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「PCMジャズ喫茶」2000年4月22日の放送より 出演 寺島靖国店主 安原 顕永世ゲスト 安原 「で話は全然違いますけど」 寺島 「ええ」 安原 「メジャーな寺島靖国がですね」 寺島 「えっ?」 安原 「講談社新書いよいよ書き下ろしというね」 寺島 「(笑)いきなり出ましたね〜」 安原 「このタイトルがいいんだわ」 寺島 「あのね、講談社+α文庫ってのがありましてね」 安原 「うん」 寺島 「今、ある種の新書ブームらしいですね?」 安原 「そ〜です」 寺島 「それにのって、α新書を2,3ヶ月前に出したんですよ」 安原 「うん」 寺島 「それが思いの外ね、売れ行きがいいんですって」 安原 「へぇ〜」 寺島 「どうしてかって言うと、見るからに体裁がダサイんですよ」 安原 「あ〜そぉ〜、それがいいんだ」 寺島 「それがいいの」 安原 「うん」 寺島 「だからほら、中公新書、僕は大好きですよ、ほら昔のビニールの」 安原 「うん、うん、見えないのね、字が全然読めない」 寺島 「そう、ちょっと曇ったビニールで」 安原 「そうそうそう」 寺島 「あれが僕、大好きなんですよ」 安原 「(笑)変ってんなぁ、あそぉ〜」 寺島 「格好いいじゃないですか」 安原 「俺はあんなもの見えないからダメだぁ〜って中公にいる時にゃ言い続けてた」 寺島 「あそぉ〜、で途中で無くなってガッカリしたんです」 安原 「あ〜色んな人いるねぇ〜」 寺島 「色んな人いるでしょ?」 安原 「ねぇ〜」 寺島 「つまり僕は新書というのは、中公新書なんですよ」 安原 「なるほどね、あ〜そ〜」 寺島 「ほんで、今度出たα新書見たら」 安原 「うん」 寺島 「凄いダサイわけ、田舎くさいわけ」 安原 「うん」 寺島 「黄色かなんかで統一して」 安原 「うん」 寺島 「でもそれが売れてるってんだから」 安原 「うん」 寺島 「やっぱり日本人の90%は通俗なんですよ」 安原 「う〜ん、そぉ〜だねぇ」 寺島 「で10%の中公新書は売れないってことですよ」 安原 「う〜ん、そういうこったな」 寺島 「で、社内でね言われてんのはね、書店の中公新書の棚を全部α新書で変えようやってね」 安原 「いい、いい」 寺島 「そういう意気込みでやってるらしいですよ」 安原 「賛成、賛成」 寺島 「そうすると日本の文化ってのはそこでまた一つなくなりますよ」 安原 「でも、中公もね気取ってるだけで中身イモだよ」 寺島 「安原さん中公が嫌いだからさ」 安原 「昔は別よ、あなたの好きなそのビニールの頃は」 寺島 「ええ、ええ」 安原 「今はもう全然くだらないよ」 寺島 「そぉ〜かねぇ〜」 安原 「気取ってるだけ」 寺島 「でも最近出た平凡社新書はいいんだよね」 安原 「いいのもある、それから集英社新書」 寺島 「出たでしょ、やっぱり全体のイメージが新書らしくインテリ風なんですよ」 安原 「うん、そうそう」 寺島 「(笑)ところが講談社の、僕がやらしてもらう+α新書っていうのは、どっちかというと昔出たゴマ書房のゴマブックとか」 安原 「うん、カッパブックとかね」 寺島 「そうそう、なんか健康食品がどうのとかね」 安原 「うん」 寺島 「今、あれ全然売れてないんだってね」 安原 「あ〜そぉ〜」 寺島 「で、まあその中間くらいを狙った、大衆的新書なんですよ」 安原 「へぇ〜ほいで、タイトル、タイトル」 寺島 「それでね、ナンカ君書きたいモノあるか?って言うから」 安原 「うん」 寺島 「僕は力関係で言うと、講談社には全然弱いからヘイコラしてんですけど」 安原 「うん」 寺島 「このCDはこの1曲目から聴けというのを企画として持って行ったんですよ」 安原 「いい、うん」 寺島 「その人ジャズ知らないから。兎に角ジャズの1曲目っていうのは、ミュージシャン指向の、一般の人が聴いても、あんまりよくわかんないような難しいのを1曲目に持ってきてという傾向があるから」 安原 「ある、ある」 寺島 「それで嫌になっちゃって、そそっかしいのは売りに行っちゃったりするから」 安原 「うん」 寺島 「そうじゃなくて3曲目のこのバラードから聴いてごらんっていうようなことを書きたいんですよって言ったら乗ったんですよ、その人が」 安原 「なるほど」 寺島 「おもしれぇじゃんって言って」 安原 「うん」 寺島 「ジャズ本もなんか、ここん所へ来てマンネリになってきて、所謂ジャズ名曲・名盤とか」 安原 「うん」 寺島 「そういうモノがありふれて人目を惹かなくなっていると」 安原 「うん」 寺島 「だからもうちょっと突っ込んだ形のほうが面白ぇんじゃないかと思っていたところだから」 安原 「うん」 寺島 「おめぇの言うのはなかなか面白いって言って一回で決まったんですよね」 安原 「あそぉ〜、それで6月締め切りなの?」 寺島 「(笑)なんか9月になんか、フェスティバルをやるんですって」 安原 「あ〜」 寺島 「それに入れてやるから、6月いっぱいに仕上げろって言われてるんですよね」 安原 「うん」 寺島 「言ってるんだけど、半分こいつ出来るわけねぇってのが」 安原 「ウッヒッヒッヒッヒッヒ」 寺島 「(笑)考えてるのがわかるんですよ」 安原 「ウッヘッヘッヘッヘ、うんうん」 寺島 「そういうのを見るとね、イッチョ、やってやろうじゃねぇ〜かって気合いがあるわけですよ」 安原 「うん」 寺島 「安原さんは次から次へと本持ってきて、(笑)またホラ出たぞぉ〜なんて見せびらかすし(笑)」 安原 「そぉ〜(笑)25日また出ますからッカッハッハッハ」 寺島 「(爆)ッカ〜いちいち人のばっか褒めてらんないからモ〜」 安原 「カッハッハッハッハそう」 寺島 「バカバカしくって(笑)」 安原 「ほう」 寺島 「自分も褒めてもらおうと(笑)」 安原 「やっとやる気になってきた?」 寺島 「そうなんですよ、俺もやるときはやるって所をちょっと見せてやりてぇ〜って気持ちもあるしね」 安原 「うん」 寺島 「久しぶりにねフンドシ締め直す気配が僕の中にあるんですよ」 安原 「うん、それは100枚のCDを選んで見開き2ページ」 寺島 「そうです、で240ページの本なんですよ」 安原 「うん、うん」 寺島 「だから100枚で200ページに索引とかつけて」 安原 「うん6月まで!」 寺島 「だから100本書けばいいわけで、1本が1000字ですから、400字詰めで2枚半ですか」 安原 「うん」 寺島 「それを100本ですから、一日一本やったって間に合うわけですよ」 安原 「うん、間に合う」 寺島 「ま、そういうふうには行かないですけどね」 安原 「うん」 寺島 「一昨日の晩話を決めて、一昨日の晩、そこから始めればいいんですけど(笑)やらないわけですよハッハッハッハ」 安原 「ウッヘッヘッヘッヘ」 寺島 「やっぱりやらないの(笑)明日やろう、明日からやろうとこうなるわけですよ(笑)」 安原 「ヒャハッハッハッハ」 寺島 「で、明日っていうのが昨日なんですけどまだやらない」 安原 「ウッハッハッハッハッハ」 寺島 「で、きょうこそやろうと思っているんだけど、きょうはほら、こういう大きな仕事しちゃったからきょうはやらなくていいと(笑)」 安原 「ヒャッハッハッハッハッハッハ・・・今度はやるって言うから僕は期待してんですけど」 寺島 「(笑)これだけね、全国一千万リスナーのいるPCM放送で公言しちゃったんだからね」 安原 「そぉ〜」 寺島 「これはねやんないワケにはいかないですよ」 安原 「マズイ、マズイ、マズイ」 寺島 「それでなに?4月に何が出るの?」 小次郎 「遅筆」という言葉があるが、辞書には文章を書くのが遅いこととある。用例として「遅筆で有名な作家」とあった。しかし、きょうの話を聞いている限り寺島店主は遅筆ではない。まだ原稿用紙に向かっていないのだから、「文章を書くのが遅い」にはあたらない。 わたしも「ジャズ批評」にささやかな連載を持っているので定期的に締め切りが訪れる。寺島さんのそれに比べれば本数も規模も内容も比較にはならないのだが、そのささやかな締め切りでさえ、迫ってくるのはどこか気持ちの上で重しである。肝が小さいので、机に向かうのが一日遅れるとその分プレッシャーが増す。その反動でいつも締め切りよりはるか手前に書き出して早めに仕上げている。そうしないと不安でいられない性分なのだ。わたしは絶対に文筆業には向かない質だと重々自覚しながら書いている。 だから、寺島さんの締め切り話を聞かされる度にどうしてそういうことが出来るのか不思議にも、羨ましくも思う。想像するに、ある種のマゾヒズムなのかもしれない。追い込まれる事で悦楽を堪能できる人なのかもしれない。 締め切りと言えば、「火宅の人」の中に、檀 一雄が小説の締め切りに追われて、印刷所で妻に口述筆記させ、かろうじて間に合うというシーンがあった。きっと寺島さんはああいうシーンでドーパミンを大量に分泌できる個体なのだろう。わたしなどは何やら股間がむず痒くなってしまう。ダメだ。 締め切りと言えば、村上龍について林真理子が書いていたが、彼の原稿は上がりが早いので編集者に愛されているという。本人は早く仕上げて遊びに行きたいからだと言っている。これもまた凄い力量だと感心させられる。 さて、聞き手の安原さんは編集者である。「これをしっかりやらないと書き下ろしの仕事は3年間は来ないよ」と忠告していて、笑いながらもどこか不安げに感じている様子が面白かった。ご本人は本気で笑い倒しているのにだ・・・とかなんとか言って実はわたしも締め切りの話が好きなのかもしれない。「締めて切る」う〜んなんともグロテスクな響きじゃないか。 |