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(2)<br> ふんっ & 踊る観光 & 路地裏の魔女36駿風 & 落し物 & 路地裏の魔女(28)にほひ<br> & 路地裏の魔女L類 & なっちゃんの手目 & 路地裏の魔女O船上の開き<br> & 路地裏の魔女\三百歳 & 路地裏の魔女X帽子<br>
(2)
ふんっ & 踊る観光 & 路地裏の魔女36駿風 & 落し物 & 路地裏の魔女(28)にほひ
& 路地裏の魔女L類 & なっちゃんの手目 & 路地裏の魔女O船上の開き
& 路地裏の魔女\三百歳 & 路地裏の魔女X帽子





ふんっ  
(再掲載)


何と言われようが親父は親父 ふんっ
世の中どうなろうが親父は今日も鶴ハシを振るう土をふるう ふんっ
親父は晴れの日にゃ毎日 日の丸弁当で仕事へ出向く ふんっ

ラジオTVが新聞が期待の無い担保の無い何かを言っている ふんっ
小言 言った日にゃカカアが終日 何かをブツブツ返して来る ふんっ
役所から落下傘の親方ぁたまの現場で何わめく おとなしくしな ふんっ

沈む浮世 産業の空洞化 親父の仕事表も空きっぱら ふんっ
グータラと思われようが雨の日は複雑な気持で骨休み ボキボキッ ふんっ
汗水が報われるだと何 甘っちょろい事を・・それでも真人間は正直に生きる
 
一日一杯の酒が人生の哲学ってか大げさな ふんっ
退屈な人生だと勝手な目で見るんじゃねぇ ふんっ
何も無い人生だと何も無い顔しているだけだ悪いか ふんっ
ふんっ それがどうした皆んな親父カカアになってが長いぞ
自分一人で育ったのか ちゃまちゃま若造アッと言う間の人生だ 大切にな
もっとも百歳から見れば親父も若造か ふんっ










一句:水玉の ますらおタオル 一文字
一首:高いもん 勝ち負けつける それ幾ら まけて嬉しい 花いちもんめ


後書:犯罪は六法で裁けるが必要外の風圧やトリック 世の中の不道徳
システムは犯罪を作る元凶 本音と建前の大差が乱れの素・・犯罪を減らす
は道徳である事 誰でも分かる・・うそぶく安易な人間が紛れ込む昨今 景気
上昇の政策立案可能な誰も気力が出ず ふんっ 親父達はゴチャゴチャ
複雑に あおられるほど馬鹿では無い 時代遅れの何でも思想と付合うほど
  ゆとりも無い 現代法律が総ての顔する人がいる 道徳を古い価値観と言い
くるめる人がいる 後から しゃしゃり出て来て言いたい放題の人達に
  ふんっと鼻であしらうしかないと怒りを抑え無気力になる普通の人達に
問題が有るのか 安直な大声で不愉快を作る者達と
思わせ振りは常識的善良に通じぬ事が分らぬ者達と同類とも言う
職業では無く働く人達一人一人のモラルの違い
人それぞれ気にするほど暇では無い
勝ち組を求め続ける詭弁に負けてはならぬ道徳・・仁道とも言う('02/2記)




























○O 。 踊る観光 。O○


@車の流れが止り始めた道路
サイドカーの女房がハシャギだしたので観光地に近いと思った駐車スペースに停めて
老齢のジャンプスーツ姿の2人は胸元を広げ身体の火照りに空気を入れ少し距離を歩き
目当ての敷地に足を踏み入れると建物の陰に聳(そび)える一本の老大木が眼に止った…・

A陰の薄い男女が木陰に立っている
何処から持って来たのか釘で樹木に落書きをしようとする若いカップルに
老夫婦は「お止しなさいよ 木が泣いているよ・…ほらっ聞こえるだろう…・」と
木に耳を当てる・・・・「こんな所で注意されたら嫌な気がするだろうね しかし木は もっと痛がっているよ」
「・…」「ここの木は建築物用に切るために存在しているのではないのよ」老婦人が優しく話した
「ここで歴史を見つづけるためか」「…観光客に見られる為かも」などと老夫婦で幾つかの話をつなぐ
若いカップルは恥ずかしそうに黙って話を聞いていた・…

B4人は園の外に出て小奇麗な喫茶店に入る
「へぇ〜この写真の あそこだ・…凄い昔と同じだ」と腰を下し乍 誰へともなく話す若い夫
「…150年前の写真かぁ・…あの建物も庭も…木も同じよ」あいづちを打つ若い女房
黙って笑顔で返事する老夫婦と他愛も無い無邪気に話に花を咲かせ続けていた時に
「大変でしょうサイドカーの旅なんて・…」若夫婦のどちらかが外を見ながら独り言のような質問をした
「いえいえ以外とエコ的なんだ 運転は自然と集中力を切らさないし服装にも気を抜けないし
老人の大敵 呆け防止になるし大疾病(だいしっぺい)の脳卒中や糖尿病対策なんかも女房と旅行すれば
自ずと注意していてくれるし排気量250tなら車検なしの高速道は二輪車料金走行で駐車料金は高い所で
二輪車2台分かサイドカーは自動二輪車だからと殆どの所では無料かバイクと同じ料金なんだ・・アクセル
グリップを握り乍 走ると言う事は握力が無くなった或種の老人には自動的安全策になっている」
「ふ〜んっ良い事だらけですねぇ」
「でもフェリーは狭い船で場所を取るからと普通自動車料金になるのよ船会社の集客努力は知れてるわね
それに冬は凄くっ寒いし雨が降ったら濡れればいいさなんて事はなくて危険で…屋根を探すのは大変よ」
「しかしね…雨宿りの御蔭で何か小さい嬉しい事と出会える時もある…でも気象への対処は予防の内で
…それが天気予報の確認は病気予防に繋がっているし…で観光旅行の一番の効用は…思い出の地に立つと
目前の自然も町並みも一つ一つの建物も樹木も何10年も前と同じなんだ・…人には何も変わらない
観光地が心の平安を感じさせてくれるのさ長寿の為の観光療法とでも言おうか(だから欠片一つも
持ち帰っては駄目 ゴミ一つ残しても駄目 一つの傷を付けても駄目なのさ・…)ねっ」
「はいっ観光もエネルギー源と分かりました(済みませんでした先程の浅墓は とても反省しています)」

C喫茶店の外
「現地を自らの足で観るのは心に光りさす如くですね」
「そぅ…それに もし2度と同じ場所に行けなくてもテレビで再度観て懐かしく感動したり
変わらずに在るのだろうと想像するのは楽しい事ですよね あなたっ」
「御意…女房殿の言われる通りです・…宿に着いたらお調子1本を所望で御座る」
「・…調子の良い奴め・…同席の新婚さんに免じて今夜は特別に許そう・…」
「へへ〜っ」
「(このように場合に応じて かかあ殿下の家庭が宜しいのよ)」と笑い目線を夫に送る若女房
「(へいへいっ承知ですよ奥様…)・……・御一緒出来て楽しかったです」目線を女房から老夫婦に移す若い夫
「・…旅は感動的で2度と会えない惜別感・…これが一期一会の心です」老夫婦の どちらかが呟いた
「はいっ 代りに情景と思い出は持って帰ります 勉強になりました」若い夫婦が同時に笑って答えた
「ごきげんよう さようなら」と老夫婦の少し大きな声での挨拶
「済みませんでした有り難う御座いました」と礼で別れの挨拶をする若夫婦
「カシャッ」
 




















1.緑の そよ風 いい日だね
蝶蝶も ひらひら 豆の花
七色畑に 妹の
つまみ菜つむ手が 可愛いな

2.緑の そよ風 いい日だね
ぶらんこ ゆりましょ 歌いましょ
巣箱の丸窓 ねんね鳥
ときどき おつむが のぞいてる

3.緑の そよ風 いい日だね
ボールが ぽんぽん ストライク
打たせりゃ二塁の すべり込み
セーフだ おでこの 汗をふく

4.緑の そよ風 いい日だね
小川の鮒つり うきが浮く
静かな さざなみ はねあげて
きらきら金ぶな 嬉しいな

5.緑の そよ風 いい日だね
遊びに行こうよ 丘越えて
あの子の家の 花ばたけ
もうじき苺も 摘めるとさ

実態のある自然な開放を歌った 清水かつら詞 草川信曲「緑のそよ風」より




後書:それでも観光地には安くて感動的と残念だが高くて安っぽいがある ('08/10記'09/05中旬掲載)

余談:時間の掛かる海を旅すると陸や空とは違った情景に出くわす
船旅も当然に各国が締約した万国海洋法によって一定のルール上を航海しているが
日常の船文化は其れよりも もっと奥深いルールである不文律の水夫の法による場合がある
例えば船客同士で如何してもと結婚を望んだ場合に水夫の代表である船長は神父や其々の師や
時には神主ともなり祭祀を司り結婚証明書を書く時には船内の事件事故や捕獲した海賊の裁判を執り行う
が海戦法優先の戦時ではなく平時では船上でか若(も)しくは本国で必ず悪党の裁判はしなければ成らない
又は次の立寄り港で取締官へ引渡すとの総執行も本国のアドバイスにより船長の判断である
もし自分の船から誰か落ちれば例え死刑囚でも一旦引き揚げるは水夫は日常的に危険な機会に居るから
船上で船客や難民の子供が産まれれば旅券の代用となる仮出生証明書を書き時には名付親となる
義務として海事の正規記録証明でもある航海日誌に其れ等を嘘偽り無く記すは水夫の法による
が増える女性船客の喜ばしさの一方で女水夫の増加に反比例して水夫の法は段々と薄らぎ行く…
追記:敵性国船を助ける不文律の法を守る某国海軍の報に核家族的逆光が仁光で法が埒を開かせよと願う
…因みに別国の知的財産権を乗っ取り続け変異型の海賊盤を立法化するを不分立の黄砂化と言う
殆ど時間が かぶる頃 更に別の某国では給付金と千円高速渋滞で地球温暖化促進環境の反比例
〜「誰だ歩いた方が早いなんて真っ当な事を言う奴は給付金を貰えないぞ」「金より仕事が欲しい」
「…普通の仕事 ずるい仕事 仕事自体が無い ぱくられる仕事・…社会も重体か」(ここも笑う処では無い)
電気自動車普及前の旅は♪鈍行(普通)列車が少ないなら排気ガスが少ないサイドカーで如何と自問すると
昔 流行ったフレーズ・ミックス♪ディスカバー日本そんなに急いで何とする〜我等が守るべき正解はある?


一首:路探す 五分の魂 サイクリング(下の句は各位御随意に)


















































〜〜〜〜 路地裏の魔女36駿風 〜〜〜〜


@近所の家のラジオからなのか軽快な音楽が流れている・…
「〜 ♪ Umagahashitteku ! Umagahashitteku !! Dekkai Hanano〜 ♪」
長崎港を一望する丘の淵に腰掛ける青年へ草道を駆け登り乍 声を掛ける友人
「お〜い中之村の次男坊〜」
「お〜近くの住人 三男坊かぁようココが分かったな」
「帰りに お前んちに寄ったら小母さんがココやろって言いなさっとったけん」
「まっズズズィーと そこいらにく つろいでくれ良か風ばい」
「久しぶりにギターでフォークでもどうかなとっ・…何にゃそりゃ爺臭かな〜」
「あ〜っ 是か 掛け軸の虫干しさ風をあてとっとさ」
「…下手な絵やな…もしかして馬か…豚のごたる肥っとるばいね」
「確かに絵は上手うなかね」
「こん横に小さく書いてある名前は作者か〜中…将…堀内中将?」
「たぶん知らんやろ…」
「…知らんなぁ古臭か遺物かぁ そいに愛山て…馬の名かぁ??」

Aそこから時代が遡(さかのぼ)ること七十数年・…
旅順校外水師営会見場の庭先に広がる空を眺めている数人
「大将閣下っ跡取の御子息を亡くされた事を御見舞い申し上げたい」
「…ありがとう…だが私の事です…将軍…あなたの陛下の兵も
私の陛下の兵も多く御魂に成りました私の子供達も其の中の二人に過ぎません
…私は西南の役では連隊旗を奪われての屈辱の勝ち戦でした
…台湾総督の時は飢饉水害から多くの民を救えずの失態続きで
この度は・…双方甚大な戦死での旅順要塞開城ですから」
「…せめて私の愛馬を頂いて欲しい」
「・…では気持だけ頂こう」
「それでは帯剣を許された敗軍の将の私の気持が済まない…」
「困った…」
「じつを言いますと この馬は対馬馬とスタンダードブレッドの交配種で
山岳馬としての速歩と重量積には無類のチカラを発揮する長崎系で
彼のプチャーチン提督の愛馬の血統でコンドラチェンコ将軍と私
だけに二頭のみ頂き乗馬していたものです…だから一頭だけに成りました」
「(やはりプチャーチン提督の影が参戦していたのか敵乍天晴れな
粘りと潔(いさぎよ)さの気配は…是だったのかも知れぬ…)」

B数日後・…露営を巡回中の将軍達
「副官っ…堀内さんへ私事で済まないが夕食を御一緒したいと
頼んどいて呉れまいか…うんっ…宜しく…」
後刻 時折ジッジッと鯨油の燃える芯が小さく音を発しているランプの下
「閣下っそれは名馬ですぞ素晴らしい」
「堀内さんも そう思いなさるか…」
「頂くのが礼儀に叶っておりますが…」
「分かりました頂きましょう…だが私は現在の雷号とは人馬一体ですので…」
「・……・」
「…ですから私は…私は隻眼なのです…気付きませんでしたか…
片目の不自由な私が今まで左方向からの攻撃にも対処できたのは
雷号の御蔭なのです…ステッセル殿からの馬は私が頂きます
…が…そしたら直ぐに あなたに貰らって頂きたいのです」
「・……・はっ」
「名馬ですぞ…」
「・…はっ」
「…速く走るのは得意ではなさそうだが速く力強く歩ける駿馬だと
思います特に丘越えには素晴らしい馬力を発揮するはずです
戦いは済んでも処理しなければ成らない事は多いですぞ」
「・……・はっ承知致しました是非」

C時代は戻り音楽が続いている・…
「〜 ♪ hirogete Umagahashitteku ! 」
今日の仕事を終えた荷馬が馬子に連れられ後ろを通り過ぎ丘から下りて行く
其れを二人は気付かない…海を隔てた対岸の丘の上方が暮れ染まり始める
「引き揚げ軍と其の駿馬が愛山と名を変えて長崎に上陸したかぁ…」
「戦い戦いに明け暮れて誰も気付かんやったとね名馬でも歳を食うとば
・・で せめて諏訪神社横の馬場で乗馬馬にでん余生ば送らせたかと」
「その堀内中将さんから松崎の婆っ様にプレゼントされたのが…」
「この愛山か…小世界史のヒーローの一人である松崎内調所之助の孫
の孫である婆っ様に…それじゃ もしかして おとなに成った後の
姿三四郎もこの御馬様に乗った事のあっとやろうね…」
「多分ね…小さか世界ばい」
「…そいにしても良か名たい愛山って…東郷元帥の命名なら面白か」
「うんにゃ…其上 拝領名らしか」
「凄っ…色んな世界ば…色んな心ば乗せたとね…重たかったやろうねぇ…
そう思うて見れば肥って見える胴長短足の馬も…ぐすっ 良か味たい」
「……そして其の時 親戚一同のうちにもと分けられた目録としての
掛け軸がこいさ…まっ遺物さ…ばってん…たかが遺物の
一振りの掛け軸でん其の後の第一次世界大戦や
第二次世界大戦にも生き残って来たばい…安寧ば求めて…」
「…頑張る人達に囲まれて…・生きてきたとね」
「・…何も無か家やけど こいと大きな船時計だけは次男のおいが将来分家して
受け継ぐことになっとると…そいに見合う旅ばせいと親父の遺言も付いとる…」
「ふ〜ん・…あるのは時代の匂いか魂の香りか…」
「もっとも金銭的価値は貧乏しとってん認めたら遺憾ても言われとったばい
…一寸古紙臭かごたる…遺伝も匂うか」
「はははっ本当たい古臭か匂いは良か香りたい…遺言と遺伝じゃ避けて通れんぞ
ばってん野の露と消えるか海の藻屑と化すか よしんば何かをなしても…
出る釘は打たれて足を引っ張らるっだけかも知れんばい
…そいでん頑張らんば天命やっけんね」
「兄貴は没落旧家の立てなおしで おいは報われん宿命か…」
「ばってん能力に見合う普通の生き方なら普通の事しか出来んけんね・…
わいにしか出来ん事もあっとたいね おいは平凡で良かったぞ・……・
星の動きば読むごと人が動きも解かっとやろ 今は星は出とらんね・…夜にならんば」
地べたに寝転がって二人の視線は夕暮れ前の天空を望む
「晴れとれば昼でん星は見ゆっとさ 星々は今でん頭上にあるばい・…」
「・・・・ ・・・・ ほんなこつ見えた …」
「・・・・ ・・・・ ほんなこつ はははっ」
「そいにしても・…結果ば出しても報いは間尺に合わんか・…いんやっ馬尺に合わんか」
「ふっ・…ばってん こうして風にあててやると愛山が笑いよるごたるけん」
突然「ブルブルッ」とクシャミにも似た馬音を聴いた二人は驚く
「ええぇぇ〜掛け軸の馬が・…笑ろうた」

砂利での埋め戻しが甘い横穴防空壕の通風孔を中之村の履く下駄が踏んでいた
辺りに重なるようにサラサラと小高い丘を吹き上がる風は とても気持良かった















松崎内調所助:路地裏の魔女・女神戦争で登場する長崎奉行所別当奉行代で
主水(船方馬方荷役炊役)総与力格の上席代官並とされた長崎御船手組頭
姿三四郎こと西郷四郎:警視庁師範に講道館柔道が採用されたきっかけの
柔道選手だったが西郷四郎は当時 反官軍とされた会津藩士の子ゆえイザコザを
理由に講道館師範代を泣く泣く辞退し記録からも歴史からも消された
後に長崎の日の出新聞社(戦後解散)に国際記者の職を得た
未だ病弱な一人娘に養子すら取れなく旧家存続難しだった時に爵位への内々の話を
無念にも辞退した旧勤皇浪士の一家や旧幕府方の旧敵味方に関らず少なからずに
信頼されたが生前は講道館から破門されたままで名誉回復されなかった
後書:物に宿る魂が有ると言う 歴史の中に生まれた掛け軸が
別の物語の太平洋戦域開戦前夜 東シナ海を駆け抜けた石炭雑貨船の船室に
掛けてあった生き証人の時計と一緒に同じ家で時代を刻み続けていた不思議
其れは人 魂を棄てずば浮かぶ瀬も有れと苦しみに語りかけているようだ
尚 自国敗戦犯として死刑判決のステッセルを助けたのが乃木嘆願書だった…
                                               ('07/10記'08/4前掲載)






一首:不器用の 手から漏れるは 水の精 そっと運べば 煌き見せる
一首:早まらぬ 時の歩みは こつこつと 荒野の馬子と安寧を知る



































,,,, 落し物 ,,,,
(再掲載・読者完結方式)
@瀬の向うを見詰め乍ら背中の赤子をあやす お下げ髪
「早よ寝ろ泣かんで」「アバアバ」「おろろんばい♪おろろんばい」「すーすー」
「今日も帰って来らしゃれんかったねー」
杖をついた老人がやって来る
「おはる もう遅かけん おどみゃも戻ろうか」「あっ・・・・こん子が寝たら・・」
「もう寝とっごたっ 良か顔しとっねー 貰い乳で腹も収まったとやろ」
「あーほんなこつっ重とぅなっとる」「夕げは豪勢に素麺の油揚げたい さあ早よ」
「和尚しゃま・・」「何んね」「お母しゃんお父しゃんは何時帰って来らっしゃるとやろ」
「あんね・・うんにゃ 降って来っばい 早よ寺へ戻ろう」「うん・・・・・・・・痛たっ」
砂浜から出ている物が足に当る
「あら・・何んやろ」

A街の古物商
「こいは良か仕事しとっねー大発見やろか 待てよ・・・大甲国の大王が乙大国の
巫女の一人への恋文に添えたと甲国録に記されとる首輪かも知れん
きっとそうくさー 海中から三千年ぶりに打上げられとっとに・・・そがんとに
完璧な保存状態くさー」

Bそれより百年前 玄界灘に漂う二舟
「コッチノ文献ニハ載ットラン ソレニ公ノ朱印貿易ノ餌ヲカラメテゲサク本デ
噂ヲ モウズット流シ続ケトル」「大丈夫ナノカ」「噂ノ元ノオイドンモ其ノ噂ヲ
信ジ疑ワンゴト成ッタ ダケン大事ナカタイ 贋作モ本物トシテ大量販売クサー」
「・・・見本ヲ先ニ届ケル 抜ケ荷ハ獄門ダカラ気ヲ付ケロ・・・クサ」
「ジャガタラ(割符)ヲ」

C脇に大事そうに抱えて浜を急ぐ頬っかむり
「ドンドンピャララドンドンピャララドンドン」
普賢岳焼山眉山の大変を鎮める鎮守祭のお神酒に酔った若集が横切る者を見る
「よそもんのごたっねー」「からこうちゃろか」「止めとくばい」
「ほんなこつ ほっとけ ほっとけ」「何んかくさかー怪しかー」
一人が頬っかむりへ駆け寄る
「待たんねー」
びっくりした頬っかむりが逆に走り出す 包みが落ちる
「ポチャッ」
ジャガタラが開き流れ 潮が金銅の首輪を隠す
「ザーザー ザー」
暮れ行く戸張の閉る気配と重なる様に 童が唄う子守り歌が近づく
「♪あねぇしゃんな どこ行ったろきゃい 姉ぇしゃんなー ♪」


一首 : かか様と とと様いずこ 待ちわびて 音無き空も また貰い水

後書:2地方の方言で構成したフィクションにてエンドレス書式ではないので
Cから@へは継続しない。@からCの時代を読者各位で自由設定する完結方式。
発想の原点は盲人文人の宮崎康平の「幻の耶馬台国」と「島原の子守り歌」である。
('00/03記)
余談:雲仙普賢岳の噴火で真っ赤に焼け崩れた山々の一つが眉山焼山として残り
其の時 対岸の熊本で「島原大変」の文中句が生れ「大変」の言葉が今に残るのは
有名。「宇宙2099」の中で使用したスタンダードNo名のゴーン・ザ・レインボウ
(和名:虹と共に消えた恋)に出て来る「シュバババクー」は島原地方の子守り
あやしの「おろろんばい」と同様擬音の意で主にアイルランドの穏健派の今に
伝わる。バイバイはいわんばい・・('99掲示板掲載分をHP用に再編集した)
















## 路地裏の魔女(28)にほひ ##

@少年時 通院し世話に成りし病院 立喰いし御茶を貰ふ和菓子屋
前を通る時 少々心安らいだ生花店 おおむね旧知の風情 空洞化す
きびすを返し街外れ とある小店の前を通り過ぎんとす侘しき男
漂ふ にほひに心ざわめき辺りを確かめんとす
調子悪き筈の彼が鼻腔 心の奥に何か軽やけく ささやき掛けん

Aにほひへ引き込まれる如く暖簾を潜る 4人掛けにては小ぶりの
しなびたテーブル4卓 店内に在り 板壁には短冊に書かれ画鋲で
貼り付けられしメニュー さり気なく一巡すれば たたずまい安普請
なれど特に磨かれたカウンターの向ふにてスポーツ新聞を読みし店主
らしき中年 味気もなく床へ向け頭 少々下げ何がしか一言発す
蛍光灯点けず外光にての営み涼感を誘ふ 男は風の通り道を選び
テーブルに腰を落とし店に入る前 決めしを注文す

B壁側 「麦茶ご自由に」と書かれし飲料クーラーのスウィッチを押し
自分で底の低い御茶碗へ注ぐ横の灰皿を一緒にテーブルの上に置くも
安息の状態に有るを知る男 胸のポケットに在りし煙草とライターを
出すのを止める 突然カタカタッと鳴りし風音を聴き 開け放たれし
店前の寂れた通りの方を漠然と眺めんとすと軒下に吊り下げられし
数本の珍しき竹水筒が目に入る「(其れ麦茶を入れ土産代わりに買って
帰るべし)」と心がニヤリと笑ふ 暫らくし厨房より出でしは如何にも
脂 少なに見ゆる小間切れを使いし他人丼 上には三葉ではなく
青エンドウが配置は期待通りで有る 卵の半熟加減
店に似つかわしくなき漆が器 是は正しき憶えか思い込みか偶然か
其処に少し遅れ やって来し ざる蕎麦の薄くも煌めく汁の光沢
刻み海苔は有明産と信ず して何と申し難き この重なる にほひ
男が心の一部 記憶が描きしシナリオ通り特に かほり と言ふべき
にほひ の記憶は遠くも近し

C田舎との距離 縮まるを感ず男 目が慣れし頃 変わる風の流れし
先を見ん 簾が奥の居間 籐椅子にウツラと坐す老女が後姿 風に
ささやかれしか 彼女は体ごと顔を振向け男を擬視す 彼と一瞬視線
合ふも直ぐ老女が姿は背に戻り在り されば彼は おぼろ気に
何事か思い出しかくる さやめきつぶやき決す男
  店主へ この店 いつ頃より此処で営みしか「昔は違ふ店」では等と問ふ
店主が返答 元は役所職員食堂兼一般レストランと かまえしを先代が
この地へ移し 先代亡き後 奥の老母と一緒に頑張って来しが近頃
景気低迷も有り 今は自分1人で厨房も出前も充分だと寂しげに申す
…気が付けば思い出は田舎を発つ前 一般客歓迎の札 掲げられし食堂
一世代前の夫婦が姿 仲良き哉 厨房を店内を切り盛りし其の女房が
背にはウツラとす赤子…この にほひ 未来へのDNAを つなぐを
誰が知ろう 川を溯上す鮭の如きに似て青年が にほふメモリーは
数十年後 薄らと回帰すか
男は店の家人と特段の えにしも ささやかなふれあい有りし訳でなし
只 奥の老女の姿を移ろい気に見知っている のみで有る 何か昔話をす
いはれもなし されど微笑みし風情の得も言へぬ懐かしさに
胸が熱くなる このにほひの不思議 旧知の風に向かひ「人が記憶移ろげ
ど香順の礼いまだ忘れず」…すると少年が歌う声 げに高らかに聞こゆ
「♪夏に成れば童子(わらしこ)泳ぎ どじょっこ だの 鮒っこ だの
鬼っこ来たなと思うべな♪・・・・・・・・ただいまぁぁああ〜〜〜」




一首:目を閉じて魔法のかほり聞きませう 安息にほひ思ひ出にほひ
一首:この記憶にほひの奥は何あらん 開けて気付くは白い髭
一首:控え目に はにかむよふに ほのかほり 線香の筋 夏空に消ゆ



後書:時には香や線香の白檀の香りに似て食事処の匂いが心を
落ち着かせるを知る偶には通りの寂れた小さな食堂へ行くも良し
香りも順に時を歩み良き匂いと再会あれば心は淳(すなお)と成る
是を香順良心と呼ぶ明らかな忘れ得ぬ道標の原風景であるを思う
('05/6記)
余興31:動物が生まれた時 最初に見たものを親と思う"刷り込み理論"
は間違いで有る「親の様なものと思い込む」ので有り人も含め動物は
其の時に見て匂ったものを親と信じるので有る視力聴力弱き者は
心眼と嗅覚に優れていると言う天は香るべくバランスを与え給うた









### 路地裏の魔女L類 ###
(再掲載)

@偶々其の時 他の釣り人が居なくなっていた田舎の小さな海岸
一人の男が療養を兼ねてノンビリと糸を垂れていた・・
・・気配に男は急に後ろを振り向き間髪容れずに「どちらの方
遠くからですか」と・・驚く大の男2人は立ち尽くす「・・・」
「いくら釣り場だかって音も立てずに近づいちゃ駄目ですよ
・・尾行好きのカルトや思想連じゃ有るまいし・・」「・・・」
「こちらが気付こうと気付かまいと竿を振り回していたら
大怪我ですよ・・こんな所を足音も無く歩いていたら・・怪しまれ
ますよ・・」「・・・」「ホラッあっちば見んですか・・対岸の家ですよ
・・あの御婆さんも戦果が気に成る様子(よかタイミングばい
・・偶然の魔法使いの御婆さん・・)」「失礼しました何が釣れている
のカナと思って・・」「・・・・(ふーっ)」

近くの実家で小魚をさばく男「お袋・・おかしか連中に出くわしたよ
一寸急か岩場を よじ登らんと行けん釣り場とにスーツに革靴姿ばい
しかも息を殺して歩きよった」「・・そげんね怪しかね」「日本人離れ
した脂ぎった骨太で きつか眼ばしとったとよ・・最近釣り人が強盗に
遭うた とか誘拐されたとかの話は有ったね」「うーんっ聴かんごった
ね」「うかうか釣りも出来んごったね最近は・・」

A都心に戻りぼちぼち仕事を始めた男は・・実は男が知人から紹介
された不動産屋の仲介で仕事場兼住いにしていた所の大家 其の者は
其のカルトの信者だったので有る 何も知らない男が自分の背中に
大きな標的のマークを付けられている同然の事に気付くのはズッと
後の事だったので有る

其の標的の所へ助手として送り込んだ己の身内からの情報で標的の
対人関係を調べ乍 実体は国際基準でカルト認定でも某国では大不況
を言い訳の広告営業に金次第でカルトの実体を隠す宣伝も自由勝手
に ぬけぬけと付け込む何処かの軍事独裁者然とする教祖の喧伝の為
の選挙教と言われている其のカルトと陰でこっそりと手を結んだ後
の眠眠党国会議員候補・・標的の手紙電話をチェック 行動を追い・・
偶然と言い逃れる必然で標的の神経を逆なでし続ける

B若さで弾き返していた標的にされし男は或る日とうとう軽鬱状態
と都心の神経科の教授から診断された事をキッカケに・・ただ其の老
教授は「現在置かれている環境に問題が有るのでは・・自認しているな
ら特段の心配は無い数日から数週間で快方に向かうで有ろう」と言明
していた・・が 徐々に標的は行き場が無くなる程に悪い噂を関係者の
処へ流される

周りをゴミで囲まれアンモニア臭が篭もる犬猫の末期あずかり場
生気を失った標的は来る日も来る日もペットの唸り声の中 日に
数百匹の臭い下の落し物の清掃で有る・・だが欧米等外国人の友人達
の中には突然連絡途絶えた彼に不穏な運命を感じ始める者もいた・・
・・「此処で辛抱出来ないなら止めても いいんだよ・・でもねぇ
行く所 無いんだろう 折角紹介してやったんだよ」

暫らくした某選挙事務所
「・・ふんっしぶといな未だ生きているのか・・そうっもう暫らくで
飼いならせるか自殺するんじゃないか・・」

C標的が行方不明と成る
同じ頃 同姓同名の似た者が隣県に程近い大学病院の精神科の窓口
に現れる・・そして入院・・程無くして標的が重症の精神病で廃人
に成ったとの作り話が まことしやかに流れる・・標的は社会的生命
を絶たれた・・

月日が流れ男を知る人々の記憶からも消え始めていた・・
紛れ込み無党派的首長と成った元眠眠党議員は己が標的の面倒を
見ていた上司だったと・・標的にした男の やって来たオリジナルの
仕事に影響力を行使して来た様な顔をし いい処取りの平安主義者の
紳士的態度を装っていた

しかし標的に されし男は泥水を啜る如きで生き延びていた
自分に しか出来ない事がマダマダ残っているを自覚するが故
再起を図る如く・・
街の片隅にて夜空の雲の切れ間から覗く月をじっと見上げる男
「♪・・早よ寝ろ泣かんでオロロンバイ
鬼ん池 久助ドンが連れん来らるばい」



後書:類(たぐい)まれな能力と言われし男が卑劣な類(るい)は
類(るい)と繋がる連中に何をされしか・・親の葬式に出席出来ぬ程
ぼろぼろの身体に成っても気力の残り火を灯すのは何の為かを今で
は知る者少なく無し・・其の標的にされし男は其の後も類類の非道
を受け乍も思った「・・是は忘れるべき事・・記憶に残すだけでも
不浄の如き事か・・」と・・丸く収まる道を知る・・即ち大不況消滅の
特効薬のグランドデザインを出来る男も未だ気力出さず
('04/2更新)



一句:らち明かぬ 納得できぬ 我慢とは
一句:茜空 降りみ降らずみ 秋津島
一句:復讐は 刀汚れる 捨ておけと



余興13:昔昔 引き揚げ途中の婦女子に鬼畜の行為するソ連正規兵
を異常に煽った演出の蔭に隠された者達は何に人だったろうと強盗
強姦人さらい惨殺・・何が隠されていたんだろうと非道の工作を感
じたのは少なく無かった・・成る程「日露平和条約」の前提の一つ
「北方領土問題解決」も潰すは易しか・・盗人に三分の利を認めよは
テロ支援話と言う・・何でも反日にするは もう沢山な類




♪♪なっちゃんの手目♪♪
(再掲載)

なっちゃんは、ヤンチャな子。
そして、四角色、丸色、三角色、星色、ミッキー色、ドナルド色などという色を
持っている。

 今朝は、お父さんに駄々をこねて困らせた。
ミッキー色の靴をどうしても履いて行くと言う。お父さんは、渋々、昨日洗って
まだ乾いてない靴を新聞紙で良く拭いて、なっちゃんに履かせた。

 なっちゃんは、生まれつき顔についている目が見えない。
しかし、手についている目で形を理解しながら色を覚える。
それを、「手目の魔法」とお婆ちゃんは、言う。

 ラブラドールの黒兵衛と盲学校へ毎朝通っているのだが。
彼は、ミッキー色と言う言葉に納得しない。
なぜラブラドール色では駄目なんだと、ミッキーに少しだけ妬いている。
しかし、一番嫌なことは、学校帰りに寄り道をしようとする、なっちゃんを
彼が、思いとどまらせる時に、なっちゃんが下品な言葉を使う時だ。
・・・・「てめーのあほー。」・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ 笑フフフッ


.            ('00/07更新)










//// 路地裏の魔女O船上の開き ////

@エンジンを搭載していない大型木造船
博次「なっ こうすれば船の煙突から煙が出ているみたいだろう」
真太「・・・・」
一則「だって 此れじゃ只の七輪の上に穴明きバケツが載っている
だけじゃん・・」
博次「ははははっ おかずの鰯の開きも焼けているじゃないかよー」
真太「・・だって この船は砂運びの ダンペ船・・自分では進まないよ」
博次「ほら上見てみろ・・雲が流れている・・寝っ転がって上 見てりゃ
曳船なしで自力で走ってるみたいだぞ・・上を見ろ・・真太」
真太「わーっ ほんとだ よーそろー」
一則「ほんとだ よーそろー」
さと「よーちょろー」

A数日前の小学校の校庭
真太「土砂を運ぶだけのダンペ船だからね 父ちゃは曳船の船長に
言われたら次のシュンセツ地迄 移動する準備をしなくっちゃ
でも其れ迄は遊べるよ」
一則「お前んちは其の船と誰かが言っとったが・・そうなのか」
博次「・・そんな質問はするな一則」
真太「・・うんっ・・いいんだ」
一則「なら お前んちで遊べるか」
博次「ヤメロッ一則っ・・遊ぶ所は何処でもええからな・・し・・真太」
真太「うちの船でもいいよ・・でも父ちゃは人嫌いだから・・」
博次「真太の親父は人嫌いでも真太が いいなら船がええ
俺は船が好きだ どんな船でも好きだ」
一則「俺だって船は好きさ」

B狭い後甲板への渡し板を渡る真太と博次
博次「一則 怖かったら・・ほらっ」と手を陸の方へ差し出す
一則「いい・・へっ平気さ・・」と恐る恐る渡りきると少女が1人居た
真太「こいつは妹の さと・・未だ4歳だから」と紹介すると真太が始めて
連れて来た友達に大喜びして耳から鉱石ラジオのイヤホーンを
外す さと 其の時 向いの波止場に在る小店の御婆さんが呼びかけ
手招きをすると真太は渡り板を今度は逆に渡って行った 博次も渡り・・
一則は半べそをかき乍 何とか渡って小店へ駆け寄った
たすき掛けにヒモで繋がれた さとは船上から笑い乍 皆を見ている
御婆さん「真太君 お父さんから夕食の材料 頼まれとったから
これ・・用で帰りは遅く成るから先に食べといてと言っとったよ」
真太「・・何時も済みません」と編み篭を見る「(又 干物とキュウリか)」
御婆さん「・・・・珍しいね友達かい・・」
博次と一則「ちわっ友達の博次です」「一則っ」真太「はいっ・・」
御婆さん「元気がいいねぇ・・んーっ・・ちょっと待っといて」と
奥から冷えたビンのコーラを4本持って来る「あんた達 帰る時
ビンは横の空きビン入れに入れといてねっ預りビンは1本10円もする
からね勿体ないからね・・中身は上げるよ さとちゃんにもねっ」
真太「・・いいんですか・・・・有難う御座います・・」博次と一則も会釈す
御婆さん「・・・・ええよ気にせんといて」
船へ戻り後部に2つ有る開け放たれた木造の四角いハッチ・・陸から
遠い方は通風と採光用の天窓で雨の日は閉めておく・・近い方の出入
り用を下の6畳位の部屋へハシゴで下りると金毘羅宮の御札が
祭って有る立派な神棚には曳船の船長との連絡用のトランシーバー
が大切に置かれている他には水道のない流しの下にはアルマイトや
木地だし製の食器や箸を入れた わら縄で編んだ丸篭 机代わりにも
しているトランクの上には団扇と所々擦り切れた一寸法師の絵本が
開かれ むき出しだが布団とカヤは隅にキチンと畳まれていた
煮炊きは上甲板で 風呂は船溜り近くの銭湯か時には流しで体を
拭くと言う・・壁に窓はないがハッチを閉めても空気弁が通って
いる事や だんぺ船は舵だけで自力運航が出来ない事も 学校から
学校への転校は旅芸人一座やサーカス団の子弟と同じく短い期間が
多い事も教えてくれた・・ハッチから垂れたコードの先に針金の笠で
包まれた裸電球が壁のフックに掛けられ揺れている・・特別に小型の
自家発電機のエンジンを発動して黒い壁掛け扇風機をカタッカタ
カタカタ・・と回して呉れた・・小店の御婆さんは頼み事 以上に
何でも出して来る魔法使いかもと短い時間に何でも話しをした
船の上で3人並んで立ち小便もする程の仲に成っていた
妹の さとがこの船で生まれた事を聞いた時 何時も軽口の一則が
父と3人暮らしの家族らしい真太兄妹の母の質問をしようとして
さすがにグッと言葉を呑み込んだ・・
翌日博次が岸壁のゴミ捨て場から穴明きバケツを拾って来る・・

  Cそれから何日か経ったホームルームの時間
先生「それから・・連絡事項・・真太は転校だ」
博次「先生っ・・それは何時ですか」
先生「えーっ今日来ていないな・・じゃ今日だな・・うーんっ
手紙を自分で出したい者は後で先生に局留めの郵便局名と
住所聞きに来てくれ急がなければマトメて転校先へ出すぞ」
博次「・・・・」
1時間目が終ると下級生の一則の教室へ走り そして直ぐ其の
教室も出て上履きのまま校庭の端へ走り出した2人は低い塀の上へ
手をやり船溜りの見えない波止場の方へ目を凝らし乍 話している・・
授業が終ると直ぐに数km離れた波止場を目指し息を切らし走る2人
石段を石畳を下り商店街を繁華街を抜け電車路を横切り全力で走る
其処にも港を見渡しても何処にもいない 博次は小店へ小走る
博次「御婆さん御婆さん・・・・真太のダンぺ船は・・どうしたんですか」
御婆さんは首を振る「朝一番で曳船に曳かれて港を出ていったよ・・」
博次「何か言ってませんでしたか・・」
御婆さん「何んも・・んーっ・・・・サヨナラが辛くなったのかな」
名残惜しそうな顔をする博次と緊張し黙り込む一則「・・・・」
御婆さん「・・この菊 持ってくかい ほら店先で挿し木にして
増やしたの(菊は本質的に強く暑さ寒さにも潮風にもへっちゃらで
茂り自分だけでなく周りの小さな山野草の花々さえも はえさせる
から)・・あのダンぺ船へも今朝 持たしたさ君達へも良かったら」
博次と一則「・・・・」
御婆さん「君達・・真太君や さとちゃんを忘れなかったら
この港が真太兄妹の故郷になる・・君達次第かも知れないね」
暫く店先を離れ難く御婆さんに会釈をしトボトボと家路に就く博次・・
挨拶も忘れた一則はボーッとし乍 歩き始める
博次「もう子供の時間は お開きさ・・」
一則は泣き乍「くーっ くーっ ・・又 逢えるかな」
博次も目を潤ませて「逢えるに決まってる・・絶対に決まってる」
遠くから近くから夕刻の御寺の教会の鐘の音に混じって何処からか
漏れて来る長期出張者のコーランの声が寂しく耳に感じる
道すがら博次には言い得ぬ気持ちが幾度となく胸に迫り来るのを
生まれて初めて憶えた そして彼の父が何故 人嫌いなのか
人嫌いは淋しさの裏腹に在るものだと小学生の心にさえ
漠然とだが判り始めている・・・・

自分達の町内へ近づく2人は当然大切そうに菊の鉢を胸に抱えていた



♪たーかく はなつく いそのかに ふだんの はーなの かおりあり
なぎさの まーつに ふくかぜを いみじき がくと われはきく
「われは海の子」より


一首:昔はね 猫の餌並 扱われ 現在鰯は高価格か
一首:いつかきっと幾膳の箸萌ゆる頃 浴衣も染まる白いカーネーション

後書:確かに子供達の心を親・教師そして出会いの多くが各位可能な
方法で包んでいた現実界 何時の頃から其の伝統文化が激減し始め
たのか・・故郷が一つ有る人は幸せだろう 幾つかの故郷が有る人は
心に深い思い出の故郷が見えていると名を博次と設定した男は
信じている 第2次世界大戦後の引揚者対策の一環と始り一部に
昭和40年代頃迄残り 石・土砂や或る時は精霊流しの危険な
燃えカス等を曳船に引かれて運ぶ・・生まれ乍に海好きも
仕方なくも真っ当な自営の船上生活者が其処にいた・・・・
尚 数ヶ月前から予定より2ヶ月遅れのストック原稿を掲載す
('03/5更新)
追記:昨今の報道の危険性・・瞬時の殺人は重罪だが先進国で日本だけが
不特定多数向けのユックリの跋扈煽り(教祖の個人喧伝・思想洗脳・嘘
とも言う)は罪にならない不可思議・・他の先進国では新興宗教団体の
事実上の政治活動と其の宣伝の場を提供するマスコミ等も重罪となる
追句:移る学 普遍道徳 急き綴れ
余興18:善人だけの世なら法は無用と誰も分かる故に最低の道徳を
法と呼ぶを知る者少なからず して最近 法が道徳に近づくを見掛る
時も有 五木村の件しかり 問題は其の対処方・・治水ダムを造るなら
地下を掘りなさい我日本のゼネコンにも其れ位のワザは有 まさか
決断の責任者迄 連れし類に染まり混沌で混濁に落つるで有るまい
なら有明海も道徳により法のギロチンが消ゆるか空に唾吐く者よ




路地裏の魔女X帽子  
@
スタッ スタッ スタッ スタッ 若き其の男は歩いた スタッ スタッ スタッ
  歩いた スタッ スタッ スタッ スタッ もう何日も水腹を抱えて歩いていた
スタッ スタッ スタッ 時には野辺の御供えを拝借し乍ら 浮世の情けに
出遭い乍ら歩いた スタッ スタッ スタッ スタッ 旅立ちの頃の夜 天と地の
間が心地よく眠らせて呉れた だが最初の秋風を感じてからは寒さでなか
なか寝付けなくなっていた・・本身を抜き二朱金を幾ばくか詰めた脇差しの
路銀を持参してはいたのだが万が一の為に草を喰らってでも金は残しておき
たかった 出立の朝 城下で陣箱寿司を食したのは何日前だったろう 持たさ
れた最初の焼米の筒は既に無い スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ ・・・・

A
明け方 軽快な足音が近づく・・タッタッタッタッタッタッと 男を踏み付ける
「ウーッ」と男は目を覚ます 「あらっ済みません・・何てこと 大丈夫ですか」
「フーッ・・拙者こそ済まない 往来の邪魔を・・しました・・ グゥーッ」
「・・まぁ少し季節が早い虎落笛(もがりぶえ)だこと・・あのー宜しかったら」と
一文字笠より細い小さな甘藷を出し二つに折る稚児輪髷の娘 「グゥ」と男
「朝飯前の早立ちだったから丁度ここいらで頂こうと思っていたのに水はなし
旦那 水をおくんなさいな 此れと交換して下さいな・・・・あっ此れは出過ぎた
真似を・・お許し下さい」「いやいや此れはかたじけない久方ぶりの朝餉です」
「・・・・ん」「・・んぐっ」「・・ゴクッ」「・・グビックビッ いゃー生き返った 礼を申し
ます あははははっ」「ふふっ・・驚きましたよ死人を踏んだかと思いましたよ」
「いゃー済まん済まん 貧乏侍の何処を褥(しとね)の乞食旅です はははっ」
「ふふっ」男が目と口を娘が口を漱ぐと どちらとなく歩き出した スタッ タッ
「ご覧の通り うちは門付けを流している者です」「太夫ですか」
「いえいえ 女太夫で・・下賎の者とお呼び下さい・・・・
ペペンッ 坂東高き白きもの 浅黄の空の下行けば 黒米遠き麻も生ぇぬ
  裸足の鳥は追い追われ 風の情けもありんすが 日照りの朝は子も泣かぬ
  雪に疎まれ雨も降る なかぬ鳥さえなきまする トテチンシャン
鳥追いで御座いますよ 旦那」と鼻歌混じりで娘は言う
  「グスッ・・なんと悲しい唄だ 拙者から観たら立派な太夫で御座る
・・本来は大御心より賜って忘人は天下自由と放たれた五位太夫を祖にする
一族郎党ではないですか・・ブーッ」と潤む目に屁をこく男
「まぁ器用か不器用か 旦那 いぇ若様うちはイスカと申ぉしぃまーすー」
「あっはっ拙者は特に命を受けての急ぎ旅では御座らん只の水飲み侍の
中之村貴八郎と申します ♪ぇー旅は股ずれぇ余は情けぇなぁやぁー
  ・・ブーッ」「プー 御免あそばせっ」
「・・ぐぁっはっはっはっはっ」「きゃっあっはっはっはっはっ」

B
「どうして旅を・・」と問う娘「・・帽子」と答える男 「へっ」「帽子の似合う者に
成りたくて」「・・帽子ですか」「変な婆様に遇った・・・・其の日は雨が降っても
泥濘や水溜まりが出来ないと言うアスハレルトと申す不思議な小径を見に
参じたのです」「・・」「じっとそれを見詰ていた其の小径の切れ目の所に大き
な水溜まりが出来ていて通り掛った老下女が困っていると後から来た紅毛
人の男が自分の帽子を取って拙者に渡すので」「・・」「拙者 覚えの有る蘭語
で『何だ此れは』と申すと」「へぇ凄い」「残念ながらエゲレス語の方を使う者ら
しく蘭語が通じなく たじろぎできないで居ると其の老下女をヒョイと抱えて
自分の靴を泥だらけにし乍らズズズイーと渡って行った」「へぇえー」「拙者は
呆気に取られ立ち竦んでいたら二人が去った方から今度は尖がり帽子の
紅毛人の婆様が現れて天狗の様に長い杖でヒョイと水溜まりを一っ跳び・・」
「ぇえー」「してビックリ仰天していると・・」「それでどうなすったんです」
「何と蘭語で話し掛けて来たではないか先程の紅毛人の帽子を取りに来た
と申すから此れは得たりと色々聞かせて貰ったアスハレルトは船底や家の
水漏要鎮に使うコウルタウルとか申す黒油粕で造るとか・・」「何か奇怪で
大変そうですね・・」「水は地の中へ入って行くが道はそのままだから
歩き易いとか」「・・難しくて何とも申せませんが良い道だとは分かります・・」
「それで『立派な帽子で御座る』と言い渡すと『いえいえ帽子が立派
なのでは有りませぬ帽子は被った者の行いに因りどうとでも見えるもの』
と申して其の帽子を拙者の頭にチョコンと当てて何かブツブツ呟いて
『此れも何かの縁 私の家に代々伝わる特別の御呪いをしておきましたから
貴方に何かの志が有るなら願い叶うであろう』とそれで気が付いたら
旅の途に在ると言う訳です」「・・そうですか・・」「摩訶不思議な事です・・
拙者むさ苦しい格好をしておるが様は働きです」「そっ そうですとも」

C
九州から本州へは砲台聳える馬関の海狭間を琉球・九州各地と釜山からの
荷を蝦夷・奥羽の物産と積み替えに寄った北前船から流れてきたと言う酒の
空き樽に着物等を入れ男は泳ぎ切った 月曇りで見廻り役人は眠り放けて
いたが渦潮の刻限ではないと聞いても心配だった
真っ新の白足袋 羽織 袴 身分を明かす書き付けと旅薬を入れた印篭 矢立
は風呂敷きに巻き網に入れ肩から袈裟懸けに回し刀も其の片方の肩に掛け
着物の裾を腰に捲し上げ帯紐できつく締め 脚絆と手っ甲は厚手の物を身に
付け食糧包代わりにも使える藺草の編み笠は二つ折りで漆塗りの物を被り
懐には自分で度々拵えた塩焼米の袋と風が冷たい時の体力付けに焼米に
混ぜ食したり皸に塗ったりする椿油を入れた笹竹の筒と小さき判の懐紙
綴りとそれに竹水筒と持てるだけの草鞋は腰に吊るし
履き崩した物は二足分を編み直しては履いていた
町家の軒先で寺社の床下で雨を凌ぎ 街道を脇道を
見聞き歩いた 身体がボロボロに成った分 胆力は強くなっていた
京に近づくと体調を調える為木賃宿の世話に成った
男は帰参登城の時以外は素足で通そうと決めていたが旅では一度も
風邪を引かなかった 冷たい霙に冷たき視線に曝されて京に入った
男の頭には いつもの年より早い小雪が舞い始めていた
足下は 千利休 考案と伝え聞いた立派な革の雪駄に素足である

伝手を頼りに小さき溜りに入り 其処を足掛かりに夜毎の集まりに出ていた
それから意を期して長旅で心に積もった大雪を払い除ける様に一言を発す
「攘夷か開国かでは今日の現を明日の目覚めを見ていない次への進みとは
如何に・・拙者 有明の海を渡り波は穏かだが とおとおと流るる筑紫次郎を
登り筑前を徒ち 長州から安芸・伊予・土佐・阿波・讃岐・備州・播磨・摂津
大阪の瀬戸南海道を各々と袖振り合い誼を通じ乍ら極め思うた事は
何から何まで戯れ言に満ちて海防の見廻り小役人から幕閣迄
太平の惰眠を貪り 此れからの風雲と会い対峙出来ようか
偽ざるものが語られぬとは 政と申せるや・・・・♪・・」
「・・・・」「・・・・」「・・・・」「・・・・」「・・・・」
「拙者もそう思うて御座る」「実は私も感じて始めていました」
「わてもや日の本の夜明けどす」「口に出せんかったでごわす」
「コロンブスの卵とか申すのやのぉ」「そうぜよ開かにゃ日は昇らんぜよ」
この夜から密かに速やかに少しづつ そして確かに世間も気付かぬ内に
勤王派が佐幕派が裏表なく開国派へ変貌して行った
高位の藩士で仁道を心得ているとは言え 大藩の属支藩の如き扱われる
弱小藩で腕に覚え有りとて代々算盤侍と蔑まれ藩財政切迫の折
自ら進み水飲み侍と成った男が百姓・職人や有力商家の手伝い
時には鳥追いに連れられ脇浜の忘人漁師と海に潜り
馬に乗せてもらった礼にと忘里では鞍覆いの燻し等をし乍ら
旅に賭けた理由は 誰も口に出来ない混沌の世に其の一言を其の小唄に
乗せて命を賭して唄わねば帽子の似合う者になれないとの一念からだった
「尊王開国派の唄がたった今 生まれ申した  いざ ・・・・ ♪ ええじゃないか
  ええじゃないか よいよいよいよいっ しょうじも あまども あけたまう
  ええじゃないか ええじゃないか よいよいよいよいっ いわとは にどあき
よをてらす ええじゃないか ええじゃないか よいよいよいよいっ ♪」
と それから用を済ました男は何もなかったかの様に満月が足下を照らす
来た道を家路へとついたのである 頭は帽子が似合う散切りに変わっている


一首:鳥と飛び いしんをかけて いあんあり ええじゃないか ええじゃないか
一首:生くる為 人は生まれた わけでなし 今日の業なし 明日の憩い

後書:浮世は声無き声より始まる事の方がはるかに多し 民意と言う
詭弁や便宜的方策では溜りを越えたそれ以上の仲間は増えぬ世は動かぬ
                          ('01/4記)
*算盤侍:勘定番家老職・勘定役・勘定方を侮辱する言葉
*足袋:身分・状況により綿・麻の生地や色の違い及び素足と決められていた
*悪用されぬタイミングで「平成経済維新」をその内に新主人公が発すかも
余興4:今に至る諸々有れど近代の始まりの頃 明治維新の立役者達を支援
参加して呉れた鳥追い それに飢饉や混沌で身売りを余儀なくされた
下級公家・武家・小規模自作農家・小作人農家出身の遊女を丁重に遇し
中には正妻や養女にした御歴々も少なからず居た


路地裏の魔女\三百歳  
@街々の接点に一際高く聳えるグルメに人気の「天空の帆引き網ホテル」
フロント近くのソファー横で其ホテルの親会社の総務系幹部 鰆達が
彼方此方に目を配らせている 手を上げる鰆達「・・どうも」
一礼を返すタレント カルプヘンドルフ「オハヨウゴザイマス」
少し間を置いて誰にも気付かれずにフロント前に立っていた特命外交官
イクラノフがソファーの前に来て囁く様に「・・コンバンハ」 其時
ホテルの正面玄関の方から息せき切った奇人グランドデザイナー鮨村が
遣って来て殆ど声を被せる様に大きい声で「いゃ〜皆さん遅れましたか
ラッシュだったので地下鉄3本遣り過ごしちゃって・・ははっ済みません」
イクラノフと目が合うと声を落して「あっ昼は どもども・・」

Aホテル内和食「鯛家」の一室
男達は黙って箸を進めている 時折鰆達が日本酒の説明をし
カルプヘンドルフが相槌を打っている
各自下手な英語をメモに書き乍ら将来の世界観や各自の専門分野に係る
事業の展望を無表情な会話で解説し始める頃 食後のデザート皿が
座卓に置かれた そこには色とりどりのフルーツに混じって小さな
輪切りの蜜柑が済まなそうに添えられていた・・・・
  鮨村が突然「何時もと違い今回は魔法使いの様に数百年生きるを
緊急テーマにと思いますがどうですか」と言うと唖然とする皆・・
鮨村は昼のイキリキ蜜柑を思い出していた

貿易新事業関係の研究検討依頼の事務的方法を聞きに
減量灘ビル外洋系陳情溜のソファーに腰を落している二人
テーブルには日本茶が注がれた小さな お茶碗が三つ
鮨村「では毎度忙しい処 大変失礼致しました」
イクラノフ「ケッコウナ オ茶デシタ有リ難ウ御座イマシタ
失礼イタシマス」
先に出ていた秘書 棚川が戻って来て「まーまー 何も無かですが
こいば食べて行かんですか こいは違うとですよ」
二人「・・・・」
棚川「こん小さかとは私の出身と同じ海鼠湾に面しとる
イキリキ磯界隈のもんですばい」
イクラノフ「イキリキ・・」
鮨村「死に掛けた旅人が こいを食べて生き返るチカラを貰たちゅう
霊験あらたかな縁起もんと言われとる蜜柑・・ですよ うんっ美味い」
棚川「長寿三倍の生命力に通ずると言われとっとですよ」
イクラノフ「ホッ本当デスカ」
棚川「まー食べてみれば分っとですよ どうぞ」
イクラノフ「・・ウーンッ ソコハカトナク チカラ強ク ナッタ様ナ・・」
棚川「ほら こん段ボール箱に山の様に有るですたい さーさーもっと
食べて下さい・・もっと食べんと 私も一つ ・・
もっと食べんと減木にされるけん・・・・」どんな話をしても只微笑んで
いるだけの初老の秘書 棚川が其日は二人には どことなく
街に下りて来た お大尽の微笑み漂わせる悲しき仙人に見えていた

Bホテルを出てハイヤーで少し離れたビルの奥に在る
「フロアー タイラギ海」
鮨村「人によって植えられた蜜柑の木が有る 自力で育つチカラも
有るのに其木に触れた事も無い身勝手で先見の無い人によって寿命
半ばで捨てられる為 切られる時 痛いと泣くのでしょうか・・・・・・さて
私達人間はどうでしょう・・確かに私達の事は人知の及ばぬ事かも
しれません ・・人は死に向かって生きていると言う者もおります
木にとって人が寿命を決める神其物です 巷にはいい加減な偽物の神
もいるようですが ・・いい加減を除き襟を正してみたらどうでしょう
本物の神様は人類が自力で技術によって それを少し運営する事を
認めて呉れるかもしれません ・・ようは正しく生きた者には数百年の
命と言う ご褒美を頂ける事も可能だと言う事なのです」
一同「・・・・」
鮨村「取あえず文化文明を具体的に三百年先迄見据えられるとの前提に
いや三百年後の我を振り返った時 人類の世界基準としての価値観を
理解出来る今からならば三百年ぐらいは違和感が無いだろうとの前提に
三百歳を寿命とします・・では どうやって三百歳の命を持つかとの方法
ですが ・・えーっ先祖の作為無き真実を掴む事に因って 例えばビデオで
一人の祖先 此所では自分の事です・・誕生から肉体的死迄を飛石状に
何人かの子孫を追う事で自分の肉体的一生を子孫に繋げる・・飛石状とは
自分の肉体的生の状態の時の子孫を含めないからです・・
此れは心的クローンでは無く 進化する技術的限定的輪廻転生と言う処
でしょうか(中略)
『このビデオを見ている私よ』と語り掛けられた数百年後の子孫が
自分は数百年生きて来たんだと感じる事は容易です
我々は未だ見ぬ自分の子孫が自分の延長線上に在ると限定的記憶に
受け継がれて行くので人生マインドは平均寿命八十年から三百年へと
進化出来るのではないでしょうか ・・えーっ自分の肉体的寿命が
尽きた後の子孫なら誰が自分に成ってもいいのですが 出来れば同性
の方が良いでしょう そうでないと男性的女性や女性的男性の性格に
転生してしまうかもしれません」
・・「まぁあ オーマイダーリン 嫌だわ」と男っぽい年長のホステスが
中指を立てて言うと 可笑しさに皆は喉が詰まりそうに成り乍らも
必死に笑いを堪えた
鮨村「・・・・えーっ・・勿論仁道に反したり 嘘 ハッタリ トリック
トラブルを煽る憎しみの記録やメッセージをビデオに入れていては
輪廻転生処か子孫から墓参りの儀式すらされなくなってしまうし
系譜から消されてしまうかもしれませんですね 各自の純粋宗教との
整合性も必要ですね・・もしかすると子孫が自分の事として一番喜ぶのは
愛情の件でしょうか」
「はははっ言えてるわ」と誰かの放ちに 我慢していた皆はドッと笑った
喉を潤す鮨村「・・まーっこういう事で人生三百年と思えば寿命も気楽に
受け入れ易いでしょう・・家庭環境 宗教 民族 国籍 職業 教育水準は
条件に当てはまらないのですが 詭弁無き真面目さが地球人としての
客観的正しさが限定的輪廻転生の絶対条件です・・が此れは難しい事じゃ
ない 問題が有るとすれば将来子孫が何処でビデオを見るか解らない
ので 余りアクセントの強い方言を使用しない方が良いでしょう」
処々訛りの強い言葉の意味をホステスに教えて貰い乍ら聞き入っている
イクラノフ 只黙って目配せをし乍ら聞いている鰆達 黙々と酒の
品定めをし乍らのカルプヘンドルフは問う「・・子孫ノ事・・子供ガ居ナイ
人ハ ドウナル ノ デスカ」
鮨村「此れは遺伝子の話ではないのですクローンでも有りません
だからと言って難しい学問でも有り難い御坊様の法話でも有りません
・・えーっ・・単なる応用術・・そうだ・・神の子を養子にして肉体的最後迄
実子の様に育てればどうですか 自分の未だ見ぬ子孫の大切な仕事は
墓と一緒にビデオテープを伝える事ですから・・どうしてもの時は親戚や
信じられる友人のビデオに間借りしても良いじゃないですか DNAは
特に必用な問題じゃないと思いますよ・・愛は万国未来永劫不変の価値観
だと言いますから・・親子関係の形態の違いが親子の愛情に違いを作る
因子になるとは考えません・・・・OKです・・か」
カルプヘンドルフ「ヤーヤーッダンケシェーンです」

Cフロアースタッフの全員が寄って来て飲んでいる
場を盛り上げなければならないホステス達の色紙に場を盛り上げようと
何かを描き乍ら彼女達とウイスキーとワインを交互に品評し とうとう
イクラノフが各位の土産にと持参した持ち帰り用のウォッカを開け
始めた漫画の得意なタレント カルプヘンドルフ
・・と・・其時 特命外交官イクラノフは流れて来たメロディーに大変驚き
それまでの壁の様な固い顔が崩れ笑顔に変り そして胸に手を当て
総務系幹部 鰆達に一礼をすると「いいえ此方こそ」と礼を返す鰆達
それからライブが終るとホステス達とスタッフも含め
満面の笑みとシャンパンで改めて乾杯をした
会合以外日頃酒絶ちしている奇人グランドデザイナー鮨村が
イクラノフの笑顔につられて ほろ酔いに任せて次の展開の話を始める
とイクラノフは目を輝かせて聞き入っていた・・

其日の酒宴主催の鰆達が其頃日本では未だ知る者が少なかった歌を
フロアーの専属歌手にリクエストしていたのである
「♪百万本の薔薇の花 アナたにアナにアナに上げる〜」



一句: あなどるな 小さな配慮 山椒ノ実
一句: 初花月 丑満つ時に 蕾の芽
一首: 豪気だな 洋の東西 愛あれば 百万年も咲いてみようぞ


*神の子:この項の場合 親の顔と名を知らぬ子は天より預りし子の意
*タイラギ:羽箒貝科の貝柱が極美味の二枚貝 同音異語の"平らぎ・成"
は憎しみを掃除し仲直りし戦乱も世の乱れも無い和を持つの意
*自殺 特に他人を犠牲にする者 やたら民間人に銃を向ける軍
子供が軍に石を投げさせる風潮を改めぬ誰か それらを煽る者
このままでは地図から消えるか大王連邦方式しかない所で それを
知らないまま行動する即席仲介者等には この限定的輪廻転生のビデオ
メッセージは訳有りて無効となる
*大王連邦方式:紛争地(国)で複数の実態権力(政府)の上に権力無き
不変の絶対権威の新王を招く又は王室復活とし権力者と其取巻きの
暴走を防ぎ平安へソフトランディングする方式 特に片寄った宗教
民族 イデオロギーの郡体に代わる長期特殊紛争地向けの特別のもの

後書:昔 難しいプロジェクトに協力すると冷たい目や嫉妬心で見られ
時には干され裏切られ足を引っ張られマッチポンプで追い立てられる
複雑な季節の中 互いの身上を弁え能力に合った他力本願に救われる
人それぞれの人達がいた そして一通過点を通った後十年以上も例えば
来日の仲間との面会妨害や死ぬ程 心身が疲れ果てる思い出したくない
流転寒波の風圧を受け続けても不運を恨んでも仕方ないと何事も
なかった様な顔をして如何なる現実の中も今迄通り常に自分の意志で
プランニングし今も満身創痍のまま目標に向かう準備を練る頑固一徹な
奇人鮨村は間合いの無さを間抜けと読める故 他流試合をしない
普通の浄土真宗門徒で普通の自由民主主義者である
・・内容中身無き宣伝の為の大宣伝をするの風潮が跋扈する如きの
昨今とは言え無気力シンドロームに見舞われていても水鳥の水面下が
分る人同士謙虚に助け合えているかと自問す・・
気付かぬ怠り故の失われた十年の失敗に続く混沌の何でも有りに
沈む浮世の政狂一緒の錯覚を誘うを知る合法的不道徳の季節
欠伸してしまう不可思議で信じ難いものが増殖中と思える程の
各種人気投票世論調査市場アンケート等の類 思わせ振り 便乗 絡み付
何にでも真似る類 思い込みの結果を砂上の楼閣と知る
('02/1更新)










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