PCMジャズ日記
7月13日(火) ベースがリーダーのピアノトリオは狙い目


 
「PCMジャズ喫茶」1999年2月13日の再放送より

出演 寺島靖国店主 安原顕永世ゲスト

さて、前回のロジャー・ケラウェイはお2人とも買ってスタジオに持参。結構こういうのありましたね、この番組。お2人とも買って持ってきたアルバムは要チェックでした。名付けて『一心同体盤』。また今回もこの『一心同体盤』なんです。
安原 「次もほら、一心同体じゃないですか。同じの」
寺島 「じゃあ、きょうは思いきってピアノトリオ特集って感じでいきますか。」
安原 「うん、いきましょ、いきましょ。」
寺島 「これもなんか、2人で買ってきちゃったんだけど、」
安原 「そ〜お。(笑)」
寺島 「マーカス・シェルビーっていう、」
安原 「う〜ん。」
寺島 「この人は、ブラックノートっていうね、クインテット仕立ての、ハードバップのグループがあるんですけど、そこでベース弾いてたんですね。」
安原 「ああ、そお〜なの〜。さ〜すが詳しいね。」
寺島 「別に詳しくないですけどね。」
安原 「誰も知らねぇよ、そんな事ぉ〜。岩浪さんも知らないでしょ。」
寺島 「ああ、岩浪さんは全然知らないですねぇ。」
安原 「でしょ。」
寺島 「マット・クラークのピアノと、それから、ジャズ・ソーヤっていうドラムなんですけどね。」
安原 「うん。」
寺島 「やっぱり安原さん、僕、最近ね、」
安原 「うん。」
寺島 「自分がドラム好き、ベース好きだから言うんじゃないんですけど、」
安原 「うん。」
寺島 「ピアニスト、リーダーっていうよりもね、むしろね、ベーシスト、リーダー、ドラム、リーダーのほうが、なんかトリオ全体がね、違う意味でねスウィングしてね、」
安原 「うん。」
寺島 「面白いんですよ。」
安原 「ああ、そうかもしれないなぁ〜。」
寺島 「ピアノ・ベース・ドラムっていうそういう図式じゃなくって、」
安原 「うん、うん、うん。」
寺島 「ベース、ドラム、ピアノみたいな。」
安原 「うん、うん。」
寺島 「逆三角形の演奏のほうが、むしろね、我々の好きなドタン、バタン。」
安原 「うん。」
寺島 「ドンシャリになりやすいんですよ。」
安原 「うん、うん、うん。」
寺島 「で、どうしてもベースがリーダーだと、録音エンジニアもリーダーに気を遣いますから。」
安原 「そうですね。」
寺島 「ベースをグッと上げるんですね。」
安原 「うん、うん。」
寺島 「そうすると、ベースがでかく入って、その合間からピアノが聴こえてくるみたいな。すごく気持ちいいピアノトリオが聴けるんですよ。」
安原 「なるほどね。」
寺島 「それで、さっき安原さん、イマイチだなぁ〜みたいな話だったじゃないですか。どうして?」
安原 「だって、ほれ、ジャケットが、女の人の横顔がチラっと出ててさぁ。」
寺島 「ええ、ええ。」
安原 「何か、そのさっきのハナさんの、ダサ〜イ、ジャケットと比べると、」
寺島 「ヘヘヘヘヘヘ」
安原 「だって、『ザ・ソフィストケイト』ってタイトルでしょ。」
寺島 「そう。」
安原 「で、モノクロの写真でさ、カッコいいじゃん。それで久しぶりにさ、何か音が聴こえてくるようなね。」
寺島 「そう。」
安原 「裏はほら、バーのカウンターで、タバコなんか吸っちゃってるという。」
寺島 「そう、バーボンのビン置いてね。」
安原 「ね、そういう意味です。だから凄いギンギンの、いや確かに悪いレコードじゃないですよ。」
寺島 「ええ。」
安原 「こっちの思い入れがさ、ジャケットからさ、勝手に、ギンギンじゃないか、いいんじゃないかな、なんて思って。しかも、ディスクユニオンでなんか、チラシって言うか、書いてるでしょ、手書きで。」
寺島 「ええ、ええ。」
安原 「何書いてあったか忘れちゃったけど、とにかく素晴らしいピアノトリオだみたいなことが、」
寺島 「書いてありました?」
安原 「書いてあったのよ。」
寺島 「ええ、ええ、ええ。」
安原 「だから、勝手にこっちがさ、想像していた音よりは、演奏よりは、ちょっとおとなしかったかなっていう意味。」
寺島 「あのね、この中の、ライナーノーツ開けると、安原さんの好きな短編小説が、こん中に出てくるんですよ、これ。(笑)」
安原 「あっそ〜、ひぇ〜〜、ああ、そうなのぉ〜」
寺島 「ええ。英語だから読めませんけど。」
安原 「あそぉ〜、へぇ〜。『The man enterd the bar』っていう。」
寺島 「そう、だから男がバーに入ったってとこから、小説が始まるんですよ、これ。」
安原 「ひぇ〜あ、そぉ〜なんだぁ〜。」
寺島 「安原さんね、これね、おとなしいって言うけどね。」
安原 「うん。」
寺島 「これは、おとなしくないですよ。」
安原 「そぉお?」
寺島 「このプレイは。」
安原 「そぉお?」
寺島 「う〜ん。このトリオの演奏がおとなしく聴こえると、ちょっとご自分のオーディオシステムにちょっと疑い(笑)持ったほうがいいですよ(笑)」
安原 「(笑)あそおー、あそーお。」
寺島 「これバッシャ〜ンってきますよ。で、音も凄く、赤い針が振っ切れるくらい、大きく入ってて、うちで聴くときは夜中なんか、必死でボリューム下げて、それ以上下がんないんで、冷や汗流しながら聴くんですよ、これ(笑)」
安原 「そうだったかな?ハッハッハッハ」
寺島 「これ曲も全部ね、何番選びました?」
安原 「僕は2と4.」
寺島 「う〜ん、2がいいんだよ、これ20世紀何とかミッションってえのがね。、」
安原 「そうそう。」
寺島 「で、これがなかなか、4ビートで気持ちよくて。で、ベースが、ブンブンブンブン言ってね。」
安原 「そうそう。」
寺島 「で4番ですか?」
安原 「そうです。」
寺島 「あ、4番覚えてねえな、僕は5番をよく聴くんですよ。『ダンス・オブ・ザ・ミッション・ベイビーズ』っていうのをね。じゃ、安原さんは2,4ですけども、僕の5番を間に挟んで入れて、2、5、4で聴きましょう。」
安原 「ハイ、ハイ。」

♪ 20th・アンド・ミッション
♪ ダンス・オブ・ザ・ミッション・ベイビーズ
♪ ザ・ジョイラヴァーズ
マーカス・シェルビー ( Noir NR00008)

安原 「うん、これはやっぱり良かったですね。」
寺島 「あの、真っ当すぎるくらいのピアノトリオなんだけど、そういう意味でね、いま、真っ当のほうが逆にね、受け入れられやすいですよ。」
安原 「そうですね。」
寺島 「そういえば、この前ね、秋吉敏子さんが、あっ、秋吉敏子さんというと、ホール・オブ・フェイム入りしたじゃないですか。」
安原 「そう、そう、そう。入った。」
寺島 「新聞出てたでしょ。朝日の夕刊かなんかにね。」
安原 「入った。入った。」
寺島 「あの名誉の殿堂っていう、ジャズメンの、アームストロングとか、ベニー・グッドマンとか入っているんですけどね。とうとう、入っちゃいましたね。」
安原 「入って、当然っちゃ、当然だよね。」
寺島 「う〜ん。」
安原 「貢献したでしょ。」
寺島 「貢献したけど、僕は、」
安原 「いや、好き嫌い置いといて。」
寺島 「好き嫌いは別にしてね、貢献度はね。」
安原 「だって、1950年代からさ、ジャズのジャの字も知らないさ、満州から引き揚げた女の人が、九州から立ち上がってきて、ね。」
寺島 「うん。」
安原 「コージー・カルテットとかいろんなのやって、」
寺島 「コージー・カルテット(笑)うん。」
安原 「それから、守安祥太郎ともやったし、とにかく、ジャズの創生期。誰もジャズなんて知らないころに、」
寺島 「うん。」
安原 「やって、しかもご存知のようにアメリカに渡って、バークリー行って、そして儲からないフルバンドをね、やって、でその前に白人のとっつぁんと一緒になって、『ロング・イエロー・ロード』なんかを出して、そして離婚して、」
寺島 「詳しいね。」
安原 「で、ルー・タバキンと一緒になって、儲かんないフルバンドをやってという。ね、好き嫌いは別よ、音楽が好きとか人間が好きとかは、置いといて、」
寺島 「うん。」
安原 「そういう彼女のジャズの長い長い歴史。」
寺島 「うん。」
安原 「そしたら、やっぱりほら、日本人ですからね。外人だったら別にそのくらい当たり前だけど、日本人がそこまでやったなと。」
寺島 「たぶんね、アメリカ人の感覚からすると、秋吉敏子は日本人じゃないと思いますよ。」
安原 「と、思うな。」
寺島 「もうね、ジャズ人ですよ、世界人ですよね。」
安原 「うん、うん。と思うな。」
寺島 「確かにそう言われてみると、僕は好みじゃないんだけど、」
安原 「うん、僕も好みじゃないっすよ。ピアノトリオは好きよ。」
寺島 「だけどやっぱりね、ジャズ以外のところにね、目を向けないという、あのジャズ一筋女の一徹さっていうのは凄いですね。」
安原 「そりゃあ、凄いですよ、やっぱり。だから、殿堂は、僕は入ってもいいなと思っていますね。」
寺島 「しかも、新聞の結構大きな一般ページにど〜んと出てるんだよねぇ〜。」
安原 「そうなのよ。ネ。」
寺島 「ああいうところにね、あんな大きな活字でね、『ジャズ』っていうね、カタカナが出てくるとね、ちょっとドキっとするんですよ。見ていて。(笑)」
安原 「そうですね。まあ、良かったと思いますよ。」
寺島 「そうですね。で、その秋吉敏子がね、今月の『JAZZ LIFE』かな、インタヴュー受けてるんですよ。その中でね、私がピアノトリオでピアノ弾こうと思っても、最近はベーシストとドラマーが、要するに、ピアノの伴奏をするというベースじゃなくて、ピアノとドラムの間をヒラヒラ舞うようなベースを弾くけど、やっぱり、ベーシストというのは、ドッシリと、ピアノが弾きやすいように弾くべきだみたいなことを言ってるわけですよ。(笑)」
安原 「まあね、それ一理あるね。」
寺島 「一理あるけど、」
安原 「さっき言った民主主義になっちゃったんですよ。皆にあまねくどうぞって、だから、伴奏じゃなくなっちゃったの。」
寺島 「そうね。僕なんかにすると、そういうヒラヒラ舞うね、民主主義のベーシスト好きなんですよ、僕は。」
安原 「私も嫌いじゃないですよ。うん。」
寺島 「だけどやっぱり、殿堂入りするような人はやっぱり古いなぁ〜と思って、僕はそのインタヴュー読んでましたけどね。で、いまのベースなんかは、マーカス・シェルビーなんかは、そういう真っ当な伴奏型のベーシストですよ。」
安原 「そうですね。」
寺島 「ヒラヒラ舞わないですものね。だから僕は真っ当すぎるぐらい、真っ当だと言ったんですけどね。まあ、皆さんがどういうふうにお聴きになったか。とにかくベーシストがリーダーのピアノトリオが、狙い目だっていうのをね、一つここでね、大きな声でいいたいですね。」
安原 「そうですね。 さて次は?」


大リーグのピッチャーがよく投げる変化球にナックルボールというのがありますね。聞くところによると、あれってどう変化するのか、投げてる本人にも予測し難いとか。このお2人のヒラヒラ舞うお話、ナックルトークのよう。

突然、殿堂の話、秋吉敏子のバイオグラフィーが始まって、話はどこへ行くのかと思えば、なるほど、そう落ちましたか。
ベースは伴奏か、民主主義か。早速ベースがリーダーのピアノトリオ、ドラムがリーダーのピアノトリオ、引っ張り出して聴いてみようと思います。


次の日へ  前の日へ  一覧へ