迫りつつある狩猟制度の大改正
鳥獣法の抜本的な見直しが、環境省において検討されています。まだ、具体的な改正内容は公表されていませんが、改正目的は、鳥獣保護の強化や狩猟規制の強化などであるといわれています。改正法案の国会への提出予定は、平成15年12月のようです。読者諸兄におかれては、このような動きがあることを初めて耳にされた方が多いと思われます。ここでは、「全猟」「狩猟界」の狩猟2大誌の編集部が総力をあげて共同取材した結果をもとに、法改正の検討状況や今後の予定などについて、できるだけ分かりやすくご紹介します。
1鳥獣法は改正されたばかりのはず−2種類ある鳥獣法改正の動き
鳥獣法(鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律)は、先般の国会で、ひらがな書き・口語体の法律に大改正され、平成14年7月12日に公布されました。施行は、平成15年の4月からのようです。
この法改正は、カタカナ・文語体で書かれていて読みにくかった条文を、ひらがな・口語体に直すことを基本としたものです。要するに、昔風の言い回しを、今風の言い回しに翻訳したようなものです。この法改正の仕事は、これでお終いではありません。おおもとの法律が変わったことに伴って、これまでに出されていた政令やら通達やらが変更されます。例えば、今度のひらがな書き鳥獣法では、乙種免許といっていたものが、第1種銃猟免許という表現に変わりました。このため、今までに色々なところで使っていた乙種免許という表現を修正しなければならなくなるわけです。現在、このような制度改正、ひらがな書き・口語体の条文にわかりやすく修正された法改正に関連する制度改正が、平成15年4月に予定されているひらがな書き鳥獣法の施行に向けて進行中です。
しかし、来年に予定されている鳥獣法の抜本的な見直しは、これとは全く異なる種類の動きです。従って、鳥獣法に関する制度改正の動きは、大きく分けて、次のとおリ2種類あることになります。
@ひらがな書き鳥獣法に関連する諸規定の整備
A保護を強化するための鳥獣法の抜本的見直し
なお、ちょっと補足しておきますが、改正された「ひらがな書き鳥獣法」はこれまでの「カタカナ書き鳥獣法」の単なる翻訳であれば、内容は今までと全く変わりはないということになります。しかし、この法律を所管している環境省では、鳥獣の保護管理等を強化するために、ついでに、いくつかの実質的な改正も盛り込んでいます。例えば、鳥獣の残滓放置の禁止措置、鉛散弾を使用した狩猟など(指定猟法)の規制区域制度の新設などです。ひらがな書き鳥獣法の概要については、稿を改めて別の機会にご紹介することにします。
2なぜ、今、法改正をする必要があるのか
ひらがな書きに改正されたばかりの鳥獣法ですが、鳥獣保護の強化や狩猟規制の強化等について、各方面から強い要請が出されていたことから、環境省では、平成15年度の通常国会に向けて、狩猟&鳥獣保護制度の大がかりな改正の実施を検討しています。矢継ぎ早に改正しなければならない本当の理由は定かではありません。本誌編集部の推測の域を出ませんが、国会の審議録や環境省の発表資料などをみると、次のような理由が複雑に絡み合った結果、抜本的な法改正を国会から迫られているというのが実情のようです。
@平成11年度の法改正のときに、平成15年頃までに、野生鳥獣の保護の強化や有害鳥獣駆除方法の改善などのための法改正をしなさいと、国会から要求されていたこと。
A増え過ぎた鳥獣の個体数調整などを行う特定鳥獣保護管理計画制度の見直しの必要性を検討することが求められていたが、どの地域でも保護管理計画ができたばかりで、その評価をするにはもう少し時間が必要であったこと。
B古めかしいカタカナ書き鳥獣法をひらがな書きに改める作業と、内容の抜本的な見直しの2つを同時に行うのは、実務的に困難であったこと。
C鳥獣法を発展的に解消するなどして、植物や鳥獣以外の動物の保護を目的とした、野生鳥獣保護法の制定を求める世論が高まりつつあること。
3法改正の内容はどのように決められるのか
現在、環境省では、平成15年度に予定している抜本的な法改正の内容を検討するために「野生鳥獣保護管理検討会」を設置しています。検討会は、鳥獣の研究者、自然保護団体の職員、法律学者などの学識経験者13人から構成されています。うち、狩猟団体関係者は1人だけです。検討会は、これまでに4回開催されていて、鳥獣の保護や狩猟などのあり方について、様々な観点から意見交換が行われているようです。なお、検討会の検討結果(報告書)は、平成15年3月にとりまとめられるとのことです。
今回予定されている法改正についても、平成11年度の法改正の流れどおりの手順が
踏まれるとすると、この検討会の報告書が出された後に、審議会が何回か開催されて報告書(答申)が出され、そして、法改正案が作られて国会に提出されるということになりそうです。
このように考えると、改正法案の中身が決まるのは、まだまだ先のように思われます。しかし、平成11年度の年度の法改正では、検討会の報告書と審議会の報告書はほぼ同じような中身でしたので、検討会の報告書が出た時点で、法改正のだいたいの骨格が決められると理解しておいた方がよいのかもしれません。すなわち、「検討会報告書&法案の内容検討 → 審議会報告書 → 法案の国会提出」ということになると思われます。
4今度の法改正はどんな内容になりそうか
法改正の内容は、環境省の野生鳥獣保護管理検討会で検討されている真っ最中で、具体的な姿は明らかにされていません。検討会は、平成15年の3月に報告書を出すそうなので、これを見れば、だいたい法改正の内容がわかるようです
しかし、鳥獣法の抜本的な法改正は、国会等のからの強い要請を受けて行われようとしているものです。そう考えると、国会から出された附帯決議が法改正の内容や方向の決め手となるのかもしれません。附帯決議とは、国会で法案を採決するときにつけられているものです。法案には賛成するけれども、こんなことに気をつけなければダメだよ!という要求書のようなもので、「法案に賛成するに当たっての条件」のようなものと考えることもできます。平成11年度の法改正、そして平成14年度の法改正のときに付けられた附帯決議からすると、法改正のポイントは、次の2本柱となる可能性が大きいと思われます。
@野生生物の保護の強化(野生生物保護法の制定など)
A狩猟規制の強化(狩猟の場の限定、スポーツハンティング(趣味としての狩猟)の差別化、有害鳥獣駆除の実施方法の改善等)
なお、鳥獣保護管理検討会の論点(検討ポイント)も、第2回検討会の資料で明らかにされています。法改正のネタのメニューと考えるとわかりやすいかもしれません。主なものは、次のとおりです。
・人と野生鳥獣のバランスを確保するための地域個体群の管理、生息状況のモニタリング、資源利用の制御のあり方はどのようなものか。
・被害防除は、誰がどこまで行うのか。
・登録狩猟の目的及び社会的役割・効果とは何か。
・鳥獣を希少鳥獣、狩猟鳥獣、移入鳥獣などの区分ごとに保護管理することについてどう考えるか。
・鳥獣の保護と狩猟の適正化の体制は、如何にあるべきか。
5改正法を適切なものにするために私達ができること
野生生物の研究者や自然保護団体なども、平成15年度に予定されている鳥獣法の抜本的な改正の内容については、非常に高い関心を持っているようです。関係学会や各種自然保護団体などでは、環境省に対して法改正に盛り込むべき事項を積極的に提言する活動を実施しています。
これまでの狩猟者・狩猟団体は、どちらかと言えば、狩猟制度&鳥獣の保護管理制度は、一方的に与えられるものであって、環境省と自分達が一緒になって作り上げていくものであるという認識が薄かったように思われます。平成11年度の法改正では、異なる考え方を持った複数の自然保護団体が、「鳥獣法改正を考えるネットワーク」を組織して、環境省に対する政策提言等を実施しました。各自然保護団体は、若干の意見の食い違いを呈しながらも、鳥獣保護の強化の旗のもとに大同団結し、国会や環境省を動かすという実績をあげた経緯があります。
狩猟者・狩猟団体についても、例外ではありません。先般の「犬猟の規制」については、環境省に対して各狩猟者が意見を提出し、規制内容を修正させたという希有の実績をあげました。狩猟者自らの政策提言が行政に反映されるという成果をあげることは、厭世観の漂いがちな狩猟界に活力と自身を与えるといった効果も期待できます。このような考え方のもとに、予定されている法改正については、不適切な狩猟規制の回避というマイナス志向の発想にとどまらず、狩猟や狩猟団体の公益性・正当性を主張し、世論の理解を求めることができる千載一遇の機会であるというプラス志向の発想で対処していきたいものです。
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