体に必要な重金属

 

重金属と聞くと、鉛、銅を代表に体に悪いものというイメージがあります。

古くは足尾銅山鉱毒事件、森永ヒ素ミルク事件、有機メチル水銀による水俣病、カドミウムによるイタイイタイ病、などなど。

しかし昨今では、味覚障害防止に亜鉛が見直され、亜鉛を含んだ健康食品も数多く出回っています。

亜鉛が効く理由は、下の味蕾にある味覚細胞の新陳代謝に亜鉛が深く関わっているからです。

また、亜鉛とストレスの関係についても研究が進み、ストレスが増大すると血中の亜鉛濃度が減少し、逆に銅濃度が増大することも判って来ています。

人間は老化に伴なって、体内の鉄、銅、亜鉛、マグネシウムの量が減少し、逆にコバルト、ニッケル、セレンが増加することも判っています。

胃腸を切除した人へ与える点滴である、栄養素の入った高カロリー輸液にも、鉄、亜鉛、銅、セレン、クロムを入れておかないと貧血、皮膚病、糖尿病になることも明らかにされています。

このように、昔は忌み嫌われていた重金属が、人体にとって僅かな量であるが重要な働きをしていることが解明されてきました。

そこで、金属類を以下のようにグループ分けしました

体内に存在する量により、微量元素と、超微量元素に分けました。

微量元素と超微量元素は合わせて23種。

微量元素9種のうち、ヒトに必須である4元素を必須微量元素としまいした。

超微量元素14種のうち、ヒトに必須である5元素を必須超微量元素としました。

必須微量元素 (4元素) 鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)
微量元素 (5元素) ストロンチウム、ルビジウム、鉛、フッ素、ケイ素
必須超微量元素 (5元素) クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、セレン(Se)、ヨウ素(I)、コバルト(Co)
超微量元素 (9元素) アルミニウム、カドミウム、スズ、バリウム、水銀、ニッケル、ホウ素、ヒ素、バナジウム

印は非金属元素

表を見ていただくと分かりますが、どれも人体に悪そうなものばかり(笑)

ですが、実はこれらが極微量でありながら大切な役割をしていたのです。

地殻、海水、河川水、そして人体の無機元素量を比べてみましょう。

海水中の元素分布とヒトの肝臓中の元素分布を比較すると、相関関数約0.8という高い相関があることが分かっています。

生物の環境中に豊富に存在する元素ほど、その生物に取り込まれやすいと考えられることから、生命が海を起源にしていることがうかがい知れます。


必須微量元素の有用性と有害性

上で体に悪そうなものばかりと書きましたが、確かのそのとおりです。

必須微量元素が大量に必要なわけではありません。酵素の働きをよくする補酵素として働いたり、たんぱく質の三次元構造を保持するためであったり、ほんの微量必要なだけです

故に、必須微量元素なのです。


そして、あらゆる元素には最適濃度範囲が存在します。

その濃度範囲にある限りは有用な作用を発揮します。しかし、その範囲以下だと欠乏症を起こし、また範囲以上だと過剰症や毒性を呈してしまいます。

最適濃度範囲は元素の範囲によって異なります。

例えば、セレンは必須超微量元素ですが、極めて有毒な元素です。

セレンの最適濃度範囲はかなり低レベルにあり、しかもその範囲(下の図でいう山の部分)は極めて狭いのです。

銅も多くの生物にとって必須元素ですが、限度を超えて摂取すると有害となります。

鉄はヒトにとって重要ですが、この鉄でさえ摂取しすぎると有害となります。


生体には、これらの元素の濃度をある範囲に保つような機構があります。

しかし、その機構による調節能力にも限度があり、その限度を超す高濃度になると突如として毒作用を表します。

以下に、欠乏症と過剰症の一例を挙げます。

元素 欠乏症 過剰症
鉄 Fe 貧血、脱毛、根気減退 出血、嘔吐、循環器障害
亜鉛 Zn 小人症、成長抑制、食欲不振、味覚減退、生殖腺機能障害、睾丸萎縮症、知能障害 嘔吐、下痢、肺の衰弱、高熱、悪寒
銅 Cu 貧血、縮れ毛、食欲不振、成長減退、毛髪色素欠乏症 肝硬変、腹痛、嘔吐、下痢、運動障害、知覚神経障害、ウィルソン病
マンガン Mn 骨格形成・発育障害、糖尿病、脂肪代謝異常、筋無力症、生殖腺機能障害、動脈硬化 肝硬変、筋肉運動不整、神経障害、パーキンソン病

結局のところ、偏食をせず食生活に気をつけていれば大丈夫ですので、健康食品やサプリメント食品だけを食べて安心、という愚かなことはやめましょう。

 

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