2001年1月に開催された小児膠原病医療講演の原稿(明日への道ブロック版94号掲載)を藤川先生のご好意で掲載させていただくことができました。情報が少ないと言われる小児膠原病について皆様の参考になれば幸いです。
 

       6ページに分けてありますので、最下段のボタン又は次の目次から進んでください。
                         ■Page1 SLEとは
                         ■Page2 SLEの症状
                         ■Page3 SLEの検査と治療
                         ■Page4 SLE患者の日常生活
                         ■Page5 JRAについて
                         ■Page6 Q&A

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全国膠原病友の会関西ブロック



『小児期の膠原病について〜SLEを中心に〜』
 

東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター
 小児科 藤川 敏 先生


ご紹介いただきました藤川です。現在は東京女子医大の膠原病リウマチ痛風センターで小児のリウマチ性疾患の治療を行っています。
私は小児科の医者で、若いときには未熟児室で勤務したり、喘息外来を持ったりしている時期もありました。
女子医大のリウマチセンターには4000人くらいの慢性関節リウマチの患者さんが毎月通っていますが、子供の患者さんは全部で100人くらいです。
今日の話はおそらくほとんどの方々が「あんなこと知ってる。もっと新しいことも教えて欲しい」と言うようなことかもしれませんが、私の立場から、お子さんの病気、大きい方は自分自身の病気について、この程度のことは知っておいて欲しいということをお話しします。


小児期の全身性エリテマトーデス(SLE)


小児期のSLEの特徴と成人との違い
 

小児の膠原病は大人と違うかという点ですが、全身性エリテマトーデス(SLE)という同じ病気でも、症状、重症度は確かに違い、小児のほうが腎障害、中枢神経症状などの頻度が高く、重症度が高いといえます。これは同じ程度の病気が起こったとすれば、幼児と小学校低学年、中学生くらいで発病した場合とは症状が違い、一般には低年齢ほど重症です。したがって治療方針も異なります。また、どんなによく効く素晴らしい薬が大人に使えても、小児では安全性が確かめられていないという理由で使えないこともあるし、カプセルや錠剤では小さい子供には使えないという現実もあります。
 

 小児期のSLE
  ● 疫学:日本 5,000人
     米国 5,000〜10,000人
  ● 性別:男女比:成人(1:9),小児(1:5)
  ● 診断:小児では容易(小児:発症から3ヵ月、成人:1〜2年)
  ● 重症度:若いほど重症
     腎合併率:小児70%,成人30%
     重要臓器合併率が高い(心、肺、腎、肝)
  ● 小児ではより積極的な治療と管理が必要
  ● そして50年生存率を考えながらの治療を行う

 
日本にどの程度の子供のリウマチ性疾患があるかですが、若年性関節リウマチ(JRA)の場合には3、4歳から発症し、SLEの場合は7、8歳、普通は10歳位からですので、10歳から15歳に発病した患者さんを私達は扱っていることになり、実際に数も少ないです。全国でどの位いるかを厚生労働省も把握していなかったようです。
 
1994〜95年に、私が、全国のベット数が100以上で小児科医が常勤している病院に、「過去10年間に膠原病の患者さんは何人いましたか?」といったアンケート調査をしたところ、膠原病全体では5000人位の患者さんが登録されました。その中でSLEの患者さんは約1000人です。返事をくれた病院が69%ですので、計算しますと、大体全国に小児のSLEが5000人位おられることになります。アメリカでは人口が2億人ぐらいの人がいるので、大きすぎて全国調査はできませんが、大体SLEの患者さんは10000人ぐらいいるのではないかといわれています。男女差は大人は1:9で圧倒的に女の人に多いのですが、子どもの場合には1:5位で男の子にもいます。
 

診断は子どもの場合比較的簡単です。というのは、残念ながら子どもの方が重症だからです。血液の検査とか尿を調べるだけで、もしかしたらSLEかなというのが1回の検査で大体診断がついてしまいます。自己抗体などの陽性率も大人より高く、また、腎炎の頻度が高く、初診では大人では30%位ですが、子どもでは70〜80%で、腎炎で見つかることも多いです。例えば学校の健康診断で尿にタンパクが出ていることで、無症状の軽い症例もみつけられます。
 
年齢が小さいほど合併症があり、重症であるということは、子どもほど積極的な治療が必要で、副作用がある薬も使わざるを得ないということです。
ただお子さんの場合、例えば10歳で発病すれば、これから70〜80歳までの人生があるわけです。その間に女の子ですと、結婚、妊娠、出産という可能性があり、男の子ですと、職業を選ばなくてはいけないという事もあります。
 
皆さんは、おそらく5年生存率といった言葉をお聞きになったことがあると思いますが、子どもの場合は50年生存率ということを考えながら、治療していかねばならないわけです。過去の治療は症状を追っかけていたんです。「これだけ重症になったから仕方がない、ちょっと強い薬を使いましょう」といった、仕方なく使っていたといった治療をしていました。しかし残念ながらそれでは病気を押さえることはできないことがあり、更に重症化してくるわけです。3ヶ月先にはおそらくこうなるだろうと、予測して今は無症状だけれどあるいは軽いけれども、ちゃんとした治療を行わなければ非常に重症になる可能性があることを把握して治療することができるようになり、長期の予後も非常に良くなっています。
 

SLEの原因


SLEの原因は何でしょうか? ここに書いてみましたが、本当のことはまだわかっておりません。遺伝的素因もあるようです。HLAという白血球の血液型を共通して持っている点や、一卵性双生児の人をみてみますと、一人がSLEやリウマチになりますとそのうち片方もなってしまうことがあるからです。ウィルス感染説があり、SLE患者の腎臓の中にミクソウィルスによく似たウィルスが見つかる事があります。つまり、遺伝的な素因を持っている人、なりやすい人がそのウィルスに出会うといろんな免疫異常が起きてくる。免疫異常というのは主にDNA抗体などの自己抗体と呼ばれる、自分の体に反応してしまうものが自分の体の中で作られてしまうのです。
  

 SLEの病因
 ● 遺伝的因子
    若い女性に好発
    1卵生双生児を含む家庭内発生頻度が高い
    HLA‐DR2,DR3の保有頻度が高い
 ● ウイルス感染
    腎糸球体内皮細胞、皮膚などにパラミクソウイルス様
    管状構造が電子顕微鏡で認められる
 ● 免疫異常
    患者に多数の自己抗体が認められる


多くの病気は細菌、ウィルス、薬などが外から侵入し、これに体が反応するのですが、膠原病やリウマチ性の病気というのは、自分の体の中に自分の細胞と反応してしまうものが出来てしまうわけです。
 

SLEの発症と増悪の原因

 
ある素因を持っている人が、どういうことで発病するかですが、これはSLEの人がこういう条件になると悪くなる危険があるということにもあたります。その代表は、強い紫外線にあたることです。

また、薬剤誘発性エリテマトーデスという病気がありウイルスとか遺伝に関係なく、不整脈の薬や抗けいれん薬を飲んでいるとSLEと同じような症状がでてしまうということもあります。ですから患者さん達はたまたま他の病気にかかったときなどは、このような薬をなるべく避けなければなりません。
次は感染症です。例えば風邪を引いた後に悪くなるかもしれません。妊娠や分娩なども影響がある可能性があります。

     SLEの発症誘因
 ● 紫外線被爆
 ● 薬剤(薬剤誘発SLE)
   抗不整脈薬、抗けいれん薬、
   抗甲状腺薬、経口避妊薬など
 ● 感染症
 ● 妊娠、分娩       


SLEの病態

 
SLEというのは実際に体の中でどういうことが起きているかというと、体の中に自己抗体というのが見つかります。その代表が抗DNA抗体です。DNAというのはすべての細胞の中心にある核にあり遺伝子などが存在
するものですが、例えば皮膚に強い紫外線があたる

と皮膚のDNAが損傷し、DNAに対する抗体ができ、これがDNAと反応して抗原抗体複合体という免疫複合体が作られます。これは分子量が大きな物質で腎臓に反応すると腎障害が出てくるわけです。また血小板抗体というのが出来ますと、自分の血小板に作用して血小板が壊れてしまう、といった障害が出てくることになります。
 
 
 

         SLEの病態
 ● 多くの自己抗体が検出
   抗核抗体、抗DNA抗体のほか血小板、
   赤血球、凝固因子などに対する抗体

   例えば、DNA−抗DNA抗体免疫複合
   体が腎基底膜へ沈着により腎障害
   抗血小板抗体が血小板に作用し血小
   板減少



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