♭あの頃

あの頃、という言葉で何を思い出しますか?
聞いただけでノスタルジックな思いが押し寄せて、しばらくぼんやりしてしまう、そんな言葉。
少し前までやっていたドラマで、大学時代の仲間同士を描いたドラマがあった。
見ていると、自分の大学時代を思いだした。 わたしにはあんな風に「あの頃の仲間」とくくれる人たちはいるだろうか、そう思ったとき、 こたえはNOだった。
友達はいる。でも、男女入り混じった仲間、という集団には属していなかったなぁ、と思う。 昔から、あまり男友達を持つほうではなく、男の子、というと恋愛対象か知り合い、止まり。 別に、仲間が悪いとか、男女間の友情はあり得ない(わたしに関してはないと思うけれど、 よい関係を保ち続けている人たちも、世の中にはいる)、とか言うつもりはない。 むしろ、あのドラマのような関係ってちょっと憧れたりする。
わたしにも、遊びに行ったり飲みに行ったりするサークル仲間はいた。 だけど、それは「かけがえのない仲間」にはならなかった。

わたしが「あの頃」という言葉で思い浮かべるのは、いつでも恋の思い出。
歳を重ねるにつれて、恋の相手も、恋の仕方も変わってきたけれど、いつも心の奥には誰かがいた。 「あの頃のわたしの幼かった恋」や、「あの頃の一生懸命だったわたしたちの恋」は いくらでも思い出すことが出来る。
だけど、恋の思い出と仲間の思い出で決定的に違うことがひとつ。
恋の思い出は、もう二度と会うことのない、心のなかで思い描くことしかできない人との思い出。 仲間の思い出は、変わってしまったことに対するとまどいや驚きはあるにしても、これからもずっと 重ね続けていける思い出。
けれど、どちらにしても、「あの頃」という言葉で思い出すのは、懐かしい、毎日がぱんぱんだった 日々のこと。 もう決して帰れない、そんな日々を共に過ごしてきた相手が、今もまだそばにいるかいないか、の違い。

今までの恋に後悔はないけれど、たまに思うことがある。
あの頃、恋に夢中だったわたしがないがしろにしてきた色々なこと、もっと正面から見つめていたら、 今とは違う現在を生きていたのかもしれない。
そういう風に考えさせらてしまう「あの頃」という言葉は、不用意に考え出してしまうと、 昔の空気や雰囲気がよみがえってきて、圧倒されてしまう。決して戻れない日々に、今の自分が負けそうになることもある。 それくらい、力のある言葉だ。
そういうときに頭に浮かぶのが恋人の顔でも、仲間の顔でも、どちらにせよ、得難い毎日をくれた相手に 感謝しているのは、きっとみんな同じなんだろうな、と思っている。



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