◎PT(理学療法士)としてpt(患者)として

 メールはこちら
  

◎バックナンバー

 

1 2 3 4 5 6 7

 

8 9 10 11 12

 

13 14 15 16 17

 

18 19 20 21 22

 

23 24 25 26 27

 

28 29 30 31 32

 

33 34 35 36 37

 

38 39 40 41 42

 

43 44 45 46 47

 

48 49 50 51 52

 

53 54 55 56 57

 

25)理学療法士について3

 

またまた引き続きICIDH(WHO国際障害分類)を用いて、障害の具体例についてお話させていただきます。前回、理学療法士は身体障害の機能障害と能力低下に関係しており、障害の疾病や社会的不利まで含めて解決するためには多くの人達とのチームアプローチが必要であると述べました。それでは理学療法士は疾病と社会的不利に対して他の職種に任せたままでいいのでしょうか。

まず疾病と理学療法について考えてみます。例えば風邪の場合、図のように風邪をひいて発熱し、だるくて動けないので会社に行けない、ということがあります。一方、前回の重度の骨折の場合には、骨折して関節が曲がらず、痛くて動けないので会社に行けない、ということになります。両者とも"動けないので会社に行けない"という部分は共通しているのですが、実は解決する方法が全く異なります。風邪の場合に動けないからといってリハビリを行う人はいません。この場合は安静にして風邪さえ治れば会社に行けるわけで、疾患に対して治療すれば良いことになります。骨折の場合は骨折の治療のほかに、関節が曲がらない場合には理学療法などの治療が必要となります。つまり同じ動けない場合でも、疾病が異なれば治療方法も全く異なることになります。

 
 


上記の例の場合に治療方法を間違えることはまず無いと思うのですが、実際の患者さんの場合には複数の疾患や症状が絡み合っていることが多く、原因が分かりにくいこともよくあります。例えば医師から筋力が弱くなっているので鍛えてくださいと依頼されたとします。しかし単に筋肉を鍛えるだけで良いなら、私たち理学療法士は必要ありません。患者さんは怠けて動かなかったために筋力が弱くなったわけではなく、何らかの理由で筋力が低下したのです。なぜ筋力が低下したのかという理由を考え対処しなければ、なかなか筋力は強くなってくれません。簡単な例でいうと腰の痛みがある人に対して足の筋肉を鍛えようとしても、実際の筋力を発揮することはできません。痛みの治療を行わず運動していただけでは、更に痛みがひどくなって筋肉が衰えることにもつながります。疾病についての知識がなければどのくらいの量をどのくらいの頻度で運動すれば良いのかも指導できず、理学療法の業務はできないことになります。このことは第23話でも述べましたが、医師の診断が重要なように、理学療法士は障害の原因を探る"評価"が最も大切であるということにつながります。

 
 

次に社会的不利と理学療法について考えてみます。小指の突き指で関節が動かなくなったとします。図のように日常生活ではほとんど問題になることは無く、障害も全くないように見える場合でも、もしこの人がピアニストだった場合には非常に大きな社会的な不利益をこうむる場合があります。つまり障害は人によって意味合いが大きく変わるということです。よって私たちが治療する場合にその人の置かれた立場を知ることも大変重要になります。簡単な例では一般の人とスポーツ選手では目指す目標が異なるためリハビリも当然違ったものになります。このように理学療法士は患者さんの社会的不利に対しても考慮する必要があり、同じ疾患でも個々に応じた治療をする必要があります。

医療従事者に対して"病気をみて人をみない"とよくいわれます。しかし以上のように理学療法士は機能障害と能力低下をみるだけでなく、その人の疾病や社会的不利についても考えていく必要があるということです。疾病を考えるということは病気をみることにつながり、社会的不利を考えるということは個々の人もみることにつながります。やはり身体障害の専門家を目指す道は険しいのですが、私たちは他の職種の人達に協力を受けながら障害全体も考えることに努めていく必要があります。

 (第25話:2004年4月4日公開)