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狩猟・猟友会の活性化対策検討報告書(中間報告)の本文

狩猟・猟友会の活性化対策検討報告書(中間報告)
    平成14年5月 社団法人 大日本猟友会



はじめに
(本報告書のとりまとめの趣旨等)

 野生鳥獣の保護及び動物愛護思想の高まり、生活様式の近代化などから、鳥獣の捕獲行為そのものについて一般国民の理解を得ることが難しくなってきている。また、狩猟事故あるいは違法捕獲が発生すると、世間の耳目が必要以上に集まり、狩猟を取り巻く環境は一層厳しくなる傾向にある。
  一方、増え過ぎた鳥獣による農林水産業に対する被害問題が各地で発生しており、被害の著しい中山間地域等では深刻な社会問題にすらなっている。被害を軽減するためには、防除柵・網等の設置による予防的な被害防除対策と併せて、これらの鳥獣に対する適正な個体数の管理が必要とされており、このための捕獲手段として、狩猟の意義が再認識されている。しかし、一般的には、未だに十分に理解され、有効に活用されるには至っていない状況である。また、鳥獣の保護管理実務の担い手である狩猟者も、往時に比べ、著しく減少・高齢化している。

 本報告書は、狩猟を取り巻くこのような状況を踏まえ、人と自然とが共存する社会にふさわしい「21世紀の狩猟」の発展を適切に推進する観点から、新たな時代における猟友会のあるべき姿を念頭に置きつつ、狩猟や猟友会を活性化していくための諸方策を広範な見地から取りまとめたものである。
  検討すべき課題は多岐に渡っているが、本報告書における具体的な検討課題については、その緊急性・重要性等を考慮して、@狩猟・猟友会のイメージアップ対策、A狩猟者の育成及び定着対策、B有害鳥獣駆除等個体数調整協力体制の支援対策、の3事項を中心的な主要課題として検討した。
  本報告書は、これらの課題についての検討結果を中間的にとりまとめたものであり、今後、さらに十分な検討を加え、より充実したものにしていきたいと考えている。
 なお、本中間報告書のとりまとめに当たっては、都道府県猟友会、大学等に属する学識者10名等からなる狩猟・猟友会活性化対策検討会を設置し、問題点や対応策等に関する貴重なご意見等を頂いた。委員の方々には、この場を借りて厚く感謝申し上げる。

平成14年5月
社団法人 大日本猟友会
会長  舛井 寛一




○検討委員(敬称略・50音順)
  石井   正孝   (社)茨城県猟友会事務局長
  及川     (社)岩手県猟友会事務局長
  迫田   政則   (社)鹿児島県猟友会事務局長
  東海林 克彦    農学博士
  田中   一好   (社)岐阜県猟友会事務局長
  田中   久雄   (社)東京都猟友会嘱託(元東京都猟友会事務局長)
  藤江   俊彦    千葉商科大学政策情報学部教授
  藤本        (社)滋賀県猟友会事務局長
  松田   美博   (社)秋田県猟友会副会長
  山根        (社)島根県猟友会事務局長

○(社)大日本猟友会

  舛井   寛一    会長
  佐々木 洋平    広報担当副会長
  小熊         専務理事

T 狩猟・猟友会のイメージアップ対策
  一般の人が抱いている狩猟・猟友会のイメ−ジは、決して良いものばかりではない。狩猟・猟友会のイメージが損なわれている主たる要因としては、狩猟を取り巻く社会情勢の変化に端を発するものから、狩猟者側に原因があるものまで様々である。
 狩猟・猟友会のイメージを改善するためには、鳥獣の保護管理における狩猟の意義や役割、狩猟者・猟友会の社会的責務等を明確にしたうえで、一般社会に向けたイメージアップ対策のみならず、狩猟者の意識・行動改革についてもそれぞれに実施していく必要がある。

1 現状及び課題等
(1)狩猟を取り巻く社会情勢等
  狩猟は、決して自然環境の保全に反する行為ではない。むしろ、自然資源の管理と持続的な利用を図るといった意味では、林業や漁業などと同じように、自然環境を保護管理するための行為そのものであるということができる。狩猟には色々な公益性があるが、代表的なものとしては、個体数調整や移入種駆除を通した生態系保全、伝統的な文化や技術の伝承などが挙げられる。
 しかし、このような狩猟の持つ公益性に対し、一般社会の認識は極めて低い状況にある。むしろ、「鳥獣の保護管理=捕獲しないこと、鳥獣の捕獲=好ましくないこと・かわいそうなこと」という表面的・皮相的なものの考え方が台頭している。テレビや新聞等における狩猟に関する報道等を見ても、とかく鳥獣を捕獲・殺傷する面ばかりが誇張されがちである。また、狩猟は、単なる趣味の一種、道楽などとして捉えられがちであることも、鳥獣の保護管理行為であるべき狩猟を分かりにくいものにしている。現在の狩猟免許制度においても、狩猟は専門的な捕獲技術として明確に位置づけられているとは言い難い状況にある。
 このような誤解や偏見が生じた背景としては、国土開発の進行等による自然環境の悪化に伴って鳥獣が減少し、鳥獣の保護の必要性が高まってきたこと、生活様式の近代化に伴い、一般の人が狩猟を目にし、間近に触れる機会が極めて少なくなってしまったことなどが挙げられる。
 また、諸外国と異なる食文化習慣、近年の食生活の変化等の影響により、ジビエ(野生鳥獣の肉)に対する評価が、新鮮な山菜や魚介類に対する評価とは著しく異なってしまったことも、少なからぬ影響を与えていると考えられる。ボタン鍋(イノシシの肉鍋)などのように、季節の料理として市民権を得ているものもあるが、我が国では、欧米諸国と異なり、ジビエ(野生鳥獣の肉)の価値や利用方法等に対する理解が極めて低い状況にある。
 一方、狩猟者の側にも、その行動等について反省すべき点が少なくない。狩猟者のほとんどは、自然をこよなく愛するナチュラリスト(自然愛好家)である。しかし、残念ながら、一部の狩猟者による心ない迷惑行為や狩猟事故等により、狩猟のイメージが傷つけられている。また、いったん傷ついたイメージの回復は、非常に困難である。

(2)猟友会の組織体制・運営方法等
 猟友会及び関係行政機関の組織体制・運営方法等が、個体数調整や狩猟文化の継承など、狩猟が有する公益性の拡充事業の展開に適切に対応できるような体制になっていない。
 例えば、猟友会については、閉鎖的である、親しみにくい、地域間の縄張り意識(セクショナリズム)が強い、運営方法等に新鮮味が乏しい、若年層に開かれた組織・役員構成になっていない等の批判が一部にある。また、狩猟者個人については、農林水産業従事者等地域住民との連絡調整や意志疎通が不足している、特権意識がある、狩猟事故・違反に対する危機意識の薄い人がいる、ゴミ・空薬莢・獲物の残滓の放置などの迷惑行為が少なくない等の問題がある。
 一方、関係行政機関については、自然環境の悪化、鳥獣の減少、狩猟事故の増大等といった背景があったためか、どちらかといえば鳥獣の保護繁殖や狩猟規制等に関する施策に力点が置かれがちであり、狩猟がしやすくなるような環境条件の整備等に関する施策は二の次にされていたきらいがある。また、狩猟行政の担当者の構成を見ても、狩猟よりも鳥獣の保護規制に関する施策等に明るい人の割合が多い傾向にあるなど、狩猟の実態等に関する理解が十分なものであるとは言えない状況である。

(3)普及啓発等
 狩猟に対する誤解や偏見を解消するためには、普及啓発等により狩猟の意義や役割を理解してもらうことや、狩猟に慣れ親しむことにより親近感をもってもらうことが重要である。しかし、狩猟の普及啓発については、狩猟関係者側からの一般への働きかけが少ない。また、最初から好意的に受け止められることが困難であるとして、普及啓発の促進等をあきらめている感がある。
 目を転じてみると、諸外国では、報道機関等を通じて、狩猟の意義や役割等について広報しているところもある。しかし、我が国では、狩猟入門者用のパンフレットがあるのみで一般人向けのものがないなど広報が充分でない。
 また、団体名に使用している「大日本」、「猟友」という表現は、外部から見た場合、とりつきにくい、親しみにくい印象を与えがちである。「大日本」は古めかしい印象であり、「友」は狩猟者の福祉のみを考える内向きの活動しか実施していない印象を与えているようである。

(4)関係機関との連携
 狩猟を取り巻く状況、狩猟の今後のあり方等については、狩猟者個人、都道府県猟友会支部、都道府県猟友会、大日本猟友会、農林水産業団体、関係行政機関等により、問題意識が異なっている。また、狩猟は、有害鳥獣駆除や個体数調整等を通して、農林水産業の健全な発展や中山間地域における安全性の確保等に貢献しているものであるにもかかわらず、農林水産業団体、農林水産業者等との連絡調整や相互理解も不充分である。

2 対応方針
(1)狩猟の意義等の明確化と制度・組織の見直し
@狩猟の効用及び定義等
 狩猟は、自然とのふれあい活動の原点であり、自然の営みとともにある。狩猟は、野生鳥獣の営みへの深い理解があってはじめて成立するものである。この狩猟の意義や役割等については、狩猟読本等において別添のとおり整理されており、内容的に決して不充分なものではない。しかし、狩猟を取り巻く複雑な社会状況等を踏まえ、「狩猟」の意義や役割を、今日的なものとして再整理するとともに、キャッチフレーズ(普及啓発用の語句)を含む平易簡明な表現方法を考えていくことが必要である。
 なお、環境省が作成した「自然を愛するハンターガイド」等によれば、狩猟の意義や役割は、おおむね次のようなものであると述べられている。

○日本の在来種の保護

 生態系に悪影響を及ぼし、農林水産業被害を引き起こす移入種の排除

○農林水産業被害の予防
 個体数調整機能(有害鳥獣駆除を含む)の活用による農林水産業被害の防止と科学的・計画的な野生 鳥獣の保護管理
○生活環境被害の防止
 鳥獣による人の生命に対する危険や生活環境に対する被害等の防止
○自然資源の持続的利用
 絶滅の危険性のない鳥獣を対象とした、「自然の保全」の理にかなった持続的な資源利用
○趣味としての楽しみ
 自然を体感しながら鳥獣と出会う楽しみ、季節を味わう楽しみなど。

A狩猟制度の見直し
 狩猟制度については、「狩猟の意義や役割」が端的に表われるような形式・内容のものに改正する必要性について検討し、機会を捉えて環境省に対して提言すべきである。
 一例を挙げれば、狩猟免許制度については、有害鳥獣駆除等の捕獲の適正化を図る観点も加味しつつ、捕獲に関する専門的な技術を証明する資格制度として捉えられるような位置づけ及び内容の免許制度にしていくことなどが考えられる。また、新・生物多様性国家戦略を踏まえた移入種の排除を推進するために、税の減免措置や狩猟期間の延長などを行う等により、移入種を対象とした狩猟が積極的に行われるようなしくみを設けたり、狩猟の活用により鳥獣の生息動向に応じたきめ細かな個体数調整を行うことができるように、狩猟を行う地域・種・期間を細分化した登録が柔軟にできるしくみを設けたりすることも必要である。

※参考「狩猟免許と鳥獣の捕獲」
 有害鳥獣駆除や個体数調整を目的とした鳥獣の捕獲の許可を受けるに当たっては、鳥獣の捕獲の適正化を図る観点から、環境大臣が決定した鳥獣保護事業計画の基準に基づき、原則として狩猟免許の所持が許可要件とされている。これは、鳥獣の捕獲技術を十分に有しない者による捕獲許可申請が増加すると、鳥獣の保護管理上、重大な支障を生じるおそれがあることによっている。現在、国会で鳥獣法の改正案が審議されているが、狩猟免許は、鳥獣の捕獲技術を証明する資格としての機能も持ち合わせている唯一無ニの制度であること等から、法改正後も引き続き、鳥獣保護事業計画の基準等に基づき、狩猟免許の所持が許可要件とされることが肝要であると考えられる。なお、鳥獣の捕獲許可と狩猟免許との関係が無関係なものになってしまうと、狩猟免許は、単なる趣味としての性格しか持ち合わせていない免許であるとの誤解を招きやすくなってしまうことについても十分に留意する必要がある。

B組織の見直し
 猟友会の組織や運営方法については、「狩猟の意義や役割」が端的に表われるような形に変える必要性について検討すべきである。例えば、有害鳥獣駆除・個体数調整等を実施・支援する部門、狩猟技術・文化・科学的計画的な保護管理(ワイルドライフマネージメント)に関する学術的な調査研究や交流等を実施・支援する部門の創設等が考えられる。

(2)イメージチェンジ
 具体的な対応策の検討に当たっては、事前に狩猟の意義や役割等を整理すること、すなわち「あるべき狩猟の姿(イメージ)」を明確にすることが必要であると考えられるが、現時点で考えられるイメージチェンジのための対応策の事例は、次のとおりである。
 なお、対応策を効率的に実施するためには、関係機関との緊密な連携を確保する必要がある。また、狩猟制度の見直しとの連携も含めて、総合的に行われることが重要であると考えられる。

@多様な手段を駆使した広報活動の推進
 関係行政機関の協力のもとに、政府や地方公共団体等の公的広報媒体の活用含めて、テレビ、ビデオ、新聞、インターネット、雑誌等の多様な手段を駆使した広報活動を実施すること。

A積極的な情報発信
 狩猟等に関係する情報収集に努め、狩猟者の意義や役割等についての普及啓発や情報発信を積極的に行うこと。

Bシンポジウム等の開催
 狩猟の意義や役割等を普及啓発するシンポジウム等を開催すること。

Cジビエ(野生鳥獣の肉)の普及啓発
 狩猟文化の普及策の一環として、ジビエ(野生鳥獣の肉)の価値の普及啓発、調理方法の解説をしたパンフレット等を作成すること。

D狩猟者の服装のデザイン
 安全で機能的なうえに、一般の人に親しまれやすい狩猟者の服装をデザインすること(現在のベスト・帽子は、安全かつ機能的であるが、いささかファッション性に欠けがちである)。

(3)緑化や調査研究等の社会貢献事業の推進
 「あるべき狩猟の姿(イメージ)」を明確にするためには、前項に掲げたイメージチェンジと併せて、現在、猟友会において実施されている緑化、放鳥、有害鳥獣駆除等の個体数調整、調査研究等の公益法人にふさわしいと考えられる社会貢献事業を、各猟友会が一致協力して展開していく必要がある。現時点で考えられる具体的な事業例は、次のとおりである。
 これらの事業を適切に実施していくためには、都道府県猟友会の支部などの組織の枠にとらわれずに、縄張り意識を排した合同事業を行うことができるような体制の構築が急務である。また、必要に応じて、各段階(全国レベル:大日本猟友会、都道府県レベル:都道府県猟友会、群・市区町村レベル:都道府県猟友会支部等)における連絡協議会等の設置により、関係する行政機関や農林水産業団体との連携を緊密に図ることも必要である。
 なお、猟友会の運営は会費でまかなわれていることから、猟友会が公益法人であるといっても、多額の経費や労力を割いて社会貢献事業を実施することについては、賛否があるかもしれない。しかし、会員サービスの著しい低下等の弊害が生じるおそれのない限り、狩猟者個人の短期的な利害のみにとらわれずに、長期的な観点から取り組んでいくことが重要であると考えられる。

@ビジターセンター(ハンティングセンター)の整備等
 猟友会の事務所又はインターネット等を活用し、大日本猟友会及び都道府県猟友会が連携して、狩猟の普及啓発等を行うビジターセンター(ハンティングセンター)を整備すること。また、自然公園等におけるビジターセンターやワイルドライフセンター、国有林における森林センター等の関係行政機関が整備している各種教化施設においても、狩猟について言及した展示解説内容を盛り込むように、関係行政機関に働きかけていくこと。

A狩猟体験会などの環境教育事業の実施
 都道府県猟友会又は猟友会支部が中心となって、小中学生等を含む一般の人達を対象にした狩猟体験会などの環境教育事業を実施すること(人間の生活は、好むと好まざるとを問わず、自然資源を採取しなくては成り立たないという事実についての認識の希薄化・観念化を防止し、真の意味での自然と人間との共存のあり方や循環型の社会づくりを考えるきっかけを与えるために、鳥獣の獲り方、食べ方、守り方を総合的に教えていく必要がある)。

B事業の一斉実施や地域行事への参加
 各猟友会が協力して、全国一斉に、緑化、ジビエ(野生鳥獣の肉)の普及、狩猟の伝統・文化に関する展示解説等の事業を行うこと。また、環境週間や環境の日における行事等に積極的に参加していくとともに、地域との交流を図るため、猟友会としても積極的に地域行事に参画して、狩猟の普及啓発を行うこと。

C狩猟に関する研究・交流の場の設置
 報道機関やNGO(非営利の民間団体など)を含めて、狩猟の良き理解者である団体や個人等の輪を、長期的な戦略のもとに積極的に拡大していくこと。特に、狩猟にまつわる文化や技術等の記録・保存・伝承は、猟友会でしかできない事業であり、また、猟友会の本来的な業務であることから、産官学民の連携のもとに、これらの調査研究事業等を推進・支援する体制を整備すること。そのために、将来的には、「狩猟学会(仮称)」のような学際的な学術機関・交流機関が設立されることが望ましいとの考え方のもとに、当面は、大日本猟友会の中に、幅広い意見及び情報交換の場として、インターネットを活用した様々な分野・立場の識者等が参集できる研究・交流会を設置すること。

(4)狩猟者の意識・行動の改革
 狩猟のイメージが損なわれていることの責任の一端は、狩猟者の側にもある。自らの意識や振る舞いを変えることこそが、狩猟・猟友会のイメージアップの最善策であることを狩猟者一人一人が自覚しつつ、残滓の適切な処理、狩猟事故の防止、猟犬の訓練及び管理の徹底などにより、狩猟に関する道徳や規範(フィールドマナー)等のより一層の徹底を図る必要がある。

 また、狩猟者は、単なる鳥獣の捕獲者ではなく、いわゆる「ナチュラリスト(自然愛好家)」や「森の番人」などであることを自他ともに再認識するために、「ハンター」という呼称を改め、例えば、「ハンティング・レンジャー」などとすることなども一案である。


(5)猟友会の名称の見直し
 「社団法人  大日本猟友会」の名称については、従前から、「社団法人  日本狩猟協会(JHA「Japan Hunting Association」)などといった一般の人に親しみやすい名称に変更すべきであるといった意見が出されているが、狩猟・猟友会の活性化対策の一環として、この名称の見直し作業を具体的に実行に移す必要がある。
 新しい名称については、狩猟者の互助会的性格の組織である一方、社会に貢献する狩猟団体としての性格も持ち合わせている組織であることが分かるようにする観点が必要である。このため、名称の見直しに当たっては、公募等により、会員を含めて広く一般の意見を聞くなどして、その決定手続きの透明性の確保を図る必要がある。

U 狩猟者の育成及び定着対策
 狩猟者の数は、戦後の経済復興に伴って増加してきたが、昭和50年代の前半を頂点に以降は総じて減少傾向にあり、現在は、最多数の時の半数をはるかに下回っている。また、近年、猟友会に入会しない人の割合が増えてきており、会員数の減少も著しい。
 このような狩猟者の減少の要因としては、レジャ−の多様化、制度面での制約あるいは狩猟の場・狩猟対象鳥獣の減少等が考えられる。
 なお、対策等の検討に当たっては、甲種(網・わな)、乙種(装薬銃)、丙種(空気・圧縮ガス銃)では、その実態や問題点等が微妙に異なっていることから、それらの違いを踏まえ、それぞれの特性に応じた対策を考えていく必要がある。

1 現状及び課題等
(1)狩猟者の減少及び高齢化
 狩猟人口は昭和50年代の前半以降、減少の一途をたどってきた。ここ数年を見る限りわずかながら増加傾向に転じているものの、往時に比べ、依然として低迷状況にあることに変わりはない。しかし、猟友会の会員数の減少傾向については、未だに歯止めがかかっておらず、最多数の時の3分の1を割り込んでいる。
 また、その一方で、狩猟者の高齢化が進んでおり、昭和50年代の前半に約42歳であった平均年齢は、現在では約55歳になっている。年齢構成をみても、20〜30歳代の若年層の減少が著しく、50〜60歳代の中高年層の占める割合が相対的に大きくなっている。

(2)資格の取得及び維持の手続き等
 狩猟に興味を持っていても、狩猟免許や銃の所持許可等の資格を具体的に取得するための手続き等が分かりにくい状況にある。狩猟免許等を取得する方法や手順等を一般的に紹介したものが少なく、他の資格試験や釣りなどの趣味と異なり、一般書店等での情報入手が困難である。この結果、狩猟に関する情報は口コミによる伝達が主体とならざるを得ないことから、新規に狩猟を始める人の大半は、知人に狩猟者がいる人になっている。
 また、実際に狩猟免許や銃の所持許可を取得しようとする場面や、更新しようとする場面においても、各種手続き等が煩雑であるなどの支障がある。試験(講習会)や各種の手続き等の大半は、平日に行われているため、不便を被っている人が多くなっている。
 特に、銃の所持許可の取得については、平均して10回程度、公安委員会(警察署)等に行かなければならないなど、多大な労力を必要とされている。また、考査試験の問題の情報開示も不充分である。
 一方、狩猟免許についても、銃の所持許可のための猟銃等講習会に比べて試験回数が少なく、一般的には春季〜夏季に2回程度行われているに過ぎない等の問題がある。
 なお、狩猟免許、銃の所持許可のための猟銃等講習会のいずれについても、都道府県によって、合格率に少なからぬ差があるといわれている。詳細な実態は明確になっていないが、地域間格差という不公平が生じているおそれがある。また、各種手続きの窓口を担当している職員に、狩猟や銃の実態を良く理解している専門職員が少なくなってきていることも、直接・間接的に色々な影響を及ぼし始めている。例えば、申請者に対して不親切な対応をするところがあり、入口段階で資格取得をあきらめてしまう人や、途中で狩猟(銃の所持等)をやめてしまう人がいる。

(3)費用・税制
@資格の取得
 狩猟免許及び銃の所持許可等の資格の取得・維持更新等の諸手続きに、多額の費用がかかる。例えば、資格の取得にかかる標準的な費用は、狩猟免許は約1万5千円(猟友会の予備講習会(約1万円)を受ける場合)、銃の所持許可は約40万円(銃の購入費用(約25万円)を含む)である。

A狩猟者登録
 狩猟は、狩猟免許を取得したうえで、狩猟者登録を行わなければ実施できないしくみになっているが、この狩猟者登録にも多額の費用がかかる。例えば、乙種(装薬銃)では、1県当たり約2万円になる。1日しか狩猟をしない場合や都合により全く狩猟ができなくなった場合であっても同額である。内訳は、登録税10,000円、入猟税6,500円、登録申請手数料1,900円などである。なお、一般的に、入猟税は受益者負担的な目的税、登録税は奢侈税的な一般税、手数料は地方公共団体に払う実費弁償的な事務経費であると解説されているが、同一都道府県内で複数種の免許に係る登録をした場合及び複数都道府県に登録した場合、重複して課税されている印象を受けがちであるなどの重税感がある。
 また、空気銃を使用した狩猟は、捕獲対象となる鳥獣の種類・量の点において、装薬銃を使用した狩猟の一類型にしか過ぎないものである。しかし、現在、装薬銃で狩猟を行っている者が空気銃を使用して狩猟を行おうとする場合は、別途に登録税・入猟税等を払って登録をしなければならないしくみとなっている。
 また、入猟税は、狩猟免許を受けた者が鳥獣の捕獲行為を行うに当たって、地方公共団体の行う鳥獣保護行政等から恩恵を受けることに着目して課税されるものであって、受益者負担的な性格を持っている目的税である。すなわち、鳥獣保護行政の庇護のもとに保護繁殖した鳥獣、何らかの形で公費(税金)が直接・間接的に投入されて保護繁殖している鳥獣を捕獲するに当たっての費用負担であると考えられている。しかし、現在、害獣である移入種(外来種)など、鳥獣保護行政における保護繁殖の対象になっておらず、逆に多額の予算措置を講じて根絶に向けて駆除事業を行っている移入種を狩猟で捕獲するときも、入猟税や登録税が取られている。また、その一方で、愛玩飼養や学術研究等のための捕獲であれば、個人的な利益になる捕獲であっても、入猟税や登録税を支払う必要はない。
 また、都道府県によって、可猟地面積や捕獲数(効率)に数倍〜十数倍もの開きがあるのに、税額は一律である。東京都のように獲物が極めて少ないうえに、奥多摩地方や一部の島嶼ぐらいしか可猟地(乙丙種)がないところでも、また、北海道のようなところでも税額が同じであるなど、税の公平性に地域的不均衡が生じている。
 なお、諸外国では、地域・種・期間を細分化した狩猟者登録ができる仕組みが採用されているが、我が国の狩猟者登録制度にはこのような柔軟性がない。放鳥獣猟区以外の猟区では、猟区のみを対象地域として狩猟をしたい場合も、各都道府県全域が狩猟対象地域となる登録をしなければならないしくみとなっている。

B猟友会費
 大日本猟友会、都道府県猟友会、猟友会支部の会費については、狩猟者登録申請時に併せて納入する仕組みになっているが、それぞれの区分及び収支等が明確にされていないところがある。また、会費に比べ、会員サービスが十分でなく、猟友会に入会する利点が乏しいという意見も一部にある。

(4)実猟
 鳥獣の生息環境の悪化や減少等により、ゲーム(獲物)が減少している。猟場に出ても、捕獲定数を達成するどころか、1頭・羽も獲れない、出会いもない場合も珍しくない。「釣り」などと異なり、猟場や捕獲方法等に関する情報を入手しにくいことも影響していると考えられる。狩猟の専門誌も発行されているが、鳥獣の生息動向、諸規制の改廃状況、各種道具類の開発・販売状況などについての情報が少ない。
 また、都道府県猟友会支部間の交流が少なく、ときには縄張り意識が強いこともあることから、他の支部の地域では狩猟がしにくい雰囲気がある。
 一方、水鳥や猛禽類等の保護を図るために、水辺地域やエゾシカ猟における鉛弾規制がいずれ本格的に実施されようとしている。鉛中毒の防止は重要なことであるが、代替弾及び対応銃の開発及び普及が十分ではない等の課題がある。しかし、これらの課題解決に向けての対策の進捗状況ははかばかしくない。特に代替弾については、弾の号数・番径も限定された高価なものしか生産されていないうえに、ごく一部の銃砲店でしか店頭に並んでいないなど、狩猟者が容易に代替弾を入手できるような環境条件が整備されていない。また、大半の射撃場では、使用できる散弾の号数についての規制等があり、BB弾や3号弾等の代替弾については自由に試射することができない。このような状況下で性急に規制のみが導入された場合、安全狩猟等の徹底がおぼつかなくなるばかりか、狩猟者の減少に拍車がかかることになり、野生鳥獣の保護管理等に多大な支障をきたすおそれがある。
 また、無登録者の犬による鳥獣の捕獲が、鳥獣の保護管理上、看過できない状況になってきている。現行制度では、狩猟期間における禁止猟法以外の方法等による狩猟鳥獣の捕獲は、違法捕獲ではないこととされている。このため、狩猟免許又は銃の所持許可の取り消しを受けた者等が訓練した数頭の犬を使って狩猟鳥獣を捕獲している事例が、全国各地で散見されるようになってきている。

(5)猟区
 狩猟を始めても、自由な形で参加できる実猟の研修の機会や場がほとんどない。猟友会支部によっては、新人研修に力を入れているところもあるようだが、狩猟方法を学ぶ機会は限られており、知人に教えてもらうのが一般的である。このような状況において猟区は、その使い方によっては、実猟の研修の場として有効であると考えられる。しかし、その数は少なく、地理的にも偏在している。また、行政機関では、猟区の利用を推進しているにもかかわらず、猟区の設置・運営に対する技術的・金銭的な支援措置が整備されていない。また、登録も放鳥獣猟区のみを登録できる制度があるだけで、猟区のみを登録できる仕組みになっていない等の不便がある。

2 対応方針
(1)受験環境の改善
 受験者の便宜を図るため、狩猟免許試験、銃の所持許可のための猟銃等講習会の実施については、次のとおり改善されるよう関係機関に働きかけていく必要がある。また、猟友会で実施している講習会についても、その内容の拡充を図っていく必要がある。
 なお、狩猟免許試験及び猟銃等講習会の考査試験の各都道府県における合格率を調査分析し、受験者の側の問題であるならば、講習会等の充実により対応し、試験実施者側の問題であるならば、本来あってはならないはずの地域的な不公平が生じていることから、是正を求めていく必要がある。

@狩猟免許関係
・試験及び講習会の実施回数・場所の増加、休日における実施
・申請手続き等の郵送による受付
・狩猟免許試験の受験準備のための参考書等の充実
・周知方法の拡充(ポスターの掲載場所の拡大、市町村の広報・新聞(全国紙)のスクールガイドなど の行事広告スペースの活用等)
・都道府県猟友会によって異なっている予備講習の内容の標準化(講習時間及び内容、配布資料の種類 及び事前配布の有無、講習日と試験日との間隔など)
・狩猟免許の受験年齢の引き下げ(20歳以上から18歳以上に引き下げ。ちなみに、銃刀法上の空気銃の 所持可能年齢は18歳以上)

A銃の所持許可関係
・猟銃等講習会の休日における開催
・猟銃等講習会の考査試験の出題内容についての情報公開
・申請手続き等の郵送による受付
・諸外国の射撃場のように、射撃指導員の指導のもとで、備え付け銃による体験射撃ができるしくみの 創設
・公安委員会(警察署)の窓口担当者との連絡会や、狩猟に対する理解を深めてもらうための研修会等 の開催
・都道府県猟友会による銃の所持許可に関する予備講習会の実施(講習内容としては、試験(考査)対 策のほかにも、所持許可の手続き方法、技能検定・射撃教習の仕方、銃の選定方法等が考えられる)

(2)手続きの簡素化
 狩猟免許試験と銃の所持許可のための考査試験等の内容については、共通している部分が少なくない。このため、受験者の便宜を図るとともに、行政事務の簡素化を図る観点から、狩猟免許試験項目に銃刀法、火取法、実射試験を追加し、狩猟免許所持者に銃砲許可申請(又は更新申請)の資格が付与されるよう関係行政機関に働きかける必要がある。
 また、各種の資格免許の有効期間に比べ、狩猟免許及び銃の所持許可の有効期間は3年と短いことから、これを5年に延長するよう関係行政機関に働きかける必要がある。
 また、銃の所持許可に関しては、添付書類が多く、煩雑であることから、教習資格認定申請時の書類と所持許可申請時の書類の見直しと簡略化が図られるように働きかけていく必要がある。具体的には、医師診断書、譲渡承諾書、経歴書、同居親族書の廃止などが考えられる。

(3)猟場等の確保・整備
 鳥獣の保護管理及び捕獲技術の向上に資する観点から、鳥獣の保護増殖、猟区の整備、休猟区や銃猟禁止区域の適切な設定により、猟場等の確保・整備が適正に図られるよう関係行政機関等に働きかける必要がある。

@鳥獣の保護増殖
 休耕田畑等におけるキジ等の餌になる植物の植栽、狩猟鳥獣の生息動向や乱開発等による生息環境の悪化に関する調査研究を行うなどして、鳥獣の良好な生息環境の整備又は確保を図る必要がある。
 また、キジやヤマドリ等人工養殖鳥の効果的放鳥のための調査研究を行うとともに、入猟税の放鳥費等への充当額の増大を図る必要がある。

A猟場
 良好かつ安全な猟場を確保するため、可猟区域のうち、土地利用状況や野生鳥獣の生息環境等を勘案して、長期的に狩猟の場として適している区域を「基幹狩猟区域」などとして確保する必要がある。
 ただし、このような基幹狩猟区域制度の創設構想の具体化に当たっては、昭和53年の法改正時に議論のあった「狩猟可能区域の指定構想」に組するような枠組みの制度にならないように留意する必要がある。この狩猟の場のあり方に関する議論については、感情的・政治的なところから始まった性格が色濃いものであると評する声も聞かれる。確かに、これまでの議論の経緯等をあらためて眺めてみると、本来の問題意識や目的がなおざりにされて、狩猟の場に関する制度の見直しという手段のみに特化した観念的な議論が一人歩きしている感は否めない。鳥獣の保護管理及び狩猟の適正化を図るうえで、現実に何が問題となっているのか、そしてこの問題を解決するために講じるべき有効な解決策は何なのかについて、今一度、原点に立ち戻って冷静かつ客観的に検討することこそが求められていると考えられる。美辞麗句を並べて、いたずらに狩猟の場に関する制度を改変することばかりを結論として求めようとする議論に、合理的妥当性や実効性が乏しいことは明白である。この基幹狩猟区域制度創設の趣旨及び狩猟の適正化については、狩猟者にとっての良好な狩猟の場の確保の観点からは猟区制度の拡充により、野生鳥獣のきめ細かな保護管理を図る観点からは後述する出猟切符方式の登録制度の創設や有害鳥獣駆除等の捕獲の改善等により、人家稠密な地域等における事故防止の観点からは銃猟禁止区域制度の機動的な運用等により、鳥獣の保護増殖の観点からは鳥獣保護区の設定推進や開発規制・生息環境整備事業の充実等により具体化するなど、現行の「狩猟を禁止する区域を指定する制度」の枠組みの中での実現を基本としていくべきであると考えられる。
 一方、近郊農業地域等における鳥獣による農業被害を防止するために、既指定の銃猟禁止区域のうち、人家の稠密の程度の低いところなどについては、散弾銃は規制されるが空気銃は使用できることとする銃猟の規制区域に変更していくように働きかける必要がある。また、発砲時の周辺民家等に対する安全が十分に配慮できる地域であるにもかかわらず銃猟禁止区域に指定されている地域も散見されることから、銃猟禁止区域の適切な設定を都道府県に働きかける必要がある。

B猟区
 猟区の設定数が減少している主な原因としては、土地所有者全員の承諾をとることを必要としている設定手続きの煩雑さと、金銭的な面での経営の難しさが挙げられる。このため、猟区の設定数を増やし、利用率を上げるために、入猟税等を活用した猟区の設置・運営に関する技術的・金銭的な支援措置を行うこと、設定手続きの簡素化(土地所有者全員の承諾→市町村長等の承諾)を図ること、猟区の狩猟期間や各種狩猟規制の緩和を図ること、放鳥獣猟区と同様に猟区のみを狩猟の対象地域とした登録ができるしくみを設けること等の措置の実施について、関係行政機関に働きかける必要がある。
 また、猟友会としても、実猟の研修の場として、猟区を積極的に活用するとともに、都道府県猟友会による猟区の設定や運営協力などを実施する必要がある。

C銃刀法・火取法関係
 猟銃用火薬類無許可譲受数量は、現在、300個(このうちライフル銃用実包については50個)である。特にライフル銃用実包については、実猟に出かける前に射撃場で行うサイト合せ(スコープ等の照準調整)用の試射弾を含めると、50個では不足することが多い。このため、ライフル銃用実包を300個にするよう働きかける必要がある。
 また、散弾銃又はライフル銃を所持しようとする場合には実射のための射撃教習が、所持の許可を受けた場合は銃の操作及び射撃に関する技能を維持向上させるための射撃訓練が必要とされている。しかし、狩猟者(乙・丙種)を含む銃所持者の減少等に伴い、閉鎖される射撃場が増加している。現在、射撃場が設置されていない都道府県は、散弾射撃については3都県、ライフル射撃については13都県にのぼっており、射撃場のない都府県の者は、他県に出向いて射撃教習を受けなければならない不便を被っている。なお、その他の都道府県においても、射撃場こそあるが、十分な設備・収容力を備えていない場合が少なくない。このため、射撃場の整備について、関係行政機関に働きかけていく必要がある。

D鉛弾規制
 鉛弾規制の本格的な導入は、猟友会としても、野生鳥獣の保護上重要な課題であるという認識を持っている。しかし、規制の本格的な導入は、各狩猟者が困らないように、また、有害鳥獣駆除等に支障が生じないように、代替弾及び対応銃の開発及び普及の促進施策が事前に講じられる等の手順を踏んだうえで実施されるべきである。
 なお、狩猟者は、代替弾等の新製品に不慣れであるため、事故防止の観点からも、これらの取り扱いに習熟できるような準備期間と訓練のための場所等が用意される必要がある。

E猟犬
 鳥獣の適正な保護管理を推進する観点から、無登録者の犬による鳥獣の捕獲禁止措置を行うよう関係行政機関に働きかける必要がある。また、狩猟者所有の猟犬による事故等も散見されることから、日頃からの訓練の徹底、猟犬訓練所の活用等を呼びかけていく必要がある。

(4)会員サービスの向上
 会報やインターネット等を活用し、鳥獣の生息動向、良好な猟場、狩猟規制、狩猟方法、道具類等に関する最新情報を迅速に伝達できるようにする必要がある。
 また、猟友会への入会は、都道府県猟友会の支部への入会を通して行われているが、他の支部が所管する地域でも気軽に狩猟ができるように、複数の支部に入会できるような仕組みを創設する必要がある。また、狩猟者数の減少に伴い、会員数の少ない支部等が増えてきている。支部の効率的・合理的な運営を図る観点から、支部として成り立ちうる最低必要人数の基準を設けるなどして、支部の統廃合等を推進していく必要がある。
 また、支部における会員サービス事業の一つに、狩猟者登録の代行申請があるが、極端な場合には、猟期開始の前日にならないと登録証が会員の手元に届かないといった事例もある。また、意思決定のための会議や競(共)猟会の開催、予算決算や事業計画の承認のしかたなども、支部によってまちまちである。このため、各支部において行うべき会員サービス事業の実施要領等を設けるなどして、会員サービスの向上と平準化を図っていく必要がある。
 なお、この会員サービスの向上対策等の実施に当たっては、近年、猟友会に入会しない人の割合が増えており、その理由としては狩猟者数の減少以外の要因も考えられること等について十分に留意する必要がある。

(5)費用負担の軽減
 費用負担の軽減方策については、長期的な見地から対応すべきものと、当面の緊急的な措置として対応すべきものとがある。

@当面の対応事項
 当面の措置として、改善を働きかけていく事項は次のとおりである。
・野生鳥獣の保護管理事業の充実を図るため、狩猟者登録税の額を10,000円から6,500円に、入猟税の額を6,500円から10,000円に変更し、鳥獣行政に充当できる目的税の収入増を図ること。また、このような変更が困難な場合には、狩猟者登録税を半額にするなどの減免措置を講じること。
・狩猟者登録を受ける場合に狩猟者登録税及び入猟税を納入して、さらに登録手数料を1,900円納めているが、登録手数料を免除すること。
・乙種及び丙種免許を一本化するなどして、乙種登録のみで空気銃による狩猟ができるような制度とすること。ただし、装薬銃を使用しないで、空気銃による狩猟のみを行いたい人も相当数存在することから、空気銃のみを使用できる免許制度も、現行の税額等を維持したままでこれまでどおり残しておくこと。

※参考「乙種免許と丙種登録」
 乙種登録をした乙種免許所持者が、空気銃を使用した狩猟を行うために丙種登録をしなければならない仕組みを変えられないのは、乙種を持っていれば装薬銃の他にも空気銃を使用できると直接に規定されているのではなく、乙種を交付されている者は丙種を交付されているものであるとみなすことと規定されていて、あくまでも乙種は装薬銃しか使用できない免許であるとされていることや、地方税法上の諸規定によるものであるといわれている。

A長期的な見地から対応事項
 長期的な見地から対応を検討し、法改正等の機会を捉えて実現を働きかけていくべきものとしては、前述したとおり、諸外国の狩猟制度などに見られるように、登録制度を地域・種・期間を細分化できるものに変更し、登録税、入猟税、申請手数料等の減免を図ることなどがある。例えば、鳥獣のきめ細かな保護管理を行うことができるタグ(鑑札)方式の利点を活かしつつも、我が国の実情に見合った実効性・機動性のある狩猟制度とするために、釣りの入漁料徴収の方式にならい、出猟日数・捕獲対象とする鳥獣の種類数・出猟地域等に応じ、事前に必要とされる枚数分の出猟切符を交付するなどして従量課税するといった、いわゆる「出猟切符方式の登録制度」の創設などが考えられる。
 あわせて、狩猟鳥獣中の移入種については根絶することが目標であり、捕獲の調整を行う必要がないことから、狩猟期間の延長、入猟税及び登録税の減免が図られることなどが考えられる。
 また、特定鳥獣保護管理計画の対象区域における狩猟についても、狩猟による捕獲が推進されるように、計画対象区域・鳥獣のみの登録、狩猟期間の延長、入猟税及び登録税の減免が図られることなどが考えられる。

(6)次世代を担う若手狩猟者の育成
 次世代を担う若手狩猟者の育成と猟友会組織の活性化を図るために、都道府県猟友会に、都道府県猟友会の各支部から選出された若手狩猟者により構成される青年部組織を設置するなどして、都道府県猟友会の支部間の交流を進めるとともに、若手狩猟者の意見等を会の運営に反映させる必要がある。
 また、都道府県猟友会の主催又は支部の合同主催による新人研修会等の実施なども考えられる。

V 有害鳥獣駆除等個体数調整の支援対策
 狩猟者が減少・高齢化しており、他方、シカ、イノシシ等の増加により、農林水産業に対する被害が深刻な問題になっている地域がある。また、移入種による在来の生態系の悪化等も生じている。これらの被害等を引き起こす鳥獣の捕獲に当たっては、都道府県猟友会及びその支部等が被害者等からの依頼を受けて捕獲に従事している。しかし、狩猟者(構成員)の減少・高齢化により地域によっては捕獲に従事する要員の確保が困難な場合もあり、十分な協力体制が整い難い地域がある。
 有害鳥獣駆除等の個体数調整や移入種の排除は、猟友会が社会的に貢献し得る有効な方法であり、これに協力することが狩猟者及び猟友会が一般社会の理解を得るための最善の方策である。また、猟友会による協力体制が整わないことにより、別組織により捕獲が実施されるようになった場合は、猟友会は、単なる狩猟を楽しむ者の団体と見なされ、一般社会からその存在の理解を得ることは極めて困難な環境になり組織の弱体化が否めない。
 このようなことから、野生鳥獣が農林水産業や生態系等に被害を与えるような場合には、狩猟者は積極的にその捕獲に協力すべきである。また、猟友会は、組織を挙げて協力するものとし、都道府県猟友会の中に有害鳥獣駆除等の個体数調整や移入種の排除を専門に担当する組織を設置して、鳥獣の捕獲等の依頼があった場合は速やかに対応できる体制を整える必要がある。

1 現状と課題等
(1)農林水産業被害の増大と有害鳥獣駆除等の需要増大
 中山間地域を中心に、シカやイノシシなどによる農林水産業被害などが拡大しており、必要に応じて野生鳥獣の個体数の調整もあわせて行う「科学的・計画的な保護管理(ワイルドライフ・マネージメント)」が必要とされている。この保護管理は、鳥獣の捕獲に関する専門的な技術者である狩猟者なしでは実行し得ない。野生鳥獣の駆除や生息分布動向の把握などは、狩猟者の半ばボランティア(慈善事業)に近い協力に依存して実施されている。

(2)移入種の増加による生態系の悪化等
 本来、我が国に生息していなかった鳥獣が繁殖し、在来の生物種を駆逐したり、農林水産業被害等を引き起こす等の移入種問題が深刻化している。平成14年3月に策定された新・生物多様性国家戦略においても、生物多様性の保全を図るために、問題のある移入種については駆除すべきであるという毅然とした方針が打ち出されている。現在、狩猟鳥獣は47種類が指定されているが、この中で積極的に駆除すべき移入鳥獣として考えられるものとしては、アライグマ、ミンク、ハクビシン、ヌートリアなどが挙げられる。

(3)駆除要員・体制
 狩猟者数が減少し、駆除隊を十分に編成できない支部も出てきている。また、高齢化等により、やぶをこぎながら、数十kgにも及ぶ獲物を回収するという重労働を遂行できるような要員の確保もままならないところもある。 
 一方、猟友会は、都道府県猟友会の支部を基本的な単位とした地域割りの組織である。このため、駆除は、広域的な観点から対応することが有効な場合が多いにもかかわらず、駆除の受け入れ及び実施は支部が行っている場合が多い。支部を超えた駆除隊の編成事例は少なく、都道府県猟友会には、駆除等を直接実施できるだけの体制が整備されていないところが多いなど、駆除等に関する猟友会の組織体制の整備が不充分である。

(4)駆除方法
 狩猟者は、単なる駆除の作業員として位置付けられて参加している場合が多いが、今後は、科学的・計画的な保護管理を進める視点・立場に立って、予防、対策、モニタリング(生息数等の追跡調査)等を含めた一連の流れを理解できる個体数調整に関する専門的実務家として係わることも必要とされている。

(5)駆除費用
 重労働であるにもかかわらず、狩猟者に支払われる駆除費用は少額である。交通費や弾代などの実費に満たない場合が大半である。しかし、サル等の特定の鳥獣については、地方公共団体より報奨金という形で1頭・羽当たり数千円〜数万円の手当てが支払われている事例もある。

(6)駆除に対する批判
 駆除は、被害者である農林水産業者等からの要請に基づいて、半ばボランティア(慈善事業)に近い形で行われている。しかし、一部の者からは、実態以上に被害が誇張されている、あたかも狩猟者のために駆除を実施している感がある、過度の捕獲により鳥獣の地域的な衰退等を招くおそれがある、かわいそう等の批判が出されている。

2 対応方針
(1)駆除体制の整備
 都道府県猟友会の指導のもとに、関係団体との緊密な連絡調整を行いつつ、市町村や都道府県等の行政界を超えた広域駆除隊を機動的に編成できるような体制を整備する必要がある。具体的には、都道府県猟友会に個体数調整(有害鳥獣駆除等を含む)部門を創設したうえで、各市町村や農林水産業団体等から個別に出されている駆除従事者の派遣要請に関する総合調整や、最寄りに在住している従事者を紹介できるような人材の一覧表(人材バンク)の整備を行う等の新たな事業の展開が考えられる。
 また、関係行政機関及び研究機関等の支援のもとに、駆除実施の技術マニュアルを作成するとともに、適切な駆除方法を学習する研修会、駆除従事者を新規に養成する研修会などを実施するなどして、鳥獣被害に関する相談窓口としての機能の充実も図っていく必要がある。

(2)駆除方法の改善
 駆除については、一部の者から、「公設駆除隊は良いが、猟友会による駆除は好ましくない」という駆除の実態を全く理解していないと思われる内容の意見が出されている。現在、行われている駆除の大半は、市町村や農林水産業団体が実施者であり、狩猟者は捕獲作業の一従事者でしかない。このような意味では、現在、実際に行われている駆除は、まさに公設駆除隊によるものである。また、狩猟者は、駆除が過酷な労働条件の中で行われているものであるにもかかわらず、ボランティア(慈善・奉仕)精神で協力しているものであることを積極的に広報していく必要がある。
 また、駆除に従事するに当たっては、狩猟者に対するあらぬ誤解や偏見が生じることを避けるために、市町村や農林水産業団体等の実施者に対し、次のような措置を講じることにより駆除の適正化に努めるよう働きかけていく必要がある。
 なお、猟友会としても、これに併せて、効果的・効率的な駆除方法に関する調査研究の実施又は支援をする必要がある。また、社会貢献事業としての駆除の重要性の周知を図るため、各支部等においては、会員の幅広い参加を促す観点から、参加者の選抜に際しての経験年数、参加可能期間等の条件の緩和を図り、これまでに特定の狩猟者に対してかけてきた負担の軽減を図るよう配慮する必要がある。

・駆除だけでなく、予防的措置や被害対策等も含めた総合防除の一環としての駆除を推進すること。(総合防除:被害対策や駆除などの色々な手段を組み合わせて鳥獣の被害防止を図ること)
・科学的・計画的な駆除を推進するため、関係機関等と連携して、被害の程度や生息動向等に関する簡易調査手法を開発し、被害状況の事前確認及び報告等の徹底を図ること。
・駆除の実施に当たっては、十分な時間的余裕を持って地域住民への事前連絡等を行うこと。
・駆除にまつわる様々な憶測や偏見を解消するため、駆除の実施方法や結果に関する情報公開を積極的に行い、駆除事業の実施に関する透明性の確保を図ること。

(3)駆除の労働条件等の改善
 駆除の労働条件の改善を図るため、鳥獣の保護管理事業の一環として、有害鳥獣駆除の適正化に対する予算措置の拡充を行うことや、被害農林漁家に対して行う駆除、防除及び調査費用に関する補償的措置を拡充することなどについて、関係行政機関や農林水産業団体等に働きかける必要がある。
 また、駆除作業が安全に行われるとともに、地域による駆除費用の相違からくる無用の混乱等を避けるために、全国共通の駆除作業の安全基準、駆除費用についての単価基準等を整備する必要がある。
 なお、近年、イノシシやシカ等の駆除に対する要請が高まっている。これらの駆除にはライフル銃が必要である。しかし、散弾銃を10年以上所持していないと、原則としてライフル銃の所持許可がおりないため、その間は、射程距離が短い散弾銃のスラッグ弾などによる捕獲に頼らざるを得ない。捕獲効率の向上を図るため、ライフル銃所持許可条件の緩和(散弾銃所持期間10年を3年又は5年に短縮)を関係行政機関に働きかけていく必要がある。
 また、長年の課題であった、わなにかかったイノシシ等を銃で止めさしする行為については、関係行政機関に狩猟の実態が理解された結果、適法に行い得るものであると整理されたところである。このように、中・大型獣などについては銃とわななどの猟具を併用して捕獲した方が安全かつ効率的な場合もあることから、銃やわな・網等の猟具を複合的に使用できる狩猟免許・登録制度の創設を関係行政機関に働きかけていく必要がある。

(4)移入種の駆除による生物多様性保全への貢献
 我が国固有の生物多様性の保全を図るため、生態系や農林水産業に被害を与えている移入種の駆除が、環境施策における喫緊の課題となっている。
 積極的な駆除を進めるために、移入種の一部については環境省によって狩猟鳥獣に指定されたところである。しかし、肉や毛皮等に資源としての魅力が乏しいことから、捕獲ははかばかしくない状況にある。このような状況を改善し、狩猟者による自発的かつ積極的な移入種の捕獲が進むように、狩猟鳥獣中の移入種については、前述したように税の減免や狩猟期間の延長措置等の奨励策を導入するよう関係行政機関に働きかけていく必要がある。また、併せて、狩猟鳥獣に指定できる移入種については、すみやかに狩猟鳥獣等に指定するなどして捕獲を促し、行政機関が支出している維持経費の負担軽減に貢献していく必要がある。

W 各種対策の実施の考え方
1.実施に当たっての心構え
 狩猟を取り巻く現状には厳しいものがある。しかし、厭世的になっていても事態は改善しない。困難な局面に立っているからこそ、逆に将来を見通す確かな眼と積極的な姿勢が必要とされている。本報告書に掲げた対策の実現に当たっては、利害調整や制度上の整合性の確保が困難なものも少なくない。また、狩猟者にとって、手放しで喜べるものばかりでもない。場合によっては痛みを伴うものすらあるかもしれないが、人と自然とが共存する社会にふさわしい「21世紀の狩猟」の推進に向けて、不断の努力と果敢な挑戦が必要とされている。  
 
また、本報告書に掲げた対策等の実現に当たっては、猟友会に係る先輩諸兄の長年に渡る労苦を通じて培われてきた伝統と知見等を尊重・継承することが肝要であることも忘れてはならない。その一方で、近年のめざましい社会経済等の変化に即応できていないところについては、斬新な感覚を取り入れつつ、発展的に改善していくといった英断も必要であることはいうまでもない。
 環境省等において行われている環境施策の考え方や日本人の自然観も、単に保護・規制することから、持続的な利用を図るという環境資源の適正管理を重視する方向へと切り替わりつつある。ある意味で、狩猟は、このような転換を象徴する試金石になりうるものであると考えられる。

2.各種対策の実施手順
 前述してきたように、狩猟・猟友会を活性化するために実施すべき対策としては、数多くのものが考えられる。これらの対策は、すぐに実施可能なものから関係者の意見を聞きつつ中長期的な見地から取り組んで行かなければならないものまで、また、猟友会又は狩猟者自らが実施できるものから関係行政機関等において実施されるべきものまで、多岐に渡っている。
 このような状況を踏まえ、本報告書を絵に画いた餅に終わらせないためには、各対策に優先順位をつけるなどして、メリハリのある実施手順を検討していかなければならない。あくまでも本報告書のとりまとめは、最初の第一歩を踏み出したに過ぎないことを肝に銘じつつ、今後は、本報告書に掲げた各種対策の実施手順や方法等についての検討を、各種作業委員会(プロジェクトチーム)を設置するなどして具体的に進める必要がある。



※別添「狩猟とは(狩猟読本より抜粋)」

第1編 これからの狩猟
1.狩猟とは
 狩猟は基本的には野生の鳥獣を捕獲する行為ですが、野生鳥獣を捕獲する目的は、時代により、人によりまちまちです。現在でも、ある人は野生の鳥獣を捕獲して、飼育された鳥獣にない野生の味を楽しみたいといいます。ある人は自分の畑を荒らす憎い野獣を仕留めるのだといいます。また別の人は射撃が主体で、野生の鳥獣を標的として大自然の中で射撃を楽しんでいるといいます。また、増えすぎたある種の個体群を、環境に適合する数に間引くために捕獲している人もいます。一般的に狩猟と呼ばれる行為の中には、このようなさまざまな目的による野生鳥獣の捕獲行為が含まれますが、このうち、現代の自然環境、社会環境から見て、真に適切なものだけが一般国民の理解と共感を得て、これからの社会に受け入れられ、存続できるのです。
 このようなことからこれからの狩猟は、あらゆる種類の野生鳥獣が、豊かな自然環境の中で、適正な数を保って生息を続けられるよう、その生息環境を保全し、一方、適切な個体数調整を具体化するために捕獲または増殖を行う行為でなければなりません。このような狩猟は、生活環境を改善し、農林水産業等に対する野生鳥獣による被害の防止、軽減に貢献するなど、人と野生鳥獣の共存の実現に寄与するものです。
 現代は、人類が科学知識と技術を駆使して、地球上あまねくその活動範囲を広げている時代です。そのため、地球上のあらゆる場所で、自然のままの生態系が改変され、分断されてしまっています。この改変され、分断された自然の生態系をそのまま放置しておきますと、その生態系を構成する動植物など、元の各要素間のバランスが崩れ、ある種は極端に増加し、一方、ある種は絶滅するなどして、元の健全な姿を維持することができません。それは、生物の一種である人類の生存にとっても、極めて危険なことです。そのため、近年、自然保護の要請が高まり、自然環境を保全し、人と野生鳥獣の共存を実現することが求められています。
 このように自然の生態系を改変してきた人類には、自然環境の破壊をこれ以上進めないことと、残された自然を健全な生態系として維持するために、自然の遷移に力をかす責任があります。野生鳥獣について言えば、生態学など関連する自然科学の知見に基づいて、慎重に検討され、決定された方法によって、地域ごとに、野生鳥獣の生息環境の保護、改善を行うとともに、その地域に生息する種ごとの個体数が、生息環境に調和するよう調整を図る、適切な野生鳥獣管理を行うことが必要だということです。
 適切な野生鳥獣管理を行うためには、まず地域ごとに、各種の野生鳥獣の生息数、性比、年齢構成、栄養状態などの生息状況調査と、餌の状況、営巣地、営巣木の状況などの生息環境調査によって現状と傾向を把握し、そのうえで、これらの基礎調査に基づいて生息環境の改善、各種野生鳥獣の生息個体数の調整など、地域ごと、種ごとに各種の具体的施策が検討、決定されます。施策の範囲も広く、個体数調整だけをとっても方法はいろいろありますが、昔から行われている狩猟を、節度を持って行えば、狩猟は個体数の適正な調整を図る上で合理的で有効な方法の一つです。野生鳥獣管理の枠を越えた狩猟は、世間の非難を受けることになります。
 また、野生鳥獣を捕獲するばかりでなく、進んでその生息環境を保全し、減少した地域、減少した種については、その保護増殖を図ることも狩猟者の当然の努めとして、広い意味での狩猟行為に含めるべきでしょう。

2.狩猟者の社会的責務
 狩猟をこのように野生鳥獣管理の中に位置付けますとその具体的な内容を定め、その実行を確実にするために、狩猟行為の規制と狩猟者の規律が必要となります。現在でも狩猟者の資格試験、入猟時の登録、狩猟対象種の限定、狩猟可能地域、狩猟期間、狩猟頭羽数の制限などが法令などによって定められているほか、義務的、自主的両面での各種調査の実施とそれへの協力が求められています。この傾向は将来とも変らないでしょう。
 この狩猟の対象種が、人の社会生活を脅かしたり、農林水産業その他産業に被害を与えるような種である場合には、狩猟によるその種の個体数の調整は、そのまま生活環境の改善や、農林水産業の振興など、社会に貢献していることになります。しかし、時には人の社会生活を脅かしたり、農林水産業などに被害を与える野生鳥獣を捕獲・排除する、いわゆる有害鳥獣駆除や、特別の場合の個体数調整のための捕獲が必要な場合があることは否定できません。その場合でも、対象になる野生鳥獣の種、または個体群を、絶滅に追い込むようなことは許されません。それを、迅速に、かつ合理的に実行することは、野生鳥獣に関する知識と、捕獲の技術を持った狩猟者が、慎重に取り組むべき社会的責務です。
 以上のように、適切な野生鳥獣管理、その中での節度ある狩猟、合理的な有害鳥獣駆除などによって、はじめて、人と野生鳥獣との共存が実現するのです。そのためには、狩猟者は、鳥獣に関する自然環境に精通して狩猟に関する知識、技能の向上を図るばかりでなく、進んで狩猟関係法令などの規制に従い、狩猟のマナーを遵守するなど、狩猟者としての社会的責務を確実に果たす必要があります。特に狩猟者が各種の施策の基礎になる調査に進んで協力し、正確で豊富な情報と資料を提供するほか、積極的に地域の自然環境、生活環境の保全に貢献することが野生鳥獣管理を実現し、狩猟に対する一般国民の理解を深め、人と野生鳥獣の共存を成功させる鍵であることを認識する必要があります。ここで狩猟者の社会的責務をまとめてみますと、次のようになります。

1)地域の自然環境、生活環境、さらには地球環境の保全に協力し、特に地域の自然環境に精通して、環境のモニターとして地域社会に貢献すること。
2)常に狩猟に関する知識、技能の向上を図り、自然環境とその要素の保全に関する知識の研鑚とその実行に努めること。
3)関係法令の規程に従い、狩猟に関するマナーを順守し、また、猟具の取り扱いに習熟して、狩猟に対する一般国民の理解が深まるように努めること。
4)狩猟の結果取得した野生鳥獣資源の有効利用に努めるとともに、自然環境の保全に関する各種の調査に協力し、必要な情報、資料を提供すること。
5)野生鳥獣による人畜及び農林水産物に対する被害があった時、または被害の発生が予想され、その対策として協力が要請された時は、誠意をもって対応すること。

 狩猟者の一人一人が、自分が野生鳥獣の管理、自然保護の実行者であることを自覚し、それに相応しい社会的責務を果たしてこそ、社会の求める人と野生鳥獣の共存実現の手段として、これからの狩猟の地位を確立することができるのです。

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