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21)ターナー

 

今年の啓蟄(けいちつ)はうるう年の関係もあって3月5日ですが、第21話の公開日の3月6日はめでたく結婚10周年を向かえました。
さてお話の続きですがリハビリテーション学院に入学後、クマさんも保育士に興味を持ち勉強を始めました。"精神保健"という教科の勉強をしていたとき、「私、この病気と違うかなあ」と言い出しました。私はどうせ違うだろうと思っていたのですが、間もなく私も同じ病気について習いました。その病気はターナー症候群と言います。この病気は聞き慣れないと思うのですが、ダウン症候群という病気は聞いたことがあるのではないでしょうか。ターナーもダウンも染色体の病気です。ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と1対(2本)の性染色体の合計46本から成ります。性染色体の種類がXXであれば女性、XYであれば男性となります。染色体にもいろいろな長さのものがあり、長い方から数えて21対目の染色体が3本(通常2本)になるとダウン症候群と成ってしまいます。その他、13対目や18対目の染色体が3本になってしまうものも知られているのですが、ほとんどの赤ちゃんが亡くなってしまいます。そのため染色体異常の病気の代表としてダウン症候群が挙げられているのだと思います。

ダウン症候群の次に出生頻度の多い染色体異常がターナー症候群です。ターナー症候群はダウン症候群とは逆で、通常より1本染色体が少ない病気です。考えてみると染色体の一部に傷がついてしまうだけで、進行性筋ジストロフィーなど重篤な病気が起こってしまいます。普通は染色体が1本少なければ、生まれてこられないはずなのですが、唯一ターナー症候群だけは生まれてくることができます。それは常染色体ではなく性染色体の方が少ないからです。

ターナー症候群の特徴を調べてみると、低身長・心奇形・性ホルモン異常・翼状頸などがクマさんの症状と合いました。心電図にいつも異常がでることや、小学校の時に首から肩にかけて手術をしていることや、身長が低いこと、今まで関連が無いと思っていたことがひとつに結び付いてきました。病院で染色体の検査をしてもらいに行きましたが、予想外にも断られてしまいました。理由はターナー症候群では無いから調べても仕方がないとのことでした。これでは納得がいかないので他の病院をまわり、自費でもいいから染色体検査をしてもらえる病院を紹介してもらいました。紹介してもらった近畿大学附属病院で検査した結果、やはりターナー症候群でした。

クマさんがホルモン異常に気づいてから診断までなんと17年の歳月が経っていました。この診断を受けたことで完全に子供を産めないことがわかり、治療法も変わることになりました。子供ができないことが明らかになったのは多少さみしさもありますが、それ以上に二人で病気を見つけられたことや、身体に負担となる治療をやめることができたこと、またクマさんも私と同じく出生が非常に難しい状態にもかかわらず産まれてくることができたということなど嬉しい気持ちもありました。当時毎週のように通っていた病院も現在では3カ月に一度の通院となり、肝臓やすい臓の方も少しずつ良くなっています。

しかし、今回のお話は現在の診療体制の弱さを浮き彫りにしていると思います。いくら専門性が大切だとはいえ、医療関係を志すものなら1年生で習うような基礎的な病気さえ大学病院でも対応できないというのは、やはり問題ではないでしょうか。患者をひとりの人間とみた場合、ターナー症候群や膠原病など全身さまざまな症状を起こす病気にも対応できてくると思うのですが、現在の体制では医療者まかせではなく患者やその家族もできるだけ病気に対する知識を持つことも必要だと思っています。自分自身の病気・クマさんの病気・兄さんの病気、自分や家族の病気を経験して患者側からみた視点の大事さを実感しました。現在私が患者さんと接するにあたって、専門家としての視点はもちろん大切ですが、自分がその人の家族だったならどうするだろうということも考えてリハビリを行おうと思っています。そうすることによって医療者と患者さんが少しでも近づけたらいいと思うのですが…

(第21話:2004年3月6日公開)