一羽のアヒルの物語−お話のお話



 むかしむかし
 ひとつの物語が書かれました
 

 それは 全ての人の幸せを願う勇敢な王子の物語
 王子は人々の心を喰らう悪い大鴉と戦っていました


 けれど

 物語の途中で
 作者が死んでしまいました
 これでは物語は結末を迎えられません


カラスと王子は戦いの決着をつけようと
物語から飛び出して戦い続けます


そして王子は

自分の胸に剣を突き立て
自分で自分の心臓を砕いて

その欠片を用いて大鴉を封じたのです

 のこりの王子の心臓の欠片は
 街のあちらこちらに散らばってゆきました


大鴉は封じられ

心臓とともに心を失った王子は
自分が誰なのかも大鴉と戦っていたことも忘れて
街をさすらいます


物語は
ここで止まってしまいました


しかし王子は
自分の心臓を砕いたその時に

飛び散る自分の心の一つを宝石に変えて
未来に託していたのです


その宝石の名は

―希望―