蛙の親は蛙(隆道出生&「加奈」の真相・ネタバレ・あほ・すみません……)(2/1 23:18)↑
はっきり言って、その一言は『俺』の一生を変えた。
女性:「あの……、子供、できちゃったみたい……。」
『俺』:「え!?」
まさに青天の霹靂だった。『俺』は遊びで付き合っていた女性をはらませてしまったのだ。
ちなみに当時はまだエイズ問題もなかったから、ゴムもそんなに奨励されていない。
無論、ピルなど市販されていない。
……と、言い訳をしても仕方が無い。避妊に失敗したのは事実なんだから。
女性:「あの……、できてしまったものは仕方ありませんから、この際……。」
『俺』:「ま、まあ、そうだな。それに、おろすのは『子供』が可哀相だ……。」
……こうして、『俺』の夢の独身貴族生活は終わった。
その後、とにかく『俺』は女性を両親に紹介し、そして、『俺』は女性の両親に挨拶に行った。
それにしても、既にハラボテの女性を紹介する時くらい『大騒ぎ』なことは無かったが……
妹:「兄さん!子供ができちゃったって、本当!?」
『俺』:「あ、ああ、我が妹よ……(^^;」
妹:「あーあ、何やってんのよ……。」
……当時十五くらいだった妹にまで、呆れられてしまった。
……余談だが、もしかしたら、当時妻は複数の男を相手にしていて、
一番生活力のありそうな男を選んだだけなのかもしれない。
つまり、「息子は実は『俺』の実子ではない可能性がある」のだが、
妹の「あの子、兄さんに似てきたわね、特に目元が」という言葉で内心ほっとしている。
妹のリップサービスなのかもしれないが……。
(閑話休題)
そして、それから数年後。
不本意な結婚生活(しかもこぶ付き)を強いられた『俺』は、日夜労働に励んでいた。
そんな『俺』の唯一の楽しみは、仕事帰りに一杯ひっかけることだった。
友人:「あ、また会いましたね。」
『俺』:「ああ、君か。」
飲み屋の常連になると、自然、「飲み屋での友人」もできる。
それも、お互い酒が入っていて本音を言い合うことができるから、
かえって意気投合しやすくなる。
そして、そのうち、友人は『俺』に告白した。
友人:「あんな子供……、もうけるべきじゃなかった。」
『俺』:「え?……それ、どういうことだよ?……大切な子供を……。
よかったら俺に話してみろよ。」
友人:「あ、ああ、実はな……。」
……友人の話では、彼には先天的に腎臓に異常のある娘がいるということだった。
それも、既に奥さんも亡くなっていて、まともに世話ができないのだという。
「酔って気も大きくなっていた『俺』」は、当然のように……。
妻:「……当然ですって?何で私が他人様の子供に乳あげなきゃならないの?
しかも、うちには手のかかる男の子がいるっていうのに……。」
『俺』:「し、仕方が無いだろ!?そんな話聞かされたら……。」
妻:「もう……。」
そして、またそれから数年後……。
既に「他人」ではなくなっていた『俺』と友人は、
毎日のように仕事帰りに一緒に飲んでいた。
友人:「俺、もうすぐ死ぬかもしれない……。」
『俺』:「え!?お、お前、何言ってるんだよ!」
友人:「それで、君に頼みがある。」
『俺』:「な……、何だよ?」
友人:「それは……。」
そのとき『俺』はいつもより酔っていて、実はそれから先のことは覚えていない……。
それから数日後。
妻:「あ、あなた!役所から連絡があったんだけど、
あの子をうちの養女にしたって本当なの!?」
『俺』:「な、なにいーっ!?」
『俺』は役所に直行した。しかし……
職員:「はい、確かに数日前に届けを受理しています。
施設に送られる予定だった女の子が……。」
……見ると、間違いなく役所の届けに『俺』の印鑑が押されていた。
『俺』は友人を訪ねた。しかし、既に危篤状態になっていた友人は、
その数日後安心したかのように永遠の眠りについてしまい……、
『俺』は本格的にその娘を養育することになってしまった。
それにしても、病弱な娘を養女にして苦労するのは仕方が無いとしても……
妹:「兄さん!今度は人様の子供貰っちゃったって、本当!?」
『俺』:「あ、ああ、我が妹よ……(^^;」
妹:「あーあ、また何やってんのよ……。」
……当時二十歳くらいだった妹にまで、また呆れられてしまった。
いや、それだけならまだいいが……
妻:「わかりました。私、もうあなたのすることに口出ししません。
これからはあなたのご自由になさってください。
でも、子供には罪はありませんから、私もあの子を自分の子供同様に扱います。
その代わり、経済的に行き詰まった時には……。」
妹:「私、兄さんとは違うタイプの人と結婚しよ。」
『俺』:「くそ……!(泣)」
……そういうことがあって、『俺』は息子に
「(『俺』のように予想外の展開にも負けない)強い男になりなさい」と言った。
しかし、当然『真実』(こんな『恥かしい話』)までは息子や娘に言えるはずも無く、
父の威厳を保つため、『俺』は今日まで黙っていたのだ。
コメント:「家族で」の場面の夕美と両親の会話から想像してみました。
隆道、お前に振られた夕美は冷たいよ(「コンパ」の辺り・EDネタバレ・世紀末的あほ・すみません……)(2/3 23:22)↑
部長:「それでは、麗しきご婦人方、どうぞ!」
ご婦人方:「おじゃましまーす!」
部長の合図とともに隣の部屋からかしましい「ご婦人方」が入ってきた。
この「演出」が今夜のコンパの秘密だったらしい。
女性:「ねえ、新人君って誰?私、新人君の隣がいい!」
部長:「おお、出たな?美紀子お姉様の新人食い!」
美紀子:「今年は粒が揃ってないわね。……ん、まあまあかな。」
「美紀子お姉様」はそのうち俺を見つけ、強引に隣に座ってきた。
美紀子:「君、名前は?」
隆道:「……藤堂です。」
夕美:「……え?藤堂君!?」
俺の目の前に、鹿島がいた……。
……それから、俺は鹿島とビールを飲んでいた。
美紀子お姉様は「私、暗い男ってきらーい」とか言って
向こうに行ってしまったから、二人っきりで飲んでいるようなものだった。
そして、そのうち……。
夕美:「藤堂君、酔ってる。……少し風に当ろうか?」
隆道:「あ、ああ……。」
夕美:「それじゃ、お先失礼します。」
部長:「おお!頑張れよ!!」
夕美:「藤堂君、大丈夫?」
隆道:「あ、ああ……。」
既に意識の朦朧とした俺は、鹿島に抱えられて、店から出た……。
……。
…………。
………………。
……………………。
隆道:「……ん?」
シャー!
……シャワーの音が聞こえる。見覚えの無い天井が見える。
ここは……?
がちゃ。
?:「……目、覚めた……?」
隆道:「か、鹿島……?」
?:「……『新人君』。」
隆道:「へ!?」
な、何故「美紀子お姉様」が……!?
美紀子:「私たち、ホテルにいるの。お姉さんと一緒に楽しみましょ?」
その瞬間、俺の酔いは一気に覚めた!
隆道:「え、遠慮しときます!……あれ!?」
しかし!俺の手足はベッドに縛り付けられていた……。
美紀子:「『新人食い』の異名も伊達じゃないでしょ?」
隆道:「あ、あの……。」
美紀子:「ほら、君のココ、こんなに元気(はぁと)」
隆道:「うわあああああぁぁぁぁぁ!!」
こうして、俺の「純潔」は奪われた……。
……。
…………。
………………。
……………………。
その後、何となく「違和感」があり、そのうち「痛み」を伴うようになった。
俺は意を決して病院に行った。そして……
医師:「君、検査の結果だが……。」
…………。
隆道:「えーっ!?」
……貰ってしまった、『淋』ちゃん……。
カァ。
……遠くで鳥の鳴き声が聞こえた……。
夕美:「あーあ、後先考えずにヤッちゃうから……。」
隆道:「くそ……!(泣)」
……鹿島は「共犯」に違いなかった。病院から出てきた俺と「偶然」会ったのだ。
いや、そんなことより……
加奈:「お兄ちゃん、ちょっと聞いたんだけど……、何か『変な病気』になっちゃったって、本当?」
隆道:「あ……、ああ。」
加奈:「あの……、もうお見舞いに来なくていいよ、……『気持ち悪い』から。」
ガーン!!
……とにかく、加奈の「あと半年」どころではなくなってしまった。
とっとと完治させて、腎移植成功後加奈が退院するまでには、
あるいは加奈を海に連れて行くまでには、「信頼」を取り戻さなければ……(泣)
コメント:(「平然とエスケープ」ではなく)「人形を捨てる」、「倒れるにまかせた」、
「ボタンをあげない」を全て選択したルートと思って下さい……(^^;
コンパネタというか、酒が出てくるSSが多いのも、僕のシナリオの特徴です(笑)
ある三面記事より(活発ルート・ネタバレ・ほのぼの・叔父SS)(2/4 23:32)↑
コメント:「香奈のお見舞いのノート」の真相とやってること同じですけど、
あくまで活発ルートの話です(^^;
あと、医学的なツッコミもいいです(^^;
叔母須摩子の葬儀から数週間後、ある男性が加奈を見舞った。……叔父、である。
須摩子の葬儀の最中「加奈が病院に運ばれた」という連絡を受けて、
自分の娘に「香奈」という名前を付けるきっかけとなった妻の姪に会いたくなったのだ。
無論、叔父は「加奈が妻須摩子とは血の繋がらない姪である」ことは知っている(と思います(^^;)
コンコン。
がさがさ……。
いつものように片づけてから、加奈は返事する。
加奈:「どうぞ。」
がちゃ。
叔父:「加奈くん、こんにちは。」
加奈:「……え?」
加奈にとって見たことも無い男性だった。
加奈:「あの……。」
叔父:「会うのは初めてだったかな。
私は霧原。須摩子の……いや、君のお父さんの妹のだんなだよ。」
加奈:「……(こく)」
そう言われてもピンとこないのが、正直なところだ。
とりあえず、叔父は持ってきた花束を花瓶に生けてやる。
妻の須摩子と娘の香奈を見舞っていた叔父にとってはいつもの動作だった。
いくらか雰囲気は和み、叔父から話し掛けた。
他愛無い世間話のあと……
叔父:「君は内臓に少し障害があるそうだが、
実は、私の娘……つまり君の従姉妹もそうなのだ。」
加奈:「…………。」
……正直言って、そういう「暗い」話は好きではない。
しかし、叔父は話し続ける。
叔父:「娘は先天性の肝臓障害で、普通に治療していたのでは完治しない。だから、
もしものときは、私の肝臓の一部を提供する、つまり『生体肝移植』を試みるつもりだ。」
加奈:「せいたいかんいしょく……?」
叔父:「ああ。今はまだ一般的ではない治療法だが、
……しかし、いつかきっとやってもらうつもりだ。
そうしなければ、娘は間違いなく……。」
叔父は表現を変えた。
叔父:「……正直言って、私はまだ娘を須摩子のもとにやる気はない。
須摩子には悪いがな。」
加奈:「…………。」
叔父:「しかし、実は生体肝移植が完璧に成功する可能性は少ないんだが……。」
加奈:「それじゃ、もし失敗したら……。」
叔父はいつもの温和な表情のまま、言った。
叔父:「それが『子の親』というものだよ。」
加奈:「……え?」
加奈はきょとんとしている。
叔父:「そ、そうだな……、そう、程度の差こそあれ、
同じような状況の君にも、どんなことがあっても
生きる希望を持っていてほしいから……だな。」
加奈:「……(こく)」
それから、加奈と叔父は香奈のことで談笑し、そのまま別れた。
その後、叔父の意志を知った両親は、
自分たちが娘の加奈のドナーになれるか検査を依頼したが、
……やはり「血の繋がりが無い」ということで合わなかった。
…………。
それから数年後、ある出来事が新聞の三面に掲載された。
『生体肝移植成功する〜レシピエント、ドナー、ともに経過は順調』
恐らくプライバシー保護のため記事自体も小さく、
内容もあまり詳しいことは書かれていなかった。
そして、この『事実』は加奈と隆道には知らされなかった。
紛れも無く、二人に「隆道が加奈のドナーになれない本当の理由」を
知られたくなかったのだ。
しかし加奈は、それが叔父と香奈のことであると知っていた。
元気になった香奈が未だ病気の治らない従姉妹の加奈に励ましの手紙を送ったからだ。
そして、以来、その手紙は加奈が生きる希望を持ち続ける原動力となった。
コメント:しまった!香奈ちゃんの肝臓障害、生体肝移植じゃたぶん治らないかも……(^^;
という訳で、活発ルートの香奈の肝臓障害は「生体肝移植で治る肝臓障害」ということにしておいてください(^^;
ところで、男→女の生体肝移植って、OKでした?(実は全然知らない(^^;)
司書教諭・藤堂隆道(ED5,6後日談・ほのぼの)(2/6 13:13)↑
それから数年後、俺は念願の職業に就いた。
……「双葉学園高校の司書教諭」だ。
俺は「目標」に近づきつつあった。
そのためには、正直言ってもともとそれほど賢くない俺はかなりの努力を要した。
それまで、大学の友人に付き合いの悪さ(合コンを途中抜けするようなこと)を指摘されようが、
……俺はどうしても「目標」を実現させたかったのだ。
…………。
そして司書教諭の仕事に慣れた頃、俺は校長に相談した。
隆道:「校長、実は相談があるのですが……。」
校長:「何だね?」
…………。
校長:「……わかった。そういうことなら次の会議の議題にしよう。」
隆道:「はい、ありがとうございます!」
校長:「礼を言うならその案が可決してからにしてくれたまえ。
……無論、私は賛成するつもりだが。」
隆道:「あ、……は、はい!」
…………。
その数日後、図書室の一角の本棚に膨大の量の寄贈本
……例の『命を見つめて』を筆頭とする加奈の蔵書……
が並べられ、その一角は『藤堂文庫』と名付けられた。
そして俺は、その本棚の一番上に飾られた、
「あの日撮影した写真」に向かって改めて言ってやった。
隆道:「……入学おめでとう、加奈!」
コメント:
一応、「あの日撮影した写真」というのは「夕美に見つかった写真」のことです(^^;
写真は色褪せない(「司書教諭・藤堂隆道」アレンジ・ほのぼの)(2/6 23:14)↑
コメント:すみません、途中まで司書教諭・藤堂隆道と同じです(^^;
それから数年後、俺は念願の職業に就いた。
……「双葉学園高校の司書教諭」だ。
俺は「目標」に近づきつつあった。
そのためには、正直言ってもともとそれほど賢くない俺はかなりの努力を要した。
それまで、大学の友人に付き合いの悪さ(合コンを途中抜けするようなこと)を指摘されようが、
……俺はどうしても「目標」を実現させたかったのだ。
…………。
双葉学園高校の司書教諭に就任した日、俺はさっそく「仕事場」の図書室に向かった。
がらがらがら。
俺は図書室のドアを開け、ある一隅に向かった。
その一隅の本棚には膨大の量の寄贈本
……例の『命を見つめて』を筆頭とする加奈の蔵書……
が並べられ、その一隅は『藤堂文庫』と名付けられていた。
そして、その本棚の一番上に写真が飾られていた。
「今も俺の机に飾ってある写真」と同じ、「加奈の病室に飾ってあった写真」だ。
そう、双葉学園高校の図書室の一隅で、加奈はあれ以来俺を待ち続けていた。
……そして、俺はあのときのように、写真に向かって挨拶した。
隆道:「ただいま、加奈!」
コメント:隆道が司書教諭になる前に『藤堂文庫』が設立されてもいいと思いました。
と言うのも、「亡くなった『在校生』の文庫が設立された」という部分、実話ですから(^^;
「加奈の日記」の真相(ED5,6ネタバレ・「例の女性嫌い!」という人は見なくていいです(^^;)(2/8 06:00)↑
「香奈はもう助からない」という叔父の一言を聞いて、
加奈は自分の死後、自分の肝臓を香奈に提供したいと言い出した。
両親は説得出来た。……しかし、恐らく「最大の」難関があった。
織笠:「私としては、どうせ提供して下さるなら、より適合の可能性の高い
『ミスマッチゼロ』の方への提供を強く希望し、推奨しますが。」
加奈:「……(ふるふる)」
織笠:「困りましたね……。」
臓器移植コーディネーターの織笠としては極力危険な橋は渡りたくないし、
あくまで「移植成功」を目指すのが、何よりドナー、レシピエント両者の為だった。
加奈:「私、香奈ちゃんのドナーになりたい。」
織笠:「失礼ですが、何故霧原香奈さんへの移植を強く希望なさるのですか?
戸籍上の親戚であっても……。」
加奈:「……理由があればいいのですか?」
織笠:「まあ、その場合は……。私も、あくまでドナーの意思を尊重したいですし。」
加奈:「私、これから日記を書きます。それを読んで下さればわかると思います。」
織笠:「はあ……。」
織笠はしぶしぶ承知した。下手に希望者の機嫌を損ねて、
「それじゃ臓器提供しません!」などと言われたくなかったからだ。
……。
…………。
………………。
……………………。
そして、加奈の危篤直後、「加奈の日記」は織笠の手に届けられ……
(注:この部分修正しました。「加奈の死後」では間に合わない……?(^^;)
織笠:「……藤堂加奈さんの意思、わかりました。」
……あとは、臓器提供者の兄を説得するだけだった。
そして、加奈の希望どおりに肝移植は行われた。
その後、「加奈の日記」は加奈……隆道の手に戻り、
織笠は隆道に「加奈の日記」の出版を強く勧めた。
織笠の目的は「ドナーカードを広めること」ではなく、
あくまで「臓器提供希望者を増やすこと」だったからだ。
コメント:反論は直接僕まで……(^^;
『卒業写真』のあの人は……(ED1最中・ネタバレ・ほのぼの)(2/10 23:31)↑
引越しを翌日に控え、俺と加奈は「最後の夜」を迎えていた。
そして、明日加奈が行ってしまうということで、当然両親もいた。
がちゃ。
加奈:「お兄ちゃん、今、いい?」
隆道:「あ?……ああ。」
「相思相愛の兄に向かって妙なことを聞く」と思うかもしれないが、
事実、加奈の引越しの理由を知って以来、俺は極力加奈を避けていた。
……もしかしたら、早まった俺が「どんな手段を使ってでも」
加奈を引き止めてしまうのではないだろうかと思ったからだ。
加奈:「ちょっとお願いがあるんだけど、……私と写真撮ってほしいの。」
隆道:「は?」
部屋に入ってきた加奈は卒業の造花のついたままの高校の制服を着ていた。
そして、手にはどこかでわざわざ借りたであろうポラロイドカメラと、
……俺の高校の制服があった。
母さんが「知り合いに双葉に入学する子ができたらあげる」とか言っていたが、
そうそう居るものでもなく、また、捨てられずに今に至っている制服だ。
隆道:「何だ、……妙に用意がいいな。」
加奈:「う、うん……。」
「最後の夜」だから、強いて理由は聞かなかった。
とにかく、加奈の望みどおりしてやりたくて、さっそく制服を着た。
隆道:「それじゃ……。」
加奈:「うん……。」
俺はカメラのタイマーをセットし、そして、加奈の左肩に左手を置いた。
加奈は俺の腰の右側に右手を回し、自分の左手を俺の左手の上に置いた。
……あの時一緒に写真を撮った時、意識する俺に構わず加奈は妙に密着してきた。
写真を見つけた夕美に「何か、恋人同士みたいだね」と嫌みを言われたくらいだ。
しかし、今では自然に俺の方からその動作ができる……。
ジー……。
タイマーが動いていた。
加奈:「あ!お兄ちゃん!?ちょっと!!」
突然、加奈が俺を呼んだ!
隆道:「な、何だよ!?」
俺が驚いて加奈の方を向くと……
加奈:「ん……。」
隆道:(え……!?)
バシャ!
……その瞬間、シャッターが閉じた……。
…………。
……しばらくして俺の唇と加奈の唇は離れ、そのまま……
加奈:「…………。」
隆道:「…………。」
……俺と加奈は黙って見詰め合った。そして、それから約数分経ち……
加奈:「……卒業の『お祝い』、もらっちゃった……。」
隆道:「え?」
加奈は現像したての写真を見て微笑んだ。そして、泣いていた。
俺も横から写真を見た。
隆道:「あ……。」
……紛れも無く、その写真は「双葉学園高校の卒業の記念写真」だった。
そして、加奈は目の涙をぬぐい……
加奈:「お兄ちゃん!この写真、大切にするね!」
隆道:「…………。」
……その翌日、別れ際、やはり加奈は「俺の一言」で
少し涙ぐんでしまったようだが、最後には泣く俺を慰めるように……
加奈:「行ってきます!」
……と、元気に挨拶した。
…………。
その後、「別居中の加奈の日記」より
○月×日
今日、写真を見た。もう恐くない。
願わくば、明日の私が今日の私より優れた人間でありますように……。
コメント:
『卒業写真』は確か「失恋の歌」だったような気がしますが、まあ、細かい事は……(^^;
折れず曲がらず(ネタバレ・「夕美との早期仲直り」シリーズ・ほのぼの)(2/13 23:22)↑
あの日以来、俺は鹿島を徹底的に無視し続けるつもりだった。
しかし、鹿島の「執念」がそれを上回っていた。
夕美:「ねえ、藤堂君、いつまでも無視しないでよお。」
隆道:「か、鹿島!」
いきなり鹿島が俺に抱き付いてきた。
雅俊:「おお?隆道、見せ付けてくれるじゃねーか。」
隆道:「ち、違う!」
担任:「こら、鹿島さん!女子の列はこっちじゃないでしょう?」
夕美:「はーい。」
鹿島は先生に注意されてしぶしぶ俺から離れた。
ところで、俺がこんなに必死になって鹿島を遠ざけようとする理由はちゃーんとある。
それは……
担任:「みんな集まったわね?それでは、準備体操始め!」
♪ちゃーんちゃーんちゃちゃんちゃんちゃんちゃん……(ラジオ体操第一)
……そう、今は水泳の授業の真っ最中なんだ。
つまり、早い話がさっき(スクール)水着姿の鹿島が水パン姿の俺に抱き付いてきたんだ!
当然、年頃の俺の体はそれなりに反応し……
雅俊:「おいおい、何か隆道の水パンの前が膨らんできたみたいだぞ?」
隆道:「う……嘘だあ!」
……俺は否定した。しかし、さっきの光景を頭の中で反芻していた俺は
「本能」を押さえることがついにできず……
♪……ちゃん、ちゃん、ちゃーん(終わり)
……た、助かった……。
担任:「今回は今年の最後の水泳の授業なので、残り時間は自由練習にしましょう!」
隆道:「へ!?」
全員:「やったー!」
俺は正直言って嬉しくなかった。むしろすぐにでも逃げ出したい気分だった。
しかしここはプールの中。しかも授業の真っ最中だ。
夕美:「ね〜え、とうどうく〜ん。」
勝ち誇ったように、「猫科の瞳をした女子」は「猫なで声」をあげながら……
隆道:「か、鹿島!く、くっつくな!」
夕美:「いーじゃない。プールの中だから、誰も見えないよ。」
雅俊:「げへへへ……。」
隆道:「見えてるって……(泣)」
……残り数十分、果たして俺は「理性」を保っていられるだろうか……。
コメント:実際、僕の小学校では水泳の授業は男女一緒でした。
それはともかく、復帰第一作目は「やっぱり」夕美しかないか……。
コメント:逆に言うと、高校卒業のときの「謝るなら許してもらいたくて」という言葉から
「夕美のほうが隆道から遠ざかっていた」と考えられます。
夏祭りの偶然の出会いで夕美がおろおろした態度をとっていたことから考えても。
チケット二枚の旅(ネタバレ・森事件直後・夕美SS・ほのぼの)(2/14 02:20)↑
夕美:「あ、藤堂くーん。」
隆道:「うっせーよ!ついてくんな!」
鹿島の腕を強引に振り払う。何かがひらひらと落ちた。
一瞥すると、植物園の無料チケットだった。それも二枚。
夕美:「あ……。」
はじめて鹿島の表情が曇る。
俺は……
1.無視した。
2.二枚拾ってやった。
3.一枚だけ拾った。
『2.を選択』
正直言って、「男子が女子をいじめる」という行為自体は俺は好きではなかった。
だから、一応拾ってやることにした。
隆道:「……ほらよ。」
夕美:「藤堂君、……それ、二枚ともあげる。」
隆道:「え?」
意外な言葉だった。
夕美:「あの、先生は『山で怪我をした』としか言わなかったけど、
本当はハイキングの最中に妹を守って蜂に刺されたんだってね、……父さんから聞いたの。」
隆道:「あ……、ああ。」
夕美:「だから、今度は『蜂の心配のない植物園で妹とゆっくり森林浴を楽しんでこれば』と思って。」
隆道:「…………。」
夕美:「これでこの前のこと許してもらえるとは思わないけど……、
『ジューヨーカイギ』ってそれだけ、それじゃ。」
鹿島はそれだけ言うと、教室に戻っていった。
その鹿島の後ろ姿は、何故か寂しそうだった。
『3.を選択』
……何故か、一枚だけ拾った。
隆道:「鹿島、これが最後のチャンスだからな。」
夕美:「え?」
鹿島は意外そうな顔をした。
夕美:「う、うん、それじゃ……。」
俺を散々馬鹿にした鹿島に、俺は何故か「デート」の約束をしていた。
単なる気まぐれなのか、それとも、
鹿島の仕種があの加奈に似ていたからなのか……。
コメント:あくまで、当時隆道が夕美と仲直りする気が少しでもあれば……の話です。
「続き」は皆さんの想像にお任せします。
夕美との蜜月(ネタバレ・シリアス・隆道の葛藤)(2/15 23:20)↑
コメント:「夕美ちゃん人形せくしー版を貰ったルート」と思って下さい。
その日も俺は夕美と遊園地に来ていた。もちろん「デート」しに来たのだ。
俺が夕美とデートで遊園地に来て以来、いつのまにか「デート」と言えば
「食事−遊園地−ホテル」がお決まりのパターンになっていた。
……ただし、「ホテル」は俺の気分で省略されることもある。
普通なら、雑誌とかで新しいデートコースを研究するなりして
恋人に嫌われないように努力するのだが、
今の俺は正直言って「あと半年」と宣告された加奈のことで頭がいっぱいで、
そんなことを考えている余裕も無く……、
いや、それ以上に、こんなワンパターンなデートに不満一つ漏らさない夕美も、
今時の女子大生にしては大したものだと思う。
本当に、夕美は今の俺には出来すぎた彼女だ。
夕美:「それじゃさ、次はジェットコースター乗ろうよ。」
隆道:「あ……、ああ。」
夕美:「うふふ。」
こんな仏頂面で無愛想でしゃれたデートもできない大学生と付き合って、
夕美は何が嬉しいのだろうか。
それより、残り半年の加奈との時間を貴重に思いながらも、夕美と別れようとせず
こうして夕美とデートまでしている俺の本心はいったい何なのか……?
隆道:「あ、あのさ、夕美。」
夕美:「え?なあに?」
隆道:「い、いや、何でもない。」
……俺は考えたことがある。
この際夕美に加奈のことを全て話したら、夕美はどう反応するだろうか。
恐らく、加奈のことを「かわいそうだ」と同情してくれるだろう。
しかし、夕美が加奈を見舞うようになれば、間違いなく夕美は俺のようになる。
夕美のそんな悲しい表情を見たとき、はたして俺は喜ぶのだろうか……?
そして、もし、夕美がそんな悲しい表情を加奈に見せたとき、加奈は何を考えるか……。
もしかしたら、俺は「夕美にだけは悲しい顔をしてほしくない」
とでも思っているのか……?
さらに、「夕美が加奈を見て悲しい顔をする様子を加奈に見せたくない」とも……。
夕美:「ところでさ、今日は……行く?」
隆道:「ああ、行く。」
夕美:「そう、よかった。」
……俺には常に重圧がかかっていた。
明日、また俺は加奈の見舞いに行く。
明日も、加奈に真実を知られることなく
見舞いを無事終わらせることができるだろうか……?
…………。
夕美:「それじゃ、またね。」
隆道:「ああ。」
……こうして、俺と夕美は、普通の恋人同様次に会う約束をして別れる。
加奈のことを詳しく知らない夕美と過ごす時間は、
加奈に真実を知られないように見舞い続ける俺にとって、
「心の安らぎ」という意味で何よりも貴重なものなのかもしれない。
コメント:「加奈と夕美が仲良くなる」という前提で、
「もし隆道と夕美が早期に仲直りし、あと半年と宣告された加奈を二人で見舞うようになったら」
あるいは「もし隆道が夕美に加奈について全て話していたら」
あるいはこれとは別に「隆道と夕美の関係が『行きずり』で終わっていたら」
という仮定SSを考えたのですが、どうも良い結果になりそうもなかったので……。
浪漫逃避行(ED1後日談・ほのぼの)(3/24 21:14)↑
☆玉砕
加奈の引越しから暫く経ち、加奈は久しぶりに我が家に帰ってきた。
そして、俺は両親に「一世一代の告白」をし……
隆道:「……何だって?」
父:「聞こえなかったのか?『冗談もいいかげんにしろ!』……と言ったんだ。」
……見事に玉砕した。
隆道:「冗談じゃないんだ!俺達は本気で……。」
父:「何!?」
加奈:「でも、私とお兄ちゃんは血は繋がってないんでしょ?だったら……。」
母:「あなたたちは、血は繋がっていなくても『兄妹』なの。
私たちは今まであなたを実子同様に扱ってきたし、これからもそうするつもりよ。
……もちろん、隆道も私たちと同じ気持ちだと思っていたわ。」
加奈:「え?」
加奈は、すがるように父の方を見た。
しかし、腎移植の件以来加奈に甘くなっている父でさえ……
父:「いくら加奈の望みでも、これだけは譲れない。
……お前達は『兄妹』なんだから。」
……結局、反対した。
そして、その日の夜。
コンコン。
加奈:「お兄ちゃん、今、いい?」
隆道:「ああ。」
加奈:「……反対、されちゃったね。私達の結婚。」
隆道:「賛成してくれると思ったのに……、考えが甘かったな。」
加奈:「…………。」
加奈はじっと俺を見ている。
俺は……
1.結婚をあきらめる。
2.「本屋の老夫婦」に助けを求める。
3.「最後の手段」に……。
『3.を選択』
先程の父との言い争いで冷静さを失っていた俺は、加奈に言った。
隆道:「加奈、……俺と一緒に付いてきてくれるか?」
加奈:「……(こく)」
俺と加奈は「一心同体」だった。だから……
加奈:「実は、もう支度出来てるの。」
隆道:「……そうか。」
……俺と加奈は、両親の寝静まったのを見計らって家を出た……。
☆見知らぬ土地にて
真夜中、俺と加奈は「沼津」に着いた。
本当はもう少し遠くに(出来れば海外にでも)行きたかったのだが、
それ以上に、腎移植手術後の加奈をなるべく早く休ませる必要があった。
隆道:「加奈、気分はどうだ?」
加奈:「うん、平気。」
そう応えて、加奈は横断歩道を渡ろうとした。
「加奈の体調は常に『平気』以上でなければならない」
そう俺が考えていると……
キキーッ!
加奈:「きゃ!」
隆道:「え!?」
……横断歩道を渡ろうとしていた加奈の直前に、自動車が急停車したのだ!
男性:「す、すみません!」
隆道:「気を付けろ!馬鹿野郎!!」
男性:「すみません、ぼうっとしていたもので……。」
冷静に考えれば、明らかに「ぼうっとして赤信号を渡ろうとした加奈」と
「ぼうっと考え事をしていてそれに気が付かなかった俺」に非があった。
しかし、俺は当然のように運転手のほうを怒鳴っていた。
そして、急な出来事に固まっている加奈に近寄る。
隆道:「加奈、大丈夫か?」
加奈:「……(こく)」
隆道:「畜生!あの運転手……。」
加奈:「ううん、お兄ちゃん。悪いのは私の方みたいだから。」
隆道:「え?」
健気にも加奈はそう言って俺をなだめようとする。
……この時俺は、父と言い争って以来少し気が立っていて冷静さを失っていたことを
はっきり自覚した。
そうこうしていると、例の運転手が車を降りて来る。
男性:「本当に申し訳ありませんでした。」
隆道:「いえ、よくよく考えてみると、悪いのは俺達のほうみたいで……。」
男性:「お怪我はありませんか?お嬢さん。」
加奈:「あ、はい、……いえ、ありません。」
礼儀正しい男性だった。
「礼儀正しくない」のは俺のほうだった。
男性:「……ところでおたくたち、こんな夜中にどうしていらっしゃるんですか?
『帰宅する途中』でしたら、送りましょうか?」
隆道:「え?」
加奈:「あ……。」
つん。
加奈が俺の背中を突ついた。
そして申し合わせたように、俺達は……
隆道:「え、えっと、俺達『兄妹』なんですけど……。」
男性:「ええ、それで?」
加奈:「実は、『私の』両親が幼い頃亡くなってしまって……。」
男性:「え!?そうなんですか?」
隆道:「『訳』あって、家にいられなくなってしまったんです。」
男性:「……ほう、それはお困りでしょう。」
加奈:「はい……。」
男性は、暫く考えて、俺達に言った。
男性:「よろしければ、今夜一晩うちに泊まりませんか?
これからどうするにも、今日はもう遅いですし。」
隆道:「でも……。」
男性:「先程のお詫びも兼ねて、『困った時はお互い様』ですよ。」
隆道:「はい、ありがとうございます。」
……『事情』を説明し、とりあえず、見知らぬ土地で一宿を得ることが出来た。
正確に言えばやはり嘘をついていることになるので少し良心に痛みを覚えたが、
加奈の為には仕方が無い……。
☆二人の門出
男性の自動車に乗って十数分後家に着き、客間に通される。
俺と加奈は沼津の親切な男性の家に一泊することが出来るのだが……
男性:「……あいにく、お客さん用の布団は一つしかないのですが。」
加奈:「大丈夫です。私、お兄ちゃんと一緒に……。」
隆道:(え!?)
俺は加奈の言葉を遮るように……。
隆道:「一緒の部屋で眠れますから!」
男性:「そうですか。それでは、おやすみなさい。」
バタン。
隆道:「……ふう。」
安堵の溜め息をついて、俺は加奈のほうを向くと……
加奈:「あの、私、思い出したんだけど……。」
加奈は何か言いにくそうな様子をしている。
隆道:「どうした?加奈。」
加奈:「実は明日、定期検診で病院に行かなければならないの……。」
隆道:「へ!?」
加奈:「大宮の病院に。だから……。」
……ろくに計画も立てず、感情に任せて家を飛び出した者に対する
当然の結果だった……。
…………。
そして、翌朝。
隆道:「それでは、お世話になりました。」
男性:「どういたしまして。……駅は近くにありますから。」
見ると、男性の家は、沼津駅から二駅行った所の近くだった。
俺達は……
二人:「ありがとうございました。」
……と、その家を後にした。
……。
…………。
………………。
……………………。
それから一年後……
隆道:「確か、この家だったな。」
加奈:「ええ。」
……俺は、『妻』の加奈と一緒に再び「沼津」に来ていた。
そう、結局、両親は折れた。……というより、たった一晩の「駆け落ち」で
俺達の真剣さを改めて(と言うかやっと)知ったらしい。しかし、あくまで……
父:『いいか?隆道。これはあくまで加奈の意志を尊重してのことだ。』
母:『加奈が本当にこの方が幸せだと思っているのなら、私達はもう止めません。』
……ということなのだが……。
隆道:「それにしても、俺、本当に焦っていたんだな。」
加奈:「ふふふ、そうね。」
あの時俺は「親切な沼津の男性」の名前も住所を聞いていず……
いや、自己紹介すらろくにしていなかった。
隆道:「でも、場所は覚えているんだな。」
加奈:「駅の近くだもん、覚えてるよ。」
隆道:「そうだな、それじゃ……。」
ピンポーン。
…………。
がらがらがら。
男性:「はい?……どなたですか?」
隆道:「あ、突然押しかけてしまって申し訳ありません。
私、一年ほど前にお世話になった藤堂と申します。
今日はその時のお礼に、改めてお伺いいたしました。」
そして……
男性:「あれ?おたくたち……確か、あの時の『ご兄妹』ですか?」
……「藤堂夫婦の最初の訪問」という栄誉にあずかった男性は、俺達にそう質問した。
(終わり)
隆道のアルバイト日記(ED5,6最中・ED1,5,6ネタバレ・「ほのぼの」を作るつもりでした)(4/1 00:34)↑
夏、俺は『香奈を遊園地に連れて行く』という約束を果たすため、引越しのアルバイトを再開する。
以前は加奈の為にアルバイトをし、そして今は香奈の為にアルバイトをする。
現場の人:「よお、藤堂君!久しぶり。」
隆道:「あ、どうも。」
現場の人が俺のことを覚えていてくれたことは、何となく嬉しい。
そして、俺達を乗せたトラックはある家の前で止まる。
現場の人:「ちわーす、引越し屋の者です。」
少女:「はい、ご苦労様です。」
そして、(恐らく)十代の少女が出迎え……
少女:「お兄ちゃーん、引越し屋さん、来たよー。」
隆道:「え?」
男性:「ああ、わかってる!」
……俺の背後で声が聞こえた。
隆道:「あ……。」
男性:「すみません。荷物、これだけですので。」
現場の人:「はい、わかりました。……藤堂君、何ぼさっとしてる?久しぶりなのはわかるが……。」
隆道:「あ、はい!」
俺は指示どおりに動き、しばらくすると荷物はトラックに積まれる。
現場の人:「これで終わりだな。今日はあのお客さんも一緒に運ぶことになってるから。」
隆道:「え?」
現場の人:「……男の方だ。残念だがな。」
隆道:「は?はあ。」
何が『残念』なのか、俺は曖昧に返事する。
現場の人:「それにしても遅いな。もう準備は出来たってのに。……藤堂君、ちょっと呼んでこい。」
隆道:「はい。」
そして俺はトラックの陰に二人を見つけ、……俺は何故か黙って二人の様子を見ていた。
男性:「俺がいなくなっても一人でしっかりやるんだぞ。」
少女:「うん、お兄ちゃん。」
ぎゅ。
男性:「こうやってやれるのも、今日が最後だからな。」
少女:「うん。」
……あの時以来、俺はこれだけは考えずにいた。
「もし、加奈が生きていたら」
それを考えていたら、俺は先に進めないのだ。
少女:「それじゃ、行ってらっしゃい。」
男性:「ああ。」
しばらくして二人は離れ、俺は何事も無かったように二人に近寄り……
隆道:「あの、もう出発の準備できましたので、よろしいでしょうか?」
男性:「あ、すみません、お待たせして。」
隆道:「いえ、かまいません。」
……男性をトラックの方に連れて行く。
現場の人:「……おい、藤堂君、何目を赤くしてるんだ?」
隆道:「いえ、……ちょっと目にごみが入りまして。」
現場の人:「そっか。……それじゃ、行くぞ。」
隆道:「はい!」
そして、俺達三人を乗せたトラックは、目的地に向かって走り出した。
コメント:あまり推敲せずに作りました。すみません。
第二ボタンを君に……(「高校卒業」の辺り・ほのぼの)(4/7 23:18)↑
コメント:時期外れですが、昨日思い付いたネタですので……(笑)
(1)夕美にボタンをあげた場合
学校からの帰り道……
加奈:「…………。」
……加奈はじっと俺を見ている。
隆道:「な、何だよ?」
加奈:「お兄ちゃん、制服のボタン、無くなってる。」
隆道:「え?……あ、ああ。」
加奈は何故か鋭い。もしかしたら、それだけ俺のことを
「観察」しているのかもしれないが……。
隆道:「実は、卒業式の後、女子にあげたんだ。」
加奈:「そ、そう……。」
加奈はそれきり黙ってしまう。
第二ボタンの意味くらい、読書家の加奈なら多分知っているはずだ。
だから……
隆道:「でもその女子とは今日でさよならだし、第二ボタンも『どうしても』って
泣き付かれたから仕方なくあげたんだけどな。」
……と、言ってやる。
加奈:「……私、お兄ちゃんと一緒に高校行きたかったな。そうすれば……。」
隆道:「……え?」
そう言うと、加奈は自分の腕を俺の腕に絡め……
加奈:「でも……よかった。」
……と、微笑んだ。
(2)夕美にボタンをあげなかった場合
学校からの帰り道……
加奈:「…………。」
……加奈はじっと俺を見ている。
隆道:「な、何だよ?」
加奈:「お兄ちゃん、第二ボタン、誰にもあげなかったの?」
隆道:「え?」
加奈:「だって、美樹さんから借りた恋愛小説には、よく……。」
隆道:「あ、ああ。」
加奈の言いたいことはわかった。だから……
隆道:「……結局、恋愛には関係無い高校三年間だったんだ。」
加奈:「え?」
隆道:「加奈にこれやるよ。双葉の合格祝いのついでに。
……もてない兄貴の第二ボタンだけどな。」
俺はボタンを引き千切り、加奈に差し出す。
加奈:「ありがとう……。」
加奈はそれを両手で受け取り……
加奈:「これ、大切にするね。」
……そして、嬉しそうに言った。
良く考えれば、普通、学制服の第二ボタンは心臓の近くにあるのだが、
……双葉学園高校の制服の第二ボタンは、『腎臓』の近くにあったんだ。
陸上部・伊藤勇太(加奈の中学時代・ほのぼの)(4/8 07:12)↑
その時、伊藤勇太は中学三年生で、担任と最後の進路相談をしていた。
担任:「君、『双葉に行く』というのは本当かね!?」
勇太:「はい。本当です。」
勇太は当然のように肯定する。
担任:「ふう……、もったいない、実にもったいない。
君のような、県大会で新記録を出した優秀な陸上選手が……。」
勇太:「先生、陸上部くらい双葉にもありますよ。」
担任:「え?……そういう問題じゃないだろ……。」
勇太:「へへへ……。」
……話はそれより二年前にさかのぼる。
そう、勇太が中学一年生だったある日のこと……
……。
…………。
………………。
……………………。
勇太:「藤堂、きびきび動けよ、中学生だろ?」
加奈:「うう……。」
……その頃は、学校にほとんど来ない加奈が珍しくて、
勇太は加奈をいじめていた。
「まだ分別もあまり無い中学生だし、
方や部活の成績が良くていい気になっている生徒、
方や病弱な生徒だからいじめが起こっても仕方が無い」
と言ってしまえばそれまでだが……
パンパンパン!
加奈:「うう……。」
……モデルガンで威嚇射撃をするのは、少しやりすぎだった。
そして、そんな光景を見かねたある三年生女子が、中に割って入る。
女子:「君、やめなさいよ!」
勇太:「え?」
女子:「男のくせに、女の子泣かせるなんて、最低!」
その女子は、まるで自分の事のように怒る。
「もしかしたら、藤堂のお姉さんなんだろうか」
勇太がそう思ったくらいだ。
勇太:「すみません、本当は悪気は無かったんです。何て言うか……。」
そして、少し間を置き……
勇太:「……『かわいさ余って』って言うんでしょうかね?こういうの。」
女子:「え?」
……あっさり言い切る勇太に、女子は唖然とする。
「『彼』が私を無視する理由も、こうだったらいいのに……」
そう思わずにはいられない女子だった。
女子:「……そういうことならなおさら。手遅れにならないうちに
今すぐ謝って仲直りしなさい。悪いことは言わないから。」
勇太:「すみません。」
女子:「こら!謝る相手が違う!」
勇太:「は、はい!」
そして、勇太は加奈に向き直り……
勇太:「ごめん、藤堂。」
加奈:「……(ふるふる!)」
……加奈は脅えた様子のまま、行ってしまった。
勇太:「あ……。」
女子:「あーあ、本格的に嫌われたみたいね、君。」
勇太:「ふう……。」
そして、その女子は勇太に言う。
女子:「君、こうなった責任、取りなさいよ?」
勇太:「え?」
女子:「あの子が許してくれるまで謝りなさい。
中学のうちにできなかったら、同じ高校に行ってでもね。」
勇太:「はあ。」
女子:「……いじめられた記憶って、案外残るものだから……。」
……ここでは余談だが、その女子は「あの『仲良し四人組』が同じ高校に行く」
という噂を聞きつけて、自分の進路を決定した……。
閑話休題。
勇太:「はい。……ところで、『先輩』は藤堂のお姉さんですか?」
女子:「え?……別にそうじゃないけど……、もしそうなったらいいわね。」
勇太:「は?」
女子:「それじゃ。」
その女子は、『猫科の瞳』をしていた……。
……。
…………。
………………。
……………………。
担任:「もう一度聞くぞ、双葉に行くんだな?」
勇太:「はい。」
担任:「やれやれ……。」
残念そうな担任と対照的に、勇太は終始にこやかな様子だった。
……優秀な陸上部員、伊藤勇太の進路はこうして決定された。
夕美の進路(「卒業」ネタ・ほのぼの)(4/8 23:10)↑
小学校卒業の日……
隆道:「くそ……。」
夕美:「…………。」
私はまだ藤堂君と仲直りできずにいた。
六年生になって違うクラスになってしまって、話がしづらくなったのも確かだけど、
「仲直りの言葉は時間が経つと言い出しにくい」ということも、強ち嘘でもない。
でも……
夕美:(中学校になれば環境も変わるし、クラスがまた一緒になった時にでも謝ればいい。)
……と、まだわりと楽観的に考えていた。
中学校卒業の日……
結局、中学三年間一度も藤堂君と同じクラスになれなかった。
夕美:(今さら謝っても、藤堂君は許してくれるだろうか。謝るなら、許してもらいたい。
……それにしても、何故藤堂君と同じクラスになれないんだろ……。)
夕美の三郷中の友人:「夕美ー、聞いたあ?藤堂君達、同じ高校行くんだって。」
夕美:「え?」
夕美の三郷中の友人:「あの子達、双葉でも『四天王参上!』なんてやるのかしらね?」
夕美:「そう……。」
夕美の三郷中の友人:「私は双葉とは違う高校に行くつもりだけど……、夕美はどうするの?」
夕美:「……私は……。」
夕美の三郷中の友人:「……ま、高校に行ったら、しっかりやりなさいね。」
夕美:「うん……。」
だから……
担任:「ええと、鹿島さんの成績は……。」
夕美:「先生。私、双葉受験します。」
担任:「……は?」
……その年の春、私は双葉学園高校に入学した。
そして、高校卒業の前……
夕美:「ああ……!」
……ついにやってしまった。藤堂君が受験した大学に、落ちてしまった。
智樹:「隆道、合格おめでとう!」
隆道:「智樹こそ!東京の国立大学だって?俺なんか逆立ちしたって受からないよ。」
雅俊:「ま、これで『四天王』もお別れ……ということか?」
育郎:「寂しいけど、一応、みんな『希望どおり』になったわけでいいんじゃないの?」
隆道:「そうだな。……でも、俺はこれであと妹さえ双葉に合格できれば、
言うことないんだけどな……。」
雅俊:「やれやれ、また加奈ちゃんの話か……。」
藤堂君は合格し、私は第二志望の青心女子大に行くことになり……
夕美:(卒業式が終わるまでに、何とか決心つけなきゃ……。)
……と、考えることしかできなくなった。
勇太、涙の勝利(ED2後日談・真面目)(4/8 23:56)↑
勇太:「それじゃ、藤堂、また見舞いに来るから。」
加奈:「……(こく)」
この日の見舞いも、一方的に勇太がしゃべっただけだった。
しかし、勇太は満足していた。あれだけ嫌っていた自分を
加奈は病室に入れてくれていたのだから。
勇太:「本当は、俺も先輩みたいに何度も見舞いに来たいんだけどな……。」
……その翌日の放課後、勇太は陸上部の練習に出る。
勇太:「キャプテン、昨日はどうも……。」
主将:「伊藤か。ま、友人の見舞いなら仕方が無いんだけどな。
……それにしても、高校に来て以来記録の方はさっぱりだな。」
勇太:「自主トレくらいやってますよ。」
主将:「それならいいんだけどな……。もしかしたら、
双葉に来たこと後悔してるんじゃないかと思って。」
勇太:「え!?」
主将:「……という噂だ。」
勇太:「はあ。」
主将:「俺は今でも期待してるけどな。元中学県大会記録保持者の復活に。」
勇太:「はい、ありがとうございます。」
この時、勇太の頭にある考えが浮かんだ。
勇太:(そうだ、こうすれば……!)
……その日以来、勇太はあまり加奈の見舞いに来なくなった。
そう、加奈の兄の隆道が、その存在を忘れるくらい……。
……。
…………。
………………。
……………………。
その数ヶ月後、県大会にて……
場内アナウンス:『一着、伊藤勇太君。双葉学園高校。記録、……。』
おおー!!!
場内からざわめきが起こった。「無名」の双葉学園高校陸上部から優勝者が出たのだ。
主将:「やったあ!」
勇太:「…………。」
主将:「伊藤!おめでとう!!」
勇太:「……はい、ありがとうございます……。」
……。
…………。
………………。
……………………。
その日の夕刻、勇太は優勝メダルを持って「加奈」の前に立った。
勇太:「俺、久しぶりに陸上の県大会で一着になったんだ。だから……というのは変かな?
俺、先輩抜きに藤堂と真剣に付き合いたいと思ってるんだけど……。」
…………。
勇太:「……畜生!何で先輩は奇跡を起こしてくれなかったんだよ!?
県大会が『こんな時期』になけりゃ、俺だって……!!」
そして勇太は、優勝メダルを持ったまま、「加奈の墓」の前で泣いた。
藤堂家の食卓(ED3最中・ほのぼの)(4/13 00:24)↑
私はこの日から、隆道君のお母さんを手伝う為に隆道君の家に来ていた。
そして、その日の夕食の支度の最中のこと。
夕美:「あの、お母さん、これちょっと塩薄くありません?」
隆道の母:「え?」
「お母さんも、またぼうっとしていたのだろうか?」
そう考えていると……
隆道の母:「いえ、鹿島さん、これがうちでは普通です。」
夕美:「え?」
私が意外そうな顔をすると、お母さんは悲しい表情をする。
隆道の母:「……加奈は慢性腎不全で苦しんでいましたし、それに、
それを支える家族が病気になるわけにもいかなかったのですから……。」
夕美:「あ……。」
壁には食品成分表が貼ってあった。
……私は以前「加奈ちゃんの退院祝い」にこの家に来たことがあったけど、
あることがあってお母さんの料理をいただくことができなかったことを思い出した。
その時も「塩分控えめの」料理がでてきたのだろうか……。
隆道の母:「それに……。」
お母さんはさらに表情を曇らせて……
隆道の母:「……加奈の為に腎臓を片方失ってしまった、息子の隆道だけは
あんな辛い思いはさせたくない……。」
夕美:「あ、あの、お母さん……。」
その時、お母さんを励ますために咄嗟に出た言葉は……
夕美:「あの、お母さん、私に料理教えてください。
私も隆道君がこれ以上辛い思いをしなくて済むように努力しますから。」
隆道の母:「え?」
夕美:「へへへ……。」
……その日、私はお母さんから「藤堂家の料理」を教わった。
これで私も、少しは「隆道君にふさわしい女」になれたかな……?
勇太のフルーツ・バスケット(真面目)(4/14 23:37)↑
勇太:「藤堂、お大事に。」
加奈:「……(こく)」
勇太:「それじゃ。」
ばたん。
……勇太の「演説会」が終わり、加奈の病室には俺と加奈と、
そして勇太の見舞いのフルーツ・バスケットが残された。
隆道:「加奈、……これ、どうする?食べるか?」
加奈:「うん、……ちょっとだけ。」
加奈は「ちょっとだけ」食べる。
加奈:「あと、お兄ちゃんが食べていいよ。」
隆道:「そ、そうか?」
加奈:「私、小食だし……。」
加奈は当然のように言う。
普通の病人なら果物とかでばんばん栄養を摂ればいいかもしれないが、
加奈の場合はそうはいかない。しかし……
隆道:「せっかくのお見舞いだから、少しづつでも加奈がもらえよ。」
加奈:「でも、そんなことしてたら、ほとんど傷んじゃうし……。」
隆道:「…………。」
加奈:「あ、お兄ちゃん、りんご剥いてあげる。」
隆道:「……あ?ああ……。」
……結局、数日後には勇太の結構高そうなフルーツ・バスケットは
ほとんどが俺の胃袋に収まってしまった。
……「あと半年」と宣告されたからと言って、
加奈の残りの人生を少しでも輝けるものにしてやりたいからと言って、
あと半年の命が確実に保証されたわけでもなく、
加奈の厳しい食事制限が無くなったわけでもないんだ……。
勇太の『はじまりのさよなら』(知的エンドネタバレ・真面目)(4/16 00:13)↑
双葉学園高校のある一年生の教室の机の上に、この日から花を生けた花瓶が飾られる。
そしてその日、特別朝礼が行われた。
校長:「あー、既に知っている諸君もいるかもしれないが……。」
そして、一年生・藤堂加奈の死が伝えられる。
ざわざわざわ……。
生徒の列からざわめきがもれた。しかし、教師は強いて制止しようとしない。
初耳の生徒には、かなりショッキングな出来事だったであろうから。
……しかし、二年生の列に、この事情についてわりと良く知っている生徒がたった一人いた。
伊藤勇太……藤堂加奈の中学の同級生。そして、恐らく加奈と同じ高校に行きたいが為に
スポーツ推薦を蹴って地元の高校に進学した男子生徒。
勇太:「…………。」
勇太は校長の話を黙って……というか冷静に聞いていた。
当然、勇太の周りでもざわめきは起こり、中には涙ぐむ女子生徒までいたが……
勇太:(『かわいそう』……か、確かにかわいそうだよな。
十代半ばで死んじゃったんだから。)
……一方、傍から見れば「冷めた様子」で、勇太は校長の話を聞いていた。
……。
…………。
………………。
……………………。
隆道との殴り合いの後、勇太は美樹の治療を受けていた。
隆道:『汚れとか純潔とか……そういうものの見方をやめろ!』
そして、勇太の頭にさっきの隆道の声が残っていた。
勇太:(確かに、……確かに俺の見方は間違っていたかもしれない。
でも、だからといって「俺を藤堂から遠ざけようとすること」が
藤堂を普通に暮らさせることになるのか……?
あくまで先輩は藤堂の『兄貴』だし、俺に対しても「加奈の兄」として
接していたじゃないか……。)
結局、隆道は勇太の「近親相姦」という言葉に対して拳で応えただけだった。
勇太:「ちっ!」
美樹:「伊藤君、痛みくらい我慢しなさい!男でしょ?」
勇太:「は、はい。」
確かに勇太は痛んだが、傷口とは別の場所だった。
美樹:「……昔から、そう、伊藤君が加奈ちゃんを見舞うようになる以前から、
隆道君と加奈ちゃんの仲の良さって、病院でも結構有名だったんだあ。」
勇太:「え?」
美樹:「あれは確か……。」
さっきの騒動を美樹も聞いていたのか、美樹は勇太に「事情」を説明した。
簡単に言えば、それは「勇太が、そして夕美が隆道と加奈の間に絶対に割り込めない理由」だった。
勇太:(何てこった。それじゃ俺が双葉に行ったのも全て無駄。
とんだピエロじゃないか。……いや、それ以上に、もし先輩と藤堂が実の兄妹
だったとしても「近親相姦」に走る可能性はあったわけで……。)
勇太:「くくく……。」
勇太は自分の愚かさを笑った。
美樹:「……伊藤君、これからどうする?私はこれから加奈ちゃんの病室に行くけど。」
頭の回転のいい勇太には、美樹の言外に「加奈を看取っていくかどうか」という質問を
汲み取ることができた。だから……
勇太:「俺、もう帰ります。」
美樹:「え?何で?……だって、あんなにいつも加奈ちゃんのお見舞いに来て……。」
勇太:「これ以上、藤堂と先輩の邪魔できませんから。へへへ……。」
美樹:「……え?」
勇太:「それでは、お世話になりました。」
……いつものように人当たりの良い表情で、美樹にお礼を言い……
ばたん。
勇太:(先輩、藤堂の最期、しっかり看取ってくださいよ?)
……勇太はそう思いながら、「加奈が未だ生きている」病院をあとにした。
……そしてその雪の降った夜、勇太は自宅で号泣した。
「藤堂が死んで悲しいから」なのか、それとも……。
……。
…………。
………………。
……………………。
結局、勇太は加奈の死を「友人の死」として受け止めるに止まった。
一方、隆道は未だに「最愛の妹の死」から立ち直れないでいるという。
だから……
勇太:(……だから、俺は先輩に感謝しなければならないのかなあ?
俺を藤堂から遠ざけ続けた先輩を……。)
……それから数日後、ある一年生の教室の机の上の花瓶の花を見ながら、
勇太は「既に気持ちを整理し、落ち着きを取り戻した心」で
以前のように冷静に考え続けていた。
勇太の進路(知的エンド後日談・真面目)(4/18 23:32)↑
あれから、つまり加奈が死んでから一年近く経とうとしていたある秋の日、
既に高校三年生になっていた勇太は……
担任:「伊藤は進学するんだな?」
勇太:「まあ、一応。」
担任:「で、どこを受けるつもりなんだ?」
勇太:「実は、未だ決めてないんです。」
担任:「はあ?」
勇太:「へへへ……。」
担任:「伊藤……、笑い事じゃないだろう……。」
……未だ自分の進路を決めかねていた。
先生:「まあいい、次の進路指導の時までに考えて来い。」
勇太:「はい。」
がらがら。
勇太:(進路か……、どうしよっかなあ……。)
はっきり言って、今の勇太には「目標」が無かった。
勇太:(だいたい双葉に来たのも藤堂の志望校だったからだし、
陸上も結局あれ以来さっぱりだもんなあ……。)
…………。
その夜、勇太は自室の本棚を……ある本を見ていた。
それは加奈の日記を一冊の本にしたものだった。
その年の春頃に看護婦の近藤美樹から送り付けられたものだったのだが、
勇太は「そんなもの」を今まで読む気になれなかった。
勇太:「ちぇっ。暇だし、読んでやるか。」
…………。
勇太:「……え?」
そこには勇太の知らない世界が描かれていた。
……慢性腎不全のこと、週三回の透析のこと、そしてそれに伴う苦しい食事制限のこと。
そして一番決定的だったこと……つまり、慢性腎不全はいつ状況が悪化してもおかしくなく、
それは「ファン」などというものががいくらあっても仕方が無いことだったということが……。
勇太:(間単に言えば、藤堂にはあの時既に、俺が藤堂と親しくなる時間的余裕も
無かったってことか。だから、先輩は自分で……。
ちぇっ、今度生まれ変わったら俺、藤堂をいじめるのよそう。)
それ以来、勇太は腎不全・透析についての本を読み漁った。
頭の回転の良い勇太がそれらの本の内容を理解するのにそれほど時間はかからなかった。
結局、「純粋」な勇太が達した結論は……
勇太:(進路か。……医者でも目指すか。)
……という、「単純なもの」だった。
…………。
そして、次の進路指導にて……
勇太:「先生。俺、医学部進学したいんすけど……。」
担任:「はあ?……伊藤、突然何言ってるんだ?」
勇太:「へへへ……。」
……伊藤勇太の人知れぬ努力は、これから始まる。
コメント:一応、特別知的エンド「見果てぬ夢」の補完SSです。
勇太SSを作るのも、これで最後だと思いますけど……(笑)