膠原病の基礎知識 2

 膠原病の診断と治療について


●診断

一般的に言って、膠原病はたとえ医師でも分かり
やすいという種類の病気ではありません。早期の
診断、早期の治療開始を始めるためにもその疑
いが少しでもあるならできるだけ診療体制や検査
設備が整っていて、
専門医のいる医療機関で診
察を受けられることをお勧めします
また、膠原病の治療では内科以外の診療科に受診しなければならないことも多いので、特定機能病院などある程度診療科目のそろった医療機関での受診が何かと都合がよいようです。


治療が早期に開始されることはとても重要です。膠原病の初期には風邪などと間違いやすい症状も多く、気が付かないままに緩やかながらも症状が悪化していくことが多いようです。そのうち急激に悪化し、初めて膠原病と診断されるケースも少なくありません。症状が悪化していればいるほど治療に時間がかかりますし、内臓などではそのダメージが蓄積していって後遺症が残る可能性も高くなるのですが、早期に確実な治療を施せばそれをある程度防ぐことができるでしょう。軽いうちに治療を始めれば薬も少なくて済み、副作用に苦しむことも少なくなるわけですね。

それでは、どのような状態が疑わしい状態なのでしょうか? 膠原病は一般的によく知られている病気ではなく、
その初期症状もまちまちで、風邪やその他の病気と間違いやすいのが特徴ですが、そのような中でも比較的共通した初期症状があります。あまり神経質になりすぎることはありませんが、長引く場合は膠原病も可能性のひとつと考えてみるべきでしょう。

具体的には

発熱

37度前後の微熱が続くことが多く、午前中だけとか、多少のだるさはあっても生活にそれほど支障がないなど、風邪とはちょっとちがった発熱の仕方をします。38度以上の高熱が何日も続く場合もあります。

関節痛
筋肉痛

インフルエンザのような関節の中から湧き上がってくような感じの痛み。それがあちこちの関節に同時に発生したり、場所を移動して発生したりします。筋肉痛も同様な症状で非常に不快です。朝、手指の関節がこわばって動かしにくいなど。筋力が急に低下することもあります。

皮膚症状

発疹(ブツブツ)紅斑(あざのように赤くなる)が体のあちこちに現れます。特に顔面に出やすく、痛みのないものが多いが、ひじや足にできる発疹は痛みを伴う場合もあります。

リンパ腺
の腫れ

風邪やその他の感染症と違って、あちこちのリンパ腺が腫れます。ただし硬く大きくなることは少なく、あまり痛みがないことが多いようです。

レイノー
現象

レイノー現象とは指先の血管への血流が不足して、突然に白くなったり、紫色になるものです。厳密にはその後充血で赤く腫れるものをいうようです。寒さで誘発されやすい。

しびれ

手足の全体、または指にしびれが出ます。左右の共通性はあまり見られません。多発性単神経炎といって血管の炎症からおきることが多く、他の疾患と間違いやすいものです。

 
このような症状が初期症状としてよく知られていますが、他にも非常に疲れやすいとか、精神的に不安定など目立った症状ではなくても体調の変化を示すような兆候がほとんどの場合あるようです。個々の症状を見ると他の病気と共通したものもあります。というよりは勘違いしやすい症状ばかりかもしれませんね。だから、膠原病と診断されてから初めて、ああ以前こんな症状がありましたって思い当たることも多いようです。

もし、
このような症状が続いていて、いくら治療を受けても良くならないようなら、要注意ということになるでしょう。おかしいなと思ったら、やはり一度専門医の診察を受けてみられることも重要な選択肢と思います。

診察を受けるにあたって、自分の症状を医師に正確に伝えることは正しい診断を導くためにとても重要です。思い当たることがあったらメモしておいたり、日記に書いておくことも役に立つのではないでしょうか。表を見てもらっても分かるように初期症状は必ずしも内科で受診する症状ばかりとは言えません。そのため場合によっては全体的な病状を掴めずに個々の治療に終わってしまうことがありがちです。そんなときにそれ以外の症状も医師に正しく伝えることが正確な診断に繋がっていくと思います。
 

膠原病の基本的な診断手順を簡単に示すとこのようになります。
 

@主たる症状

発熱、紅斑、しびれ、関節通、筋肉痛など上記疑わしいとされる症状

A基本的検査

血液一般(WBC、RBC、Ht、Hbなど)、尿(蛋白、糖、血液など)、炎症マーカー(CRP、血沈)、酵素活性(GOT、GPT、LDHなど)などの検査

B膠原病が疑われる場合のスクリーニング(1次)

基本検査の確認、抗核抗体、リウマトイド因子、補体、免疫複合体、X線検査など

C症状を確認しながら疾患を特定するスクリーニング(2次)

もっとも可能性が高いと考えられる疾患の指標を見つける精密検査。疾患固有の抗核抗体や各種生検などと今までのデータで総合的に判断する。


Aの検査結果では詳しいことはわかりません。疾患によって正常範囲のプラス側になるもの、マイナス側になるもの、正常値のものもある
からです。症状と併せて検査結果全体からこ
れはやはり疑わしいということになります。そ
こでBの検査を行いますが、同時に行われることもあるようです。

 
Bの検査結果からは膠原病の疑いがはっきりします。抗核抗体は多くの膠原病で陽性となりますし、その他の項目も基準値に達していればCの検査となるわけですが、この検査結果からどの疾患を特定してCの検査に入るかがとても重要になってきます。疾患によっては最初から特徴的な症状も出ていて検査結果もそれをしっかり裏付けてくれる場合も多いのですが、そうでない場合もかなりあるようです。

もちろん総合的な判断を下すために何回かの検査や検討が行われているとは思いますが、厚生省の定めた診断基準があってそれに満たない場合は確定診断には至りません。診断基準は過去の経験や研究の成果で決められていますが、一人一人の症状が違うことの多い膠原病の特徴を考えると、線引きすることによって患者全体を完全にカバーしきれていないのではないかということも感じないわけにはいきません。この部分は研究、改善の余地があると私たちは考えています。

難病情報センター特定疾患情報の中に診断基準が掲載されています。

手順に従って診断を進める中ではいろいろな検査が必要となってきます。相当な痛みのある検査もあるし、体に負担のかかる検査もあります。でも、やっぱり早期発見のため、確実な診断のためには避けて通れないことなので体調が許す限りは勇気を出して受けてくださいね。膠原病は患者ごとに治療が違っているといわれるほどその症状が様々です。
正確なデータを得ることは最も効果のある治療に繋がることになります。

検査結果でよく聞くものの内、わかりにくいのが次の3つですね。簡単に説明してありますが、疾患ごとにその数値の捉え方が違っているのが難しいところです。これらの値は指標とはなりますが、単独では判断材料としては不足ですから他の検査データとの総合的な判断がなされています。また、症状がなくても数値だけ異常に高い人や、その逆もありますので、この数値だけを見て神経質になったりすることには注意が必要です。
 

抗核抗体

抗核抗体は細胞の中にある核に対する自己抗体です。核成分には数多くのものがあり、抗体もその数だけ存在すると考えてよいでしょう。最初(1次スクリーニング)はこの抗体があるかどうか(陰性、陽性)を調べ、その後どの成分に対する抗体なのかを調べます。疾患によって表れやすい抗体があるので診断の指標となります。一般的に病気の勢いと連動して増減するので治療上の指標ともなりますが、必ずしもとはいえないようです。

血清補体価

補体は炎症や免疫にかかわる蛋白で、一定量が血液中にあるのが普通です。SLEの場合は普通この値が低下しますが、疾患によりそうでないものもあります。蛋白量の検査ではC3,C4など、活性検査ではCH50などの数値が用いられます。

リウマトイド因子

外部からの異物に対処できるよう通常、一定量のガンマ・グロブリンが血液中にありますが、この中のIgGに対する抗体がリウマトイド因子です。慢性関節リウマチで高率に発見されますが、他の膠原病や感染症などでも陽性になることがあり、正常な人にも陽性の人がいます。

 

 
※検査結果をどう捉えるかは疾患によって、また個人個人の症状によっても違います。基準値も医療機関によって多少の差があります。検査手順も必ずしもこの形を取らない場合がありますので、詳しい内容は主治医から説明を受けていただくようお願いします。
 

 
●“膠原病の疑い”という診断

“膠原病の疑い”というのは膠原病と似た症状があっても厚生省の定めた診断基準に満たない場合の診断名で、上記診断手順のBまで進んでCの結果が出ないような場合がそれに該当します。実際かなり自覚症状があるのに検査の数値がそれほどでもないという患者さんが多数おられるようです。定期的に検査を受けて様子を見るしかないといわれることが多いのですが、検査の数値が基準に満たないことが症状の重さ、苦しさ、辛さに正比例しているとは限りません。

“疑い”という診断は言葉自体が患者さんを不安にさせているのではないかという気がしますが、その実態は何なのでしょうか?

@膠原病だが、非常に症状が軽く、検査値も顕著に表れない状態。
A膠原病で、症状もあり辛い状態だが、検査値が顕著に表れない状態。
B膠原病と似た症状があるが、実際は全く別の病気。

このようなケースが考えられますが、膠原病予備軍的な考え方もあるようです。

また、膠原病にはオーバーラップといってふたつ以上の疾患の症状を併せ持つような場合や、特殊なケースがあります。診断のための検査はある程度の予測のもとに項目を決めて行いますが、予想された疾患と違っていたときには検査値が出にくいということもあります。こういうことはかなり経験を積んだ医師でないと分かりにくい部分です。診断が確定せず、そのために決定的な治療が受けられないような辛い状態が続く場合は
セカンドオピニオンを求めるということを考えてもよいのではないでしょうか。

●“セカンドオピニオン”について

セカンドオピニオンについてはいろいろな考え方があるようですが、複数の意見(診断)を得て診断の妥当性や確認ができ、さらに別の新しい治療法に巡り合える可能性があるということ、つまり患者の選択肢が広がるというメリットは確かにあると思われます。

また、治療方針を納得できるかどうかという部分では主治医に対して医師と患者、人と人というような信頼関係が築けるかどうかも選択の要件になってくるのではないかと思います。

ただし、その
選択肢を有効にするためにはある程度の判断力、つまり病気に対する一定の知識が不可欠なのは言うまでもありませんね。セカンドオピニオンを受けるつもりがドクターショッピングのようになってしまうと、適切な治療を受けられないままに症状が悪化してしまうというようなケースがないとはいえませんね。

現在の主治医と相談して行うことが理想的なセカンドオピニオンの形かもしれませんが、理想と現実のギャップはまだまだ存在するようです。医療に対する考え方がもっと進んでいくよう望みます。
  


 

●治療
 

診断が確定すると治療が開始されますが、膠
原病の治療は基本的に対症療法として薬の投
与を行うことがほとんどです。使用される薬の
代表は
“ステロイド剤”“免疫抑制剤”で、強
力な効果がありますが長期間使用することにな
るのでそれなりの副作用もあります。

 

膠原病ではこれらの治療をできるだけ早く、しかも確実に行うことによって早く症状を抑えることが特に重要です。病気の勢いが強い間に進行する各臓器へのダメージはこの病気の特徴として蓄積していく可能性があります。そのため適切な治療を行わなかったり、再燃を繰り返していると深刻な臓器不全を招きかねないのです。また、症状が軽いうちなら薬の使用量も少なくて済むし、副作用に悩まされる可能性も低くなることはほぼ間違いありません。臓器不全を防ぐことと薬剤の副作用を少なくするためには早期発見、早期治療がもっとも有効ということになります。同じ理由から膠原病の治療では症状を軽く抑えている時期を長く続けることがその後の生活にも大きく関わってきます

合併症や膠原病の個別の症状に対してもそれぞれ対症的にこの2種類以外の薬も使われます。また、ステロイド剤と免疫抑制剤には大きな効果とともに副作用があるので、その副作用に対する薬も処方されることがあります。
 
これらの薬の正しい知識を持つことは、副作用を上手に回避したり軽減したりすることにつながります。専門家になる必要はないと思いますが、
主治医の説明を確実に理解できるようになることは治療上とても大切すね。治療開始に当たっては医師からも説明がありますが、メモを取っておくと後で理解しやすいのではないでしょうか。

その他にも血漿交換療法など新しい治療法が試みられていますが、全ての膠原病に効果があるとは言えないようです。最新の治療法としては”ガンマグロブリン大量投与法”は効果があるとされていますが、生産量が少なく非常に高価なので一般的とはいえません。”末梢血幹細胞移植療法”は現在試験研究中ですが、こちらはまだ少し時間がかかりそうです。また、最近の話題としてはリツキシマブが治験中のものとしてあげられますが、今のところ重症で特殊な症例にしか使用できないとのことです。これらの治療法を含めて治療法の選択肢が広がることを期待したいと思います。

 
●日常生活で気を付けたいこと

膠原病の特徴として良くなったり悪くなったりを繰り返すということがあります。全く理由が分からないこともあるのですが、やはりそれなりの理由が存在することが分かっていますし、実際に経験して感じられたこともあるのではないでしょうか。いくつかその例を挙げてみます。

 ○日光に当たりすぎた
 ○風邪など感染症にかかった
 ○疲労が続いていた


どれくらい日光に当たるといけないのかは個人差がありますが、海や山など紫外線の多い場所でのレジャーやスポーツ観戦などはでは、紫外線対策を忘れないことが必要です。中には体質的に日焼けしても大丈夫な方もおられるようですが、注意するに越したことは無いと思います。感染症も確実なメカニズムは分かっていませんが症状を悪化させる誘因となることはわかっています。こちらも人ごみを避ける、マスクの使用、うがいや手洗いの励行などの対策が必要です。

これらは一般的に発生しやすいことですが、注意していれば防ぐこともできるはずですね。夏は冷房、冬は外気など体を冷やしすぎたり、温度差が激しい生活も要注意です。ステロイドの副作用を少なくするという意味で食生活にもある程度工夫を凝らしたほうがいいですね。要は肉体的、精神的ストレスを避けること、健康だったときに比べて一層の自己管理が必要となってくるということでしょうか。

生活の中に制限事項がたくさんあるとそれだけで何だか気が滅入ってしまいそうですが、それがストレスの原因になってしまっては元も子もありませんね。猫舌の人が熱いものを必ず冷まして飲むのと同じように、自分にとって辛い結果を招くことからの防御は自然と身に付けられるようになるといいます。あまり神経質になりすぎず、続けていくことが習慣化への道かもしれません。

病気とうまく付き合う

ほとんどの患者さんがそうだと思いますが、診断を受けた当初はやはり受け容れることが難しく混乱した精神状態に陥りがちです。その原因はやはり膠原病がどんなものなのかわからないということにつきるでしょう。幸いインターネット上には膠原病の情報が数多く出るようになってきました。難しい内容も少なくないのですが、これから長く付き合っていかなければならないケースが多いのですから、ゆっくり、じっくり読んでよく理解していただきたいと思います。

膠原病は長期に亘って治療を続ける必要がある病気です。そのため「病気と闘う」というスタンスでは途中でスタミナが切れる可能性もあります。否定するつもりはありませんが、「病気とうまく付き合いながら」というスタンスも選択肢のひとつではないでしょうか。病気の性質上一気にというのは難しいので、少しずつ、長いスパンで克服していってほしいと思います。
 
また、安心して生活を送る上でつぎのようなこともとても重要なことと考えています。

 
患者さんのホームページなどで他の患者さんの状況を知る
 
患者会の行事や交流会に出て、他の患者さんと話してみる
 
患者さん主催のホームページでは掲示板にいろいろな情報があります。その内容を判断して自分にどのように生かしていくのかということも求められるわけですが、世界が広がっていくのは確かだと思います。わからないことはそこへ質問として書き込んでみるのも良いのではないでしょうか。 ただ、病気に対するある程度の理解がないと話がうまく通じないようなケースも見受けられます。また、マナーとして答えやすい質問をすることは必要だと感じます。患者さんの運営するサイトは数多くありますので、自分の感性に合うサイトを見つけてほしいと思います。

膠原病になってから長く治療を続けている患者さんのなかには、とてもうまく生活をコントロールされている方が多数いらっしゃいます。そんな患者さんと実際に話したりすることは、これからの生活にとてもプラスになるようです。経験上、文字だけと実際に会うことには大きな差があると思います。ぜひそういうチャンスも見つけてくださいね。

病気の性質上、またステロイド剤の副作用としても、ときに落ち
込むことがあります。そんなとき、日ごろからのリラックス法を持っていると軽く済むこともあるようです。簡単なヨガや自立訓練法など、一度試してみる価値はあるのではないでしょうか。
 
                        2007/9/13



 
  
 

 

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