◎PT(理学療法士)としてpt(患者)として

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54)大丈夫

 

最近、大丈夫って二つの意味があると思うんです。気になって広辞苑で調べてみると3つの意味が載っていました。一つ目は"立派な男子"という意味。今はこの意味で大丈夫と使うことは無いと思うのですが。二つ目は"しっかりしているさま・あぶなげのないさま"という意味。「強い地震にも大丈夫な建物」という例がありました。三つ目は"間違いなく・たしかに"という意味。「大丈夫、勘定は払うよ」という例がありました。私が思っていた大丈夫の二つの意味は、これらの意味の違いとは少し異なる気がします。私の思っているのは、もしかしたら意味の違いではなく、言葉の使い方の違いだけかもしれませんが。

私たちの仕事は一日に何十回と大丈夫という言葉を使います。例えば、曲がりにくい膝関節を曲げていく訓練をするときに、患者さんに対して"大丈夫ですか。痛くないですか。"と聞きながらリハビリを行います。この大丈夫は広辞苑の"しっかりしているさま・あぶなげのないさま"という意味でしょうが、私たちは本当にあぶなげのないときには、あまり大丈夫という言葉は使いません。日常会話の中では、逆にあぶなげなときほど大丈夫という言葉を使っています。それはリハビリの現場以外にも、友の会の仲間に"大丈夫ですか"と話しかけるときも、友達に"大丈夫なんか"と言われるときも、そして自分に"大丈夫、大丈夫"と言い聞かせるときも、これらのどの場面でもしっかりしていなくて、あぶなげで、不安だけれども、"大丈夫"と返答したりもしています。

第47話でお話したように「いま、会いにゆきます」という市川拓司さんの本の中には、この"大丈夫"という言葉が非常にたくさん出てきます。結婚すれば自分が死んでしまうかもしれないという状況の中で、彼女は彼に対して「大丈夫よ。行きましょう。先に進むの」と言います。この大丈夫は自分が死ぬかもしれないという前提に立てば、本当は大丈夫であるはずがありません。しかし彼女は彼と結婚できないで生き続ける道よりも、彼と結婚して死ぬかもしれないという覚悟をして結婚を決断します。彼女が言った「大丈夫」には不安感はなく、自分がいかなる状況となっても二人の関係が大丈夫という確信があります。これは広辞苑でいう"間違いなく・たしかに"という意味が含まれているのかもしれませんが、私にはそれよりも強い意味を感じます。

私もそういえばクマさんの大丈夫という言葉で結婚を決意しました。第14話に記したその状況をもう一度書きます。私が「母親は兄貴を生んだことをどう思っているんだろう。」と聞くと、彼女は「大丈夫」と答えました。私は気休めかもしれないと感じましたが、次に「私、子供が産めないかもしれん。このことで母親は私を産んだこと悲しがっている。でも本当は私を産んだこと喜んでいると思う。母親って、そういうもの。だからきっと大丈夫。」もちろん問題に違いはあります。クマさん家が大丈夫でも我が家が大丈夫かどうかはわかりません。問題が解決する訳では無いのですが、それでも私はそのときの「大丈夫」に救われる思いがしました。この人なら大丈夫かもしれない。そう思ったのもその時でした。

クマさんはこのとき子供が生めない話をすることで、結婚ができない状況になったかもしれません。しかし、それを覚悟で私に"大丈夫"と言ってくれたのだと思います。だから私もこの人なら大丈夫と思ったのです。(クマさん本人はもうこのことを覚えていないので本当のことはわかりませんが)私は家族のために覚悟して「大丈夫」と言えたことが無いような気がします。どんな状況になったって家族が信じあっていれば大丈夫だって。でももうそろそろ私自身も覚悟しなければならない気がしています。

 

 (第54話:2004年10月24日公開))