施設を辞めても次の就職先のあてはありませんでした。病院でもダメ、施設でもダメな理学療法士の就職先を紹介してくれる人なんていませんし、自分でも理学療法士の仕事はやはり無理ではないかと考え初めていました。身体を動かさずに理学療法士の知識で役にたてそうなことも考えてみましたが、どれも自分の頭の中だけのこと、ひとりよがりでしかありませんでした。 そのころも毎日のように熱はでていました。朝になり体温を測り発熱していれば、なぜかほっとしました。リハビリの学校で"疾病利得"ということを習ったことがありました。これは患者の状況によっては病気が治るよりも病人であり続けるほうが、自分の得になるという心理をいいます。その患者さんが仮病を使おうとしている訳ではなく、患者さんが悪い訳ではなくても、そのときの自分に利益があるような状態を無意識に作ってしまうのだと思います。熱が治まれば家で療養している理由がなくなってしまう、理由がなくなると痛みを我慢して理学療法士として働かなければいけない。体温を測ってみると発熱している。"よかったこのまま寝ていれる"と思う。でもこれは現実逃避でしかありませんでした。当然、発熱が続くことは良くないことであり、病気が悪化していくことは自分にとっても家族にとっても良いことであるはずがありません。しかし、そんなことも判断できないほど身体的にも精神的にも落ち込んでいました。 "疾病利得"が強くなると、治療する意欲も無くなっていき、無意識に病状が悪くなることを望むようになることもあるそうで、病気の状態が変わらなくても痛みが非常に強く感じるようなことにもなるそうです。私の場合はリハビリの学校の先生方の励ましや、その先生方に紹介してもらった主治医のおかげでそこまでにはなりませんでしたが、その後長い休憩時間に入ることになりました。 |