ガニアシとは?

〜将来注目される食材となるかもしれない、ガニアシについて〜

 

(注)実験内容については(株)共成製薬さんによるレポートから抜粋しています。(無断拝借すみません)

昆布の部位を生物学的にわけますと、葉状体(葉)葉柄(茎)仮根、の3つとなります。

仮根は昆布が岩などにくっ付くためのものであり、いわゆる「」ではありません。形状から根のようですが、栄養を吸うための根ではないため仮根といいます。

ちなみに昆布などの海藻は、葉全体から養分を吸収します。

俗に言う「根昆布」とは生物学的にいう仮根ではなく、「葉の付け根部分」を便宜的・商業的に言っているだけです。

根昆布の部分は昆布の成長点の部分であり、細胞分裂が盛んなところでもあります(成長しきった昆布ではあまり分裂はありませんが)

そのため、葉の部分に比べて栄養分が高く、また昆布から少ししか採れないという希少価値も手伝って、健康に良いとされ重宝されています。実際、ミネラル分などは豊富に含まれています。


余談ですが、根昆布にはヨウ素(ヨード)が多量に含まれており、根昆布水にはそのヨードがたくさん抽出されます。

根昆布水を作るときは、水に根昆布2〜3入れて冷蔵庫で一晩漬け込む方法が昔からされていますが、ヨードが出すぎる嫌いがありますので、根昆布を漬け込む時間は1時間ぐらいで結構です。ほかのミネラル分も十分抽出されます。

山間部にすむ人で魚介類や海藻をあまり口にしない人はヨード摂取量が少なめですが、それでも世界的に見ると日本人はヨード摂取量は多い方です。

ですから無理にヨードを摂取する必要はなく、少量でも毎日摂取するのが好ましいです。


さて、仮根は岩盤に付着していますので、コンブを採取する時には岩盤に残ってしまうのでコンブと一緒に陸揚げされる事は稀です

陸揚げされても岩や土を抱き込んでいたり、いくつもの仮根が集まって大きな塊になっており、食品素材として利用されることはありませんでした。

また養殖昆布の場合でも、仮根部分はゴミとして扱われていました

北海道で昆布を扱う人たちの間で、この 仮根部分 を 「ガニアシ」 と呼ぶそうです。

カニの足に似ていることが由来のようです。

コンブの部位の名称 ガニアシと呼ばれる仮根部分



「北海道漁業図繪」という明治12年にドイツ・ベルリンで開催された漁業博覧会に北海道開拓史函館支庁が出品したものに、仮根部分がついた昆布の図が描かれています。

このことから、商品として流通はしていないものの、地元の人たちの間では仮根部分はよく知られたものだったのでしょう。

北海道漁業図繪


海藻、とりわけ昆布の有効利用の観点から今まで利用されなかった仮根部分ガニアシについて栄養分などが調査された結果、ミネラルが豊富に含まれることが判明しました。

とくにカリウムが大量に含まれており、その他、昨今知名度の上がってきた昆布の多糖類の一種フコイダンや、機能性食物繊維であるアルギン酸の量も豊富であることもわかりました。

ガニアシは養殖昆布では簡単に採れることもあり(ロープに昆布の胞子をつけて海中につけて育てるため)現在、共成製薬(株)さんという企業がガニアシを商品名(登録商標)として、研究を行っています。

共成製薬(株)のガニアシに対する研究は、平成11年には科学技術振興事業団の「独創的研究成果育成事業」に選定され、平成12年には北海道化学・産業技術振興財団の支援(産業化研究開発支援事業・研究開発産業化促進補助金)を受けて研究開発を続け現在に至っています。


ガニアシの成分と機能性

ガニアシの栄養成分を、五訂食品成分表記載の他の昆布のそれと比較すると、表1になります。

ガニアシの成分1

大きく差があるのが灰分(かいぶん)=即ちミネラル、と食物繊維です。


1)ミネラル

ガニアシの灰分組成は表2になります。

ガニアシの成分2


ガニアシにはカリウムが多く、それが灰分量の多さに起因します。

カルシウム、マンガンも他の藻体(昆布の葉っぱの部分)より多く含まれています。

一般に昆布類のカリウム/ナトリウム比(K/Na比)は、1.0〜2.2とされていますが、ガニアシでは平均で4近くあり、最高では5を超えます。(平均3.76 最高5.18)。

ミネラルの観点から見ると、根こんぶはカリウムがやや多い以外は他の藻体と似ているのが分かります。

養殖昆布のカリウム含有量は冬から春に高くなり、収穫時の夏には低くなりますが、ガニアシ(仮根部分)は収穫時でもカリウム含有量が高いことが判明しました。

ガニアシの持つ新しい特徴といえます。


2)アミノ酸

昆布の旨味であるグルタミン酸量を比較すると、昆布のおおよそのグルタミン酸量は10〜40mg/gですが、ガニアシでは1mg/g以下となります。

旨味が少ないわけですが、昆布特有の匂い・風味・味が弱く、昆布や根昆布の粉末とは違った利用価値があると思われます


3)多糖類

ガニアシは50%近くが食物繊維であり、水溶性食物繊維としてはアルギン酸とフコイダンが含まれます。残りは細胞膜を形成しているセルロースです。

a)アルギン酸

ガニアシのアルギン酸含量は、昆布藻体の15〜20%に比べて少なく4〜6%です。

しかし、グルロン酸含量が50%以上と藻体よりも高いのが特徴です。

このわけは、おそらく仮根部分は岩盤などにしっかりと吸着するためにも、波に揺られるために柔軟性が必要だからだと思われます。
尚、藻体から抽出されるアルギン酸ナトリウムのグルロン酸含量は30%前後です。

b)フコイダン

熱水および希塩酸で抽出されるフコイダンはガニアシに4〜5%含まれています

粗フコイダンをさらにDEAE Toyopaearlで精製すると、GA-フコイダンとL-フコイダンの性質の異なる2種類の成分に分離されます。

昆布、根昆布を同様に精製すると、L-フコイダンしか検出されませんので、GA-フコイダンはガニアシ特有のフコイダンです

GA-フコイダンはフコース、硫酸基が少なく、ウロン酸や他の六炭糖が多いのが特徴です。

フコイダンには動物実験で、移植したガン細胞の縮退、消失及び延命作用があることが知られています

そこで、GA-フコイダンとL-フコイダンを精製して、マウス腺ガンAdenocarcinoma 755 を移植したマウスを用いて試験を行った結果、いずれも10mg/kg腹腔内投与では30%以上、30mg/kg投与で50%以上のガン細胞の増殖を抑制することが分かりました。

なお、100mg/kg投与ではL-フコイダンは毒性を示したのに対し、GA-フコイダンは毒性を示さず、70%近い抑制率を示しました



4)ステロール

海藻類の成分が抗腫瘍性、抗菌性、抗ウィルス性、赤血球凝集作用、酸化防止作用、などの生理活性を持つことは今までに色んな研究が進み明らかになっています。

ガニアシの脂溶性の低分子化合物の抗腫瘍性に注目して生理活性成分の探索を行いました。

ガニアシには培養乳がん細胞(MCF-7)の増殖を抑制するフラクション(分画)が存在することが判明しました。

そこで増殖抑制作用を指標として活性成分を単離精製したところ、ステロール酸化体が活性成分であると判明しました。



ガニアシ(昆布仮根)は、通常食用する昆布の藻体や根昆布とは異なる特徴をもつことから、素材としての価値が今後高まっていくでしょう。

 

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