Ludwigという宗教 〜LM400について考える〜


ワタシの持論としては、あるメーカの製品がどれも同じく素晴らしいなどということは
通常考えにくいことであり、良い点悪い点が混在しつつ改良が施されてきた結果として
ある時点での製品がとても良いバランスになり、
それが名器として認知されるということではないかと思っています。

個人的にはどこのメーカがベストという固定観念は全くないのですが、
世の中で広く認知されている「いい楽器」としてラディックのメタルスネアは外せません。

ラディックについての歴史や名プレイヤーたちの逸話など、
その手の話はあまたのファン諸氏にお譲りするとして
ここではラディックメタルスネアを純粋に楽器として分析して見たいと思います。


 


●Ludwigという宗教 その1 50年前のスタンダードを検証する 2003.03.23

多分ラディックで最も有名な金属スネアはLM400でしょう。
謎の素材「ラディアロイ」のシームレスシェルにプレスフープという構成で
1960年代にデビューし一世を風靡します。

最終的にはこの60年〜70年代の最もいい時期といわれる頃のLM400について
調べなくてはいけないわけですが、今回はまずそれ以前のラディックがどういう楽器を
作っていたか調べてみました。

1920〜1930当時、基本的に金属ドラムのシェルはブラス製だったようで、
おそらくこれは管楽器加工などの知見がそのまま活かせることが理由だったのでは
ないかと推定します。
1940年代は第2次大戦もあり金属の使用が制限されていて各メーカとも
自由にモノ作りができない状態だったようです。
その後再び作り始めたスネアはやはりブラス製で、そのあいだほとんど技術的な
変化はないようです。

そして50年代後半になると「SuperLudwig」というシリーズがデビューします。
これが直接的にLM400系の先祖になるわけですが、
今回はSuperLudwig直前の古いスタイルを持ったPOINEERというモデルを
観察してみましょう。


外観はこのような感じです。
 ↓

 ←おそらく50年代製 PIONEER

シェルはもちろんブラス。8テンションでフープもブラスです。
表面処理はクロームメッキ。

ロゴマークは下の写真の通りです。
「ludwig&ludwig」と呼ばれているらしいのですが、会社の状態によって
コロコロと経営形態が変化した時代の過渡的な名前らしいです。

 ←ロゴマーク

シリアルナンバーのたぐいは見あたりません。
製造数からしてあまりナンバーを打つことに意味がなかったのか、
いろいろなモデルラインアップが混乱して系統立ったナンバーが打てなかったのか、
あるいはそのような概念そのものがなかったのか、
詳しくはわかりませんが。

 

<特徴>

さて、
ワタシにとってはじめてのアイテムが出てきました。


それがこのスナッピーです。

 ←これ

↓さらに拡大してみましょ。

 ←スナッピー(ストレイナー側)

こ、これはまさにギターの6弦。
そうか。

古いスネアのストレイナースイッチに穴がたくさん空いてるのは
このスナッピーを通すためだったのです。

 

 

 

 

....ということは

 

 

 

 

 

 

.....逆側は

 

 

 

 

 

 

ぎゃはははは!!やっぱし!

   ↓

 ←ぺぺろんちーの...って感じです(謎)

すごい。すごすぎます。

フープを曲げてスナッピーを通してあるので、
スナッピーを張ったままフープを取り外すことができます。

なので便利....と一瞬思いましたが、
よく考えるとフープを取り外すのはボトム側ヘッドを外すためである場合がほとんどなので
そうするとスナッピーも外さないとだめですよね。

な〜んだだめじゃん(笑)



ところで、

こんなに太いスナッピー(というかギターの弦)で反応は鈍くないのか
はじめてみた皆さんは疑問に思われるでしょう。
そう、その通り。

反応は最悪です(笑)

ばしゃ、みたいな空しい音しかしません。

ヴィンテージだろうがラディックだろうがダメなものはダメで、こんなもの普通の演奏には使えません。

もっと細めのワイヤを一本一本微調整して張ればなんとか調整できるかもしれません。
が、とぉ〜っても時間がかかります。
練習時間の半分以上をスナッピーの調整に取られるのはどう考えてもバランス悪いので
ワタシ的にはこのやり方×。

迷わず普通のスナッピーに付け替えてしまいました。

 #もしかして、特に大音量のマーチングなどの限定目的用スナッピーなのかもしれません。
 #詳しいことをご存じの方は教えて下さい。

 

<さて音は>

肝心な音ですが、分析はまだです(他の年代のスネアが揃ったらやります)。

演奏した感じはとてもやわらかいタッチで、
スネア全体が「お〜変形してるな〜」という感じ。

もちろん見た目でわかるような変形はありませんが、
ショットした力がエッジからシェルに逃げて全体がたわんでエネルギーを吸収するという感触。
それが証拠にハイピッチにしようとしてもなかなかハイピッチになりません(笑)

ソナーのシグネーチャのように「シェルは微動をだにせずヘッドだけが振動する」スネアとは
全く逆の特性です。

シェルもフープも柔らかいブラスなのでタッチはホントに柔らかです。
コーテッドでノーミュートの音はよく言えば優しい音、
悪く言えば全くしまりのない音がします。
リングミュートするとちょうどいい感じに基音が出てきて音がまとまります。

金属スネアの原点なんだろうなというのがよくわかる楽器という印象ですね。


<そして結論>

ワタシの印象として、
このスネアには、

・ボリューム
・音の締まり
・楽器としての頑丈さ

が足りない、と感じました。

きっと当時このスネアをプレイした人たちも同じように思ったに違いありません。

そして、ラディック社は来るべき1960年代に向けて、
ボリュームが出せて、締まった音が出て、丈夫なスネアを開発します。

そんな新製品「スーパーラディック」「スープラフォニック」にまつわるいろいろは次回!

 


●Ludwigという宗教 その2 LM400にまつわる仮説 2003.07.12


ギターが、ベースが、キーボードが、次々と電子化されて大音量を手に入れ、
バンドサウンドも大きく変化していった50〜60年代。
スネアドラムについても、それまでのいわゆる「小太鼓」の枠を離れて、
もっと大きな音が出したい、もっと耐久性に優れた楽器が欲しい、
そんな要求があったのではないかと想像します。

買収先のC. G. Conn companyからBill Ludwig Jr.がラディック社を買い戻したのが1955年。
時代にあった楽器を提供する必要性を感じたラディック社は
それまでと大きく仕様を変更したスネアドラムを開発することになります。

ここでは、当時の開発者になったつもりで
結果的に名器と言われることになったLM400シリーズのスネアがどういう思想で開発されたか
楽しく想像してみたいと思います。

 ←LM400(1966)


想像その1:パイオニアまでの背景

ラディック社が1920年代から一貫して使っていた金属スネアの多くに共通した基本構造は、

・溶接ブラスシェル
・チューブラグ
・シングルフランジフープ(要はただの円筒)


というものです。

これは古くからあるドラムの構造であり、
最低限の生産設備で作ることが可能な設計です。

例えばシェルは平らなブラス板を板金加工で曲げ、円筒にして溶接。フープも同じ。
チューブラグは複数の円筒部分に分割して旋盤で削ったあとねじ切り。
作るだけなら町工場でも充分可能です。

ところが、この基本構造にそれまでの金属スネアの限界が見えています。

・溶接シェルであるが故の真円度不均一、
・チューブラグによるシェルへの応力集中、
・シングルフランジフープ故のチューニング不安定、ハイピッチチューニングの限界


などなど。

そして時は流れ1950年代後半。60年代に向かって他社と勝負できる強力な楽器を作るには
これらを全てクリアする必要がありました。
もはや戦後ではない...とラディック氏が言ったかどうかはわかりませんが、
経営者なら誰でも直面する問題に彼もぶつかります。

「このまま事業を維持するなら大量生産して利益を確保する必要がある。」
「しかしそれには巨額の設備投資が必要(製品が売れなきゃ倒産)」

という悩む場面ですね。

パイオニアでは出せない音を出せるスネア。
生産性が良く、低コストで瀕死のラディック社を立ち直らせる収益を出せるスネア。
当時のラディック社はそういうスネアを考える必要があったのです。

 

想像その2:そして生まれた基本コンセプト


今までのビンテージルックのスネアをがらりと変化させる必要性を感じた(であろう)ラディック社は
次期商品をどうしようか真剣に考えたはずです。

スネアをばらばらにすると、これだけの部品になります。
 ←LM400構成部品


これらひとつひとつのパーツについて、音への影響、コスト、生産性を吟味して
所望のスネアを仕立てるにはどうすればいいのか検討するわけです。

おそらく、こんなふうに検討されたのではないかと推定します。

課題

対応方針

具体策

おそらくこう判断した

(1)絶対音量のアップ、
  個性的な音色

(2)耐久性のアップ

(3)収益のアップ(汎用性、
  低コストな製造方法)
・シェル剛性アップ

・フープ剛性アップ

・シェルに新素材採用

・接触型ラグ採用
・シームレスシェル化
 高剛性素材採用

・トリプルフランジ化

・アルミシェルにクロムメッキ

・インペリアルラグを使う
(1)シェル振動をきちんと管理するには溶接シェルでなくシームレス化必須。製造方法そのものは他社で成型実績ありイケルだろう。剛性は表面のクロームメッキで確保。

(2)他社で採用例あり特に問題なし。

(3)コスト重視のためシェル素材はアルミを使い、剛性が必要な製品はクロムメッキと組み合わせて展開する。メッキ難易度高いため素材成型はアクロライトでトライしその後メッキ仕様を立ち上げ。それまでは暫定的にブラスシェル。

(4)1935年から使っておりコスト・品質上問題なし。

最大のポイントは「今後アルミ合金シェルをメインにする」という決断です。

一つ一つ手作りする芸術品ばかり作っていては商売になりません。
大量生産可能で、かつ時代に受け入れられる骨太な音の出る楽器を指向したはずです。

そのための大前提として、鉄でもブラスでもないアルミを選んだわけです。

理由は間違いなくコストと思われます。
素材調達費用はざっくり言ってブラスの半分〜1/3程度。
素材はアルミでも、表面にクロムメッキの厚い層をつければ充分剛性を確保できると判断したのでしょう。

ただ、メッキについては難易度が高い(後述)ので、

(1)メッキ無しのアルミ合金シームレスシェルをまず開発しておき、これを先に発売する(アクロライト)
(2)品質が安定するころまでにメッキ技術開発を終わらせ、後追いでメッキシェルを発売する
(3)メッキシェル開発終了まで待っていられないので、1960年時点ではブラス溶接シェルでまず発売しておく

という戦略だったのではないでしょうか(あるいは結果的にそうなってしまった)。

さて、肝心な「音」についてですが、シェル素材だけでなく表面処理で音をコントロールできることに
気づいていた点はラディック社の卓見でしょう。

クロムでメッキした層は非常に硬いです。ビッカース硬度で800-1000。
これは普通の鉄の倍近い硬さです。

アルミのビッカース硬度は50-200程度ですから、
クロムメッキをすることで表面硬度は大幅に増します。
この度合いはメッキ厚さにもよりますが、素材基本厚さ1.6mmに対し裏表100ミクロンのメッキを行えば
厚さ比で1割弱が硬いメッキ層ということになり、
シェルの振動特性はかなり違ったモノになるはずです。

すでにパイオニアシリーズでCOB(ChromeOverBrass=ブラス胴にクロムメッキ)の経験が
あったラディックは、素のままのブラス胴とメッキしたブラス胴で大きく音が違うことを知っていたはずで
安価なアルミシェルがベースであっても、うまく形状を作ってメッキと組み合わせることで
スティールやブラスに対抗できるスネアシェルを作れることを多分わかっていたのでしょう。

ラディックは'59年にまずブラス胴の「Super-ludwig」シリーズを発売。
これはLM400とほとんど同じルックスですが音はかなり違います。

1962年にはアルミ合金シームレスシェルの「Acrolite」を発売。
そして1964年Super-Ludwigシリーズのシェルが
アルミ合金+クロムメッキシェル〜いわゆる「Ludalloy」〜となります。
このシェルはまた「Acousti-Perfect」とも呼ばれたようです。
シームレス(継ぎ目がない)シェルなので音響的に完璧、という意味でしょう。

この時代より後のLM400系スネアを「Supra-Phonic(スープラフォニック)」と呼ぶようです。
(スナッピー全面あたりのものは「Super-Sensitive」ですが基本は同じ)

そして結果的に、アルミ合金にクロムメッキしたシェルはサスティン短めながらパワーのある
独特のサウンドを出し、どんな音楽にも使いやすいマジックドラムとして一世を風靡したのですね。

 

 

想像その3:生じたであろう諸問題とLM400完成への道のり


そんなこんなで'64年に発売されたスープラフォニックLM400シリーズですが
その後の変遷を見ると、仕様上の問題もあったようです。


(1)メッキの問題

・時代にあった強力なスネアサウンドを得るために、剛性の高いシェル+ラグ構造
・かつ低コストで作るためにアルミ合金のシェルを採用。
・アクロライトのシェルをそのままクロムメッキして使えれば誠にラッキー。


このコンセプトにおける最大の技術的問題は、そのシェル生産方法にあったはずです。

何が大変かって、
アルミニウムは、非常に活性の強い金属のため酸化皮膜を生じやすく直接めっきすることができません。

現在は

地金であるアルミニウム及びその合金に陽極酸化膜を形成
     ↓
できた皮膜に他の金属を二次電解により析出
     ↓
二次電解で析出した金属の上に各種のめっき処理を行う


という方法できれいにはがれずメッキできるようになっているそうですが
当時の技術レベルが今よりはるかに低かったことは
40年の時を経て今に生き延びている60年代LM400達の惨状を見れば明らかです。

  
↑メッキはがれの例:某ショップの許可を頂いて撮影

上の写真は極端な例ではありますが、60年代のラディアロイLM400でメッキが無傷なものを探すのは
不可能に近いと言われています。
おそらく、なんとか生産化にこぎ着けたモノの、いくらがんばっても
当時のメッキ技術ではそのレベルにしかならなかったのだと思います。

あるいは、...もしかしたら、
「よっしゃ〜OK!」と思って販売したらあとでマズイのが判明したのかもしれません。

なにしろ旧き良きイリノイ州。
発売した後になって

「そういえばさ〜、アルミにクロームメッキってできないんじゃなかったっけ?ビル」

「え!?マジ?売る前に言ってよ〜!ジョニー」

みたいな会話してた可能性も否定できませんが。

...というわけで大慌てで改良を重ね、
メッキがはがれないように何らかの仕様変更がなされたはずです。
というのも、友人の所有スネア、楽器屋さんでの中古品などを見ても
'70年代のラディアロイシェルはめっきのダメージがほとんど無いからです。


製造業の常識として、仕様変更したときは何らかの方法で識別できるようにします。
これは全くワタシの想像ですが、俗に言うラディアロイシェルの中には
次のような仕様があるのではないかと考えています。

(a)初代ラディアロイ('64〜)
  アクロライトシェルにクロムメッキ。メッキの耐久性は低く、数年でピンホールがあく。
  シェル内側には製造年月日のみ。

(b)改良仕様その1(おそらく'68〜)
  メッキ耐久性アップ品。
  シェル内側に「Reliable Anti-Galvanic」の印。

(c)改良仕様その2('70年代のどこか)
  メッキ耐久性さらにアップ品。
  シェル内側に紙ステッカー(?)。

わざわざAnti-Galvanic(「電蝕しないぜ」)なんて書くところを見ると、メッキ品質に対して
かなり強いユーザクレームがあったことが容易に想像できます。 
で、対策済みのシェルかどうかを判別できるようハンコを押したり
ステッカーを貼るようにしたのでしょう。

な〜んて、あくまでも想像なので、正しいことを知ってる方は教えて頂けると有り難いです。


(2)フープ耐久性の問題


64年からスチール製になったと思われるトリプルフランジフープですが、
初代のものは板厚が1.6mm。いかにも割れそうです。

割れないまでも、使い続けると
 ←部分的に3mmぐらい浮いてます
↑このようにゆがんだりして


チューニングにも支障が出るようになってしまいます。
これはさすがにマズイ。

耐久性上もこれでハードロックはキツイはずで、'70年代のものは約1.8mmに厚肉化されています。
重さも452g→490gと手に持てばわかるくらいの差があります。

他社のトレンドを見ても、プレスフープは1.6mmだったものが2.3mmのものも用意され
ダイキャストフープの展開も多くなってきたので
耐久性の問題とあわせ、時代への対応と言う意味もあったことと思います。

ただ、軽いラディアロイシェルの微妙な音色が特徴であるLM400の場合
フープ剛性を上げて行くほどその特徴が無くなっていってしまうので
耐久性と音色のバランスには悩んだのではないかと想像しますが。


(3)ミュート(マフラー)仕様

初代スープラフォニックには野球のバット型ミュートがついています。


 左:ON状態 右:OFF状態

 ←構成部品

ワンタッチでON/OFFできて便利というメリットがある反面、
演奏中にミュートの当たり具合を全く調整できないというデメリットがあり賛否両論です。
フェルトがヘタって来るとONにしていてもいつの間にかOFFになったりして
もともとの設計に無理があるのは事実です。
好みの問題もありますが、ラディック社としては信頼性を重視するという結論になったようで、
70年代モデルからはノブ式のミュートに戻しています。

←'70モデルのミュート(フェルトはおそらく交換したもの)


と、このような問題をクリアしつつ、LM400は'70年代になって本来意図した完成の域に
近づいたようです。

ただ、'60年代のものが楽器としてダメというわけでは決してありません。
'60年代LM400でないと出せない音のファンがいるのもまた事実。
耐久性がなければそれなりの使い方をすればいいじゃないかというのもある意味正論なので
要はそれぞれ気に入った楽器を勝手に使えばよろしいという基本に帰るわけですね。

 

 

補足:仕様について

その他、仕様に関する補足です。
66年モデルと70年(後期)型を比較整理しておきます。

  重量等の数字は実測値(赤字は'66→'70での変更箇所)

  1966's 1970's(おそらく後期)
シェル 初期Ludalloy
板厚:1.6mm
重量:810g
スネアベッド:1.6mm
Ludalloy
メッキハガレ対策仕様
板厚:1.6mm
重量:845g
スネアベッド:2.7mm
フープ トリプルフランジ
プレスフープ
重量:452g
トリプルフランジ
プレスフープ
重量:490g
ストレイナー P83
重量:92g
P85
重量:128g
ラグ インペリアルラグ
重量:65g/個
インペリアルラグ
重量:68g/個
ミュート バット型
重量:81g
丸ノブ型(ナイロンワッシャ)
重量:81g
シェル固有値 [裸シェル]
モード1:201Hz
モード2:561Hz
[部品付き]
モード1:155Hz
モード2:434Hz
[裸シェル]
モード1:206Hz
モード2:568Hz
[部品付き]
モード1:135Hz
モード2:425Hz

基本的にシェルの固有値は、ラグ等を全部つけた状態で
200Hz付近に基本モードがきます。
木胴のスネアだと100Hz台前半に基本モードが来るので
やはりLM400はあまり重低音指向のスネアではないようです。

で、'66年のモデルと'70年代モデルを比較すると、'70年の方が微妙に重くなっています。
トータル重量は'66モデルが3.0kgなのに対し'70モデルは3.2kgあります。

これは、シェルそのものが変更になったのと、フープが剛性アップされたのが効いているようです。

細かい部分も色々変更になっています。
まずストレイナー。


 左:'66 P83(12穴タイプ)ストレイナー  右:'70 P85ストレイナー

動きの滑らかさに大差はありません。
双方ともパイオニアのカム駆動からリンクに変更されているので
演奏中の外れも皆無。
ゆるみに対してはネジ部ワッシャ径の大きいP85の方が若干有利かもしれません。
あと、時代的に昔のバラ線スナッピーはもう使われないということで
P85では穴が2つになっています。

また、ラグも若干違います。


 ボルト側側面のシェル接触部付近のカタチが微妙に異なる。左:'66 右:'70

意図して変更したのか、あるいは単に型を作り直したらちょっと違っちゃったのかは不明ですが
結果的にはラグ1個あたり約3gの重量増加になっています。


そして、シェルですが、
メッキのなめらかさ、光沢とも'70年代モデルの方が格段に上です。


 内面の光沢、品質感が格段に違う。左:'66 右:'70

シェルの重量差から推測するに、おそらくメッキ厚さも'70年モデルの方が厚いはずで、
その影響は音にも表れているに違いありません。
デビュー当初はどちらかというとアクロライトに近いサウンドだったのが、
スティールスネアに近いほうへ若干シフトしたのではないかと推測します。


ちなみに、今手持ちの'66モデルのピッチングはこのような感じです。

 ←表面にブツブツと微少な浮き上がり発生


この程度のダメージで済んでいるのは、前のオーナーが丁寧なメンテを続けていて下さったおかげだと思います。

ワタシのように無神経に押し入れにしまったり手垢べとべとのままクルマに放置しておくと
たぶん前の写真のようにアルミ地肌が見えるほどハガレまくってしまうと思われます。

そういう意味も含めてLM400のベストチョイスはというと、
やはり世の中で言われている通り'70年代スープラが楽器として最良バランスになるのかもしれません。

 ☆ ☆ ☆


ただし、ここに出てきた'66年スープラはワタシにとって非常に思い入れのある品です。
それはずばり、「同い年だから」であります。

ワタシが中国地方の田舎町で生まれたちょうど同じ頃、シカゴで作られたスネア。
巡り巡って日本で2003年に出会ったというのも何かの縁。

大切にしてやろうと思います。


では、今回はこのへんで。