ステロイド剤の基礎知識

 
膠原病(以下類似疾患も含む)の治療と切り離すことのできないステロイド剤について説明します。
 

 ステロイドってなんですか?

 
腎臓の上部にある副腎という臓器の外側の部分、皮質といわれるところで作られるホルモンです。そのため、副腎皮質ホルモンとも呼ばれています
普通の状態でも常に体内で作られていて、体に対するいろいろなストレスに対処するなど生きていく上でとても重要な働きがあります。
このホルモンのうち、糖質コルチコイドという成分を化学合成したものをステロイド剤といって、治療に用います。
 

 なぜ使用するんですか? どんな薬剤があるんですか?

 
単純明快に言うと、膠原病の治療において一番効果があるからということになります。
その作用として
炎症を鎮める免疫を抑制するといったのものがあり、それが膠原病に対応していて、しかも効果が高いのが特徴なのです。
現在使用(市販)されている代表的なステロイド剤(内服薬)の種類を表にしてあります。みなさんが服用されている薬品名はありましたか?
この中でもっとも代表的なものがピンクの小粒、プレドニンですね。

 

 ステロイド剤の種類  商品名  1錠量
プレドニゾロン プレドニン 5mg
メチルプレドニゾロン メドロール 4mg
デキサメサゾン デカドロン 0.5mg
ベタメサゾン リンデロン 0.5mg

 
ステロイド剤には効果の持続時間に長短があって、表の上2段が中くらいのもの、下2段が長いものとなっています。効果時間とはステロイド剤が血液中に有効に残留している時間です。一般的に効果時間が長いものは副作用も出やすいと言われていますが、どの薬を使用するかの選択は副作用だけでなく、個々の症状によって決定されるのは言うまでもありませんね。

ステロイド剤のほとんどは
1錠が1日の体内分泌量と同じ量になるように作られていますが、表を見てもわかるとおり薬剤の種類によってその1錠量は違っていますね。それは「力価」といってそれぞれにステロイドとしての強さ(効力)が違うからです。たとえば「リンデロン」を5mg使用したということは「プレドニン」を50mg使用したのと同じことになります。
※病院によってはリンデロン使用量の換算に7.5倍とか8倍とかの計算をするところがあるそうですが、どれが正しいとは一概に言えないとのことです。(この場合、プレドニン換算で37.5mgとか40mgになります)

また、服用量を増減する場合、今までは1錠単位で行うか、錠剤を半分や1/4に割るなどの方法が取られていましたが、最近では1錠の単位量の少ないものも登場しています。商品名「プレドニゾロン」1mg、「メドロール」2mgなどがそれです。
 
※ステロイド剤の商品名はこれ以外にも多数あります。分からない場合は主治医に訊ねていただくようお願いします。

 
 どんなふうに使用するんですか?

 
膠原病に対するステロイド剤の使用方法のうち代表的な内服とパルス療法について説明します。その他にも点眼や吸入、外用薬などがあり、緊急時や初期には静脈注射による方法もあります。

 
内服


基本的にステロイド剤は内服使用しますが、いくつかのルールがあります。(文中の薬剤量はプレドニンを使用した場合となっています)

最初に必要十分な量を服用し、効果が出たら徐々に減らしていきます。この最初の量は疾患によって、患者個々の病状によって一概には言えませんが、だいたい20mg〜60mgが一般的です。

ステロイド剤を長期間服用していると、体内でステロイドを作っていた機能(副腎機能)が働く必要がなくなって低下してきます。その状態で急に服用を止めると体内のステロイドが不足してしまい危険な状態になるので、
効果が現れて症状が落ち着いても急には止められないのがこの薬の特徴です。

ステロイド剤の減量は使用した期間が長ければ長いほど慎重に行われます。副腎機能を徐々に復活させるという意味もありますが、減量することによって症状が再び現われるのを防ぐということが重要だからです。場合によっては症状が落着いた状況で5mg〜15mgを非常に長期間飲み続けるとういう形をとることも少なくありません。

本来、自己分泌されるステロイドの血液中濃度は早朝に高く午後から低下することがわかっていますので、そのリズムに合わせて服用する方法がよく用いられます。1日1回なら朝に服用し、分けて服用している場合は朝の量を多くして午後の量を少なくするのが一般的です。

ステロイド剤の長期間服用による副腎機能の低下を防いだり、機能回復を促進するためには1日の内ではできるだけ朝だけの服用、そして1日必要量がたとえば10mgなら、20mgを1日おきに服用するというような隔日投与、20mgなら、30mgと10mgを1日おきに服用するというような方法が有効です。

ただし、リウマチ性の関節炎や血管炎などの症状がある場合にこの副作用対策を重視した服用をすると、ステロイド剤の血液中濃度が下がったときに症状が悪化する恐れがあり、不向きな方法とされています。ステロイド剤の使用が難しいとされるのは、治療効果と副作用のバランスをどう取るかの判断が難しいということですね。

ステロイド剤を服用中で、外科手術や抜歯などの治療を受けるときは、ストレスなどで体内のステロイド必要量が増えるので、一時的な増量が必要になります。内科の主治医とも連絡を欠かさないことが大切です。
 
どんなに注意していても
飲み忘れということがあります。飲み忘れに気が付いた場合はすぐに服用します。もし、すでに次の服用時間になっていたら2回分服用することはせずに1回分だけ服用します。ステロイドを長期服用していると副腎機能が低下している場合が多いので、飲み忘れた時間が長いと症状悪化に繋がる恐れがあります。やっぱり注意しましょうね。

膠原病の症状が患者一人一人で違うように
ステロイドの使用法、使用量、減量の方法や期間は患者それぞれに違っています。他の患者さんと較べることはあまり意味がありません。また、副作用を恐れて勝手に減量したり、中止したりすると症状の悪化を招き、結局さらに長期間服用することになってしまいます。医師の処方を守ることが大切ということですね。もしどうしても使用法などに納得できない場合は医師に相談し、詳しく説明を受けるようにしましょう。
 

パルス療法

症状が重くて、早急な対処が必要とされる場合、内服では十分に効果が出ない場合にステロイド剤を大量に注射する療法で効果をあげることがあります。これをパルス療法と呼んでいます。

使用量は1日に500mg〜1000mgで、通常これを3日間連続して行います。1000mg(ソル・メドロール)は錠剤250錠分(プレドニンに換算すると1250mg)ですから、その多さがわかりますね。セミ・パルスといってその半分の量を使用する場合もあります。さらに少ないミニ・パルスも行われています。使用されるステロイド剤はメチルプレドニゾロン「ソル・メドロール」が多いようです。

1週間に3日間を1クールとして、1ヶ月に1クール行うのが通常ですが、重症の場合は最大3クール連続して行うこともありますし、免疫抑制剤のパルス療法と併用するような場合もあります。

この治療法は大量にステロイド剤を使用しているわりには副作用がそれほど出ないとされています。うまくいけば全体として治療期間が短くなり、入院日数も少なく済みますし、その後のステロイド剤の服用量もある程度少なくできるようです。ただし、連続してできない、心臓をはじめとする各臓器へ負担がかかる可能性などの問題もあります。感染症、消化性潰瘍がある場合は避けるべきとされています。

※記事の作成から時間が経過していますので、用法が変わったり、新しい薬品が用いられている可能性があります。大筋の部分ではそれほど変わってはいないと思いますが、治療にあたっては主治医からの説明をよく聞いていただくようお願いします。(2003.8.29)
 

 どんな副作用があるんですか?

 
効果があるということは、副作用もそれなりにあるということになります。ステロイドの作用はいろいろあるのですが、そのうちのいくつが膠原病の治療に良い作用であり、他のいくつが体に悪い作用になります。代表的な副作用は次のとおりですが、治療のための作用も一方では悪い側面もあるのがおわかりいただけるでしょう。
 

大量投与で現われるもの 長期投与で現われるもの
感染しやすい(抗炎症・免疫抑制) 副腎機能の低下
糖尿病 骨粗しょう症
胃潰瘍 高脂血症・高血圧
精神症状 筋力低下・筋肉痛
ムーンフェイス・中心性肥満 白内障・緑内障


ステロイド剤は基本的に長い期間連続して服用します。パルス療法はその期間を短くしてくれますが、やはりある程度の期間は内服を続けなくてはなりません。副作用も長期間投与で現れやすいものと大量投与で現れやすいものがあることが分かっていて、どちらの投与法が副作用に対してメリットが多いのかは判断の難しいところです。一般的にはパルス療法が効果があって副作用も少ないとされていますが、実際には緊急性や治療効果、そして患者の個々の症状などと副作用のバランスで投与法は決定されています。

特発性大腿骨頭壊死症もステロイドが原因と言われていますが、完全には原因が特定されていません。また、大腿骨頭壊死症は投与期間の長さより1日の投与量の多さが、その原因となりやすいということが分かってきました。

これら以外にも様々な副作用がありますが、全ての
副作用が必ず現われるということではありません。しかし、ステロイドの副作用を知っておくことはある程度予防や対処もできるということですね。日常の行動パターンや食事で予防できそうなこともありますし、定期的な検査でチェックしなければならないものもあります。

もし、これらの症状に少しでも思い当ったり、いつもと何だか違うなぁと感じたらできるだけ早く主治医に伝えることが、重大な副作用を予防するためにも必要ですね。そのためにも日記をつけることはお勧めです。面倒なら簡単なものでもかまいません。いつから症状が始まったのかというデータは治療に必ず役立つし、反対に良くなっていく経過も感じ取れるものです。
 

 使わずに済むことがありますか?

 
必ずとは言いいませんが、膠原病では多くの場合使わなくてはならないでしょう。一般的に言って、使うか使わないかということではなく、どの時期にどれだけ使うかが問題となるようです。投与の方法によっては副作用の出にくい選択をすることも可能ですし、別に記述する免疫抑制剤を併用してステロイドの量を少なくする方法が最近では主流になりつつありますが、残念ながらステロイドが効かないケースもたまにあるようです。また、関節リウマチなどでは非ステロイド消炎剤だけで治療することも少なくありません。

そんなステロイド剤ですが、私達患者にはどうすることもできないものとは思いません。感染予防や体調管理に気をつける、少しでも再燃の兆候に気付けばできるだけ早く医師に伝える、など日常の諸注意を守ることは患者自身にできるステロイドを増量させない手段だと考えます。どうしても使わなければならないのなら、よく理解してうまくつきあっていきたいですね。
 
21世紀にはステロイド剤に代わる副作用のない治療薬が登場することを願って止みません。

 
この記事の作成にあたって膠原病友の会滋賀支部の機関誌に掲載された京都大学医学部附属病院 免疫・膠原病内科 尾崎承一先生(現在聖マリアンナ医科大学病院)の原稿を参考にさせていただきました。

記事作成 2000年12月16日
最終更新 2003年8月29日
 



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