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「PCMジャズ喫茶」2000年4月22日の放送より 出演 寺島靖国店主 安原 顕永世ゲスト 安原 「きょうは、歴史的な日なんだけど寺島さんがビッグバンドを持ってきたって、仰天ですよ。あたしは遠慮して一切ビッグバンドは持って来ないんですよ」 寺島 「(笑)遠慮しなくていいですよ」 安原 「だって、ナ〜ニ安原さんコレ?って言うに決まってるんだから」 寺島 「ウッフッフ」 安原 「うるせ〜だけじゃんとかなんとか言われちゃうから」 寺島 「よく知ってますね(笑)」 安原 「だから持ってこないの、でどうしてそういうことになったの?」 寺島 「いやこれね、僕はねジャッキー・バイアードっていう人には昔から興味があったんですよ」 安原 「うん」 寺島 「で、この前額にピストルの弾を撃ち込まれて死んだんですよ」 安原 「な〜んでピストルの弾打ち込まれたの?」 寺島 「そういう変死をしたんですよ」 安原 「なんで?」 寺島 「いや、なんでだかわかんないんですよ」 安原 「だって人の良さそうなさ、あなたが持ってきたレコードで見ると、白髪で、すっごく人の良さそうな、いわばお爺さんじゃん」 寺島 「好々爺ですよ」 安原 「なんでそんなやられちゃうの?」 寺島 「この広い額の真ん中に弾を撃ち込まれたんですよ」 安原 「ひっでぇ〜なぁ〜、それいつ頃の話?」 寺島 「2,3ヶ月前ですよ」 安原 「あそぉ〜」 寺島 「うん、まあそういう話があって」 安原 「うん」 寺島 「でこれが最後の盤ってことでM&Iから出たんですよね」 安原 「うん」 寺島 「この中の4曲目にね『ラ・ロジータ』っていうタンゴの曲が入っているんです」 安原 「うん」 寺島 「これ僕のね、大愛聴曲なんですよ」 安原 「あ〜そぉ〜」 寺島 「こんなの入ってら、と思って、ちょっと聴いてみるべと思って聴いたら、イイ〜ンですよ(笑)」 安原 「ハッハッハあ〜そぉ〜」 寺島 「う〜んタンゴのね、本当に哀調のいいメロディーが出てきますから」 安原 「へぇ〜」 寺島 「これを聴いてこの盤が好きになっちゃって、しかもここに書いてあるようにね」 安原 「うん」 寺島 「ジャッキー・バイアード&アポロ・ストンパーズってありますよね」 安原 「うん」 寺島 「アポロ・ストンパーズっていう語調っていうか、語感がいいでしょ」 安原 「うん、うん」 寺島 「古めかしくて、レトロで」 安原 「うん、うん」 寺島 「色々調べてみたらね、1960年代から、このアポロストンパーズっていうのはずっと続いているんですね」 安原 「だけどそういう報道っていうのは無いよね」 寺島 「いや、たぶんあると思うんだけど我々が興味ねぇから目をやらないだけだと思うんですよ」 安原 あ〜「」 寺島 「僕も興味無いからアポロストンパーズなんていっても何ともないと思っていたの」 安原 「うん」 寺島 「ところが色々調べてみると、この人大学の教授もやってて、自分の教え子達をこのアポロストンパーズなるビッグバンドに投入しているわけですよ」 安原 「なるほど」 寺島 「それでこの人ピアニストなんですけど、アルトもやればトランペットもやるしアレンジもするという多彩な人なんですよね」 安原 「うん」 寺島 「で、子供の頃ベニー・グッドマンのオリジナル・カルテットを初めて生で聴いて感動したっていう人なんですよ1930年代の後半ですよ」 安原 「うん」 寺島 「そういう所から出発して、やっぱりね偏狭の人ですよね、一言で言えばね」 安原 「うん、そう」 寺島 「ちょっとやっぱり外れた所にいる人です」 安原 「うん」 寺島 「僕なんか正統派だから全然興味無かったんだけどこの『ラ・ロジータ』聴いてねちょっとたまんねぇ〜なって感じ」 安原 「あそぉ〜」 寺島 「僕の場合いつも曲が先に来ちゃうんですよね」 安原 「うん」 寺島 「で、この前横田さんに会ってね、これイイじゃんって話したらね」 安原 「うん」 寺島 「『ラ・ロジータ』が入っていて気に入っちゃったよって言ったら、それはアンタの本読んだら『ラ・ロジータ』は名曲だって書いてあったから、曲のリストに入れて送ったら」 安原 「うん」 寺島 「それをジャッキー・バイアードがやってくれたって言うんですよ」 安原 「あ、そぉ〜」 寺島 「それを聞いたら僕は益々感動しちゃって」 安原 「そぉ〜だよねぇ〜、じゃこれは日本で曲目をリクエストしてそれをやらせたの?」 寺島 「後はね見てくださいよ、アズ・タイム・ゴーズ・バイ、ミスティ、セント・トーマス」 安原 「うん」 寺島 「こ〜いう曲をねジャッキー・バイアードにやらしちゃいけないの」 安原 「そう(笑)いけない」 寺島 「いけない、絶対いけない」 安原 「うん」 寺島 「でもアズ・タイム・ゴーズ・バイやっても、ミスティやってもね」 安原 「うん」 寺島 「さすがに自分の色に染めた音を出してる、バイアード」 安原 「う〜ん」 寺島 「日本人がバカな曲出してきたよと言いながらも、俺のジャズでこの曲を聴かせるぞという魂みたいなものが感じられますね」 安原 「あ〜そぉ〜じゃ是非聴かせてください」 寺島 「じゃ、そのロジータね」 ♪ La Rosita / Jaki Byard (M&I MYCJ 3003) 寺島 「安原さん、これどうですか?」 安原 「非常にね、わざと古っぽく、ノスタルジックにしている」 寺島 「ん〜そぉ〜だねぇ〜うん」 安原 「だからね、寺島さんがビッグバンドにもかかわらずイイというのはわかる。イイですよこれ!」 寺島 「僕はね、ビッグバンドってのは、カウント・ベイシーが立ち上げて、秋吉敏子がダメにしたと思っているんですよ」 安原 「そうですね」 寺島 「あの秋吉敏子のキッチリ・カッチリした管理社会みたいなビッグバンドをさぁ〜どうだってやるでしょ?」 安原 「うん」 寺島 「あれでみんなまいっちゃうんだよね、賞は獲るけどね」 安原 「うん」 寺島 「そこいくと今のなんか、なんだか揺蕩(たゆた)う感じじゃないですか」 安原 「そうそうそう」 寺島 「雲がたなびく感じで聴いていて気持ちいいよね」 安原 「気持ちいい」 寺島 「メロディーはしっかりしているしね」 安原 「そうなの」 寺島 「これで一発で気に入っちゃったんですよ」 安原 「あ〜そぉ〜」 小次郎
わたしはこのジャッキー・バイアードのピアノの音が結構好きだ。流麗な現代のピアノをしこたま聴いた時など、ふとジャッキー・バイアードの誰のようでもないピアノの音を聴きたくなることがあるし、実際にたまに聴くと、あ〜これこれといった懐かしい気分になる。
わたしが最初にジャッキー・バイアードを「おや?!」と意識したのは、アル・コーンとズート・シムズの「ボディ・アンド・ソウル」だ。アルとズートと共に聴くジャッキー・バイアードは緊張する。どこか周りと違っていて、緊張してしまう。何故このアルバムでこの人だったのだろうと実は不思議に思うのだが、それもこの素晴らしいアルバムの隠し味的な効き目になっているのかもしれない。アポロストンパーズはきょう初めて聴いたのだがこのルーズ一歩手前のような浮遊感は最高だと思った。是非このアルバムは手に入れよう。
安原さんが「わざとノスタルジックにやっている」と言っていたが、わざとか無意識かわからないジャッキー・バイアードの個性は凄く魅力的に感じられた。それにしても何だったのだろう?風邪の熱で火照った身体を横たえて、好々爺の額に打ち込まれた弾のことを少し考え た。もう少しアレコレ聴いてみようと思った。 |