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テピとともに

Last updated 23 March 1999 by Yutaka


自閉症児を連れてアメリカへ
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フロリダ・オーランドの

ディズニーワールド紀行

Written by Yutaka on 29 January 1996


1995年12月30日から1996年1月3日までの5日間、フロリダ・オーランドのディズニー・ワールド(DW)に行きました。マディソン空港発のパックが売り切れだったので、ミルウオーキーまで1時間半車を運転して行かなければなりませんでした。ちょうど私の国際運転免許証が期限切れで、こちらの免許証取得中(筆記試験には合格したが路上試験はまだ受けてない)だったので、運転は恵利子に頑張ってもらいました。オーランドではレンタカーで移動したので、そこでも彼女に頑張ってもらいました。お疲れさま。

■障害者に交付されるホワイト・カード

 DWには、障害児・者及び同行の家族が列に並ばなくて済む特別カードがあると聞いていましたので、今回はこれを手に入れて最大限利用することを考えました。
 インターネットのニュース・グループ「bit.listserv.autism」を久しぶりに眺めていたら、まさしくこの話題がポストされていました。かなり意訳して紹介すると....
 質問「オーランドのDWに行く予定なのですが、長蛇の列で待ち続けることは、自閉症の息子には難しいかもしれません。DWでは障害児・者に対する特別な配慮があると聞いていますが、具体的にはどうしたらよいのでしょう?」
 レス「DWでは、自閉症児・者に対しても列に並ばないで済む白いカードが支給されます。同行の家族も同様に適用されます。DWに着いたらまず、サービスセンターで自分の子どもが自閉症であると告げて下さい。私は何度もDWに行っていますが、このカードのおかげで十分に楽しめています。」
  まさしく私たちの聞きたかったことが、やりとりされていたのでした。しかし、自閉症であることを証明する書類の必要性や事前の申し込みの必要性については触れられていません。そこで、DWに直接電話して聞いてみました(相変わらず英語の電話は苦手だが、最近少し慣れてきた)。電話に出た人はとても親切に教えてくれました。医師の診断書があることが望ましいが、自閉症の場合は絶対必要というわけではないそうです。小学校関係の書類でも十分だということでした。事前の予約も必要ないとのこと。

■ホワイト・カードを手に入れるまで

 ホワイト・カードは障害者とその同行者に与えられるもので、これを各アトラクションの入場整理の係員に見せるだけで、長蛇の列をスキップして別の入り口(多くは車椅子入場用に作られたもの)からの入場を許されるというものです。身体障害者だけでなく自閉症児・者もこのサービスを受けられるというのが素晴らしいですね。
 ディズニー・ワールド(DW)にはマジック・キングダム、エプコットセンター、MGMスタジオの3大ワールドがあって、どのワールドでもホワイト・カードを発行する場所があるようです。私たちは、まずマジック・キングダムに行きましたが、ここでは「シティ・ホール」と呼ばれる建物でホワイト・カードが発行されていました(切符売り場のおばさんに聞いたら、そこでもらえるはずだと教えてくれました)。
 シティ・ホールは、よろず相談所みたいなところで、数人の係員がテキパキと応対しています。私たちに応対してくれたのは年輩の感じのよい係員。でもこの人は障害者サービスのことをあまり知らないようで、こちらから詳しく説明しなければなりませんでした。「事前に電話で聞いたらこう言われた」という一言が決め手になり、彼女は手続きをしに奥の部屋に行きました。しかし、この係員は10分たっても20分たっても帰ってきません。「どうなってんだ?こんなに手続きに時間がかかるということは、このサービスを利用する人が少なくて係員が慣れてないということじゃないのか?」
 みかねて私たちに声をかけてくれたのは若い係員でした。事情を説明すると彼女はすぐに理解してくれて、自分がカードを作成するからと言って、テピの名前と具体的にどういうサービスを受けたいのかと聞いてきました。「列にならんで長時間待つことができないんです。」「何分以上だとだめですか?5分、10分?」「10分以上は待てません。」「何日間ここにいますか?」「5日間です。」必要な情報はこれだけでした。医師の診断書も小学校の書類も提示を求められませんでした。5分後に渡されたホワイト・カードには「Guest cannot wait in line for longer than 5 (five) minutes per line.」とタイプされていました。初めから事情の分かる係員に頼めば5分でホワイト・カードが発行されたのに、そうでない係員だと30分たってもカウンターに戻って来ない。これは要注意ですね。
 これから自閉症児・者を連れてDWに行かれるかたは、以下の英文を書いた紙を用意して、係員に渡すのが確実でしょう。英語が適切かどうか自信がありませんが、これで通じることは確かです。何分まで待てるかは人によるでしょうから、適宜変えればよいと思います。
My son (daughter) has autism. He (She) cannot wait in line for longer than five minutes per line. We would like to have a Special Assistance Pass to enter attractions through designated Disabled Guest entrances where applicable.

■ホワイト・カードの威力

 ディズニー・ワールドのマジック・キングダムでホワイトカードを手に入れた私たち一家は、手始めに一番行列の長そうなアトラクションに挑戦することにしました。その名もトゥモローランドの「エイリアン・エンカウンター」。話題にもなっていたし、半年前にオープンしたばかりなので超人気のようで、60分待ちの長〜い行列ができていました。行列整理にあたっている係員に声をかけてホワイトカードを見せると、すぐに了解して私たちを障害者入場用の入り口へと案内してくれました。そこには別の係員がいて、直ちに私たちをアトラクションの会場へ入れてくれました。この間わずか2、3分。うーん、これは凄い。
 エイリアン・エンカウンターはテレポート実験が失敗して恐ろしげなエイリアンが突然表れ、椅子に固定されて動けない観客が食べられてしまうという設定のアトラクションで、私も本当に食べられてしまうかと思ってヒヤヒヤしました。相当刺激が強いのですが、テピは涼しげな顔をしていました。テピも強くなったもんだ。

■急流下り、鳴いた烏がもう笑う

 ホワイトカードの威力は本物であることが分かったので、私としてはこれまた長蛇の列のスペース・マウンテンに挑戦したかったのですが、こわそうだからやだやだという家族の反対にあって断念(結局私の強い主張により2日後に乗ることになる)。代わりにフロンティアランドのスプラッシュ・マウンテンに行くことにしました。
 このアトラクションはボートに乗って米国南部の湿地帯を模した川を下ったり上ったりして最後は傾斜45度の激流を下るというもの。最後の急傾斜は外からよく見えて、ボート上の人々の断末魔のような叫び声が間近に聞こえてきます。これがテピの神経を逆撫でしたようで、テピはスプラッシュ・マウンテンに近づくのを拒むようになってしまいました。しかし私は絶対にあの急流を下るんだと心に決めていましたので、テピの背中を押すようにして行列の最後尾へ。ホワイトカードを見せようにもあたりに係員の姿はないし、障害者用入場口も見つからないので、並ぶことにしたのです。
 行列は順調に進んでいるように見えたからすぐ自分の順番が来るだろうと思ったのが甘かった。確かに行列は進むがやたらにクネクネ曲がっていて長い長い。これがディズニー方式の行列であるわけですね。テピは不安がって泣きそうになるし、困ったなあと思ったけど後戻りもできないので、自分たちの番を待ちました。
 40分くらい待ったらボートに乗ることができました。急流までの和やかなディズニーらしい世界を堪能して、いよいよ急流と思ったら最後の急流ではないという気の持たせ方も心憎い。本当の最後の急流では胃が口から飛び出すのではないかと思うくらい凄いものでした。これはテピには刺激が強すぎた、これがきっかけになってディズニーワールド嫌悪症になるかもしれないと後悔したのですが、横に座っているテピを見るとなんとニコニコ笑っています。ボートから降りたテピは「お船乗ったねー。」「落ちたねー。」「すーべった。」と言いながら上機嫌。さっきまでべそをかいていた人とは思えません。
 落ちる瞬間をばっちり写真に撮り、出口近くのモニターで見せて購買意欲をそそるというディズニー商法にまんまと乗せられた私たちは、人様には見せられない顔が写っている写真を買いました。そこには恐れおののくテピの表情がしっかりと写っており、落ちた直後にはもう笑っていた彼でもその瞬間は怖いことは怖かったんだなあと思いました。こういうのを楽しめるようになったテピに成長を感じました。
   これ以降テピは上機嫌で30分待ちくらいの行列は平気だったので、私たちは「30分以内なら並ぶ、それ以上ならホワイトカードを使う」と方針を変えました。この方針を貫いたので、結局ホワイトカードは次の日に一度使っただけでした。それでもホワイトカードを持っていればいつでも行列をスキップできるという気持ちが私たちに余裕を与えてくれて、それがテピの精神状態に良い影響を与えたと思っています。

■スター・ツアーズでホワイト・カードを使う

 2日目(12月31日)はMGMスタジオに行きました。
 今ではもうクラッシックな感じのするスターツアーズですが、ここにも長蛇の列ができていました。待ち時間は60分。東京ディズニーランドと同様におおよその待ち時間はどの会場でも表示されています。ここでは、迷わずホワイト・カードを使いました。係員は「わくわくするでしょう?」と言いながら別の入り口から入場させてくれました。
 こういう類のアトラクションは既にポピュラーになってますから説明するまでもないのですが、前方のスクリーンに合わせて船体が前後左右に揺れるので、まるで本当に宇宙を飛んでいるかのような錯覚を覚える乗り物(?)です。テピは楽しんでいたようですが、本当に錯覚を楽しんでいるのかどうかは分かりません。次男のヨピは「スクリーンは作りものだけど、船体はジェットコースターみたいに実際に広い空間を動いている」と思っているようですから、ちゃんと錯覚してますね。これと同類でもっと本格的なのがユニバーサル・スタジオの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ですが、これは凄かった。これを体験した後では「スター・ツアーズ」がおもちゃに見えてしまうほど。この話は後で。

■テピの嫌いなアトラクション

 初日のスプラッシュ・マウンテンは乗る前は嫌悪していても体験してしまえば好きになるタイプのアトラクションでした。これとは反対に入場するときには平気でも体験して出てきたときに不安定になって泣き出すようなアトラクションもありました。「バックステージ・スタジオ・ツアー」、「インサイド・ザ・マジック」、ユニバーサルスタジオの「ジョーズ」がそれです。これらに共通しているのは、観客のかなり近い所で大爆発があるということです。肌に熱風を感じるほどの至近距離で突然炎を上げて爆発しますから、絶対安全だと信じている我々には楽しめても、テピには恐怖以外のなにものでもないのでしょう。それにテピは音にも極めて敏感ですから、こういう爆発音は不快そのものなんでしょうね。爆発が予期できないというのも嫌なのかもしれません。船上では逃げ場がありませんから、「ジョーズ」の後は特に不機嫌が長く続きました。
 例外的に爆発を許容できたのは、爆発が比較的遠くで起こる「インディ・ジョーンズ」、テピの大好きな乗り物である地下鉄に乗っていて爆発炎上に遭遇する「大地震」(ユニバーサル・スタジオ)、テピの大好きなゴリ君が巨大化したようなキング・コングに襲われて爆発炎上に遭遇する「キング・コング」(ユニバーサル・スタジオ)でした。

■落下ものには強い

 落下ものの最たるものは、これまた大人気の「トワイライトゾーン・タワー・オブ・テラー」。廃虚と化したホテルのエレベーターに乗ると異次元空間に迷い込んでしまい、地上48メートルの高さから真っ暗なエレベーターに乗ったまま垂直に急降下するという恐怖のアトラクションです。ここでは40分ほど並びました。結構怖いという評判がたってますから、並んでいる人達の中にはエレベーターに乗る直前になって「やっぱりやめた」と言ってキャンセルする人もいました。不安と緊張感で泣き出す子どもいました。不気味な雰囲気がこの廃虚と化したホテルに充満しているのも十分に効果を上げていました。
 ところがテピはいたって平気な様子。先に乗った人たちの急降下に伴う叫び声がひっきりなし聞こえてくるにも関わらず、冷静に待ち、冷静にエレベーターに乗り込みました。異次元空間(?)に入りこんだ後エレベーターが最上階にくると、突然前方の壁が開いて外が見えます。自分たちがどんなに高いところにいるのかを実感させるわけですね。そして再び暗闇に戻ると手のひらのコインが空中に浮くほどの急降下。その瞬間テピは私にしがみついてきましたが、不快の声を上げることはありませんでした。エレベーターから出ると「エレベーター乗ったねー。落ちたねー。」とい言って笑ってました。そういえば以前からテピはエレベーターが大好きだったっけ。
 ここでも私たちはディズニー商法にまんまとひっかかって落ちる瞬間の写真を買ってしまいました。

■立体映像(3D)も楽しめた

 3Dを見るには特殊な眼鏡をかけなければいけません。テピは以前これをかけるのが嫌で、立体映像ではなく2重映像を見てました。しかし札幌のアイマックシアターで半強制的に(かんしゃくを起こさせないよう細心の注意を払いながら)眼鏡をかけさせて3Dの不思議な体験をさせてからは、喜んで眼鏡をかけるようになりました。ディズニー・ワールドでも3Dを見せるアトラクションが幾つかあり、テピも十分に楽しめました。テピの大好きなセサミストリートのマペットが飛び出す「マペット・ビジョン3D」は2回も入場しました。テピは大喜びです。

■大晦日の夜は大ディスコ大会だ

 その他にもMGMスタジオで見たいものはだいたい見ることができました。夜になると、大晦日のお祭り気分が高まってきます。広場では大音量のロック音楽が流され、これに合わせて踊る人たちの輪がだんだん広がっていきました。米国人はとにかくノリがいいので、老いも若きもリズムに合わせて踊ります。広場を横切るだけの人でさえ、ステップを踏みながら歩いているのですから、幸せな人達だなあと思わずにいられません。
 私たちはというと、初めは遠巻きにして見ていたのですが、だんだんと幸せそうな人々のリズムが感染してきて、気がつくと踊りの輪の中に入って踊っていました。何を隠そう私と恵利子は学生時代にディスコ全盛期を迎え、二人でディスコに通ったこともある(ああ、今となれば語るのも恥ずかしい)仲なのです。普段は恥ずかしがり屋のヨピもこの時は羞恥心をかなぐり捨てて無茶苦茶なステップで踊ってました。テピだけが「ぼけー」として立ち尽くしてましたが、雰囲気は楽しんでいたようです。元々ロックは好きだし。
 そのまま踊り狂えば幸せな人々とともにカウントダウンして新年を迎えることができたのですが、子ども達に無理をさせたくないということで、10時には帰りました。私はホテルの部屋でたくさんワインを飲んでへろへろの状態で新年を迎えました。

■みやげもの店内で落ちつきを取り戻すテピ

 3日目はエプコットセンターとマジックキングダム、4日目はユニバーサル・スタジオにいきました。
 ユニバーサル・スタジオはディズニー・ワールド(DW)とは全く関係のないところですから、ここではDWのホワイト・カードが使えません。人気アトラクションの行列の長さはDWよりも長く、最低でも1時間は待たなくてはなりませんでした。しかし、DWで行列待ちに慣れたテピには苦痛ではなかったようです。テピが苦痛だったのは、前にも書いたように派手な爆発のあるアトラクションでした。特に「ジョーズ」の後は機嫌が悪く、声をあげて泣きました。ところが不思議なことに、この不機嫌はみやげもの店に入るとピタリと解消されたのです。一度機嫌がなおれば店を出ても大丈夫でした。もっと早くこのことに気がつけば良かった!
 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では本当に空を飛び、時計台を突き破り、ティラノザウルスの口の中に入ったような気分を味わい、「キングコング」ではロープウエイに乗っていると突然キングコングに襲われ、「大地震」では地下鉄に乗っていて大地震に見舞われ、「ET」では自転車で空を飛びました。テピも大喜びでした。

■見よあれがシャーロットの灯火だ

 最終日にエプコットセンターのワールドショーケースを見た後、帰路につきました。シャーロット空港で乗り換えてミルウォーキー空港まで飛びます。「シャーロット」はノースカロライナにある大きな街。TEACCHプログラムがここノースカロライナで生まれ世界へ広まったと思うと、空港にいるだけで感慨深いものがありました。シャーロット空港を飛び立つときは既に日も暮れ、機内から青い灯火に染まるシャーロットの街並みが見えました。
 途中、街が放射状に構成されているインディアナポリス、ミシガン湖に面して碁盤目状に広がるシカゴを見ることができました。テピも熱心に窓の外を眺め、宇宙に浮かぶ銀河系のような巨大な都市の夜景を楽しんでいました。
 こうして、まさしく夢のような私たちのDW旅行は終わりました。
 障害者及びその家族に対する配慮の行き届いたオーランドのディズニーワールドに感謝の意を表します。



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