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テピとともに

Last updated 23 March 1999 by Yutaka


自閉症児を連れてアメリカへ
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恐怖のヤオハン

Written by Eriko on 11 June 1996


■国の香り

 シカゴのヤオハンストアーに一歩足を踏み入れると、まるで日本に帰ったような気分になる。この店が日本のスーパーマーケットそのものであるということと、日本の香りがするからだ。日本の香りってどんなもの?って聞かれたらなんと答えよう。40年弱生きてきて意識したことがなかった香りを感じるようになったのは、私には馴染みのない香りの中に身を置く機会が多くなったせいだろう。アメリカのスーパーの独特の香り、オリエンタルショップでも中国系と韓国系では違った香りがする。たぶんそれらはそれぞれの国の独特の香辛料の香りなのだと思う。それらの中にいると、無臭だと思っていた日本の香りも感じるようになり日本がとてもなつかしくなる。

■懐かしのNHKニュース

 初めてここに訪れたのは3月のことだった。4カ月ぶりに生ラーメンを食べながら、目に入ったのが日本の番組を流しているテレビだった。馴染みのある顔の予報士が日本の天気を報道していた。ヨピが「日本(列島)っていい形をしているねー。」と言う。「そうだね。」と言いながらテレビに釘付けになった私は何とも言えないなつかしさを感じていた。テピはというと、テレビに目を向けていないようなそぶりをしていながら、一番日本の番組を楽しんでいたと言うことが後でわかった。5月に再びここを訪れた時、テピはこのテレビがついていないのを見て、「あっ、あー、あーー」とテレビを指差しながら、泣き声を出したのだ。やっと指差しができるようになった細い指と日本を懐かしむテピの心が重なって、とっても哀れに感じてしまう。テピはあと半年で日本に帰れるということを理解できていないのだ。いつかは帰れるとすら思っていないのかも知れない。

■恐怖のオアシス

 何が恐怖かというと、ここに来るとお金が、まるで羽が生えて飛んでいくようにあっと言う間になくなってしまうことだ。日本の品物が手に入るのはありがたいのだが、全てが高い。特に書籍代は一度訪れる毎に少なくとも約200ドル以上になり、レジで日本円で2千円の本が34ドルで計算されていくのを見ると、次回は本は買うの止めようと家計を預かる主婦は決意してしまうのだ。夫は、お金の問題じゃない!次回も絶対買う!と言い張る。やっぱりここはオアシスのような優しさの陰に、厳しい現実の隠された恐ろしい場所だ。

■幸福感

 食品売場では「食べたいもの、どんどんカートに入れていいわよ!」と我が家の男性達に告げると、それぞれいそいそと物色にかかり始める。こども達は意外な物を選んできたりして面白い。胡瓜が好きではないはずのヨピが、久々に見る日本の胡瓜(アメリカの胡瓜は大きくて皮が固い)を手に取りそっとカートに入れる。「ヨピは胡瓜が食べたいの?」と聞くと恥ずかしそうに「うん。」と答える。それからヨピが持ってきた物は、ちりめんじゃこと乳酸飲料だった。テピはペットボトル入りのポカリスエットとウーロン茶。夫は納豆と日本のお菓子類。私は主に調味料や乾物売場を念入りに漁り、夕食用の寿司折りを人数分買い、軽くなった財布のことは忘れて、幸福感にひたりながら帰路についたのだった。



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