初期ソナーライトを検証する 2004.10.10


【念願の...】

あおじゅんサウンドの代表としてワタシを魅了してやまないソナーライト。
しかしそれはドラム界の○○○(←あなたの価値観に従って好きな言葉を入れてください)。
とてもワタシの買えるようなお値段ではありませんでした。

すでに生産はとっくに完了。

なんとか中古品のセットを入手したいと網を張り続けて5年(笑)
一昨年スネア、昨年12のタム、そしてこのたび20+13+15の3点セットを買い足し、
ようやく4点セット分揃うこととなりました。
フィニッシュはもちろんスカンジナビアンバーチです。

 ←ワタシのなかでの事前イメージ図


3点セットを楽器屋さんで受け取ったときは、なんでも前のユーザがジャズの人だったとのことで
BDも12も15もくたびれた両面コーテッドでした。
「あ、いいですいいです。ヘッド張り替えちゃうから。」
ということでそのままお持ち帰り。

【浦島ショ〜ック】


さて早速ヘッドをクリアエンペラーに張り替え、あおじゅんサウンドの再現だ〜!...とヘッドを外すと...

もくもくもく...と漂う茶色い空気

うっ、しまった。竜宮城での3日間は実は30年だったのか....

ではなくて...

 

ああ〜!!なんじゃこりゃ〜!!

15のタム、20のBDともボルトが全てサビサビで、
シェル内側全面にうっすらと茶色い粉末が積もっています。

が〜ん。

そっかあ。
まあ古い楽器だしなあ。
たまたま保存状態が悪かったんだよね。
ボルトなんか付け替えちゃえばいいし。

ボルトは首下16mmのM4です。
よく使われるサイズなので今回はTAMAのものに付け替えることにしました。

 左:TAMA 右:sonorlite

サビでやられるのはいやなので塗装ありのもの、
ドライバーでもレンチでも作業できるように頭が6角のものにするのがポイントです。

とりあえずサビたボルトをゆるめてみま...みま...あっ!

.....折れちゃいました(T-T)

 折れたボルトが取れなくてラグ死亡の図

15のタムは8テンションなのでラグは16個。ボルトは32本。
うち4本がラグにさび付いていて折れてしまいました。
ボルトを切削してネジを切り直す工具も時間もないので
以前入手しておいたローズウッド13インチのsonorliteから移植することにしました。

ちなみに上写真のラグ内部に写っている黄色い物体はスポンジの残骸です。
スプリングの共振音が出ないように入っていたものですが
経年変化で崩壊してしまい、少しでも触るとぼろぼろと粉になっていきます。

これは単に素材選択の誤り。このようなところに普通のスポンジを使ってはいけませんね。

 

【さらにショックは続く】

さらにシェル各部を詳しく観察してみます。

その1:シェルのプライ剥がれ

 プライ間剥がれ:15FT 打面側

ちょうどエッジ頂上付近で長さ5cm程度プライがはがれています。

当時のカタログによればソナーは長方形カットでシェルを成型しています。
YAMAHAやTAMAのように平行四辺形カットでかち込んでいく方式なら
各プライそれぞれを隣接する外側のプライへ押し付ける力が働きますが、
長方形カットの場合内型から押してやらないとプライ間に押し付け力が働きません。
そうなると接着剤の性能でほぼ勝負が決まってしまいます。
接着剤と成型方法がまだ発展途上だったということでしょう。

実は別のソナーライトのタムを切ってスネアを作ったのですが、
のこぎりで切っていくとシェルの内部に隙間があいていたりする箇所があります。
プライとプライ間もカッターナイフではがそうと思えばなんとか分離が可能で、
自分がサカエリズムで作らせてもらったシェルと見比べると明らかに圧着度合いが低いです。
YAMAHAのシェルは各プライがほとんど一体化していて分離は不可能です。

なるほど萩原さんの言ってたのはこういうことかと変なところで納得です。

プライを重ねた状態でプリロードがかかる平行四辺形カット、
接着剤のみで密着を保つ必要がある長方形カット、
サウンドへの影響は別として、木工製品としての信頼性を考えると
平行四辺形カットに分があるような気がします。

ちなみにこのプライ剥がれは木工用ボンドと洗濯ばさみでリペアしました(笑)

 

その2:シェルのプライゆがみ

 地層のしゅう曲みたいになってる

これは、プライ厚さが部分的に厚かったか、切断長さを間違ったかどちらかだと思います。
このくらいは許容範囲ということだったのでしょうか。

 

その3:クリアラッカーのタレ

これはちょっとひどい。
気付かず出荷したとしたらお寒いですし、
気付いてたけどそのまま放置したとしたらもっと最悪です。

「ドイツのクラフツマンシップ」という言葉はよく聞きますが、
メイドイン日本でも韓国でもUSAでも結局最後は作業する人個人の資質の問題なのですね。

それがものづくりの真実だと思います。

 

その4:シェルのゆがみ

15フロアタムにクリアエンペラーをのせてみてふと違和感があることに気付きました。
何かがおかしい。
クリアヘッドなのでエッジ部が透けて見えるわけですが、
フープとエッジの間隔が均等でないように見えます。

はっと思ってメジャーでシェルの直径を測ってみたら、
長いところで373.5mm、短いところは370mm。
微妙に多角形になっています(笑)

やはり強度が不足していてヘッドテンションに負けてしまっているようです。
あるいは経年乾燥で部分的に変形してしまったかもしれません。

とりあえずこれは設備がないとリペアしようがありませんのでそのままで。

 

【大事なのは音ですね】

と、まあ細かく見ればいろいろある20年前の楽器ですが、
大事なのはやっぱり音。

スタジオに持ち込んで鳴らして見ます。

 
  ↑BDが20ですがそんなこと気にしない

うんうん。気分はまさに青山純(笑) もしくは屋敷豪太(笑)
だいたい想像した通りの音がしています。

気付いたんですが、たたき方でずいぶん音が変わります。
タッチはやわらかいのですが、ボリュームを上げても上げてもついてくる感じで、
こころして演奏しないと負けてしまいそうな感じです。
YD9000は誰がどこで叩いても同じ音が出るという恐るべき安定性が売りなわけですが、
ソナーライトは全く違った方向性の楽器と言えるでしょう。

たとえば、歌モノのおかずで「タタドン」ってやるときに、
ちょっと気を抜くと「タタぽん」みたいになってしまってさっぱりかっこよくありません。

「ドン」のところでちゃんとタムの打面をみて気持ちをいれてやると青山さん風になります(いえ〜ぃ)。

そう、この一発の「ドン」がソナーの必殺武器と言えるかもしれません。
細かくいろいろ技を出さなくても、

1・2・3と休んで4拍目「ドン」だけで充分みたいな。

というわけでとうとう手にしてしまった20年もののソナーライト。
楽器に負けないように練習しなくては....。

 

【そういえば】


そういえばいつごろの製造なんだろう。
と、シリアルを見ると...

 「175」

え?
ひゃ、ひゃくななじゅうごですか??

下手すると生産開始1週間以内ってところでしょうか。
ソナーライトの生産期間は1982年〜1994年ですので
高い確率でこれは1982年製ということになります。

う〜む、そうするとこれはソナーの多プライ薄胴シェルがはじまったばかりのころの現物ということになります。

シグネーチャで超ヘビーなドラムを志向したソナーは

・シェルやフープを高剛性にしすぎるとかえってサウンドの自由度を狭める
・だいいち重くて運搬が大変


というあたりまえの事実を踏まえ、ソナーライトを開発します。
9プライで6mmという薄胴にチャレンジし、50%の軽量化を果たしたとカタログにあります。

確かにシグネーチャに比べて非常に軽いです。
プライも非常に薄くて、しかも一番表と裏は化粧面。
表面(シェル外側)はほとんど無塗装。
これは生産技術的には非常にハードルの高い挑戦だったはずです。

で、そういう目であらためて観察していくと、
前述のように「挑戦したけど負けちゃった」部分もあったようです。

現在ではTAMAをはじめ多プライ薄胴も増えてきて、
ソナーも数年かけて薄胴化にシフトしました。
シグネーチャの超厚胴は廃止され、Deliteシリーズではパールのクラシックメイプル並みの4mm台も。

木工製品は単板から遠ざかるほど形状安定性が増すわけですが、
応答性を追及するため薄くて軽いシェルにしようとするとプライの一枚あたりの厚みが少なくなり
加工も成型も困難になります。
量産でこれを克服するには接着にも成型にも相当のトライが必要なはずで、
ワタシのところにやってきたソナーライトはそういう試行錯誤期の一品なのでしょう。



まあそういう未完成な部分がありながらも

なんでだかわかんないけどいい音がする(笑)

というのも事実なわけでして。
そのあたりが生楽器の醍醐味とも申せましょう。

おあとがよろしいようで。