バックナンバー 2005/08
反応性愛着障害という問題
反応性愛着障害という問題が、近年広く一般の子ども達の間に広がってきているように思えます。この問題には「抑制型」と「脱抑制型」という二つのタイプがあります。
抑制型は、世話をしようとしている人に対して、非常に警戒的で、甘えたいのに素直に甘えることが出来ず、優しく接してくれているのに腹を立てたり嫌がって泣いたりと全く矛盾した態度を見せることがあります。もう一つの脱抑制型は、初対面の人にもなれなれしく接近し、過剰な親しみを示し、一見社交的に見えるのですが、無警戒で相手をよく吟味しようとしません。
この反応性愛着障害は、戦後の児童福祉施設で問題となった、ホスピタリズム(施設病)という現象の心理面の問題でした。ホスピタリズムは、身体的な発育の悪さに特に関心が向けられ、施設の給食の栄養改善に多くのエネルギーが注がれました。しかし心理的ホスピタリズムについてはほとんど改善されないまま今日に至っています。
反応性愛着障害が作られる原因として、DSM―W(精神疾患の分類と診断の手引き)は、【@安楽、刺激及び愛着に対する子供の基本的な情緒欲求の持続的無視。A子供の基本的な身体的欲求の無視。B第1次世話人が繰り返しかわることによる、安定した愛着形勢の阻害(例えば、養父母が頻繁に代わること)。の3点のうちの1つによって示される病的な養育】を挙げています。
つまり、必要な世話を適切に受けられないことによって作られる問題です。これは多くの子ども達を少数の職員で世話しなければならない児童福祉施設で暮らしている子どもに当てはまる問題だと思います。ところが、この反応性愛着障害という問題が、「普通の家庭」で育てられている子ども達の間にも多数見られるようになってきているのです。特に人見知りがなく、誰にでもすぐになれなれしく甘えていく脱抑制型の愛着障害がよく見られます。
親から虐待を受けてきた被虐待児にも、「無差別的愛着」という脱抑制型愛着障害が見られることは関係者の間ではよく知られていますが、普通の家庭の子どもにも見られるということは、家庭での子どもの育て方が児童福祉施設と同じように、「大人の都合に合わせる」育て方になっているからではないでしょうか。「子育てで大切なことは、子どもの発達に応じて、必要な世話を適切に行うこと」ですが、子どもの発達を無視して、必要な世話もしていなかったり、不適切な世話をしていると、反応性愛着障害が作られるようです。