「加奈の日記」が『命をみつめて』という本として出版されることになり、
俺がその「あとがき」を書くことになった。
一応パソコンで書くのでいくらでも推敲ができるが、それにしても……隆道:「はあ、何書けばいいんだろ?」
……俺は自分の文章力の無さにあきれていた。
せっかく「加奈の日記」を出版するのに、あとがきがまずかったら
それこそ加奈に申し訳ない……。
隆道:「ふう!」
少し大袈裟な表現かもしれないが、まさにお手上げ状態の俺は、
現実から目を逸らすかのように押し入れの方を見ていた。
隆道:「…………。」
がらっ。
押し入れを開けると、一番手前に人形が二体置かれていた。
夕美に別れ話の電話を掛けてからも、何故か捨てられずに残していたものだ。
隆道:「夕美……。」
……俺の頭の中が、今までのことが嘘のようにすっきりしてきた。
『(注:すみません。最初の部分は、香奈の手術後の経過や
美樹や叔父たちへのお礼の言葉が書いてあると思って下さい(^^;)
ところで、私たちは最初から加奈に全てを告知していたわけではありません。
加奈に知られないように、それこそ胃の痛む思いで加奈と接してきました。
そんなとき、重圧から私を救ってくれたのが、幼なじみの女性でした。
そう、彼女の笑顔が何よりの私の心の支えでした。
だから、今は訳あって疎遠になってしまいましたが、
いつかきっとまた会って「ありがとう」と礼を言いたいと思っています。
精一杯生きることのできた妹の加奈の分も一緒に。
願わくば、そう、願わくば……。』
……。
…………。
………………。
……………………。
夕美の友人:「ねえ夕美、この本読んだ?」
夕美:「『命をみつめて』?私、こういうのあまり……
(私を捨てた男の本なんか読みたくないわよ!)」
夕美の友人:「そう言わずに、あとがきだけでも、一度読んでみなさいよ。」
夕美:「え?」
…………。
夕美の友人:「そこに書いてある『幼なじみの女性』って、あんたのことでしょ?
この『藤堂隆道』とかいう男のこと、よく私たちに話してたもんねえ。」
夕美:「…………。」
夕美の友人:「それにしても、私、夕美のこと見直しちゃった。
男と遊びまわってるだけと思ってたら、こんなことまでやっるんだもん。」
夕美:「藤堂君、……わかったわよ。今日はまだ無理だけど、
明日になったら許してあげる。……願わくば……。」
夕美の友人:「……夕美?どうしたのよ?本文も読んでないのに
目なんか潤ませちゃって。」
夕美:「う……うん……。」
コメント:実際、「加奈の日記」には夕美のことは全く書いてないはず
なのですが、夕美が「私のことも……ちょっと出てたね」とか
言っていたので……。あと、一応「香奈のお見舞いのノート」の真相での
加奈の文章は「序文」のつもりです。
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