昆布の青変現象

  もう現在ではほとんどと言っていいほど出なくなった事ですが、昆布を語る上でも一大ブーム(?)になった事を話題にしてみましょう。

  少々話が長くなりますが、当時の事の顛末を追ってみましょう。


 

 昭和44年ごろ「昆布の出し汁が青くなる」という苦情が全国的に出回りました。

ちょうどこの頃、養殖昆布や促成昆布が出回り始めたときであり、また昆布の乾燥に天日だけでは追いつかない事もあり乾燥機が普及し出したときでもありました。

昆布業者も初めての事であり、全く原因がわからずじまい。昆布が悪いのか、作り方が悪いのか、てんで不明でした。

 その後昭和51年1月に一時期途絶えていたこの現象が再び発生しました。

当時、大阪の百貨店が販売した昆布の中に色落ちするものが出て、関係者は公的試験に持ち込み、分析依頼するなど原因究明に躍起になりました。

それでも原因はつかめず、苦情が出るたびに業者が個々の責任で詫びていた状態でした。

 昭和53年1〜2月になり、消費者から"原因を科学的に究明して説明して欲しい"との声が高まりだしました

同年2月、大阪で「全国水産加工たべもの展」が開催され、今井忠水産庁水産加工対策室長が審査の一員として来場されたのを機に、日本昆布協会・流通加工調査委員長から原因究明の研究費の助成を口頭で嘆願、今井室長は資金を出して日本昆布協会で研究し、絶対的に解明できるものとは思えぬものとしながらも、昆布の円滑な消流と安定消流を願う生産者のためにも考慮すべきであると理解を示されました。

 おりしも、同年3月11日朝日新聞「声」欄に次のような投書が掲載されました。

 先日、休日出勤の妻に頼まれて、スーパーへ買い物に行った。メモにある通り買いながら、食料品売り場を一巡して「都会文化」はまず食物から伝わってくるのだろうかなぁと思った。
あちらにもこちらにもインスタントや出来合い食物が、目もあやに並べられている。まるでおもちゃ屋の店先のような色調である。

 最後にだしコンブを買った。青みのかかった昆布らしい色が気に入ったからである。夕方、台所で妻がスットンキョウな声を上げた。「このコンブ青い色が出てくる」というので、急いで行って見た。何とコンブからうすみどり色の色素が出ているではないか。

 あわてて火を止め、出し汁をなめたら、薬品くさい味がする。こんな汁で湯豆腐などしたら、もうムチャクチャである。それにしても、うまいだしさえ出れば用済みの、いわば料理の裏方というべきだしコンブにまで、着色する必要がどこにあるのか。色にだまされて買った私もばかであった。

 「それにしても・・・」こんな食生活を続けていて、あすの日本はどうなるのだろうと「美味求真」をモットーとする私は、しみじみと考え込んだものである。

 この程度は序の口です。呈色する色によっては、毒素呼ばわりされる事もありました。

委員会は以来、色落ち現象の実態を調査し、昭和53年5月26日長島県雲仙での総会に先立ち、流通加工調査委員会を開催して調査結果を検討した結果、水産庁に原因調査を依頼すべく願上状を提出する事を決議しました。

 

その後様々な実験が繰り返されました。ここでは紙面(?)の都合で割愛しますが、株式会社富士昆布でも実験を行い結論付けています。

さて、日本昆布協会は水産庁今井室長からその後の取り計らいを伺う一方、北海道大学水産学部・大石圭一助教授に研究を依頼しました。

 その後、大石先生から「昆布だしの青変機構」について研究論文を提供され、日本昆布協会は早速「コンブニュース」として冊子を作成して会員ならびに関係先に送付しました。

 ここでは当時の北海道新聞に載った大石先生の記事を載せます。これで一連の症状の原因が解明され、この大騒ぎは幕を閉じました。

昆布だしの青変

 大阪のある消費者が、昆布だしをとっている時に青い色がにじみ出た。

不思議に思ってまた試みたが、今度は色が出なかった。発色には微妙な要因があるらしい。

これは10年ぐらい前の事であるが、その後もこれと同じような青変が時々起こっている。消費者は昆布にまで染色しているのか、と不信感を抱き始めてきた。

 そもそも青変は、昆布に含まれるヨウ素化合物が水道水の中の有効塩素の作用で分解してヨウ素を遊離し、昆布だしをとった鍋に、偶然ついていたデンプンと反応して、青紫色になったものと思われる。

青変の原因は色々考えられるが、問題は水道水中の有効塩素の量である。次亜塩素酸ソーダで調べると0.6ppmの濃度で時々発色し、1ppmでわずかに発色をはじめ、4〜20ppmでもっとも濃くなり、40ppm以上になると発色しなくなる。

 水道法によれば、水道水中の有効塩素量は水道蛇口で0.1ppm以上が必要で、上限がない。函館の水道水では0.2ppmであるが、大阪では0.82ppm、東京では0.8ppmである。0.8ppmの水道水で昆布だしをとる時、デンプンがあれば、青変の可能性が十分にある。東京でも昆布だしの青変がすでに起こっているかもしれない。

青変は昆布だしに問題があるのではなく、用いた水にあるのである。

 

結局、昆布のヨウ素、塩素、デンプン、そして水温が絡み合って起こる化学現象だったのでした。

(水温が高いと塩素は蒸発してしまう。また温度が高いとヨウ素澱粉反応は起こらない)

 

 

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