(3)<br> 踊るカウンターA & 路地裏の魔女37江戸三開城 & 映ろふ<br> & 踊る遠近 & サバンナ& まっとう伝 & 路地裏の魔女]サンダル & 南洋小夜 (3)
踊るカウンターA & 路地裏の魔女37江戸三開城 & 映ろふ
& 踊る遠近 & サバンナ& まっとう伝 & 路地裏の魔女]サンダル & 南洋小夜





踊るカウンターA  
@ビルの屋上で少し大きなコンクリートの塊を
中年のドイツ人が金槌で叩き割り破片を男に渡し
「有り難う…」と一言って微風吹く空の彼方に目をやった
受け取った男は黙って手の中の破片を見て微笑み辺りを見回した

Aコンクリートの破片を貰う少し前の都心の和風高級カフェ
男が会談の記憶を亡くす程度の毒を盛られても記憶し続けたのは
産まれつき良くも悪くもある特殊な体質のせいではなく日頃のメモ魔が幸いした…

東京に幾つかある不夜城街の一つ当時珍しかった24時間の普通のカフェのカウンター越しに
ベルリンのコンクリート壁を壊している群集の映像を見ていた男は以前毒を盛られた時の不快な
閉塞感を暫し忘れていた…各仕事期間に数年以上の差があるがグランドデザインは1人で表現発表
するからこそ総論賛成各論反対と成らず無茶なく連携できる複数の企画を抱えながらも 盗み見され
つまみ食いされたり破壊されたり幾度も煮え湯を飲まされるような妨害を受けているゆえに
同じ月でも其々の居場所により とても月光煌くと感じる時の気分爽快は例え様がなかった…

B壁の崩壊から数ヶ月後も東亜系を含む黄色人種だけでなく日本人然とした者や
あきらかな(旧)東欧系を含む白人の尾行も相変わらずだったので
ロシアや仏やイタリア等幾つかの国の大使館へは男は資料だけを届けた

米国へは直接大使館へ挨拶する為に出向いたが其の時 大使館敷地に入って領事部入り口を
横に見ても男の尾行を続ける中年の男の姿は文化人の男の目にも明らかだったが
外階段上の大使館入り口を入り海兵隊衛視が立つ荷物チェックと訪問受け付けカウンター上の
窓ガラスを凝視したが映っていたのは外階段と其の後ろの庭と壁だけだった
「(尾行はここまでは入って来れなかったようだが敷地内に簡単に入られるようでは
ここも安全盤石とは言いきれないな)」と受け付けカウンター裏のモダニズムロビーの
ペールトーンのアームソファーに座し予約人が来るまでの一瞬 安堵と不安が交錯した・・

Cそして客観的判断の紳士淑女と信頼される英国の大使館へは
敷地内の如何にも英国風な落ち着いたブライトトーンの大使館員家で
ダージリンティーを頂きながらモニターを必要とする理由を吶吶(とつとつ)と説明した・……・
その家の隣室のダイニングにいた家族には申し訳ないと思ったが互いの身の安全の為に時間を稼ぎ
夜遅く館員の家を出て大使館員から聞いたとおりに薄暗い裏木戸から出て路地裏を歩きながら
…長い人生では人は立場の違いはあれど幾度となく必要にかられる事象に出くわすだろう
問題は気付くか気付かないかで気付けば誰もオリジナル企画の立案者と成りうるもの
男が文化人としての企画者ではない この10数年前 モスクワ経由の飛行機内でインド人青年の悲しみを
感じ その無意識悪の存在を気付かない人達に自覚を促したのが最初の企画だったのかもしれないと
あの自信に満ちた眼光鋭き自身や出遭った人々を思い出していたが程なく後ろを見い見いしていると
段々と増殖中の ずるく卑怯で紛れ込んだ調子者を跋扈(ばっこ)させている世間に目を瞑(つむ)り
時代に奉仕する意味があるのかと歩き疲れては曾祖父や親父達がしたこと得たこと その先祖から
  受け継いだ損な敏感敏捷(びんかんびんしょう)の心構えゆえかと自らを重ね合わせていた
所詮 自分も そこいらに転がる石っころなのだと…時代の要請に人が人らしく生きようとすれば
何の感慨も無い方が楽だ そこいらの小さな石っころに成るのが楽だと心の鎖を重く感じ
自覚していたような巌と成れるのは特に運の良いものだけで多くの人々は小さくなって後は
踏まれ砂粒と成り土と成る 幾年幾10年後も幾つかの節目を通りすぎれば我も末路は砂粒と
思いつつ…外国の炭坑夫が御守代わりにすると貰った小型棍棒を忍ばせた書類鞄を背中に
担いで夜道を闊歩(かっぽ)し 盗聴器の付けられていた自宅コーポラスへは2度と帰るまいと
眠りと歓楽雑踏の隙間の暗くならない夜陰に今宵の塒(ねぐら)を求め溶けこんで行った












後書:時代の荒波を本意にあらず被った たかが文化人だが史実も重い省略を含むと小説となる…
例えば露の経済発展を日本方面から遅らせようとすれば領土問題等の解決を妨害すれば簡単なように
当時は米露を争わせていたいと考える人々がピークであったが今はいないとは言い切れない…小説で
  …人は誰にでも状況の違いはあるが自身に重要度の高い節目節目は避けて通れない自分史がある
                                ('09/05記'09/09掲載)
余談:「革命戦争の結果ウクライナの海軍基地を得たのだとか第2次世界大戦の結果日本の北方領土が
露国領に成ったと旧独裁覇権主義を懐かしむ一部の大衆受けを狙った発言をしなければ成らない程
政治的脆弱で古びた露国ではないであろうと言える確固たるものが見えて来た…在日米軍ですら
共産党ご都合主義派と其の友党テロリズム派への備えを除けば縮小の方向…
例えば冬季の暖房燃料等で難渋のウクライナを虐めたり海軍基地の完全居座りの必要はないであろう
5年計画で基地規模半減出来るし日露の平和条約を結べば露はNATOのメンバー国として重要な国と
成っているであろう」等と文化人の男が今 露国大使館へ伺うならば針葉樹の壁がシックなロビー奥の
綺麗な窓カーテンがあるビビットトーンの小部屋でロシアンティーで一息つきながら
道義的本題の序(ついで)の小説で余談を話しているかも知れぬ

一首: 国民の たゆまぬ努力 それぞれに(下の句は各位御随意に)

アフガニスタン特需:桶屋経済学では特需への投資金は全額帰らぬものだが
才能に反比例する欲深き代表格の麻薬シンジケートを含むテロリストを撲滅し
得られる文化施設等や農業復興や中小産業革命的拡大はアフガン内国だけでなく
全世界的に思いも及ばぬアフガン特需を生む(関連してアフリカの角にあるイエメン・
エリトリア・エチオピア・ソマリアの沿岸地域に海賊監視所と半農半漁の試験場建設)
しかも資金はある在日米軍への思いやり系全予算額とインド洋上給油作戦予算全額を以後
ゼロにして得る全額と政府投資責任ファンドよりの資金で特需とメンテナンス期間は賄える
路地裏の魔女(38)LAGより繋ぎ読めば中途半端でない国家的特殊支援と特需(要約)から
経済薬害誘因の自殺者を半減させる事にも気付くであろう 尚 日露をX式で解決するなら特需2つ
更に米国政府と内外官民が全保険業低額医療保険部門への投資で会長社長と部門責任者には政府委員を
米国人未加入者には義務保険の安心をで持続的努力は特需に似た世界的高度成長景気を生むであろう
が遅々として進まない地球温暖化と無関係ではない色々な感染症対策とて世界の縮図である米国の
医療システムの窓口で多くの国民を医療から遠ざけたままでは何処にでも入り来る危険に対処できない
尚 軍人や海上保安官や警察官・消防士・政府農業・建設協力隊員は危険手当ある程 当然危険でも
要備え(外国からは麻薬情報収集専門の中央アジア連帯軍参加も可能だ)テロ支援者投降促進期間の
一部を和解期間と呼ぶを王室が黙認するは蛇足か否や…様々な対処・予防は可能と説く人 今は天の目

一首:たちまちに 天が残した 獅子衣(下の句は各位御随意に)























































≠≠≠≠ 路地裏の魔女37江戸三開城 ≠≠≠≠



♪薫風香る若き海が夏風ぇ〜
入江を越えて松風とぉ代る変り身ぃ
涼しげな〜江戸の草木を喜ばすぅ〜
『かかさまぁアレが千代田の宮城(きゅうじょう)で御座います』
『…生きているうちに観られるとは…
嗚呼 孝行息子を持つ私はホンに幸せもの』

ビュ〜ン ビュンビュ〜ンと
幾重もの風薫る東京城の黎明期
日比谷の入江が黄金垂れる千代田間近に
迫っていた頃の ささやかなる風情を御話し申し上げます

パンパンッ(扇子で演台を叩く擬音 以下同)

江戸開城と言えば明治維新の其れがあり
太田道灌の子孫から当時の新田源氏徳川家康が引き継いだあれもある

パンパンッ

処が太田道灌以前に江戸重継が築いていた館も
東京城の始りといたす事が出来ますならば
そこには もう一つの開城が存在するのであります

パパンパンパンッ

では何故 江戸氏が この地に築城したのか 眺めが良かったからか
いや違う 其れは当時の混沌とした下克上の始る情勢を鑑みれば
櫓代わりの高台の淵に館を持ち背後を空掘に見立てた沢に囲まれ前方が
入江となっている天然の砦を城備えとして手を加えるのは当然でありましょう
ちなみに入江付近に居城する荘園領守だったが為に江戸氏と呼ばれたのか
入江口の地名に由来する氏名なのか定かでなし〜それは其れとして千代田 広がる所の丘の上に
江戸重継が最初の城の礎を築いたのであります

パンパンッ

A

重継と言えば桓武天皇の御子であられる葛原親王
葛原親王の御子であられる高見王 高見王の御子であられる平高望
平高望から平良文 平良文の子であり又 平将門の従兄弟である忠頼
忠頼の子 平将恒と続き其の孫 武綱の子で知知夫英彦命の末裔を
母とする重綱が起した秩父氏は
彼の九州渋谷流れを汲む東郷平八郎の先祖筋にもあたり
秩父氏と言えば平安時代に京の命を受け総検校職として
現在は荒川と名が変わった入間川全域に勢力を誇っておりました
そして重綱の四男である重継が分家されたが為に秩父江戸四郎とも
分家された初代だから初代江戸太郎とも呼ばれた家が誕生し
南の要として承安五年 西暦で言います処の1175年
平清盛が神戸に新しく港を開く時の無茶な其の収税や使役で国中が
荒れた年の翌年 不穏曇る頃に秩父一族の有力砦として江戸城の
第一次築城がなされ江戸重継の居城とあいなりました

パンパンッ

だが城には時代が進むと前・北条得宗家より領地を奪われ
江戸家が北条家より預かる支城として
城代の江戸氏が住まう館の扱いになっておりました

パンパンッ
しかも室町幕府の時代に入りますと江戸氏の勢力は前・北条家に
領地の多くを接収され家督がガタッと弱まっていました処に後の
鎌倉足利公方家と上杉関東管領家の争いで江戸本家は負ける公家方に付いてしまい

パンパンッ

してして彼の上杉謙信から数先代の管領家上杉顕定(あきさだ)の対等分家の執権にて
破竹の勢いの有力大名であります太田道灌に江戸城を明渡す事になりました
これが この一節で言うところの もう一つの江戸無血開城であります
ちなみに もし強すぎた道灌が主家筋から恐れられ暗殺されなかったら
北条早雲の台頭すら有り得なかった と言われておりますが
もしもがないのが歴史の信実であります

パパンパンパンッ

B

それから江戸城第二次築城の道灌 死後は一時 上杉管領家分家の居城となり
後・北条氏の支城と扱われ太田家が江戸城代の一人として就いておりましたが
彼の有名な豊臣軍の小田原攻めに連座して太田本家も
ご多分に漏れず時代の渦に飲み込まれて行ったのであります
更にもう一つの江戸開城で御座いました

パンパンッ

哀れ成り高名が故(ゆえ)の流転であります
しかし太田道灌の血を受け継ぐ幾つかの太田分家は生き残り
其の中の一家が徳川家姻戚となり旗本から譜代大名太田家として何とか再興し
又は他藩の有力者や豪商となり其の後の江戸城第三次築城や続く大改修を
見つづけたのでありましたが故に太田道灌の名前だけが
特に目立つ存在になったのでありましょう

パパンパンパンッ

更に更に桓武天皇から関東平家 秩父氏 江戸氏と続いた血統は
喜多見と姓を変え艱難辛苦の末に…頃は大阪と沖縄の昆布商人が
馬の目を引き抜く如く競い合っていた蝦夷…其の遠隔地故に
一大拠点を函館藩と揶揄(やゆ)された天領に勤番し一時は総取り締まりの任にあった
松前藩の宿老として幕末の五稜郭と呼ぶ函館城の開城に関りながら
又 清和天皇から摂津源氏 太田氏と続いた中の
分家の一つが薩長土肥連合の鍋島太田家として中核を担い
烈風吹きまくる明治維新に関りながら明治天皇御入城前の江戸開城と函館開城を
桓武天皇末裔の江戸氏と清和天皇末裔の太田氏の
両家が血統も見守っていた事を付け加えさせて頂きます

パパンパン

C

してっ幕末維新の江戸城明け渡しで御座ぁる〜
『江戸の御城は広うおすなぁ』
『…西郷さんも そう思われるか』
『岩倉さま山岡どん二条の御城より ちぃとっばっかし広うごわすなぁ』
♪そこに 小柄ながら凛とした方が参上してぇ一筋発すぅ〜
『広いと言うても天の心の広きがおさまれるかぁ〜
蝦夷から琉球まで 弁(わきま)えた人々が信じる御旗は
人が道なら何処へでも〜 天が城とは この神衆仏衆 日の本すべてと存知られぇ〜』

パパンパン

脇に一言それますが山岡とは誰あろう
京の治安の為にと彼の新撰組の前進である浪士隊の結成に参画するも
そのやり方に納得がいかないで逆に潰しに掛かった信念が志士の小野鐡太郎高歩にて
彼が時代を読み直し結局は江戸無血開城を官軍と幕府軍に根回しした張本人であり
後に侍従にまで転身した鞍馬天狗のモデルと噂された飛騨の大天狗の異名を持ち
其の明治の大御心をして「最後の侍」と言わしめ人生幾度も生き抜いて来た山岡鐡舟その人とて
二条より一本筋の通った時の総司令官とも言うべき三条実朝卿には叶わなかった・…
・…ウッホンッ

パパンパンパンッ

さてさてぇ〜この江戸三開城の総べてが無血開城で御座いました

パパンパンパンッ

時に吹く風はサラサラ〜
サラサラ サラサラ サラサラと時は現代に戻り
二十一世紀の東京に涼風を生んでいるのは
昔より入江 川風 涼を納めると申します数百年の山吹の里や
町並みが如何に激変しましょうと今に来て未来に向う千代田 数千年の風道が
もう変わらぬ万世一系の緑の主に安心集合し
 いつも天然に気付かぬうちに教えられている人知が
時に揺れ戻させる吹き流しに守られているからであろうと存じ上げ奉ります・…
♪これにて講談 平成が江戸の風通し〜 御清聴 有り難うぅ御座いぃましたぁあ〜














一首:あおによし 江戸の盛衰 薫るなら 風よ通れ錆びの大手門
一首:いにしえの 平家に下りる 天つ風 滝を通りて濠から広ぐ
  
宮城(きゅうじょう):皇居 宮殿 御所 国事御司 日本御田御学門司 御養蚕司
  御苑公園含め東京城 千代田城(江戸城は愛称)
  正月一般参賀時に誰でもが徒歩か車椅子で渡られる二重橋
      首都域をカバーする空気清浄機能を持ち明治に始る世界初の動植物の為の里山サンクチャリー
皇居外苑から東御苑を通り北ノ丸公園 千鳥が淵へと続く散策緑帯ゆえに野鳥に捕食され難い昆虫群
国宝重文化財保管修復含む書陵部 尚蔵館 借景千鳥が淵対岸 古品種果樹新園
山岡鐡舟(やまおかてっしゅう):小野鐡太郎高歩(おのてつたろうたかゆき)
飛騨郡代の子 武芸者 幕府若年寄格 庶民派の子爵として天寿全う
後書:流石に この項は取材や青年期迄の勉学では執筆構成編集は叶わなかった
考証の為にホームページ「宮内庁」「大名家系図」「華族系図」「江戸城」の文献を参照した
            ('07/10記'08/5前掲載)
追記:ネットの特異性は掲載時に追加可能な処である

追首:通じぬは 青葉病葉 路ふさぐ バベルの塔を天引く天下
追首:目に映る 天下平等 葉桜も 草履大尽 下駄小僧とて


























































oO○ 映ろふ oO○
(再掲載)

@何のへんてつも無い とある地方の大型総合病院 出入り口附近の喫煙所
通院患者や職員の通行を よそに・・下流域の度重なる干拓に呼応してか
ひ弱な川の流れの方に沈む夕陽を暇そうにボーッと眺め乍ら一人スパッ
スパッやっている不精髭の入院患者 そこへ脚に石膏を巻いた患者が杖を
ついて やって来る「やあっ こんちゃー」「・・どもっ」「そろそろ退院ですか」
「うーんっ・・只の小さな石っころ採っただけだからね」「それにしちゃ
腹の縫いしろは大きいですね」「みぞおちから臍のちょい上迄だからね」
「快復室じゃ元気過ぎて盲腸術後 麻酔の切れた若い者の半べそに母親が
あの平気で新聞読んでる人を見なさいっ・・元気過ぎる患者とか何とか・・
噂ですよ」「精神安定剤を飲んでいたかも知れないし・・ああーっあの時は・・
吹き出しそうな新聞記事を読んでいた時の事だな」「・・で退院」「そう・・」

A隣のベットの虚ろな目の老人患者の食事中・・喉を詰らせる 付き添いの
女房がナースコールをしても看護婦は なかなか やって来ない 焦る病室の
空気・・不精髭の患者がひらりっと其の隣のベットに飛び移り老人の背と頭を
曲げ右手で胸の下を軽く押さえ左手でポンッと背を叩く・・仕えた物が口から
出て来る一度目は居合わせた病室の皆に向かって自分の鼻の前に人差し
指を立てるが・・とうとう一週間後の二度目は低く重い声で「看護婦さんっ
忙しいと思うが・・優先順位を考えて もう少し早く・・ねっ」と言った

B退院の日 残る喫煙所仲間の患者の脚の石膏にアイあい傘と其の中に
患者と其の患者片思いの看護婦の名前を落書きする・・「一つお願いが有る
自分が最初入室した検査の為の内科病棟で酸素ボンベ牽いたお婆さんが
トイレで手を洗っている時 鼻からチューブが外れパニックに成っていた・・」
「えーっ大丈夫だったの」「・・偶然自分が居合わせたから『心配有りませんよ
慌てずに・・此れを・・こうやって・・とっ』・・鼻にチューブを差込直したから」
「分かったボンベ牽いた ある種の患者を一人でトイレに行かせるなとっ」
「世話かけたくないから一人で行こうとする患者も」「注意されたしと
言っとくんだね」「そっ・・保険の入院日数を稼いだと誤解されている自分が
これ以上 変な目で見られると迷惑かける人も居るので・・」「分かった此方も
来週には退院だから・・もう会う事も無いだろうけど面白い思い出に成った」
「何とか上手く言っといて・・頼みますよ・・」「・・・・はい」

C退院の1週間前 病院外の喫茶店の電話「そうです もう少し退院を延ば
したいのです・・」「・・そりゃ体調が悪けりゃ退院は延びっでしょ・・体調が
優れないのなら 仕方なかですな」「すみません そんな処なので・・」「分かり
ました院長に電話入れときますよ」「申し訳無いです秘書さんのお手を
煩わして」「いえいえ・・(何か有るだろうが)退院は体調次第ですよ体調次第」

退院の前日 病院正面階段の踊り場 副院長「術後の経緯ですけど・・癒着が
・・あるかも知れませんで・・よくある事ですから・・」「へぇーそうですか」
「・・処で院長とは どういう関係何んですか・・」「・・はぁー何んの事ですか」
「・・いぇっ何んでも有りません」「・・・・」
  嫌味とも取れる"ゆちゃく"の言葉に不快を感じさせられた不精髭の患者

退院の二日前 あの隣の老人の3回目の喉の詰りが有った時 吸引ポンプ
を押して若い看護婦達は速やかに来たのだが 詰り物を なかなか 吸い出せ
なく 患者の必死の苦しみに時間だけが刻一刻と過ぎるのに とうとう
見かねた不精髭の患者が背中を強く叩いて粘着性の物を吐き出させたので
ある・・そしてパニック状態になすすべを忘れた若い看護婦達に唸った・・
「今度から此方の患者さんの喉が詰ったら速やかに医師か婦長さんを首に
縄をつけても引っ張って来て下さい・・自分の命だと思って・・速くですよ
早くね・・ここに居る人以外は知らないですから誰にも他言しませんから
この事は・・自分は此方の方の付き添いじゃ無い近日中に退院する身です
・・お願いしますよね・・ねっ」男は泣き乍ら他人事じゃ無いと頭を下げた



後書:変な患者と思われた不精髭の男は この手術入院以前の ある時から
重なる心労に因ってパニック障害を抱え・・子供の頃 自身の父を癌手術成功
後の即日の喉の詰りで失い・・そんな親子2代の不運人生でも そのうち運が
良けりゃ治るかもしれないと仕事をし乍ら生きているを知る者は少なかった
そして既に時効 単なる個人歴史の塵を最近の浮世の隅々に及ぶ勝手放題
モラル低下の跋扈に振り掛けん   ('03/5更新)




一句:それでもね 小さな結石 いじもある
追句:白床や 窓の外見る 子等は何処
追句:さほう有り 身体に似合う チカラ餅




oO○ 踊る遠近 oO○
(再掲載)

@ファーゴ 街外れの住宅街
「ハッ ハッ ハーッハーッ ハッ ハッ ハーッハーッ」初雪の降る朝
其の日本人留学生は裸足でランニングをしていた 昨夜泊った友人の家が
建つブロックの回りをもう何周したのかも分からなくなっていた
道着の下にトレーナーを着ていたせいもあって身体はオーバーヒートぎみ
だった 学生は小学生の時結核を患い日本の学生の時には火炎の中で
熱風を吸った体験が遇った為に異常に呼吸器系に用心していたから
小心者の学生は自分でも無意味と分っていても余計と思うトレーナーを
着ていたのである それとはチグハグの雪中の裸足は近辺の人々には
異様に映っていた・・・・

A家々の団欒と祈りの頃 学生センターの電話
「・・あっはいっ・・居ますよ一寸待ってね」受話器を置いた職員がマイクで
学生を呼ぶ「・・・・おーいっ起きてるの寝ているの以前うちに居たアハリ
さんから電話よ・・起きてるの・・」 だらしなくソファーに掛け真っ赤な顔
してアイスクリームを肴にアルコールが薄い超ライトビールをチビリ
チビリやり乍らホールのTVでニュースと終日流される軍への
ギャランティーCMをボケーッと観ていた学生がオットリと振り向く
「は〜いっ僕は此所で〜す 今行きま〜す」「其の電話よ」「どうも〜
皆様の僕〜です・・よーアハリ暫く そっちはどうだ」「知らない人ばかりで
気疲れするよ・・・・・・少し辛い思いをしている」 疎らなホールの中で奥の
アームチェアーに深々と腰を落とし一人分厚いペーパーバックスを
読み耽っているブロンドの頭を見つけて「・・そうかー・・丁度ガブリエルが
何処かドライブへ連れてってくれって言ってるから近いうちにドライブ
がてらファーゴへでも寄るかな・・」

B街で人気のメキシカンカフェ
ガブリエル「何だよーアハリの妹は兄貴に似てなくて美人だと言うから
付き合ったんじゃないか人妻だ何て言わなかったじゃないかジャップめ」
日本人留学生「クックックックッ・・そうか 悪ぃ悪ぃ旅は多い方が楽しいから
・・でも美人だったじゃないか」
ガブリエル「そりゃそうだが・・くそーこの○×△野郎」
アハリ「ガブリエル 済まないね」
ガブリエル「いゃいやアハリに言ってんじゃない気にしないでくれ
  この○×△野郎の日本人に言ってるんだ」
アハリ「それにしても電話した週に早々と この遠い転校先まで来てくれて
有難う 祖国での革命の余波の大使館人質テロ事件で肩身の狭い思いを
していた我ら兄妹に・・自信をくれて・・何と礼を言ったらいいか」
日本人留学生「・・いや わりと近かったよ偶のドライブもいい息抜きになる
・・それに僕らが自信を届けたんじゃない 革命が嫌でこの自由の国に
新天地を求めて遣ってきた君等が意思を持って自分の立場を見詰め直した
だけさ・・殆どの事が自由に手に入る知識と自由な思考で君等が頼りに
される時が決っと来る・・この国は地球の縮図其の物だ そうだろう日本人や
スカンジナビアとコラのラップ人と顔や酒の酔い方がソックリの部族が居る
ネティブアメリカン 恐い盗賊バイキングや泣き虫夜逃げのメイフラワー号
や象牙海岸からの素朴な奴隷以来の世界中のほぼ総ての民族の坩堝
それがアメリカだ・・」
アハリ「・・分かっていたんだが自信がなかったんだ・・ 心から感謝するよ」
日本人留学生「礼を言われる程の事じゃない・・それに此方こそドライブイン
代わりに泊めてくれて有難う ・・所でそろそろツインシティーヘ
戻る時間だガブリエル」
ガブリエル「ちょっ一寸待ってくれ あの娘の電話番号 未だ聞いてないんだ」
日本人留学生「やれやれ あのウエイトレス嬢独り者ならいいがな」
ガブリエルとアハリ「・・・・・」

C三三五五のキャンパス広場
ファーゴから戻った日本人留学生は相変わらず何時もの憎まれない調子良さ
である 偶々寮が隣のアラブ系で冬が来ても夏服の上に重ね着している
留学生に声を掛けている「おーいっアブハドゥラどうだ今夜もディスコへ
行かないか」「うっうんっ・・」「アブハドゥラ人生のモットーは」
二人一緒に「楽しくなければ人生じゃないっ」
何時もの週末の下校時間そのアラブ系で背中を何時も丸めている留学生の
隣国から来ている留学中の王子が一寸遠くから其様子を無言で眺めている
何時も同じ日本人留学生がアブハドゥラを誘う姿を見ると何故か安心し
徐に高級車で下校するのである・・立場こそ違え同じアラブの留学生として
どちらかと言うと気の弱そうなアブハドゥラの事を気に掛けていたのである
しかし留学中一度もアブハドゥラと一緒にお茶すら同席する事なく帰国した
王子は其の後の月日の流れの中で折につけ あの日本人に出来て
自分に出来なかった事を思い出すのであった




一句 : そう言えど 岩の上にも 花は咲く
狂歌汎声 : 少数派 革命起し 人おさゆ 多数派は看る 改革の先


後書 : 小生エネルギーの絶対不足故新鮮みなきストックの中から
悲しくも時流に会うものを掲載す         ('02/3更新)

追記 : 自然治癒力弱き故あの8月15日以来PTSDシンドロームを共有し続け
若い者にも煽る如き老人 最近でも遠い遠い空の彼方に心在る事
理解出来ない訳ではないが時代の変化に気付くべし対処方法として緊急時
には先の大戦がなかったと一時的に考えて自分の世界から出てみる
それとは時代も状況も全く違う二昔以前の事が最近の事と何処か似ている
と感じるは小生のみか小生如きの下手な踊りが何になる・・小生如きの若き
頃の友情が何になる・・小生如きの改革的景気策が何になる・・小生如きの
プロジェクト経過説明が何になる・・小生如きの細い足を引っ張って何になる
余興8 : 今時 地動説はガリレオではなくコペルニクスとは周知の事
知らない者も居るのかダーウィンの進化論が合法的不道徳と言われるのは
キリスト教の創造主に対する冒涜ではなく他人の研究を何時の間にか
ダーウィンの説として摩り替えたから・・聖域なき改革が本当に実行される
事が望まれる・・努力した者が報われる世にならないと出来る者が働かない
会議は踊るの蛇足:対岸の火事だから火のない所で消火活動してくれと言う
妙な類や鎮火前に消火時間限定と吠えたり放火犯に寛容な国に陰で尻尾
振る不思議人が居る国は何処だ・・煙が出ている前で根回し根回し猿回し
初期延焼防止のモラルは何処行った・・やっとバケツと水鉄砲持参とな
♀¥♂野郎め ピュッ平成11年秋頃より著しく表面化した合法的不道徳者が
類が類を呼び染まりゴロゴロ跋扈す最近の日本と思う中身ある真の多数派




ーーーー サバンナのサンタと少女 ーーーー
(再掲載)

@草原の一本道 車から降りる婦人
「こんな所にも煙草の吸い殻が落ちている、乾季のサバンナ
では即山火事になってしまうというのに不用心よ。」
とそれを拾う。

Aテント前広場
「駄目よ。この子を殴っちゃ。」
「だってツパが僕のスプーンを盗んだんだよ。」
「小さいスプーン・・・・一寸借りただけなのに。」
「スプーンなら皆に行き渡るだけ沢山有るじゃないの。」
「・・・・子供用のスプーンは、このキャンプに一つだけ。」
「・・・・・・・・。」

B車の屋根の上 平原に沈む夕日を見詰める二人
「あいつ、あたしが大きくなったら仕返ししてやる、絶対に。」
「ツパ。自分が殴られて嫌な思いをした人は、だからこそ人に
優しく出来るのよ。それが自然な事なの。・・人間だもの・・」
遠くをハイエナの一群がよぎる
「私はね、ツパよりかは大きい頃だったわ。大きな戦争があって
・・・・うーん・・・・堤防の崩壊を自分の腕で防いで国を救った
童話の小さな主人公気取りと言うわけじゃないけれど、
私は、レジスタンスの少女兵だったのよ。英軍との連絡担当
だったけれど正規軍じゃなかったから終戦の時は栄養が
足りなくてツパの様に痩せていたの。食べ物も無い暗い地下室
が私と私のお母さんの住まいだったわ。・・今でも狭い部屋が
大嫌い。だから、平原のここに好く来るのかな。・・でもね、其の頃
戦っていた独軍を好きにはなれないし、恨んでもいたけれど、
大人に成った今、独人の事嫌いではないし友達もいるわよ。」
「ふーん。」
「明日になれば人の心は、変わっているものよ。仕返しより、その
エネルギーを苦しい人達へ優しく向ける方が人間らしいね。」
地平線の夕焼けが一瞬輝いた時
  姿は見えねど 鳥獣の 叫びが 一気に一段とざわめき
そして・・・・虫の声へとかわる
   「・・・・小母ちゃん・・座ってもいい・・疲れた・・胸が苦しい・・」
「ツパ。ツパどうしたの。・・ドクターッドクターッナースッナース・・」
駆け寄る臨時の奉仕隊員等

Cテントの中
「ドクトル・ドミ、どうでしょうか・・。」
「ここへ連れて来られた時は立てない程、衰弱しておったのを
援助物資のお陰で歩ける様には成ったのです。・・が、この子の
それまでがたたって、もう我々の対症療法ではどうにも・・・・。
やはり予防医療の実行なくしては、・・・・・・・・。」
「ツパの。この子の親はどうしたのですか。」
「行方知れずです。いや、生死不明です。」
「・・・・。」
「ここには、この子の様な子が沢山います。一人一人に相手する
能力がありません。」
「・・ハア ・・ハア」
「・・・・そうですか。・・せめて何か楽になる薬はありませんか。」
「何か話を、それがなせる最後の薬です・・。」
「ハア・・ハア・・母さん母さん・・父さん父さん早く帰って来て
ツパ寂しいよ。」
「・・・・・・・・ツパ・・・・シッカリして・・今は・・一寸用があって
帰れないだけ、それまでは、今は、私がツパの母さんよ。」
「ハア・・ハア・・だって、もうじきスイスへ帰るのでしょう。
ハアハアハアヒューヒュー。」
「直ぐ戻ってくるわ。それ迄は手紙を出すからね。」
「ハア・・ツパ、字が読めない。ハア」
「絵を描くわ。・・紙とクレヨンと封筒を用意するから、ツパも
絵を描いて、私に送って頂だい。」
「ハアハア」
「今、私の住所を書いておくね、ユニセフの・・宛てと・・こうね。」
「ハァハァ・・・」
小さくなる息音
腕の中で眠りにいざなわれるツパに己の癌なんて この少女に
比べたらと まけじと微笑んで見せるオードリー
そして 少女の人生にそっと毛布を掛ける
・・・・・・・・
・・・・・・・・
後書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人は、切り開かねばならない運命と受け入れなければならない
運命を両手に持って生まれてくる。しかし、世界中で1日に万単
位の幼児・児童が紛争や栄養失調による病気で親の愛もお菓子
も学校も喜びもそして運命も知らぬ間に毎日死んで行く、現実。
可能なる努力をしている方々もおられるのであるが。しょせん、
これは、遠い遠い小さな小さな物語なのだろうか、2000年も沢山
の悲話を作り続けるのか。 だが、人間の愚かさに絶望するのは、
まだ早い。不健全な身体にも本物の大きな健善が宿る事を我々
人間は、多くの例で知っている。だから黄昏時に何かを感じたら、
ユニセフへ"サバンナのサンタ・オードリー・ヘップバーン様"宛
で手紙を出そうと思う、毛布代わりに1000円札一枚忍ばせて。
                        ('00更新)
  一首・・・・・・・・・・
何思う 地球のちりか いく万葉 君が瞳に 全てを知るや
・・・・・・・・夕陽の彼方に眠る精女ツパと聖女オードリーに捧ぎ、合掌。








〜〜〜〜怪談・まっとう伝〜〜〜〜
善人には怖くない一寸ラブ・ホラー

その日は沢つたいに生あたたかい浜風が強く吹いていた
「ハハハハッ」「桜さま待って」「手を」「フフフッ」
窓を開けた車が谷に沿って伸びる林道を駆ける
「何か聞える」「・・山彦かな」
街から遠く離れた集落の民宿前に駐まる車
「やっと来られましたわ」「ここがあの集落か 風が違う 気持ちいい」
外廊下の日溜まり 老婆を真ん中に掛ける二人 お握りを食べている
「ガッコもつまんでくんろ」「美味しい」「うんっ」
「あれはな この地が満月五藤の里と呼ばれとった頃の事じゃ・・・・」

新月家 馬回り役 月白兵左衛門次男 桜之助は文武に優れ部屋住みのまま
では惜しいと隣接する満月家 物産方小頭の吉行采女の養子と成り歳月が
流れた鍛練中 沢に迷いし小菊の香りの如き可憐な娘を助ける 名を
比古代と言って 郡奉行五藤帯刀の側女であった 暫くして城下で
出会った二人は自然に人目を忍んで言交す仲と成る 家督を継いだ
桜之助は物産公事方と成り五藤家へ 娘比古代の申受けの話を進め
これは良縁と両家を挙げて後押しをしておった所 五藤家の縁戚筋で陰の
実力者と噂される横目支配 九本木三太夫より難癖が出 その内に桜之助
が町家の娘おたまと出来ているとの瓦版がまかれ 二人は引離されそう
になり 又 お勤めの方も江戸物産問屋の不正入れ札に関わっているとの
投げ文があって 桜之助が新月の内通者と書かれていた 何かにつけ上役
からも同輩からも蔑視される様になった桜之助へ「新月の出でも拙者は
友」と耳打ちする者が現れた時 逆に疑心暗鬼は極に達し 居た堪れなく
なり養父采女と許嫁比古代に「暫くの間 他家へ離れる 必ず戻る」との
書き置きを残し新月の実家へ 自暴自棄に成っていた桜之助は不用意
にも新月家の重役で お組頭 大竹監物の口添えにより 年期の物産方
小頭並に取り立てらた それから気掛かりな比古代と密会する為に
示し合せの国境へ 向かう途中 街道脇の御堂の裏で用を足していた時
見覚えの有る満月の者を従えた頭巾の武家二人が馬を下り辺りを
気にし乍ら御堂へ入って行く 「それでも友」と言った者が従者と
思い出した桜之助は其不快感につられ御堂の下へ忍び入り床下に耳を
あてる「・・・これで新月の物産方も栄え 家中の放漫財政も一息つく
であろう」「何の大竹の御前こそ これで侍大将いや執政家老に成られる
やも知れませぬぞ」「蔓草屋からいつもの額じゃ」と包みの金を渡す
「三太夫 お主も栄耀栄華・・・囲いの女が居ったの たしか おたまとか
申したか 程々にな・・・これからも草の者と悟られぬ様励めよ」「ハッハー」
「所で桜之助はどうなっておる」「新月に都合よく抱えられたと聞き及ぶに
あっては 満月の重役共も この数年の不正は総て内通者桜之助が・・・
御前の筋書き通りですな」「うむっ・・桜之助は満月を恨んでくれて
いる様じゃ・・・では次の落とし者は 」「ガタッ」「何者」見つかったと
思った桜之助は多勢に無勢ととって帰ると 月白家では一族郎党が
集まって ・・結論は様子を見ると言う事に 様子見とは相手が上役筋の
場合何もしてはいけない騒動はなかったと言う意もあった 暫くは
外出を禁ずと親や一族より命令されるも我慢ならぬ悔しさがあったが
何より比古代の身を案じ桜之助は文を中間に託した その頃
満月の城下より昼夜歩き 渡しで海を渡り 約束の場所で夜霧の中に佇む
  比古代の姿 色々な事が耳に入っても桜之助を信じてここまでやって
来たのだが 刻限はとうに過ぎている 何も知る由はない 霧が晴れ
獣の遠吠えがした時 全身に大きな不安がよぎる「もしや」
  月光の下 涙に滲む半紙 文をしたためる比古代の清らかな顔
「父上さま母上さま  先立つ ・・・・桜之助様のもとへ・・・・」
一方 桜之助は一族郎党を守る為 病死の届けを出され
  月白家の領地の森深い窟牢で老いて死すまで
比古代への届かぬ文を書きつづけ・・・・た

「毎年この季節 谷間で男女の笑い声が響き渡るのは二人の霊と
皆 言っておる だから二人の御霊をここから二つ峠を越えた海に近い谷に
祠を祭ったのじゃが・・・・現世で結ばれなかった比古代と桜之助の
  ・・これが まっとう伝説じゃ」
「・・悪人達はどうなったのですか」
「昔から末路は決まっとお 語る値打ちもなかろう 話せば悪人を
喧伝する事になる ・・若いお二人に聞かせる話じゃなかったかのー
  南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無ー」
「いえ感じいりました」「ハィッ」
「あの世で結ばれた事じゃろうと信じとる
生くるも死ぬるも まっとうすることじゃ・・」
「・・・・有難うございました」

浜風が治まった日の昼下がり 木漏れ日の中 来た道をゆっくりと進む車
「来て良かったわ・・お婆さんに会えて」
「良かった・・祠を守る比古代殿の子孫に語って貰えて」
「野菊があそこに」
車を停めて見詰める
「そこに桜草が」
「不思議ね桜草と野菊が一緒に咲いているわ」
「季節外れを歓迎してくれているのか」
「桜さま」
「比古代殿・・そろそろ祠へ戻ろうか」
「あいー」

一句 : とわえみち けだかきひとに こわさなし

記:現代に設定するとフイックションではなくなるので江戸期にした
 敵の顔した味方 味方の顔した敵 不安安心繰り返しの中で
  人は全うする為に真っ当に生きる つまづき乍らも
('00/3記)




南洋小夜  
(消え行く路傍情話 カップルでどうぞ)

怪しい光輝く 無国籍風のフロント
「よー。マスター。今夜一晩、頼むよ。」
「はいはいマカホーなかさん。予約、おたくのアシスタントから
貰ってるよ。」
「お二階さん、二名様ご案内ー。」
「おいおい、予約は、一名だよ。」
「なかさん。いーから、いーから。好い子入ったよ。ヒッヒッ。」
「何か、勘違いしてるよ。私は、今夜は、自分の家へ帰るよ。」
「なか。どーせだから付き合ってよ。頼むよ。お願いだから。」
「しゃーないな。ここいら最近、物騒だから付き合うか。」
二階の二人部屋 広いリビング
「しかし、此所は、凄いなギンギラギンだよ。草深い田舎に
突然現れる不夜城か。車、降りてから、ここに入るまでに何回も
引き込まれそうになったよ。荷ぐるみ剥がされるって感じだな。
いゃー恐かったよ。」
「これも、貴方達観光客が居れば必ずある気宇壮大な風俗文化の
お陰です。まっそう言うおいらも奇麗事いえる身じゃ無いが。」
「・・・俺は、観光じゃ無いよ。会社の研修だよ。研修。」
「失礼すました。出張者殿。お代官の案内も我々駐在の業務
慣例でごぜえますだ。・・・・この街で此所が一番のホテルですだ。
何でも、お申し付け下され。地獄の底までお連れしますだ。」
「えっ、此所は、ここのホテルの名前はヘブンホテルって
描いてあったよ。」
「・・・・」
「処で、此所はさ・・・あれ・・・」
「ギギィー なかさんマカホー。 貴方の友達 いい男。」
「そうそう之を待ってたんだよ。なかさん。俺達は、お先に
あっちへ消えるね。今晩は。俺、真面目な観光客でーす。パタン。」
離れた入り口に立つ黒髪の少女・・・・
「私は、食事して一人で寝る。だから、君は、之を持って帰る。
分かりますか。・・・・はいっ。じゃモアチップね・・之で。」
「・・・・」
「ルーッ ルーッ」
「一寸待って。何だよ・・・・私には、少女趣味は無いよ。・・・・そー
男も嫌い。私は、ノーマル。・・今夜はそんな気になれない。・・・・
一寸待って。君に換ってくれと。」
「・・・・はい。分かりました。・・・・帰ります。」
「はぃ。此れチップ。」
「いいえ。入りません。私は、貴方に何も上げてない。」
「・・・・・・・・」
「さようなら。」
「・・君。夕食まだなら付き合ってくれないか。いえっ。夕食に
付き合って下さい。」
「・・・・」
「時間を買います。君の時間を買います。御願いします。」
「・・・・・・・・いいわ。分かりました。」

翌朝の車中 「ブゥーン・・・・ 不思議だな。君を買ったお金でおいらが。
・・・・君に買われるなんて。・・・・変わった人だよ君は。」
「・・・・仕事休ませて悪かったわね。」
「夜のランプの下の妖艶な美女が、昼間は、誰だか判らなくなる
事は、よくあるが。・・・・君は、昼間の方がずっと素敵だな。」
「有り難う。貴方も変わり者よ食事とお話の一夜何て。」
「昨夜は、君が少女に見えたんだ。しかし、何故昨日マスターは、
街でNo.1になれる様な君に帰っていいと行ったんだい。」
「私がマム族だからよ。」
「・・・・あの少数民族の。」
「そう。・・・・このまま引き返してもいいのよ。」
「真っ直ぐだね。・・・・美人のお嬢さんは、好きだよ。世界の常識。」
「フフフッ面白い人。」
昼下がりの雑貨店で食事をとる二人
「ガソリン入れといたよ。お二人さん。それどうかね」
「此れ。美味しいよ。いやとっても」
「うれしいね。年に何人かしか外国人は寄ってかないけど
美味いって言ったのは、あんただけだね。」
「美味いけど、此れ何の肉。」
「亜細亜コブラだよ。お客さん。」
「うまーい。君、食べないのそれ。」
「どうぞ。」
「美味いっ。此れは、判る鯰の薫製だ。睡眠時間が短いと変に
食欲がわく。美味いっ。・・・・処で、お爺さんそんなに悪いの。」
「長くないわ・・・・だから親孝行よ。」
「親孝行。」
「親代わりで育ててくれたわ。族長で孤高の人よ。」
「そうだろう。君を見ていたらどんな人か想像つくよ。しかし、
何で又、あのホテルへ。」
「だから、親孝行よ。後は、車の中で。」
「うーっ、幾ら払えば・・・・悪りぃ。君、之から払って。ご馳走様。」
「叔母さん。ここに置いとくね。ご馳走様。」
「バタンッ・・・・どうして。族長ならお金に困らないだろう。」
「貴方には、少数民族の本当は、分からないわ。・・今でも・・・・
一言では言えないわ。少しの段段畑、小さな漁舟と観光客から
民族ショーのチップ・・・・・・・・そして末期癌のお爺様・・・・
絵に描いたような話よ。・・・・
私がお金を何とかするしか無かったの。」
「絵にならないよ。・・おいらの持ち金で足りればいいのだが。」
「お金は、もういいの。」
「何故。」
「私に出来る事は、お金で医者を連れて来るか。お爺様に
鏡部隊の士官候補の遺族を合わせる事なの。」
「・・・・ウーッ解らん。」
「昔、其の士官候補の最期を見てきたらしいの。その事を
遺族に伝えられれば。それで気が済めばと・・・・。」
「しかし、士官候補の遺族に成れるかな。」
「嘘が通用する人じゃ無いわ。感が鋭いの。お爺様。」
「じゃ・・・・。」
「貴方の様な人なら、お爺様・・・・。村は、もうすぐよ。」
「よしっ。兎に角ゆこう。・・・・ブゥオン」

村外れに立つ老人
贅肉の無い引き締まった身体
真っ白な坊主頭
其の顔には人生の年輪が深深と
「お爺様。」
「おかえりマポ。帰って来る気がしたので待っとった。」
「・・・・お体に障ります。家へ戻りましょう。あっ。この人は、
日本人駐在員の仲間さんです。私を送って来てくれたの。」
「始めまして。仲間と申します。サイ族長殿。」
「・・・・・・・・日本人じゃのう。・・・・サイ老でええ。」
「はぃっ。サイ老殿。」
「フフッ。サイ老でいいのよ。なかさん。お爺様に
気に入られたみたいよ」
耳元で囁く
「本当っ。」
其の時、遠くの木木の間から村人の視線が
炉端に座るサイ老と仲間
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
何人かの村人 手に山海の産物を持ってやって来る
それを軒先に各自吊るして、仲間をちらっと見て帰ってゆく
マポ それを大きい籠に入れて裏庭の井戸端へ
炉端の二人
「此所の目の前の紺碧の海は綺麗ですね。」
「・・・・・・・・」
「何が採れるのですか。」
「・・・・・・・・あれは、戦況悪いインパール作戦の撤退じゃった。
最後尾を守った後、本隊との連絡線を切断され、まるで
敗残兵狩りから逃げるようにビルマからラオスの山岳地帯を
迂回して同盟国のタイへ転戦転戦を続けている時の事じゃ。
少年斥候兵のわしを一人前の男として見てくれた
小隊付きの鈴木士官候補殿がマラリアに倒れて・・・・。
ジャングルに置いてきたのじゃ・・・・・・・・。泣きじゃくる
わしに向かって、『自分の事をよう守ってくれた。有り難う。
後は、隊の先導を頼む。年寄りと幼子の居る村での調達は、
控える様に、渡すべき物がもう無い。之は自分の最期の命令だ』
と。せめてもと小隊長が残り少ない手榴弾を渡して来たが・・・・、
別れ際の無理に笑ったあの顔が・・・・・・・・。」
「ぅっ・・・・・・・・」
マポ 籠を抱えて来る
「さゆ、ここに置いておきます。之はこうやって
少しずつ、よく焼いてから食べて下さい。
苦しい中からの村人からの気持・・・・ですから。」
マポ 離れた縁側へ座る 風に長い髪が揺れている
「士官候補殿は、わしと同じ補充兵じゃった。しかし、
高等専門学校からの学徒動員で来た士官候補殿は、わしらと
違い何でも世の中の事を知っとった。この人と一緒に居ると
戦争が嘘の様じゃった。」
「戦争が嘘の様。」
「そうじゃ。一緒に居るだけでほっとする様な。・・・・
無論戦争じゃ兵法通りでは済まされん。敵との殺し合いは、
当たり前だが、抜け道沿いの住人にも銃口を向けた時も
あった。敵か味方か。それが戦争じゃ。悲しいのう・・・・。」
「・・・・」
「・・・・作戦前の小隊が宿営していた民家の庭で兵卒だけの
酒宴をしていた時。各自慰問袋を開け乍ら興に乗ってきて
唄いだしたのじゃ『貴様と俺とーは同期の桜同じ偵察隊の・・』
そして、一人がこう言った『補充兵のサイ陸軍四等兵殿日本語
の歌は、上手く唄えないでしょう。代わりに首狩り族の踊りを
踊って下さい。』と周りもニヤニヤ笑って拍手しだした。
すると、民家の中から士官候補殿が現れて『サイが何か悪い
事をしたのか。図に乗って横柄な態度でもとったのか。不愉快な
事を言ったりしたのか。何もしていなーい。この中に破壊工作員
でも紛れ込んでいるのか。お前か。お前か。・・・差別は、許さん。
俺が相手だ。』と言って鬼になっていると、そこに軍曹殿が
出てきて、わしと奴等を殴りだしたのじゃ。士官候補殿が止めろ
と命令すると。今度は、小隊長が部屋の中から『候補。サイ。』と
呼ぶから、部屋へ入ると小隊長は、言った。『軍曹を悪く思うな、
軍隊は強くなくては成らない。そして、なりより規律が大事だ。
喧嘩になっても士官候補には、手が出せない。サイ一人が奴等に
殴られるより、軍曹に皆が殴られる方がいいのだ。勿論、私も
サイが悪くない事を分かって言っているのだよ。判るなサイ。』
と言うので、二人、敬礼して士官候補殿の部屋へ入ったのじゃ。
故郷からの慰問袋が無いわしに手紙の他は全部くれると
言うから。断ると、気持だから取っといてくれと言って、
ノートと鉛筆をくれたのじゃ。そして、一緒に入っていた羊羹を
二つに割って食べた。・・・・本当に正義感の強い優しい人じゃた。
何故か士官候補殿に其の手紙を読んで聞かしてくれと
頼んだのじや・・・・何故だか今でも思い出せん。・・・・解らん。
・・・・『拝復 ・・・・息災で励んでいるとの事、何よりです。・・・・
御国の為、立派に働いて・・・・・・・・それから、お前がお父様の
処へ先に行くような事になれば・・・・母も死にまする。・・・・』
途中まで読んで、検閲でどうして、この手紙をはねなかったんだ
と言って士官候補殿は、壁に向かって肩を震わせとった。
わしも、羊羹食べながら・・・・泣いた。」
「うっうっ・・・・・・・・」
「合った事も無い、お袋様に。其の時、誓ったよ心に。
候補殿は、わしが命に代えても守りますと。
其の後、二人で川で行水をした。そこで、士官候補殿が言うには
誰かから、からかわれた時は、君が代は、誰にでも監獄以外では、
平等だから歌えと。この歌を歌うときは、酔っていても
起立しなきゃ成らんから面白いぞと。・・・・そして言った。
我帝国陸軍の李中将閣下は日本民族ではない。東郷外務大臣
閣下は、朝鮮民族の子孫である。そして、有能なる陸軍斥候兵
サイは、勇猛果敢で誇り高きマム族の出身である。とね。」
「・・・・うーっむ。今、欲しい首相、いや非詭弁の道徳的指導職ですね。」
「丁度其の時、本隊の連中が大声で何か唄い乍ら酔い覚ましに
川にやって来た。候補殿が急にサイ歌えと言う。こちらが、
モジモジしていると、連中が軍服を脱ぎ始めたので、
下手でもいいからと士官候補殿が歌いだしたので、わしも、
つられて怒鳴る様に歌いだしたら。どうだろ。本隊の連中、
ふんどし姿で、直立して一緒に歌いだしたよ。」
「くはっはっはっ痛快ですね。ぐすっ」
泣き笑いの仲間

屋根の無い五右衛門風呂
「うわー凄いなー。あれサザンクロスですか。」
「そうじゃ。あの海の向こうで一番光っているのが南十字星。
あの西の方角に士官候補殿は、眠っている。」
「・・・・・・・・」
「・・・・今夜は、我部族の面影神が忍び寄って来たようじゃ。」
「・・・・はぁ・・・・」
周りを見渡す仲間
「あれサイ老。そこに、あそこにも
一面の花ですよ。・・咲いていたのに気付かなかった。・・・・」
「・・・・わしらマム族は、粛粛と生きてきた。これからもだ・・・・
・・・・祖父が、この地に移ってきた時、族長は言った。
為政者の法的命令で心まで片隅に住むのじゃない。
あの星も花も、わしらのものじゃと。」
「・・此所のクリヤーな空気は、違います。分かる気がします。」
「・・・・孫の事が気にかかる。」
「・・・・お孫さんなら、・・・・貴方のお孫さんですから心配は、
いりません。・・・・」
「孫の事、どうか御願いします。」
「はい。・・・・・・・・椰子の実濁酒が旨いです。
天の川から広がる夜空。煌く南十字星・・それに上弦の月・・。
歌に成りますね。最高っすね。」
「・・・・・・・・きーみがーあーよーおーはー・・・・」
子守り歌の様に
小夜曲の様に歌い出すサイ老
つられて歌い出す仲間
「・・・・いしのーいわーおーとなーりてーこけぇ」
サイ老の手からスローモーションの様に落ちるコップ
其の音に止まった虫達の伴奏
静寂の世界
「サイ老っ」
村中の虫達が一斉に鳴き出す泣き出す








('00更新)

一首:帰らざる 一人くるまり 見る夢は おてて繋いで歩いた小道
一句:夢でもと 迎え火つける 出てきてよ
一首:見ているぞ 良心まもれ 皆の衆 こちも元気だ天頂環より




路地裏の魔女]サンダル  
@黒板だけの青空小学校の放課後
少年パコとアルミニオが今は一見環境汚染とは無縁の対岸がジャングルの
川で他の子供等に混じっては しゃいでいる 彼等が何時も履いている下着
のパンツが そのまま水泳パンツになっている 中には振りチンの子も居る
ジャングル側の木の上から飛び込む子 枯れ蔓が切れるまでぶら下がって
いる子 虚弱なパコも所々繕ってあるランニングを着て広がる波紋の下に
魚影を見つけると水に脚を浸け乍らアルミニオと元気に何か話したりして
いる 空きっ腹でも皆は遊びの天才だ
その側から まるで魔法使いの持っているような杖をついた小柄で無言の
老婆が(他に遊び場がないから仕方がないのかと言わんばかりの顔をして)
その急な流れや落ち込みに誰か足を取られないかと気づかっている・・
短い夕焼けに照らされるまで草も木も花も石っころも時を忘れている

A川から続く緩やかな斜面にへばり付く難民キャンプの一角
アルフォンソ「・・世話になった」
ドゥラン「・・とうとう明日発つか ・・どうしても行くのか」
アルフォンソ「・・望郷の念は絶ち難いが あえて よそ者として新天地を
求めるさ 生きる為さ 今 家族 何としても可能性へ向かわないと・・」
ドゥラン「幾らダーウィンが近いからと・・あそこは未だ目に見えない
大オセアニア主義が一部 残っていると言うじゃないか もっとも我々の
ディリを都と仰ぐチモールも此れからはオセアニア域にならんとしている
が それも国の生きる道だな」
アルフォンソ「生きて行けるだけでいいんだ・・難民の私には
親戚がかの地の何処かに居てくれるだけでも贅沢だよ ・・君はどうする」
ドゥラン「そうだな・・確かではないが運が好けりゃ日僑に付いて
ポートモレスビーから奥に入った所にある小さな石油精製関連へ
出稼ぎに行けるかも知れないんだが どうしたものか いずれにせよ
この仮住まいが安住の地になる事はないし・・」
アルフォンソ「パコと奥さんはどうする」
ドゥラン「その時は暫く離れ離れだな・・開業資金を稼いだら直ぐ戻るさ」
アルフォンソ「いっそ その日僑に頼んで家族で日本へ行けないのか」
ドゥラン「駄目だ実質的企業難民が溢れていると聞くし半世紀に一度の
大混沌にも みまわれ法螺吹き屋は言いたい遣りたい放題 治安の悪化・・
多くの普通の心は疲れきっているらしい だからと言って郷里では
独立派も反対派も殆どの家で犠牲者を出してしまった・・紛争が終っても
互いの憎しみを解かせる何ものの程も期待できるのだろうか・・
それにしても帰国する事を考えたら家族同伴は戻りづらくなるだけだ」
アルフォンソ「心情的には この地と変らない不思議な経済大国か 理解に
苦しむな それにしても我々技術屋は気力が なえてしまう前に一時 国を
捨てるしかないのか」
川でとった小魚を持ち此方へ戻って来る各自の子供へ目を向ける二人
「おおっー 今夜は魚のスープだな」「未だ魚がいたのか・・」
「折角 仲良しになれたと言うのに」「残念だ・・」

B数ヶ月の前のキャンプ第四炊事場近くの細いマルタ造りのテーブル
アルフォンソ「大変だ炊き出しの事で・・第三炊事場付近で怪我人が・・」
ドゥラン「どうしたと言うんだアルフォンソ」
アルフォンソ「スープを待つ列に誰か割り込もうとして喧嘩になった・・」
ドゥラン「・・で怪我の状況は」
うっすらと目を潤ませるアルフォンソ「食事用のクリス*で切り付け合って
10人以上の重軽傷者だ・・一切れの肉も入ってない これっぽっちのスープ
の為に我々は何故 傷付け合うんだ・・何故・・もう嫌だ我慢出来ない・・」
ドゥラン「ふーっ ・・・・アルフォンソ 煙草をパックごと呉れないか・・
タマンその湯冷ましを・・傷の手当てに役立つかもしれん・・一寸行って来る
そうだタマン 私の分をアルフォンソとアルミニオに分けてやってくれ
第三じゃ食事どころじゃないだろう・・ パコ 母さんを手伝いなさい」
アルフォンソ「・・これは幻だ幻なんだ今は21世紀なんだ21世紀なんだよ」
パコは自分の父ドゥランを たくましくも心配げに見送り
父アルフォンソと一緒にやって来たアルミニオは
込み上げる父の涙に戸惑っている

C互いの希望と不安の旅立ちの朝
綺麗に洗ってあるがボタンの一つが取れたままの半袖のYシャツと折り目
のないズボンのアルミニオは粗末でもキチンと靴を履いている
パコは何時ものランニングに しわくちゃの半ズボンと足下は鼻緒の抜け
かかった日本式のビーチサンダルのままである
アルフォンソ「ドゥラン・・ 受入手続きがスムースに行くように協力して
くれたんだね」
ドゥラン「ははっはっ気付いていたのか 私は家族一緒に陸路帰郷出来る
事になたから自分の為にかかる事務労力を君達親子の分に向けてくれと
事務屋に言ったまでさ」
アルフォンソ「・・オブリガード*・・お達者で・・いつの日か又・・」
ドゥラン「・・遅いが状況は一歩づつ良くなっている・・先に戻る私が色々
努力出来れば いいのだが・・なに君達が帰られる日が必ず来ると
信じているから アテブレーゼ*は言わないよ・・」
タマン「・・ほらパコも挨拶なさい」
アルフォンソ「・・アルミニオも・・えっ・・ちゃんと話なさい・・何もかも
別れる訳じゃない・・言葉は・・原語は決して祖国を捨てやしない・・」
父と痛いくらい強く手を繋いだままのアルミニオの もう片方の手は胸の
ポケットの上から自分の母親の遺影をしっかりと押さえている そして
口を一文字に結んだ彼の目はパコに何かを言おうとして
その胸に置いたままの手は拳をぎゅっと握り締めた・・
母タマンの横から その彼女の腰に手を回し
黙ってアルミニオを見るパコ・・「・・・・(行かないで)」






一句:かあさんの 呼ぶ声ひとり 日が暮れて


後書:砂粒ではないのだ 普遍的 物言わぬ人生なのだ・・
                   ('02/3更新)



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