◎PT(理学療法士)としてpt(患者)として

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50)同行二人

 

私が膠原病にならなかったとしたら、行っていなかったことがまだありました。ある日の新聞に"西国三十三カ所巡り"という旅行会社の宣伝がありました。元来信心深くは無いので、それまでは"西国三十三カ所巡り"って何か全く知りませんでした。ただその広告の横に載っていた"四国八十八カ所巡り・お遍路さん"という言葉は知っていたので、近畿にもお遍路さんのようなものがあるのだということが、そのとき何となくわかったくらいでした。

西国三十三カ所のお寺の名前を見てみると、今までに行ったことのある紀三井寺や長谷寺、三井寺や石山寺など親しみやすいお寺が載っていました。その中でも上醍醐寺の名前が気になりました。どこかで見たことのある名前と思っていたら、実はうちの診療所に貼ってあるお札でした。また訪問リハビリに行っていた院長のお祖母さんの部屋にも同じお札がありました。お祖母さんは院長が「命を預かるような仕事をしていたら、少しくらい苦労してお詣りしなければ」と言っていたと教えていただきました。上醍醐寺について調べてみると、"西国三十三カ所で随一の難所であるが、山上の清浄さは格別で立ち去り難い思いがする"と記されていました。

リハビリは病気を治すものではなく、私たち理学療法士は患者さんが元気になるのを、後ろからそっと押してあげる役目でしかありません。患者さんの病気が良くなるのは、医療や患者さんの治癒力にかかっています。患者さんの容体が悪くなれば、リハビリが中止になることもしばしばあります。そのような場合には私たちは皆さんと同じように祈るしかありません。また実父の心筋梗塞の後、クマさんのお父さんも心筋梗塞になったことなどもあり、西国三十三観音の巡礼について調べてみることにしました。

今回のタイトルの"同行二人"という言葉は、巡礼の時の菅笠に記すものです。この言葉は自分一人で巡るのではなく、観世音菩薩様と一緒に巡礼しているという意味だそうです。私たち夫婦は別に信心深くもないのに、観音様と一緒に巡礼などしても良いのだろうかと最初は思っていたのですが、西国巡礼の本に次のように書かれていました。「今や観光巡礼で西国を行く人が多い。ご利益のあるスタンプラリーとお寺詣りを始めたとしても、御朱印を求めて、長い参道を行き、急な階段を上りつめる。札を納め、灯明をあげ、祈願する。それを繰り返すうちに、素直に手を合わせる自分に気づく。一カ寺詣でるごとに、観音様と一緒に巡礼している気持ちに不思議となってくる」。この文章を読んで、宗教心の無い私たちでもオリエンテーリングのつもりで、大変かもしれないけれど頑張ってみようかという気になりました。

西国三十三カ所は三十三カ所のお寺と三つの番外のお寺、更に御礼参りに三つのお寺の合計三十九カ所を詣ることになります。その中で最も印象に残っているのが第一番札所の那智山・青岸渡寺です。ここは和歌山県の熊野那智大社の隣にあり、那智の滝を観ることができます。またこの時は熊野三山もお参りしてきました。本堂までは予想どおり長い階段が続き、かなり股関節も痛かったのですが、その痛みも納経帳に御朱印をもらえば本当に吹っ飛びました。しばらくの間、その字の美しさにクマさんと見惚れていたほどです。

坂道のつらい私と心臓が弱いクマさんにとっては、上醍醐寺を筆頭に巡礼は本当に大変でしたし、わが家には前回登場のアピがいるために家を空けることができず、御礼参りの長野の善光寺でさえ日帰りで行くことになったことも大変でした。2003年に一回目の満願を達成し、その納経帳はそれぞれの実家にあります。現在は二回目の巡礼中なのですが、今回は掛け軸も作ろうと挑戦中です。また四国八十八ヶ所も実施中で現在二十三ヵ寺を詣りました。ただし日帰りしかできないので、これは満願までには相当時間がかかりそうです。私たちにとってはまだまだスタンプラリー気分が抜けないのですが、今後もライフワークのひとつにしていけたらいいなと思っています。

 


青岸渡寺からみる那智の滝


西国納経帳


御影(おすがた)
 (第50話:2004年9月26日公開)