村から唯一見える外の世界は「海」である
その広漠たる広がりは越える事のできぬものではあるが
しかし、外の世界と繋がっているが故に、ときに思わぬ贈り物をもたらすこともある
海岸でラジオを手に入れた
自由な世界からの言葉が、彼の胸に染み入る様に響く

此処にまさる美しい土地はありません
今夜も、月が昇れば、あたり一面白銀の様に輝くでしょう
わかりますか?
あなたにわかっていただきたいのです
お知らせがあります
聴いてください
約束は履行されません
他の事は今夜やらねばなりません
我々の苦しみが終わるなら
自由が約束されるなら
我々は進んで、血が流れようとも難局にあたらねばなりません
苦痛を超えてこそ
明日という日があるのです
しかしそれは
過去の回想録の一節
ただの一分間に60文字のタイピング講座
今の彼には
手の届かない世界の
手の届かない言葉にすぎないのだ
プリズナーNo.6
第八話「死の筋書」より