●厚胴スタークラシックインプレッション 2002.6.21
TAMAから発売された厚胴スタークラシック。
非常に気になりましたので音を聞いてきました。
※楽器のインプレッションはどうしても文学的になってしまいますが、
音を直接アップでもしなければ正確に伝わらないのでこの際気にしないでおきます。
スネアの音を確認するにはいろんな方法がありますが、
ワタシは次のようにやることが多いです。
(1)指タップ
打面のいろいろな部分を指先でぽんぽんと叩いてみます。
打面のテンションの均一性や応答がわかります。
指でさわったぐらいで何がわかるのか....とお思いの方は試して見て下さい。
スネアによってかなり反応が違います。
(2)ストレイナータップ
スネアをスタンドに置き、ストレイナースイッチをON/OFFしてみます。
スイッチを指先で軽く操作して、スネアサイドをスナッピーでタップしてみます。
スネアサイド側の反応を見るわけですが、これもかなりスネアによって違います。
(3)クローズリムショット
リムショットにて、いわゆるスイートスポットの広さと音色を確認します。
(4)スティックでタップストローク
打面の端から端までタップストロークしてみます。
(5)スナッピーテンションの影響確認
スナッピーの張りを変えて(4)の反応が変わらないか見てみます。たいていは大きく変化するので、
バズを拾わず(他の楽器の音に反応することなく)なおかつ打面端のタップも拾えるような
ポイントが存在するかを確認します。
なお、スナッピーをある程度以上に強く張っていくと、
スナッピーが押しつけられることによってスネアサイドのピッチが高くなりスネアの音色が変化します。
このポイントが通常使うスナッピーテンションよりも高いところにないスネアは
実際の演奏でバズとの戦いに苦労することになります。
ここまでやれば終了。フルショットはする必要がありません。
というか、フルショット時の音もだいたいわかります。
いずれにしてもちゃんとチューニングしてあることが大前提ですが。
よく「試奏させてください」といいつつ、チューニングも確認せず
セットに向かって延々と好きなパターンを叩いている人を見ますが
あれでは単なるストレス解消もしくは体力作りです。
おっと、前置きが長くなりましたが、
厚胴スタークラシックの音ですね。
第一印象は、「あれ、ソナーっぽい(笑)」
です。
薄胴スタークラシックは反応と鳴りが命で、指タップでは「ぱすっ」と言う感じの反応なのですが
厚胴のものは「でしっ」という感じになります。
とても同じ名前のスネアとは思えません。
リムショットは薄胴が「こつっ」に対して厚胴は「カッ!」になります。
とっても抽象的ですみません。
このあたりの擬音と周波数特性には明確な関連があって、
心理音響学の論文を見ると擬音に使われる母音&子音と周波数の関係が書いてあります。
・ドラムの物理によって音色(周波数構成とその時間的変動)は変わる
・音楽の音階は結局周波数である
つまり周波数を共通パラメータにして人間の楽器への印象が決まっているというのが今のワタシの仮説です。
これはぼちぼちと時間をかけて検証していこうと思います。
ボリュームは薄胴にくらべて文句無く大きいです。
フルショット時のボリュームが弱点だった薄胴に比べ、
「飛ばした」ときもオーバープレイに陥ることなく演奏できそうです。
ただ、薄胴のあの繊細さというか敏感さはありません。
しかしこれは欠点ではなく、明確な個性分けが出来ているという意味でワタシは納得しています。
ストレイナースイッチもワタシの好きなバータイプ。
クランク機構がないため、そ〜っとONにしたいときなどとってもしっくり滑らかに動作するので
重宝します。
ちなみに新宿某楽器店には
・オールブビンガ9プライ
・スタンダードメイプルと同じシェルで艶消しゴールドのハードウェア
といった一品モノ(試作品流れ?)のスタークラシックも置いてありました。
去年はワンピースメイプルの5インチフリーフローティングとか、
カーボンプライの5インチ仕様とかもありました。
このお店は時々こういう怪しいブツをおいているので大好きです(笑)
厚胴の音で艶消しハードウェアってルックスのスネアがあったら絶対買うのにな...。
というわけで、今回は結構まじめに魅了されてしまったのでした。
胴が薄い厚いの差はありますが、TAMA=スタークラシックというシンプルなブランド構成
を尊重するやり方は、
・ラディック=ブラックビューティ
・スリンガーランド=ラジオキング
・ハトヤ=3段逆スライド方式釣り堀
というように着実にブランドイメージを築いていけると思います。
世の中不況ですが、楽器という感性や夢に近い領域でモノ作りしている企業は
そういう部分を失わずにいてほしいと切に願って本日のインプレッションを終わります。
●TAMAのスネアに見る新戦略 2002.6.9
TAMAから新しいスネアが発売されました。
13プライ10mm厚と7プライ8mm厚の2種類のメイプルスネアです。
ここ数年のTAMAの売りはStarClassicの9プライ5mmの超薄胴シェルでしたが、
どうしてここに来て厚胴をラインアップしたのでしょうか。
汎用材の合板が普通だった60〜70年代→メイプル/バーチ材の使用が一般的になった80年代、
そしてソナーショックによるヘビーシェル流行を経て、
TAMAは薄胴で良く鳴るシェルをここ数年のトレンドにすることに成功しました。
これはもちろんTAMA1社の力ではなく、パールのクラシックメイプルシリーズなどによる影響もあると思いますが、
シェル鳴り指向のトレンドをリードするようにStarClassicをデビューさせ、
期待を裏切らない音を実現したことでそのトレンドを決定的なものにしました。
5mmという極薄胴+ブラケットなしマウント方式により非常に良く振動するそのシェルは
クリアやコーテッドのノーミュートヘッドと良くマッチし、
奏者に対する反応がわかりやすい「鳴るタイコ」として広く認知されました。
TAMAが偉かったのは、
自社トップブランド=StarClassic=薄胴メイプル
というわかりやすいやり方をとったところです。
パールもヤマハもトップブランドはメイプルのドラムですが、
両社ともメイプルに厚胴/薄胴両シリーズのラインアップがあり、
「どちらがいいのかはお好みで」としか説明のしようがない商品構成です。
この点TAMAはわかりやすく、タイコ自体が良く鳴ったこととあわせて
「ウチは薄胴がいちばんいいと思ってます」と明確に主張したことも、
世の中に認知された理由のひとつなのではないかとワタシは考えています。
モノ作りにおいてこのように明確な考え方を主張をしていくことはとっても大切で、
おおげさにいえば作り手の真剣さのバロメータとも言えるでしょう。
(もし間違いがあったら理由を説明して訂正すればいいのです)
では、ここにきてTAMAが厚胴スネアを出してきた理由は何でしょうか?
これを推理してみましょう(というほど大げさな話ではありませんが)。
タイコの物理を考えたとき、シェルの機能は共振要素として振る舞うだけでなく
支持要素として働きます。
フープをしめつけてヘッドに張力を持たせるというのがドラムの基本構造ですが、
フリーフローティングなどの特殊構造である場合を除けば
この反力は当然全てシェルで受け止めることになります。
これは静的な支持ばかりでなく、ショットしたときの反力も含まれますので、
ショットするたびにヘッドにひっぱられてシェルは一瞬変形します。
剛性の低いシェルではこの変形が大きくなるため、叩き手の感触としては
柔らかくてスティックが吸い込まれるような感覚になります。
ヘッドの張り方に対する許容度もあり、チューニングが少々どうなっても安定して反応しますが
総合的な効率は下がるので絶対音量は稼げません。
逆にシェル剛性を上げれば上げるほど叩いた感触は固くなり、
チューニングのアンバランスに対する許容度も下がりスイートスポットが狭い傾向になりますが、
ヘッドの振動特性をそのまま出すことができ、音量も稼ぐことが可能です。
StarClassicの5mmシェルは、もちろん前者。
叩いた感触は柔らかく、非常に安定した鳴りの楽器です。
ところが反面音量を稼ぐには不適で、その分ダイナミクスレンジの絶対量で比べると
パールのスタンダードメイプルに負けていました。
これを単に「特徴ある音色」と割り切るのは簡単ですが、
用途によってはStarClassicスネアでカバーできない領域があるのも事実でした。
ということで、今回のTAMAの新スネア発売は
これらに対応するための勇気ある決断だと思います。
厚胴スネアを追加するということは、
「音量をかせぎ、ヘッド鳴りを活かすシェルもラインアップに加える」
という内容で、技術的には全く正常な判断であると思いますが、
「薄胴一番」を売りにしてきたTAMAとしては今までの主張を覆すようにも取られかねない。
で、説明としては「新たな方向性」という表現を使っています。
つまり、
「いままでは薄胴で胴鳴り指向一直線で来たけど、ここらでヘッド鳴りとボリュームにも
バランスを置く製品を出すことで、音の方向性にバリエーションを持たせた。」
というストーリーで厚胴を発表・発売しています。
要するに、厚胴と薄胴のどちらがいいのかなどということはなくて、
それぞれ指向する方向が違うという極めて当たり前の事実を反映しただけのことです。
この新スネアがパールのスタンダードメイプルと互角にわたり合い、
StarClassicの新サウンドとして地位を気付ければ良いのですが。