既に身体的にも精神的にも限界がきていました。病院のリハビリ室で患者さんの転倒事故が自分の目の前で起きたのです。この患者さんは私の受け持った方ではなかったのですが、目の前で倒れそうな患者さんがいれば助けようとするのは当たり前のことです。これは医療人でなくても一般の方でも当然の行為だと思うのです。しかしそのときの私は自分の身体のことに精一杯で、目の前の患者さんのことにも気づかない状態だったのです。誰の患者さんであるかなんて関係ありません。リハビリ室にいる患者さんはスタッフ全体の患者さんなのです。リハビリ室にいるときには患者さんのために専念しなければ、ひとりのスタッフの不注意で大事故につながると痛感しました。幸い患者さんは何のケガもありませんでしたが、私はこの場所にいてはいけないと思いました。 病院側に相談に行ったところ少し休養してから、リハビリ室に戻るか他の部署に移るか検討することとなりました。就職してからたった一カ月しか経っていないのに休養。結局、自分の受け持った患者さんにも多大な迷惑をかけることになってしまいました。私はこれ以上病院の患者さんに迷惑をかけてはいけないと思い、少しでも楽であると言われた施設への転職に気持ちは固まっていました。病院の方たちは「病院を辞めれば絶対に後悔する。病院にいれば多くの症例をみることができるし、技術だって身につく。他の部署に移っても、いつでもリハビリを見にくれば良い」と言っていただきました。以前会社にいるとき「会社を転々としても結局最初の会社が一番良かったという例が多いらしい」ということを聞いたことがありました。"自分が東洋紡に残っていたらどうなっただろう"私は東洋紡を辞めたことを後悔することはありませんが、ふとそう思うこともあります。しかし自分の意志でレールから離れたからには、最後まで自分の意志で動こうと思いました。 そして老人保健施設へ転職しました。しかし考えてみれば当たり前のことですが、施設でも身体的・精神的なしんどさは同じでした。患者さんのリハビリの際、筋力訓練のような短時間だけ力を使うことは可能なのですが、歩行訓練のように持続的に手を使うことが困難になっていました。しかし歩行訓練が始まればしんどいからといって患者さんから手を離すことはできません。病院の患者さんに迷惑だからといって施設に来たのは明らかに間違いでした。もちろん施設の患者さんにも迷惑をかけてはいけないのです。施設への転職後、たった4日間で施設を辞めることになりました。 |