隆、ガングロ退治する(三郷仕事人・おやじギャグ)(4/19 23:15)↑
その時、隆(たか)は偶然にも妹のお加奈がガングロ三人にいじめられる場面に出くわした。
その場は模型銃の勇(ゆう)の活躍で何とか収まったように見えたが……。
お加奈:「……お兄ちゃん、この三郷に『晴らせぬ恨みを晴らしてくれる人』がいると
聞いたことがあります。どうか、私の恨みを……。」
隆:「お加奈ーっ!……くそっ!!」
そして、すぐさま隆は「何でもヤ」に向かう。
がらっ。
隆:「夕美はいるか!?」
夕美:「おや、どうしたんだい?八丁堀の昼行灯……じゃなかった、
三郷の朴念仁。血相変えて。」
隆:「……『仕事』だ。仲間を集めてくれ。」
この男、隆は表向きは「三郷の朴念仁」と呼ばれていたが、
裏には「仕事人・花輪の隆」という顔があった。
夕美:「え?……仕事はいいけど、金はあるのかい?」
隆:「金ならある。」
隆はクールに応え、懐からお金を取り出す。
それは、お加奈の為に隆が貯めた小遣いだった。
♪心に傷を、隠し持ってる、……
夕美:「あんた、そんな大金……。」
隆:「お加奈の恨みだ。これで足りるだろ?」
夕美:「……お加奈ちゃんの?……あんた、よっぽどお加奈ちゃんのことが……。」
隆:「早くしてくれ。」
夕美:「……あ、あいよ!」
少しして、隆の仲間の智(とも)と育(いく)と雅(まさ)が来る。
隆:「みんな集まったな?それじゃ、今回のターゲットは、このガングロ三人。」
夕美:「……と、模型銃の勇。」
隆:「え?」
夕美:「あたいだって、お加奈ちゃんのことが心配なんだからね?
……一部始終、見てたんだよ。」
隆:「そ、そうだったのか……。」
夕美:「それじゃ、行くよ?」
四人:「オッケー!」
……こうして、五人は決意も新たに勇の屋敷に向かう。
♪タタターン、タタータターン、……。
そして、勇の屋敷にて。
勇:「よしよし、お前達、よくやったぞ。」
勇はそう言いつつ、ガングロ三人に褒美を与えている。
勇:「それにしても、あの場に朴念仁が現れるとは……。
仕方が無い、次は……。」
♪タラター!タララララ……!
ガタッ!
勇:「……ん?」
それは夕美が立てた音だった。
勇:「何か物音がしたようだな、……お前達、見て参れ。」
ガングロ三人:「はーい、……あーあ、めんどくせーなー。」
しかして、外で待っていたものは……
雅:「へへへ、ねずみ花火だ。」
智:「メリケン玩具だ、良い音がするだろう?」
育:「三郷仕事人参上!」
ガングロ三人:「うっ……!」
……ダダダン!♪
♪タラララーララ、タラララーララ、……
隆:「……勇、邪魔するぜ。」
勇:「あ、これは先輩。どうなさったんで?」
隆:「いや、大した用じゃないんだが、さっきのお加奈のことで……。」
勇:「え?……そりゃどう……。」
ドカッ!
隆:「……俺もおかしいと思ってたんだ。お加奈がガングロ三人に絡まれて、
都合よくお前が助けに入る。……黒幕はお前だったんだな?」
勇:「う……!」
隆:「お前にはもったいないが、ウメバチソウの花輪をくれてやる。
悪党らしく、地獄の閻魔さんへの賄賂にでもするんだな……。」
勇:「うう……。」
……どさ。
これで悪は滅びた。しかし、彼ら「三郷仕事人」に休息の文字はない……。
♪たったか、たったか、たんたんたんたんたん、……
隆:「ただいま。」
お香奈:「兄ちゃん、お帰り。」
総元締め:「隆くん、今日の仕事料は?」
隆:「はあ!?」
総元締め:「正直に言わないと、『ちょっぷ』が行くわよ?」
隆:「……はい。」
隆は、何故か「総元締め」に頭が上がらない。
お香奈:「これで遊園地に行けるのじゃー!」
隆:「くっ、残った金でお加奈と海に行くつもりだったのに……。」
……ちゃんちゃん♪
♪振り向くーな、振り向くーなとー、……
キャスト
花輪の隆(三郷の朴念仁)……藤堂隆道
お加奈(隆の妹)……藤堂加奈
何でもヤる夕美……鹿島夕美
ねずみ花火の雅……下田雅俊
メリケン玩具の智……長瀬智樹
篭球の育……船津育郎
お香奈(隆の従兄妹)……霧原香奈
模型銃の勇……伊藤勇太
ガングロ三人……女子A,B,C
総元締め……近藤美樹
コメント:すみません、『ハングマン』と『必殺仕事人』は当時毎週欠かさず観てたもんで……。
水族館に行こう!(知的ルートネタバレ・ほのぼの・香奈SS)(4/21 23:21)↑
暦の上では秋になった頃、俺には加奈を自転車で送り迎えする
ついでに、もう一つ仕事が出来ていた。
ギィ。
隆道:「到着。」
香奈:「兄ちゃん!早く来れるのじゃ!」
隆道:「今日は土曜日だから、授業も午前中で終わるんだよ!」
香奈:「それじゃ、今日はどこかに連れてってほしいのじゃ。」
隆道:「え?そうだな……。」
その時、後ろに乗っている加奈が俺の背中を突つく。
隆道:「……何だよ?」
加奈:「水族館なら、涼しくていいかも……。」
隆道:「そっか。それじゃ、水族館に行くか。」
というわけで、俺と加奈と香奈は土曜日の午後のひとときを
『水族館で静かに過ごす』ことにした。
隆道:「ええと、今日のイベントは……。
……香奈もいるし、『館内をゆったりとまわろう』。」
加奈:「うん。」
隆道:「それじゃ、……あれ?香奈は……?」
加奈:「お兄ちゃん、あそこ……。」
隆道:「……え?」
俺は加奈の指差す方向を見た。香奈は水槽の前に居た。
そして……
香奈:「がるー。」
……ミノカサゴとにらめっこしていた。
隆道:「おーっ、香奈に先越されたかー。」
香奈:「兄ちゃん、こいつ愛敬のある顔してるのじゃ。むにー。」
隆道:「そっか、香奈もそう思うか。」
香奈:「がるー。」
隆道:「うらー。」
そして、俺と香奈がにらめっこに夢中になっていると……
子供:「お母さーん、あのお兄ちゃん達変ー。」
母親:「こら、指差したらいけません!」
隆道:「……あつ。」
(また)変態扱いされてしまった(^^;
そう言えば加奈はどこに行ったのだろう。
隆道:「加奈ー?」
加奈:「お兄ちゃん……。」
隆道:「加奈ー、いつも一人でどこに行ってるんだよ?心配に……。」
加奈:「だって、一緒にいると『恥かしい』から……。」
隆道:「……くっ!」
そ、そうだったのか……!
隆道:「ほ、ほら、香奈、次行くぞ!」
香奈:「むにぃー?むうー。」
俺はミノカサゴとの別れを惜しむ香奈を引きずるようにして、
とりあえず『ふれあい水槽』に向かった。
隆道:「……加奈、どうした?」
加奈は水槽をまじまじと見つめている。
加奈:「うん、以前ここで何かあったような気がして……。」
隆道:「え!?……そ、そうだったっけ……?」
……俺はあわてて否定する。
一方、香奈は……
ばちゃばちゃばちゃ……。
……水槽を掻き回していた。
香奈:「む?この手触り、……曲者!」
ぶわ!
香奈が腕を挙げると、果たしてその腕に「曲者」が絡み付いていた。
蛸……頭足類タコ目(八脚類)の軟体動物。
加奈:「あ……。」
隆道:「え!?」
ぱちゃ!
俺は咄嗟に蛸を香奈の腕から放し、投げ捨てた。
隆道:「危なかったなー、加奈ー。」
香奈:「?」
加奈:「え?お兄ちゃん、ここの水槽って、確か危険な動物って
いなかったはずじゃ……。」
隆道:「ま、まあな。」
俺は曖昧に返事しつつ、とりあえず加奈と香奈を
その場から退却させた……。
香奈:「うー、腹減ったのじゃー。わらわに何か食わせてたもれー。」
加奈:「香奈ちゃん、たこ焼き食べる?」
香奈:「うん!」
加奈:「お兄ちゃん、……と言うわけだから……。」
隆道:「はいはい、承知致しました。お姫様方。」
俺は売店でたこ焼きを買ってくる。まるで「パシリ」だが、
悪い気はしない……。
隆道:「ほら。」
加奈:「お兄ちゃん、ありがとう。」
香奈:「あの、兄ちゃん……。」
隆道:「な,何だよ?」
香奈:「……何でもないのじゃ。」
隆道:「え……?」
そして、香奈はにっこりして言う。
香奈:「水族館は楽しいのじゃ。だから今度は父上に連れてきてもらうのじゃ。」
隆道:「……そ、そっか……。」
香奈は既に須摩子さんと叔父さんから「真実」を告げられていた。
それを香奈は言おうとしていたのかどうか、俺にはわからない。しかし……
隆道:「それじゃ、明日はイルカショーと餌付けショーに連れてきてやるぞ。」
香奈:「え?」
加奈:「いいの?日曜日なのに……」
隆道:「日曜日だからいいんだよ。」
……俺は、「加奈と香奈と一緒に過ごす時間」を、何故か貴重に思うようになっていた。
二十五年後の授業参観(ED1後日談・ほのぼの)(5/10 23:20)↑
その日は私の授業参観の日。
担任:「それでは、藤堂さん。」
麻衣:「はい!」
先生に指名されて、私は元気良く返事して朗読を始める。
授業の内容は「家族のことについて作文を書き、朗読する」というものだ。
麻衣:「『私のお父さんとお母さん』。」
担任:「え?」
私の作文の題にちょっと意外な表情をした先生に構わず、私は朗読を続ける。
麻衣:「みんなも知ってるように、私のお父さんとお母さんは『一心同体』です。
とにかく仲の良さは近所でも評判で、今日も私の授業参観ということで……。」
私はお父さんとお母さんの方をちらっと見る。
隆道:「ほら、思い出したか?小学校の時……。」
加奈:「うん……。」
あーあ、何も娘の授業参観の最中にいちゃいちゃしなくていいのに……。
ちなみに、「時間が重なっては参観ができない」ということで(「二人で別々に参観する」という
発想は無いらしい)わざわざ私の双子の妹の亜衣の授業参観の時間をずらさせたのはお父さんだ。
麻衣:「……ねえ!おとーさん、聞いてるー!?」
隆道:「あ?……ああ、聞いてるぞ!」
どっ!
わははは……!!
高校生の頃「クールマン藤堂」と呼ばれたらしいお父さんは、私に呼ばれて咄嗟に左手を挙げた。
しかも、お母さんの右手を握ったまま……。
加奈:「あ、あの……。」
隆道:「お、悪い悪い。」
麻衣:「お、おとーさん……。」
多くの障害を乗り越えて結婚したお父さんとお母さんは未だに「らぶらぶ状態」で、
結婚後十年以上経った今でも周りがよく見えていないようだ。
隆道:「……それより、加奈。」
加奈:「え?ええ。」
麻衣:「ふう……。」
お父さんとお母さん、もしかして一生この状態が続くのかなあ……?
藤堂麻衣、亜衣……藤堂隆道と藤堂加奈の双子の娘。
神様の奇跡が子に及んだのか、五体満足な元気な小学生だ。
雪の思い出(知的ルートネタバレ・ほのぼの)(5/14 23:18)↑
須摩子さんが安らかに逝った後も、いつものように冬が来る。
その日は加奈も香奈も退院していて、我が家に一泊する予定だった。
そして今、居間は暖房しており、香奈のいつも観ている
「七時からのテレビアニメ」がちょうど終わったところだ。
隆道:「今夜は冷えるらしいから、体、気を付けろよ?」
加奈:「うん。」
俺は何気なく、カーテンの隙間から外を見る。
……いつの間にか、外は雪が降っている。
隆道:「お?雪が降ってるのか。初雪だな、どうりで……。」
俺の「独り言」を聞いて、加奈と、それまでテレビに見入っていた香奈が外を見る。
加奈:「あ、本当……。」
香奈:「…………。」
香奈は黙って外を見ている。そして……
香奈:「兄ちゃん、これ、吊るしてほしいのじゃ。」
……香奈は自分のリュックから『てるてる坊主』を取り出した。
隆道:「あ?……そっか、わかった。」
「他の誰でもない香奈の頼み」ということで、
俺は早速てるてる坊主をカーテンのレールから吊るしてやる。
そして……
香奈:「♪母上様、お元気でーすーかー?」
隆道:「え?」
香奈:「♪夕べ、……。」
隆道:「あ……。」
……それは、「小さな和風のお姫様が飛んだり跳ねたりするアニメ」のエンディングの歌だった。
香奈:「♪くじけませんよ、男の子です。寂しくなったら、……。」
香奈の記憶力がいいのか、あるいはいつも観ているから自然に覚えてしまったのか、
香奈は歌の最後まで歌っていた。
コメント:すみません、思いっきり季節はずれですけど、一応『母の日』ということで……(汗)
母の日の出来事(ED1後日談含む・ほのぼの)(5/23 01:39)↑
隆道と両親が「宣告」を受けてから約二ヶ月後のこと……
その日、母はいつものように加奈を見舞いに来ていた。
そして、加奈は母に話し掛ける。
加奈:「あの……、お母さん。」
母:「え?」
加奈:「お母さん、いつもありがとう。」
それは「母の日に娘が母にカーネーションを贈る」という
ある意味ありふれた光景だった。
加奈:「お母さんいつも私のためにいろいろやってくれて、
でも、私はこんなことしかできないけど……。」
母:「う……。」
「加奈、あなたは今他人に気を使っている場合じゃないの!」
という言葉が喉まで出掛かるが、ここで言うわけにはいかない。
母:「……そ、そう?……ありがとう……。」
母はカーネーションを受け取る。……目頭を熱くして。
加奈:「……お母さん、どうかしたの?」
母:「ううん、……ちょっと嬉しかったから。」
加奈:「え?だって、毎年あげてるのに……。」
母:「こういうものは、何度もらっても嬉しいものなの。」
加奈:「ふうん……。」
……。
…………。
………………。
……………………。
そして、それから十数年後のある日……
麻衣・亜衣:「お母さん、いつもありがとう。」
加奈:「え?」
……その日は母の日。そして、「母の日に娘が母にカーネーションを贈る」という
ある意味ありふれた光景である。
加奈:「麻衣も亜衣も、どうもありがとう。……あら?」
カーネーションの赤い花に、『白い花』が混ざっている。
加奈:「これ……。」
麻衣:「『お母さんにあげたら、お母さんきっと喜ぶぞ』って、お父さんから聞いたの。」
加奈:「……え?お父さんが?」
ちなみに……というか当然この場合『お父さん』とは『藤堂隆道』のことである。
亜衣:「実は、その花見つけるのちょっと難しかったから、
代わりにお父さんが見つけてきてくれたんだけど。」
加奈:「え?」
麻衣:「亜衣!それ言っちゃあ駄目だって、お父さんが……。」
加奈:「え?」
亜衣:「あ!麻衣こそ、それ言っちゃあ!」
加奈:「……そう、ありがとう……。」
麻衣:「あ、あれ?お母さん、泣いちゃった……。」
加奈は目頭を押さえ、二人の娘に微笑んで言ってあげる。
加奈:「……ううん、お母さん、嬉しかったから。」
亜衣:「えー?お花なら、去年もあげたのにー。」
加奈:「こういうものは、何度もらっても嬉しいものなの……。」
コメント:ちなみに、『麻衣・亜衣』というのは一応加奈と隆道の娘です。
繰り返しますが、一応……(^^;
雨に歌えば2(中等期・ネタバレなし・ほのぼの)(5/28 23:20)↑
初夏。中学二年生になった加奈は体調が良くなり、
退院して三郷中に通学するようになっていた。
そして、加奈を三郷中まで送り迎えする役は兄である隆道に一任された。
しかし、ある日の朝……
ザァー……
……外は雨が降っていた。
隆道:「加奈ー、今日はタクシー使えな。」
加奈:「え?お兄ちゃんは?」
隆道:「当然俺は合羽着てくよ。傘さして自転車乗ったんじゃぬれちまうから。」
加奈としては意味が通じていなかったらしい。
加奈:「あの、お兄ちゃんも一緒に……。」
隆道:「あ?『重役出勤』じゃあるまいし、俺がタクシー使うわけにもいかないだろ?」
加奈:「う、うん……。」
隆道:「ま、梅雨に入ったからな。それに、今雨が降ってくれないと
あとあと水不足になって、正直言って困るし……。」
加奈:「うん……。」
隆道は「深刻な水不足でプールもまともに入れなかった忌まわしい夏」を思い出している。
しかし、加奈はそれとは別のことを考えていた。
結局その日は終日雨が降り、加奈は一人で登下校した。
そして、帰宅後……
加奈:「♪てるてる坊主、てる坊主ー、あーした天気にしておくれー。」
……加奈にとって、お兄ちゃんと一緒に自転車に乗って登下校することが
中学校生活で一番楽しいひとときだった。
だから、たとえ雨が神様のお恵みだったとしても、そんな楽しいひとときを
邪魔されたくなかったのだ。
雨に歌えば3(知的ルートネタバレ・ほのぼの・香奈SS)(5/29 23:57)↑
暦の上では秋になった頃、隆道は加奈を三郷中まで送り迎えするついでに
香奈を小学校まで送り迎えするようになっていた。
そして、ある土曜日の午後……
ザァー……
……突然雨が降り出した。
一応香奈は(隆道と違って(笑))傘を持ってきていたが、
教室で、一人で隆道と加奈が迎えに来るのを待っていた。
香奈:「兄ちゃんたち、今日も遅いのじゃ。」
担任:「霧原さん、お迎えが来たわよ。」
香奈:「あ、うん!」
返事とともに、香奈は下駄箱の所まで(香奈なりに)ダッシュする。
香奈:「遅いのじゃーっ!」
?:「ごめんなさい。」
香奈:「え?」
てっきり隆道の(少しとぼけた(笑))声が聞こえると思った香奈は、女性の声が聞こえて驚く。
そして、香奈はその声の主の姿を確認する。
香奈:「母上!」
下駄箱の所に、須摩子(香奈の母)が立っていた。須摩子はこのとき最後の退院をしていた。
須摩子:「今日も隆道君と加奈ちゃんにに頼もうと思ってたんだけど、
隆道君達、急に何か『用事』が出来たって言って。」
香奈:「むうー、案外無責任なのじゃ。」
香奈は子供っぽく隆道と加奈を非難する。
香奈:「でも、母上が着てくれたから、いいのじゃ。」
そして、香奈は子供っぽくすぐ機嫌を良くする。
香奈:「♪あめあめふれふれ母上がー、じゃのめでお迎えうれしいなー。」
香奈は歌いながら、須摩子と並んで学校を出る。
香奈:「あれ……?」
いつも仕事で忙しい叔父(香奈の父)が、何故か校門に立っている。
香奈:「父上、どうしたのじゃ?」
叔父:「ああ、香奈を迎えに来たついでに、これから三人でどこかに遊びに行こうと思ってな。」
香奈:「どこかって……、どこに?」
叔父:「香奈の好きな所に連れてってやるぞ。」
香奈はちょっと考えて……
香奈:「それじゃ、水族館がいい!」
……と、いつものように元気に答えた。
『ジョージ君』に会いたい(ネタバレ・予想外?の展開・ほのぼの・関西系)(5/31 23:10)↑
最後の退院が「最悪の状態」で終わり、加奈は発熱を起こしていた。
そして、加奈は熱でうなされながら……。
加奈:「……会いたいよ。」
隆道:「え?」
加奈:「私、ジョージ君に会いたいよ。」
『ジョージ君』とは,いつか加奈を水族館に連れていった時に会った賢いイルカのことだ。
しかし、俺の今の力ではどうすることもできない。
途方にくれながら、俺は中庭のベンチに腰掛けていた。
夕美:「……藤堂君。」
隆道:「あ、夕美……。」
夕美:「自分が裏切った女に、謝罪の言葉もないのね。」
明らかに、夕美の猫科の瞳は俺の「罪」を糾弾している。
しかし、今の俺は加奈のことしか眼中にない。
隆道:「夕美、実は……。」
1.夕美に頼む。
2.自分で考える。
『1.を選択』
結局俺は、藁を掴む思いで夕美に相談した。
隆道:「夕美。実は、加奈が『ジョージ君に会いたい』って言うんだ。」
夕美:「え?」
その瞬間、夕美が微笑んだ。
夕美:「なぁーんだ、そんなこと。ジョージ君のことなら私からお願いしてあげるよ。」
そして、夕美はあっさりOKした。
隆道:「『お願い』って……、加奈を退院させてくれるようにお願いしてくれるのか?」
夕美:「違うよ。ちゃんとジョージ君にお願いしてジョージ君に病院まで来てもらうの。」
隆道:「はあ?」
夕美:「そんなに驚くことないよ。たまにやってることだから。」
隆道:「た……、たまに?」
夕美:「うん!」
夕美はにこにこして返事する。
夕美:「でも、ジョージ君にもいろいろスケジュールがあるし、二、三日待ってもらえない?」
隆道:「あ、ああ。」
夕美の言葉には理解できない部分も少しあったが、とにかく加奈の願いは叶うことになったらしい。
夕美:「それにしても、藤堂君にもそんな趣味があったなんて……。
私、藤堂君のこと誤解してた。私達、これからもうまくやっていけそうね。」
隆道:「あ?……あ、ああ。」
そして、何故か夕美とは和解できたらしかった。
……。
…………。
………………。
……………………。
それから数日後、何とか体調を持ち直した加奈は、俺と美樹さんと、そして夕美と一緒に
512号室で『ジョージ君』を待つことになった。
美樹さんが一緒にいてくれるからいいようなものの、案の定、加奈と夕美は
何かそわそわしているような感じがした。
そして、しばらく後……
がちゃ。
?:「ごめんよ。」
……突然ドアが開き、そこには体格の良い男性が立っていた。
「もしかして、飼育係の人だろうか」そう考えていると……。
美樹:「あ、熊だ!死んだ振りせい!!」
隆道:「へ!?」
ばたばた……。
美樹さんの「奇声」と共に、加奈と夕美と、そして美樹さんが「死んだ振り」をした。
男性:「わしは人間じゃーっ!」
美樹:「人間……?ああ、よく見れば……。」
男性:「よく見なくても、わしは人間!」
加奈:「ジョージ君、近所ではバンビちゃんって呼ばれてるんだよね。」
隆道:「はあ!?」
どうやら、この男性が『ジョージ君』であるらしかった。
そして……
加奈:「ジョージ君。リンゴ剥いたの。食べる?」
ジョージ:「あ、こりゃどーも。」
※
美樹:「もう、前足で。」
ジョージ:「これはお手てや!」
美樹:「それじゃ、こっちが前足?」
ジョージ:「こっちもお手てや!!これが前足やったら、わし、こんなして歩くんか!?」
夕美:「え?そんなことできるんですか?」
ジョージ:「できるかーっ!!!」
(注:以下、※以降二、三回繰り返す)
隆道:「…………。」
……この間、俺は言葉を失っている。
そして、『ジョージ君』はいきなり上半身裸になり……
ジョージ:「うおーっ!」
ぱちぱち……。
……自分の胸を平手で叩き始めた。
夕美:「あれ、大阪名物パチパチパンチって言うの。」
やっと、俺は正気に戻る。
隆道:「あ、あのなあ、夕美。……一つだけ聞いていいか?」
夕美:「何?」
隆道:「『ジョージ君』って、何者だよ?」
夕美:「大阪の芸人で、私の知り合いの人。関西では結構有名な人だよ。」
隆道:「はあ!?」
夕美:「何よ、その声は?それじゃ藤堂君、私の家族構成とかわかってるの?
『恋人』のくせに、今まで知りもしようとしないんだから。
私にどんな知り合いがいたっておかしくないでしょ?」
隆道:「ま、まあ……。」
夕美:「と、に、か、く!ジョージ君はここの入院患者さんのためにたまに来てもらってるの。
でも、『加奈ちゃんには隆道君がいるから必要ない』って看護婦さんが言うから
加奈ちゃんには会わせたことなかったんだけど、他の患者さんから話を聞いてたのかしらね。
……ということ。わかった!?」
隆道:「……はい。」
確かに「難病の子供を励ますためにスポーツ選手や芸能人がお見舞いに来る」
という話は聞いたことがあるが……。
俺、頼む相手を間違えたか……(汗)
ジョージ:「うおーっ!」
ぱちぱち……。
夕美:「ぎゃははは……!」
夕美の言うことはともかく、一番笑っているのは夕美だ。
ジョージ:「じゃ、最後に必殺技のキックアンドキック!」
美樹:「蹴り、そして蹴り。」
夕美:「そのままやんか。」
そして、『ジョージ君』は「キックアンドキック」を実行し……
ドタッ!
……バランスを崩して倒れた。
ジョージ:「あいたた……、しまったしまった……。」
美樹:「……○○○○○。」
ジョージ:「先に言うなーっ!」
夕美:「ぎゃははは……。」
……俺は肝心の加奈を見た。加奈は……
加奈:「……うふふ。」
隆道:「あれ?」
……笑っていた。夕美程ではないが、確かに笑っている。
ジョージ:「ほら、お嬢ちゃん。お土産の大阪名物たこ焼きだよ。」
加奈:「ジョージ君、ありがとう。」
加奈はにこにこして『ジョージ君』からたこ焼きを受け取っていた。
俺は、あんなににこにこする加奈を今まで見たことがない。
正直言って、俺がどんなに加奈のことを想っていても、
無愛想な俺には恐らく絶対に真似のできない芸だ……。
加奈:「うふふふ……。」
その日、加奈は一日中笑っていた。
この日の出来事、さしずめ「活発度+20」といったところか……。
コメント:すみません、何かよくわからんものを……。
中学生日記〜隆道の隠し事〜(ネタバレなし・ほのぼの)(6/14 23:14)↑
中学生になって、俺達「四天王」の腐れ縁は薄らぐどころか
ますます強固なものになったように感じた。
育郎:「俺達、また同じクラスになったんだって。」
雅俊:「ま、これからも宜しく頼むぜ。特にテストの時なんか。」
隆道:「ああ。」
智樹:「お、おい、それってもしかして『カンニング』のことじゃ……?」
親友同士、ほとんど「隠し事」はしない俺達ではあるが(実際「俺達親友だから
隠し事は無しだぜ」なんて面と向かって言うものでもないが)、
しかし、俺にはこいつらにも言えない隠し事がある。
それは……
……。
…………。
………………。
……………………。
初夏。小学校五年生になった加奈が退院した。
春から夏にかけてだんだん暖かくなる時期だからだろうか、
毎年この時期の加奈の体調は何となく良くなっている。
そして、その夜。
がちゃ。
加奈:「お兄ちゃん、……一緒に寝ていい?」
隆道:「ああ、いいぞ。」
加奈:「ありがとう。」
ごぞごぞ……。
俺の布団に潜り込んだ加奈はいつものように俺の手をぎゅっと握り、
そして、加奈のいつもの第一声……
加奈:「お兄ちゃん、あったかい。」
隆道:「……そっか。」
……この時期は気温の変化が激しいし、週三回の透析を必要としている加奈の体を
冷やすわけにもいかないから、仕方の無いことなんだけどなあ……。
……。
…………。
………………。
……………………。
……と、「中学生にもなって、夜、たまに妹と一緒に寝ている」なんて、
とてもじゃないけど四天王の三人には言えないんだ。
雅俊:「げへへへ……。」
……そう、下ネタ大王の雅俊には特に……。
『四天王の活躍』の真相(「授業参観事件」の真相・ギャグ)(6/15 23:27)↑
俺達「五年三組四天王」が加奈のクラスの授業参観を破壊した翌々日、
俺達四人は罰として廊下に立たされた。
智樹:「まったく、君たちに付き合ってると俺の印象まで悪くなってしまう。」
育郎:「でも、放っとけないんだよね、親友だから。」
雅俊:「ちぇ、これで俺の評判も悪くなっちまうぜ。」
隆道:「…………。」
「雅俊の(特に女子からの)評判の悪さは今に始まったことじゃないだろう」
というツッコミはこの際しない、……「親友」だから。
隆道:「しかしなあ、俺、疑問に思ったんだけど、
何でお前達、授業中に三年生の教室まで来れたんだ?
それに、智樹と雅俊。お前らいつもアメリカ製玩具とねずみ花火持ち歩いてるのか?」
育郎:「そのことなんだけどさあ……。」
当時教壇の上でヒーローの真似事をして、実は一番盛り上がっていたらしい育郎が話し始める。
育郎:「……実は、先生が俺達に『ちょっと藤堂君の様子を見ていらっしゃい』って言ったんだよ。」
雅俊:「その時俺はねずみ花火と『チャッカマン』を……。」
智樹:「……俺はアメリカ製玩具を持たされたんだ。」
育郎:「で、俺にはヒーローの真似事のレクチャー……。ま、結局役には立ったんだけどね。」
隆道:「へえ、そんな偶然もあるんだ……。」
……。
…………。
………………。
……………………。
隆道の担任:「先生、鮮やかでしたね。」
加奈の担任:「いえいえ、先生の鮮やかさにはとうてい及びません。
例の『ラブレター事件』だって、未だに生徒達に真相を知られていないではありませんか。」
隆道の担任:「先生こそ、『三年生C』を懐柔なさるなんて、なかなかの策士ですわ。」
加奈の担任:「ま、あの手の子供は扱いやすいですから。」
隆道の担任:「おほほほ……!」
加奈の担任:「あははは……!」
……まさかこの一連の事件が全て「教師」によって演出されていようとは、
誰も気が付くはず無かったのであった。
注:『加奈の郵便屋さん』通販予約特典「美樹さんの看護日記」を参考にしました。
いや、どうでもいいんですけど……(笑)
花壇委員・長瀬智樹(ネタバレなし・ほのぼの)(6/16 23:23)↑
「四天王」の一人、長瀬智樹が小学校で花壇委員をしていた頃……
その日も例の三年生クラスによって花壇は壊されていた。
そして、放課後……
智樹:「それじゃ俺、これから委員会があるから。」
三人:「じゃあな。」
……その日も委員会で智樹は糾弾される。
花壇委員長:「長瀬君、花壇の管理をもっとしっかりお願いします。」
智樹:「……はい。」
「ふう、あの三年生にはしっかりお仕置きをしなければなるまい……」
智樹はそう考えていた。
そして、ある日の昼放課のこと。
智樹:「あいつら、今度来たら容赦しないからな!」
智樹は近くの木に隠れて、花壇を見張っていた。そして、そのうち……
がやがや……
見覚えのあるデストロイヤー達が花壇に来た!
三年生A:「おい、誰か来ないか見張ってろよ?」
三年生B:「うん。」
三年生C:「それじゃ……。」
……三年生男子の一人が花壇の花に手をかけた瞬間!
智樹:「こらぁーっ!!」
いつもの「クールな智樹」からは想像もできない剣幕だった。
そして、その迫力に三人は凍り付く。
三人:「わあ!」
智樹:「お前ら、今度こそ許さんからな!!」
三人:「ご、ごめんなさい!」
智樹:「あ!?」
「捕まってから謝ってもしょうがないだろ?」そう言おうとした矢先……
女子:「あーあ、あんたたち、ついに捕まっちゃって。」
……四人の前にある女子が現れた。
女子:「あの、五年生のお兄さん、この子達許してあげて。
悪気があってやったんじゃないんだから。」
智樹:「はあ?」
女子:「実は、うちのクラスにたまにしか学校に来ない女の子がいてさあ、
その子花輪が好きらしいの。で、この子達、その子の気を引こうとして
その子がたまに登校してくるたびに花輪あげてるの。
……結局その子は黙って受け取るだけなんだけどね。」
智樹:「それで『花壇に悪戯』か?」
女子:「しょうがないの。近くにお花があまり咲いてないから。」
智樹:「そうか……。」
正直なところ「悪気の無い悪戯」というのが一番やっかいなのだが、
まあ、この場合まさに「しょうがない」のだ……。
……。
…………。
………………。
……………………。
それから数日後の放課後……
智樹:「それじゃ俺、これから委員会があるから。」
三人:「じゃあな。」
……その日も委員会で智樹は糾弾される。
花壇委員長:「長瀬君、花壇の管理をもっとしっかりお願いします。」
智樹:「はい。」
そして、智樹はいつものように返事した。
智樹:(やれやれ。こんな役目とは、もうすぐおさらばかあ……。)
注:「当時智樹が花壇委員で、花壇が加奈のクラスの生徒によって壊されていた」
というのは僕の創作ではなく「四天王乱入」直後に智樹が言っています、一応(^^;
双葉学園エレジー(隆道の高校時代・ネタバレなし)(6/20 23:23)↑
初夏。
新しい学校生活に慣れた新入生は、男子にしろ女子にしろ
そろそろ異性のクラスメートが気になり出す頃である。
隆道:「あーあ、雅俊に付き合って双葉学園に来たものの、やっぱり校舎は古いし……、
良いとこ無いなあ。放課後になったらまた加奈と一緒にどこか行こう。その方が楽しいし。」
そう、余程のクールマン(朴念仁)で無い限り……。
女子:「ねえ、夕美。藤堂君って結構イケてると思わない?」
夕美:「……別に。」
女子:「そうだよね。夕美が藤堂君に気があるんだったらとっくにアタックしてるもんね。
夕美は藤堂君と同じ三郷中だったし、それに、夕美は思い付いたらすぐ実行に移すタイプだし。」
夕美:「…………。」
ちなみに、この『女子』というのは、隆道が高校一年生の時のクラスメートで
夕美とは部活動(等(^^;)の友人であるが(注:「隆道と夕美はラブレター事件以来
同じクラスになったことがない」という意味の高校卒業時の夕美の発言による)、
ここでは「プライバシー保護」のために名前は伏せておきます(^^;
夕美:「そんなに気になるんだったら、本人にアタックしてみたら?」
女子:「え!?いきなり!?そんなこと出来たら苦労しないよ。」
夕美:「だったら同じクラスの長瀬君と船津君と下田君にそれとなく聞いてみたら?
あの三人も同じ中学だったし。」
女子:「そうなの?じゃ、そうする。」
そして、その女子は三人に「それとなく」聞いてみる。
智樹:「隆道?付き合ってる女子はいないな。」
育郎:「俺も良く知らない。好きな女子も、もしかしたらいないんじゃないの?」
雅俊:「そりゃそーだ。だいたいあいつ、俺が加奈ちゃんに近づくの嫌がるんだから。」
女子:「え?『加奈ちゃん』?」
女子にとっては初耳の名前だった。もちろん、友人の夕美からも聞いていない。
雅俊:「加奈ちゃんって、三郷中の生徒で隆道の『妹』のことだよ。」
女子:「え!?」
女子は恐る恐る聞いてみる。
女子:「……それってもしかして『シスコン』ってこと?」
雅俊:「まあ、そういう見方もあるか。」
女子:「そう……。」
ちなみに、三人から例の「ラブレター事件」についての話は無かった。
だいたい三人ともそんな昔のことはいちいち覚えていないし、
覚えているのは当事者の隆道と夕美位だ。
そうこうして、放課後、その女子は隆道のあとをつける(注:すみません、
このシチュエーション使ったの、覚えているだけで二回目です(^^;)。
そして、隆道は三郷中の校門の前で立ち止まり……
隆道:「加奈ー。」
女子:「え!?」
……「加奈」という女子中学生を連れてそのまま楽しそうにどこかに行ってしまった。
この場合、本人はどう思っていようと、事情の知らない者に見られて誤解されても仕方が無い。
そして、翌日……
女子:「ねえ、夕美。私、藤堂君に幻滅しちゃった。」
夕美:「そう。」
女子:「あーあ、他にいい男子いないかなあ……。」
……というわけで、隆道の高校生活は、ありがちな学園恋愛物にはならなかった。
これが隆道にとって良かったのか悪かったのかは、お兄ちゃんが判断してください(笑)
加奈の海岸物語(知的ルートネタバレ・ほのぼの)(6/22 23:28)↑
その日、加奈を背負って砂浜を走った後、俺は唐突に加奈に言う。
隆道:「加奈、『海』と言ったら、やっぱりこれしかないよな?」
加奈:「え?」
加奈は意味が分らずきょとんとしている。
まったく、加奈は日本人の楽しみの八割以上は損している。
隆道:「ほら、これだよ。」
と、俺はスイカ……の模様のビーチボールと棒状の浮き袋を取り出す。
隆道:「スイカ割り。本物のほうがいいんだろうけど、
季節外してるし、だいたい加奈はスイカ食えないからな。」
そして、俺は引越しのバイトで鍛えた肺活量を駆使して
速攻でそれらを膨らまし……
隆道:「俺がやるから、加奈が指示してくれよ。」
加奈:「ふぇ?」
そして、俺は目隠しをし……
加奈:「…………。」
……加奈の反応が無い。
隆道:「いや、やっぱりつまらないか?……って言うか、
そう言えば加奈、『スイカ割り』って知ってるか?知らないんなら……。」
加奈:「ううん、そうじゃないの。……実は私、本で読んだ事あるけど、
実際に見るの初めてだったから。……ありがとう。」
隆道:「そっか。それじゃ、宜しく頼むよ。」
加奈:「うん。」
こうして俺は暫くの間、珍しく加奈の指示で動くことになった。
まったく、「人生の楽しみを八割以上損したまま一生を送る加奈」に
俺がしてやれることはこれくらいなもんだ……。
漫画『ビックフット世界一周』の真相(あほ・すみません……)(00/7/13 23:48)↑
その日、加奈は兄隆道から『ビックフット世界一周』というマンガを見舞いにもらった。
加奈:「うふふふ……。」
そのマンガは結構面白かったようだ。そして、その本を読み終えた時……
加奈:「……あ。」
本の最後のページの余白に何か書いてあった。
『げへへ。これは、退屈な入院生活を送っているお前に贈る「秘密の通信」だ。
ありがたく受け取れよ。』
加奈:「え?」
何のことだか良く分らないが、一応加奈は読んでみる。
『ところでお前さあ、「子供」ってどうやってできるか知ってるか?
……今時「コウノトリが運んでくる」なんて考えてんじゃねえだろうな?』
加奈:「え?」
いきなり「既成概念」を否定されて、加奈は戸惑う。
『げへへ、俺の調べた「情報」によるとなあ……。』
…………。
加奈:「……(ふるふる!)」
……そこには、「加奈の未知の世界」について事細かに書かれていた。そして……
『おっと、これを他のやつらに見つかるとやばいからな。
読んだらさっさとこのページ破いといてくれや、じゃな。』
加奈:「……(こくこく!)」
……と、加奈は急いで「秘密の通信」を破いた……。
……。
…………。
………………。
……………………。
数日後、兄隆道は再び加奈を見舞いに来た。そして……
隆道:「前の奴、どうだった?」
……いつものような無表情で本の感想を求める隆道に対して、
加奈はこう答えるしかなかった。
加奈:「……はじめて。」
コメント:漫画『ビックフット世界一周』は本来
雅俊から隆道への見舞いの品だったので……(^^;
「双葉学園高校」の真相(ネタバレ無し・ほのぼの)(00/7/14 23:11)↑
その日は三郷中三年生の最後の三者面談の日。
つまり、最終的に受験校を決める重要な日なのだが……
担任:「……やっぱりお前一人か。」
隆道:「仕方が無いです。いつものことですから。」
担任:「しかしお前も偉いな。親が余り構ってくれないと普通グレるぞ。」
隆道:「いえ、『妹に構っている』ということについて言えば、
俺も親のこと言えないですし。」
担任:「ははは、そっか。」
……親不在で、しかも「ほとんど学校に来ない妹の話から先ず入る」という状況は、
加奈が三郷中に入学してからのこの一年間変わっていなかった。
担任:「……お前の志望校は双葉か。下田に合わせたのか?」
隆道:「それもありますけど……、あまりレベルの高い進学校に入ると、
やっぱり妹の世話ができなくなりますから。」
隆道は苦笑して答える。実際、隆道自身「双葉に入りたくてたまらない」
というわけではない。
担任:「そうだな。双葉ならサボっても知れてるか。」
そういう「情報」をあらかじめ隆道に教えたのは、
当然、高校の事情をある程度知っている担任のほうなのだが……。
担任:「ま、高校でも頑張れや。」
隆道:「はい。」
……こうして、隆道の進路は決定した。
そして、いつもは温和な育郎だが……
担任:「お前も双葉か?別の高校にスポーツ推薦もできるんだけどなあ……。」
育郎:「スポーツマンは何より『人の和』を重んじるもんです。
……まあ、NBAから声が掛れば話は別ですけど。」
担任:「ふう……。」
……こうして、育郎の進路は決定した。
最後に、秀才の智樹……
担任:「お前も双葉か?国立大学に行くつもりなら……。」
智樹:「いえ、大学入試に在学高校は関係ありません。
それに、世の中には『高校に行かずに好きなことやって、大検から受験する』
なんてツワモノもいるくらいですから。」
担任:「ふう……。」
……こうして、智樹の進路は決定した。
…………。
そしてこの三年後、隆道の妹の加奈が双葉学園高校に合格するのだが、
その時の進路決定のいきさつに付いては既に承知のことだと思う。
コメント:夕美と勇太については以前書いた通りです(^^;
加奈、胡蝶の夢(中等期・ネタバレ無し・ほのぼの)(00/7/22 23:21)↑
その年、加奈は高校に進学することが出来なかった。
幸か不幸か加奈に親しい同級生というものは存在しなかったから
「友達と学年が離れて寂しい」という感情は加奈に無かったが……
加奈:「私、お兄ちゃんと一緒に高校に行きたかったな……。」
隆道:「…………。」
……こればっかりは、いくら妹想いの兄であってもどうすることもできない。
正直言って、落ち込んでいる加奈を見るのは辛い。
しかし、体調が芳しくない加奈のために、見舞いは続けなければならない。
結局、隆道が次の見舞いに持っていったものは……
隆道:「……加奈。これ、中国の昔の思想書。」
加奈:「え?」
隆道:「お前は中国の歴史書読むくらいだから、これも読めると思うけど。」
加奈:「う、うん。……ありがとう。」
……。
…………。
………………。
……………………。
その夜、加奈は胡蝶になった夢を見ている。
加奈:「わあ、きれい。」
そして、胡蝶になった加奈はウメバチソウの花の周りを飛んでいる。
そこに、一人の青年が加奈に近づいてくる。
青年:『胡蝶さん、悪いな。……この花、摘んでいいか?』
加奈:「え?」
青年の申し出は、明らかに加奈の楽しみを阻害するものだ。
しかし……
青年:『どうかな……?』
加奈:「……(こく)」
青年:『……ありがとうな。』
……加奈はうなづいた。「胡蝶になった加奈」は、とにかくそう選択したのだ。
青年:『俺、この花で妹に花輪を作ってやりたいんだ。
俺は来年花輪を作ってやれるかどうかわからないけど、
……だけど、花は来年も咲くことが出来るから。』
加奈:「う、うん……。」
青年:『だからもうくよくよ考えるなよ。』
そして、青年が花を摘み終わった頃、
青年が摘んだ跡から再びウメバチソウの花が咲き始めた……。
……。
…………。
………………。
……………………。
翌朝、加奈は美樹と話をしている。
口には出さないが、当然美樹も加奈が高校に進学出来ないことを
残念に思っている者の一人だ。
加奈:「美樹さん。私、来年双葉学園受験しようと思う。
……お兄ちゃんとは一緒に行けないけど。」
美樹:「え?」
加奈:「お兄ちゃんと一緒には行けないけど、
……お兄ちゃんは私の傍にいてくれるから。」
美樹:「はあ?……ふう……。」
美樹は溜め息をつく。
正直言って、加奈から『お兄ちゃん』の話を聞かされるのは何度目のことだろうか……。
加奈:「私も、自分の考えたようにやっていきたいと思うから。
『お兄ちゃんっ子』なんてからかわれても、夢の中の蝶みたいに。」
加奈は、そんな呆れた顔をしている美樹に向かって微笑んで言った。
『ジョージ君』に会いたい・その2(ネタバレ・ほのぼの・今回は真面目に作りました(^^;)(00/8/3 23:14)↑
最後の退院が「最悪の状態」で終わり、加奈は発熱を起こしていた。
そして、加奈は熱でうなされながら……
加奈:「……会いたいよ。」
隆道:「え?」
加奈:「私、ジョージ君に会いたいよ。」
『ジョージ君』とは,いつか加奈を水族館に連れていった時に会った賢いイルカのことだ。
しかし、俺の今の力ではどうすることもできない。
途方にくれながら、俺は中庭のベンチに腰掛けていた。
夕美:「……藤堂君。」
隆道:「あ、夕美……。」
夕美:「自分が裏切った女に、謝罪の言葉もないのね。」
明らかに、夕美の猫科の瞳は俺の「罪」を糾弾している。
しかし、今の俺は加奈のことしか眼中にない。
隆道:「夕美、実は……。」
1.夕美に頼む。
2.自分で考える。
『2.を選択』
隆道:「……いや、何でもない。夕美、ごめんな。」
夕美:「え?……う、うん。」
この際夕美には適当に謝罪し、俺は「加奈のために」次の行動に出る。
がちゃ。
加奈:「…………。」
加奈はいつもの512号室で眠っていた。
隆道:「加奈、……ちょっとこのペンダント、返してもらうからな。」
眠っている加奈にそう言い、加奈の病室の机の引き出しを開ける。
隆道:「あ、あったあった。」
その録音機能付きペンダントは、引き出しの一番前に置いてあった。
たった半年前に加奈にあげた「高校合格祝い」のペンダント、
俺がその存在を忘れるはずが無い(プレイ中僕(会員8921号)は忘れてましたけど(^^;)。
隆道:「それじゃ、次は……。」
…………。
……そしてその数日後、俺はペンダントを持って加奈の見舞いに行った。
加奈の発熱はある程度治まっている。
がちゃ。
隆道:「ただいま。」
加奈:「お帰りなさい。」
隆道:「加奈、これ聞いてみろよ。」
加奈:「え……?」
ペンダントを手渡された加奈は再生ボタンを押す。
?:『♪ピューイ、ピューイ。』
加奈:「え?」
加奈はきょとんとしている。
隆道:「『お友達』からのメッセージだよ。」
加奈:「え?」
隆道:「加奈のお友達の『ジョージ君』の声だよ。」
加奈:「あ……。」
もちろん「イルカの声」を手に入れるまで水族館に行ったりいろいろ紆余曲折はあるのだが、
細かい状況説明はこの際不要である(……と言うよりやっぱり手抜きであります(^^;)。
隆道:「やっと本来の使い方が出来たな。……『イルカ語』がわからなくて、残念だけどな。」
加奈:「う……、うん。」
ジョージ君:『♪ピューイ、ピューイ。』
加奈は何度も「ジョージ君からのメッセージ」を聞いている。
加奈:「私もジョージ君にメッセージ送りたい。」
隆道:「そっか。それじゃ、また俺が持っていってやるよ。」
加奈:「うん、それじゃ……。」
……と、さっそく加奈は三番目の所にメッセージを録音しはじめた。
参考文献:『イルカはなぜ鳴くのか』赤松友成・著 文一総合出版 1996(四年前の本ですけど(^^;)
中学生日記2〜本立てのプレゼント〜(ネタバレなし・ほのぼの)(00/8/7 23:15)↑
突然だが、中学一年の技術科の木工工作でたいてい「本立て」を作ることになっている
……と思う(僕(会員8921号)はそうでした(^^;)。
ところで、俺(隆道)の場合……
雅俊:「智樹、のこぎりはこうやって使うんだ。」
智樹:「あ?ああ。」
ギコギコ。
雅俊:「な?切りやすいだろ?」
智樹:「ああ、そうだな。」
育郎:「……へえ、雅俊が智樹に教えてるよ。変な光景だな。」
隆道:「ああ、雅俊は手先が器用みたいだからな。」
……小学校以来の腐れ縁か、俺達「四天王」は一緒に技術の授業を受けていた。
育郎:「ところで、隆道はどんな本立て作るの?」
隆道:「俺?俺は、とにかく頑丈なやつを作る。」
育郎:「はあ?」
…………。
そしてそれから数週間後、とにかく頑丈な、それこそ「♪象が踏んでも壊れない〜」ような
強い本立てが完成した。……もちろん、そんなことは実際には試してないけど。
そして、俺はさっそく本立てを持って加奈の見舞いに行く。
がちゃ。
隆道:「ただいま。」
加奈:「……(こく)」
隆道:「加奈、今日のお土産これな。」
俺は、とりあえず加奈の机の上に本立てを置く。
隆道:「これからこの本立てがいっぱいになるくらい本をお土産に持ってくるからな。
楽しみにしてろよ。」
加奈:「……(こくこく)」
加奈はにこにこしてうなづいた。加奈は余程読書が好きらしい……。
…………。
……そして、それから数年経った「今」でも、その本立ては朽ち果てずに残っている。
コメント:僕の本立ても、十数年(笑)経った今でも使っています(^^;
中学生日記3〜隆道の手料理〜(ネタバレなし・ほのぼの)(00/8/7 23:17)↑
突然だが、中学一年の技術科でたいてい「家庭科の調理実習」をやることになっている
……と思う(僕(会員8921号)はそうでした(^^;)。
そして、三郷中でも調理実習の料理が完成する。
智樹:「ああ、良い匂いだ。」
育郎:「それじゃ、俺は今要らないから、バスケ部の帰りにちょっと……。」
……と、育郎は用意していた弁当箱に料理を詰め始める。
育郎:「あの坂道のマラソンきついんだよ。帰宅部にはわからないと思うけど。
とにかく帰りは腹へって腹へって……。」
隆道:「あ、俺もちょっと……。」
……と、俺もどさくさ紛れに弁当箱に料理を詰めた……。
…………。
その日も俺はいつものように加奈の見舞いに行く。
がちゃ。
そして、俺は弁当箱を加奈の目の高さにあげて……
隆道:「加奈、今日のお土産これな。」
加奈:「え……?」
隆道:「加奈って、いつも何か『味気ないもの』ばっかり食わされてるみたいだから……。」
……と言いつつ加奈に弁当箱を差し出すと……
がちゃ。
美樹:「……あれ?隆道君、それなぁに?」
隆道:「あの、俺が調理実習で作った料理ですけど、加奈に食べさせようと思って……。」
美樹:「はあ?」
あきれながら美樹さんは俺に質問する。
美樹:「隆道君、加奈ちゃんが何故入院してるか理解してる?」
隆道:「えっと、それは、腎臓が悪いから……。」
美樹:「そんな加奈ちゃんに、無茶苦茶に物を食べさせて良いと思う?」
隆道:「う……。」
プロの看護婦美樹さんの注意に俺は反論出来ない。
美樹:「……まあ、いいけどね。」
隆道:「……え?」
美樹:「当然『毒味』はしてあるんでしょう?それ。」
隆道:「ま、まあ。」
美樹:「そう。それじゃ、ごゆっくり……。」
がちゃ。
……と、美樹さんは病室を出ていった。
恐らく、美樹さんは「見て見ぬふり」をしてくれたんだろう。
そして……
加奈:「……(はぐはぐ)」
……と、加奈はいつかのように、一心不乱に俺の手料理を食べていた。
隆道:「美味いか?それ。」
加奈:「……(こくこく)」
隆道:「そっか、良かった。」
コメント:すみません。僕は実際に何作ったか、はっきり覚えてないんですけど、
確か「五目御飯」を作った覚えがあります(^^;
夕美、衝撃の告白(「高校卒業」の場面・あほ・すみません……)(00/8/8 23:19)↑
卒業式の後……
夕美:「藤堂君。」
隆道:「あ……。」
……鹿島が俺を呼び止めた。
夕美:「藤堂君、ちょっと話、いいかな?」
「いやだね」……いつもならそう応えていたが、何故かその日はそうする気にはならなかった。
「加奈がついに高校に合格した」という朗報に浮かれていたせいもあるかもしれない。
夕美:「……ずっと一緒だったのに、私達ってあんまり話さなかったよね。」
隆道:「…………。」
夕美:「藤堂君が私のこと嫌ってるのは知ってる。けど、
最後にどうしても言いたいことがあるの。聞いてくれる?」
鹿島は真剣だった。「今日が最後だ」と思うと、俺にも慈悲の心が出た。
俺が黙って立っていると、肯定と受け取ったのか鹿島は話し始める。
夕美:「……信じてくれないと困るんだけどさ……、
私、藤堂君のこと、ホントは好きじゃなかったんだよ。」
隆道:「ああ!?」
夕美:「だから、私は藤堂君のことが……。」
何を言っているんだこの女は。
頭が鹿島の言葉を理解しようとしなかった。
隆道:「お前……そんなに俺のことを馬鹿にしたいのか?またみんなで笑い者にするのか。
卒業式のこの日にまで。」
夕美:「そうだよ!そんなことしたいよ!」
鹿島が、泣いた。鹿島の背後に「例の三人組」の影が見えた。
夕美:「絶対に絶対にしたいよ!……これだけは信じてよ。あれは本当に私がやったことなの!
人に無理矢理私の机をのぞかせて、無理矢理広げて読ませちゃったの!
私なんだよ……本当に……本当に……。」
隆道:「無理矢理見せた……?」
夕美:「私だって面白いと思ったよ。けど、私駄目なの。
あんまり人に優しいこと言うの苦手なの!
だから笑ってるしかないじゃない!本当に……本当にすごく面白かったのに……。」
隆道:「信じない……誰が信じるかよ……そんな話……。」
今さら……
十年近くも経ってから……
夕美:「藤堂君、あの時の雑誌の星占いが、まだ効力持ってるなんて思うなよ。
私はもうお前のことなんて何とも思っちゃいないんだ。」
隆道:「はあ!?」
夕美:「ああ、確かにあの頃は何となくお前に惹かれてたよ。
でもそれは私が世間知らずのガキだったからだ。
今じゃお前みたいに私を無視する奴は大嫌いだ。私は私を無視する奴が大嫌いだ!」
そばを通る何人か(つまり例の三人組)が、鹿島の大声にうなづく。
三人:「そりゃそうだ。鹿島は小学校の頃から人気者だったんだから。」
だが、体面を保つことを考えられないほど、鹿島は激しく憤っていた。
隆道:「…………。」
夕美:「これでお前と二度と会わなくなると思うと、本当に気が重いよ。
お前と離れていると、いつあの頃の無様な話を吹聴されるかもしれないしな。」
隆道:「しないよ、そんなこと……。」
夕美:「信用できるか!」
隆道:「ごめん……なさい……。」
俺は深々と頭を垂れた。その拍子に、ぽろぽろと涙が地面に落ちた……。