てて一面の雪におおわれている。人生を四季にたとえれば、七十代は冬の季節に入ったといえるだろう。実りの秋、充実のときは終わったという自覚、「枯れ枯れて」のリフレインがその強さを思わせる。ところが下句で一転する。これは新しい挑戦の歌である。「巻かん」の「ん」は意志を示す助動詞「む」である。老いを自覚してもなお新しい短歌に挑戦してゆこうというはっきりした意志が示されている。







リストマークバツクナンバー

HANI162号(2003年12月号)

HANI163号(2004年2月号)
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HANI165号(2004年6月号)
HANI166号(2004年8月号)
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