ED1の「蜜月」の辺り(第二期)

ディーオー通販特典テレカ
ゲーム中で一番気に入っている絵です。
加奈の記念日(00/6/25)

ファーストフードに行こう!(00/6/28)

献血に行こう!2(00/6/30)

加奈の『夏の夜の夢』(00/7/1)

夏のお嬢さん(00/7/1)

加奈、流行を取り入れる(00/7/2)

七夕にお願い(00/7/3)

本屋に行こう!(00/7/5)

続・七夕にお願い(00/7/7)

加奈と二十四時間テレビ(00/7/8)

スクールガール(00/7/10)

夏祭り、再び……(00/7/12)

加奈、DVDビデオ初体験(00/7/13)

蜜月〜ある月夜〜(00/7/16)

今日は防災の日(01/9/1 3:42)

ORGEL(01/9/7 23:04)

続ORGEL(01/9/25 23:38)

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加奈の記念日(00/6/25)

その日付は二年前までは何の変哲も無い平凡な日付だった。
しかし、一年前からは重要な日付になっていた。
「加奈の第二の誕生日」と言っても過言ではない。

そして、その日の夕食後……

加奈:「私、短歌を作ってみたの。」
隆道:「ほう。」

加奈は俺の耳にささやく。

加奈:「『愛してる』とお兄ちゃんが言ったから、○月×日は加奈の記念日。」
隆道:「は?」
加奈:「ふふふ……。」

明らかに「ある有名な現代短歌」の真似なのだが、
読書好きな加奈らしいから、まあ、いいか……。

 

……というわけで、「加奈〜いもうと〜」発売一周年おめでとうございます。
これからも『ED1の「蜜月」の辺り』の連載は可能な限り続けたいと思います。
僕の好きなED1の加奈は隆道と仲睦まじく今でも生きていますので。


ファーストフードに行こう!(00/6/28)

その日、俺は加奈と街に来ていた。

隆道:「昼飯、何食おっか?」
加奈:「うーん……。」

加奈は考え込む。

加奈:「私、ファーストフードがいいな。」
加奈:「そっか。それじゃ、そうしよう。」

そして、俺達は早速ファーストフードの店に入る。

隆道:「それじゃ、注文してくるよ。前と同じやつでいいな?」
加奈:「あ、待って、お兄ちゃん。」
隆道:「あ?」

「厳しい食事制限が無くなったから、たくさん食べたいのだろうか?」
そう考えていると……

加奈:「私が行ってくる。」
隆道:「え?」

加奈としては、いつかの「リターンマッチ」のつもりらしい。
決意溢れる目をする加奈を俺は敬礼で送り、加奈も敬礼で返した。

そして……

女子店員:「いらっしゃいませ。
ここでお召し上がりですか?お持ち帰りですか?」
加奈:「ええと、ここでいただきます。」
女子店員:「ご注文は何に致しますか?」
加奈:「セット二つお願いします。」
女子店員:「ドリンクは何に致しましょうか?」
加奈:「コーヒーとココアをお願いします。」

…………。

……加奈は臆することなく注文した。

隆道:「よくやったな、加奈。」
加奈:「ふふふ……。」
隆道:「それにしても、加奈も知らないうちに成長して……。」
女子店員:「お兄さん、加奈ちゃんすごいでしょう?」
隆道:「あ、ああ……って、え!?」

この女子店員、今、「お兄さん」とか「加奈ちゃん」とか言って……?

加奈:「あーっ、駄目だよ、あかねちゃん。ばらしちゃ。」
隆道:「え?『あかねちゃん』?」
あかね(女子店員):「ごめーん、へへへ……。」
隆道:「あかねちゃんって……。」
あかね:「はい、加奈ちゃんにお友達になってもらってます、あかねです。
ちなみに、当然加奈ちゃんは私がここでアルバイトしていることは知っています。」
加奈:「う、うん。」
隆道:「はあ……。」

確かに、よくよく見れば、以前何度か会った加奈の友達のあかねのようだった。

あかね:「お兄さん、実は、『愛する』加奈ちゃんだけしか目に入っていなくて、
私に気が付かなかったとか……?」
隆道:「え!?」
あかね:「……冗談ですよ。」
隆道:「あ?……は、ははは……。」

……それはともかく、結局、さっき加奈は友達と会話をしていただけだったんだ。

あかね:「ま、加奈ちゃんに気軽に話せる友達ができただけでも……。」
隆道:「いや、『兄』としてはそれ以上のものを望むもんだよ。」
あかね:「へえ……。」

あかねは意外そうな表情をした。

…………。

そうこうして、注文したセットが届き、俺と加奈は席に着く。

加奈:「お兄ちゃん、……私もアルバイトしてみようかな……。」
隆道:「え!?」

俺はこのとき冗談かと思った。ましてや将来加奈が本屋の店員という
客商売に就くなどと、誰が想像出来ただろうか……。


献血に行こう!2(00/6/30)

明日、7月1日から『献血キャンペーン』である。
18歳以上なら、体重その他の条件を満たしていれば
基本的に全ての種類の献血が出来るのだが……。

加奈:「…………。」

藤堂加奈……義兄の隆道から腎臓を提供されて死の淵から奇跡的に生還した女子高生。
しかし……と言うより、だから、彼女は原則的に献血をすることができない。

◎問診により、次に該当する方は献血をご遠慮いただいています。
『今までに腎臓病にかかった』
『今までに輸血や臓器の移植を受けた』

加奈:「…………。」
みづき:「……加奈ちゃん、何見てるの?」
加奈:「あ……。」
みづき:「それ、献血の本?」
加奈:「……私、献血したくてもできないの。」
みづき:「え?」
加奈:「私に『誰かに出来ること』ってないのかなあ?体もそんなに丈夫じゃないから、
体を使ったボランティアもできないし……。」

実際、恐らく加奈が誰よりも「献血の必要性と有難さ」を理解しているに違いない。
しかし、加奈はそれに参加することができない。

みづき:「加奈ちゃんはそんなことに気を使う必要はないよ。」
加奈:「……え?」
みづき:「加奈ちゃんは、これから生きていくこと自体に
誰にも負けない存在価値があると思うの。」
加奈:「…………。」
みづき:「だから、加奈ちゃんの『誰かに出来ること』は、今幸せに生きていることを
みんなに見せてあげることだと思うの。」
加奈:[う、うん……。」

手術成功以来、看護婦の美樹や家族三人以外から「手術成功おめでとう」と言われていない
加奈にとって(そう言ってくれるような「友達」が加奈にいなかったから)、
みづきの言葉は「嬉しい」と思えるものであったに違いない。

みづき:「献血なんか、それこそ他に何もできない私達がやればいいの。
献血したくてもできない加奈ちゃんに代わってね。」
加奈:「うん……、ありがとう……。」
みづき:「お礼を言うのは私達の方。加奈ちゃんが身近にいたから、
私達にも、そう考えるきっかけができたんだし。」
加奈:「うん!」

……医療の中で最も基本的な移植医療と言われている『輸血』であるが
(「輸血は移植医療である」という認識を持っている人も実は多くはないらしい)、
脳死による臓器移植が注目される一方、ボランティアだけで成り立っている献血が
案外軽視されているのも事実である。
いくら科学技術が進歩しようとも血液自体を完全に化学合成するのは不可能だし、
いくら医療技術が進歩しようとも献血血液が無ければ簡単な外科手術もままならないのだが……。

 

コメント:「献血キャンペーン」ということで、思わず真面目なやつ作ってしまいました(^^;
ちなみに、これと同じ理由で香奈も献血できません。


加奈の『夏の夜の夢』(00/7/1)

夏になったある日、加奈は隆道と一緒に喫茶店に来ていた。

隆道:「加奈、今日は好きなものを好きなだけ食べていいぞ。」
加奈:「え?本当?」
隆道:「本当だとも。金はたくさんあるんだし。」
加奈:「それじゃ……、とりあえずかき氷とあんみつ!」
隆道:「ウェイトレスさん、かき氷とあんみつお願いします。」

そして、「とりあえず」かき氷とあんみつが運ばれてくる。

加奈:「うわーい!」

……。
…………。
………………。
……………………。

ちひろ:「……それが加奈ちゃんの見た夢?」
加奈:「うん。……変でしょ?でも、私にはまだ夢なの。」
あかね:「え?何で『まだ夢』なの?もう普通に食べられるんでしょ?」
加奈:「うん、そうだけど……。」
みづき:「…………。」

……その日、加奈は「夏物」を買いに例の三人組と一緒にデパートに来ていた。
そして、加奈は「自分が昨日の夜見た夢」について話をしていた。
しかし、みづきは三人の会話を黙って聞いている。
勉強好きの優等生のみづきには、加奈の言わんとすることはだいたいわかっているのだ。

加奈:「……でも、まだまだ節制はしようと思うの。
せっかくのお兄ちゃんの腎臓を、私のわがままなんかで
無駄にしたくないし……。」

と、加奈は下腹部をさすった。

みづき:「……加奈ちゃん、偉いね。私も加奈ちゃんのこと応援しなくちゃ。
いつまでも普通に生活出来るように。」
加奈:「え?……うん、ありがと。」

……移植腎の寿命は親子間で十数年と言われている。
しかし、本人の節制しだいでそれ以上に伸びる可能性があるのも、また、事実である。

 

注:実際には、「暴飲暴食」に気を付けていれば、
腎移植後は透析時と逆にある程度の「水分」の補給が奨励されているようです。


夏のお嬢さん(00/7/1)

〜元ネタ『加奈の郵便屋さん』のイベント〜

加奈がデパートから帰った日の夕方……

隆道:「入るぞー。」

がちゃ。

加奈:「うわーっ!」
隆道:「○▲□●△■ー!?」

な、何故か、加奈が水着姿で立っていたぁ!?

加奈:「お兄ちゃん、見ちゃあダメ。今度海に行く時まで、
これは加奈の秘密なんだから、もう。」

み、「見ちゃあダメ」って……

隆道:「そ、それじゃ何で着てるんだよ!?」
加奈:「ちょっと試着してみただけ。」
隆道:「あ?」

恐らく、加奈としては「(恐らく)生まれて初めての水着」を満喫したかったのだろう。
……あれ?

隆道:「ところで加奈、『海に行く時までの秘密』って、
浜辺でそんな格好するつもりなのか?」
加奈:「うん。ちょっと恥かしいけど、今年の夏、お兄ちゃんと
ちひろちゃんとあかねちゃんとみづきちゃんで海に行こうかと思って、その時に。
私、お兄ちゃんになら見られてもいいから。」

一応、俺は加奈に言ってやる。

隆道:「加奈、海って俺以外にも男がたくさん来るんだけどさあ。
……例えば、スケベな雅俊みたいなやつも……。」
加奈:「え?」
隆道:「……え?」

加奈は何故か驚いたようだ。
……まさか、加奈のやつ、今まで海に行ったことがないせいで
そんなことも知らなかったんじゃ……?

加奈:「……う、うーん……。」

加奈が考え込んでしまった。余計なこと言わなければよかったかなあ……?
しかし、「変な虫」が付いてきても、正直言って俺も困るしなあ……。


加奈、流行を取り入れる(00/7/2)

ところで、「兄の欲目」かもしれないが、最近加奈が急に大人っぽく見えるようになった。
実際加奈も今年で十八歳になるのだから当たり前といえば当たり前なのだが、
それでも、今までの内臓疾患による発育不順の状態を差し引いて考えれば、
「やはり『同年代の同性の友人の影響』というのも侮れないものだろうか」とも思ってしまう。

そして、休日の今日も俺は加奈と街に出かけている。

加奈:「お兄ちゃん、ちょっと待って。」
隆道:「あ?……それじゃ、もうちょっと歩くペース遅くしようか?」
加奈:「うん。」

「加奈は歩くペースが遅い」というのは以前からそうなのだが……、
とりあえず、俺は加奈に言ってやる。

隆道:「加奈、……その靴歩きにくいんじゃないのか?」
加奈:「う、うん……。」
隆道:「ま、そういうの、正直言って(朴訥な)俺には良くわからないんだけど……、
加奈がいいと思えばいいんじゃないのかな。」
加奈:「そ……、そう?」

実は、加奈は今流行の「ミュールサンダル」を履いているんだ。
どうやらデパートに行った時に水着と一緒に買ってきたものらしい。
まあ、兄としては、加奈に「流行を取り入れるくらいの心の余裕と情報源」が
出来たことを素直に喜びたいものだが……

加奈:「わ、わ、わ……!」

……うわっ!加奈が転びそうに!?
当然の如く、俺は加奈に咄嗟に手を伸ばし……!

隆道:「加奈、危ないからやっぱり腕組んで歩こう。」
加奈:「うん、ありがとう。」
隆道:「やれやれ……。」
加奈:「ふふふ、お兄ちゃんと腕組んで歩くなんて、久しぶり。」
隆道:「そ、そりゃ、まあ、俺達一応『兄妹』だからなあ……。」
加奈:「?」

……加奈に限って言えば、俺といる限り「転ぶ」なんてことは絶対にないんだ。


七夕にお願い(00/7/3)

七夕を数日後に控えたある日、大宮の医療センターにて
七夕の飾り付けが行われていた。

美樹:「加奈ちゃん、短冊は?」
加奈:「うん、これ。」

加奈は美樹に自分の願い事を書いた短冊を差し出す。

『お兄ちゃんといつまでも幸せに一緒にいられますように』

美樹:「へえ……。」
加奈:「…………。」
美樹:「この、お兄ちゃんっ子。」

美樹は笑って言った。藤堂兄妹の仲の良さは、今に始まったことではない。

加奈:「ふふふ……。」

加奈も笑っていた。

「加奈があと半年」と宣告されてから、約三ヶ月半経った日の出来事だった。

……。
…………。
………………。
……………………。

そして、その一年後……

七夕を数日後に控えたある日、加奈は例の三人と七夕について話をしている。

加奈:「私、七夕のお願い事って、絶対叶うと思うの。」
ちひろ:「え?」
加奈:「だから、これからも七夕のお願いは続けるつもり。」

加奈の言葉に、三人は顔を見合わせている。

あかね:「加奈ちゃんって、ロマンチストなんだね。」
加奈:「え?」
みづき:「『純粋』って言うのかな?そういうの。
いつまでもそういう……『子供みたいな心』って言うの?持ってるっていいね。」
加奈:「え?……う、うふふふ……。」

加奈は笑っている。……いや、「苦笑」しているのか?
違う見方をすれば、実は加奈がこの四人の中で
最も「不純な」女子高生なのかもしれないのだが……。

『お兄ちゃんといつまでも幸せに一緒にいられますように』


本屋に行こう!(00/7/5)

ところで、加奈の本好きは退院しても相変わらずだが、一つだけ不便なことがある。
「この街で最大規模の本屋『帝王堂書店』を一人で利用出来ない」ということだ。

加奈が利用する時は、仕方なく俺がついて行ってやる。

加奈:「お兄ちゃん、これ、お願い。」
隆道:「わかった。」

そして、俺はいつものように「帝王」の待つレジに行く。

隆道:「陛下、今日はこの本をいただきたく……。」
店主(帝王):「うむ。」

…………。

こんな状態が加奈の退院以来数ヶ月続いたある日……。

加奈:「お兄ちゃん、……今日は、私が行く。」
隆道:「え!?」

俺にとっては突然だった。一応レジの方を見てみるが、
今回は決して「女子店員が立っていた」という落ちではない。

加奈の目は真剣だった。「今年で私も十八歳」という自覚も、心のどこかにあるのだろう。

隆道:「……わかった。それでは、無事に再会しよう。」
加奈:「……(こく)」

俺は加奈に敬礼し、加奈も敬礼で返した。

そして、レジにて……

加奈:「あ、あの……。」

……加奈は震えていた。そして……

店主:「……お嬢ちゃん。」
加奈:「……え?」
店主:「いつも利用してくれて、ありがとうな。」
加奈:「え?」

「帝王」の意外な言葉に、加奈は驚く。

店主:「そんなに意外だろうか。私も『常連』の顔は覚えているつもりだ。」
加奈:「あ……。」
店主:「また、よろしくな。」
加奈:「……(こくこく!)」

……と、加奈は「帝王」に敬礼した。

この時の記憶が高校卒業後の加奈の進路に影響したのかどうかは、
正直言って俺にははっきりとわからない。


続・七夕にお願い(00/7/7)

〜元ネタ『加奈の郵便屋さん』の加奈の日記帳〜

今日、7月7日、七夕の日。……加奈のてるてる坊主空しく雨。
そして、俺と加奈は夜空を見上げている。

隆道:「まあ、梅雨だし、だいたい本来旧暦に祝うもんだからなあ。」
加奈:「……雨が降ったら、会えないんだよね。」
隆道:「え?」
加奈:「おりひめとひこぼし。」

思わず、俺は口ずさむ。

隆道:「♪雨が降ったらお休みでぇ〜。」
加奈:「……(じーっ)」
隆道:「くっ!」

久しぶりの加奈の「ジト目」だった。だから、俺はフォローを入れようと……

隆道:「ま、まあ……。」
加奈:「私、一年に一回しか会えなくなったら、
きっと寂しくて一年間泣き続けちゃうだろうな……。」
隆道:「……え?」

ぎゅ。

加奈は俺の腕を掴み、夜空を見上げた。

隆道:「ああ、そっか。」

俺はうなづいた。いくら朴念仁な俺でも、
加奈の言わんとしていることはわかるつもりだ……。


加奈と二十四時間テレビ(00/7/8)

今年もいわゆる「二十四時間テレビ」が放送される時期になった。
毎年二十四時間テレビは二つのテレビ局で放送され、
一つはチャリティー色の強いもの、一つはバラエティー色の強いものであり、
今回放送されるのは後者である。

隆道:「へえ、今年のテーマは『家族愛』か……。」

加奈の手術が成功したのも、家族愛の成せる技……なのだろうか。

そんなことを考えながら、チャンネルをその局に合わせる。

隆道:「あはは……。」
加奈:「うふふ……。」

正直言って、加奈と観るテレビ番組は何でも「楽しい」のだが……

加奈:「あの、お兄ちゃん。」
隆道:「あ?」

……突然、加奈が俺に話し掛ける。

加奈:「私、もう寝るね。」
隆道:「え?……もうそんな時間か。」

俺は時計を見て、知らないうちに時が過ぎ去ってしまったことを自覚する。
恐らく「夜更かし」というものを加奈はこれから一生経験しないのかもしれないが、
今更その程度のことを嘆いても仕方が無い。

加奈:「お兄ちゃん、これからテレビで面白い事あったら、明日お話してね。」
隆道:「ああ、わかった。」
加奈:「それじゃ、おやすみなさい。」
隆道:「おやすみ、加奈。」

がちゃ。

…………。

小さい時から、加奈は俺の話を聞くのが好きだった。
加奈は俺の話を聞くことで疑似体験をしようとしていたのだろうか。
そして、これからもずっとこういう関係が続くのだろうか。
……もしかしたら、俺以外に……

隆道:「……ああ、嫌だ嫌だ。」

がちゃ。

母:「テレビが嫌ならあなたも早く寝なさい、隆道。」
隆道:「いや、俺は石にかじりついても絶対にテレビを観てる。」
母:「え?ふう……。」


スクールガール(00/7/10)

夏休みを数日後に控えたある日……

男子A:「あの、藤堂さん。……。」
加奈:「……どうも。」

……いつものように、加奈はクラスメイトの男子との会話を
連絡事項伝達等の必要最小限にとどめている。

男子A:「何か、藤堂さんってとっつきにくいよなあ。」
男子B:「まあ、仕方が無いよ、藤堂さんの場合。」

そんな加奈に、例の三人組が忠告する。

ちひろ:「えっと、加奈ちゃん。ちょっと言いにくいんだけど……。」
加奈:「え?何?」
あかね:「加奈ちゃん、男子から何て言われてるか知ってる?」
加奈:「うん、『藤堂さん』って……。」

思い切って、みづきが言ってやる。

みづき:「『クールガール藤堂』って言われてるの、加奈ちゃん。」
加奈:「え?」
みづき:「加奈ちゃんが男子にあんまり素っ気無い態度取るから……。」

はっきり言って何の罪の無い加奈は、正直に自分の気持ちを言う。

加奈:「だって私、『年下』って興味無いから……。」
三人:「え?……あ、ああ。」

三人は納得した。二年も進級の遅れている加奈にとって、
今のクラスメイトは三人を含めて皆年下だったんだ。
さらに、加奈の性格(悪く言えばブラコン)を考えれば……。

……というわけで、卒業までの間、加奈が双葉学園で恋愛する……
なんてことはないはずだ。……まあ、未だ病弱な加奈を相手にするような
ある意味物好きな教師がいれば話は別なのだが……。

そして、兄の隆道としては、この状況を嘆くべきか、あるいは……。

 

注:腎移植した患者は「透析の必要が無くなった」というだけで、
実際は「透析の必要のない重度腎臓病患者」として扱われるようです。


夏祭り、再び……(00/7/12)

今年もまた夏祭りの季節になり、今日も大学の友人が
『夏祭り計画』について話を持ってきたのだが……

友人:「なあ藤堂、『夏祭り』と言えば浴衣だけど……。」
隆道:「いや、俺は家族と行くから。」
友人:「……まだ何も言ってないぞ!」

……しかし、俺は当然加奈と行く……。

…………。

どーん!
……ぱらぱら……。

加奈:「きれい……。」

加奈はうっとりした表情で花火を見上げている。
あの時と違って、今の加奈は心から花火を楽しむことができるのだ。

隆道:「……なあ、せっかく加奈も友達が出来たんだし、
友達も連れて来れば良かったんじゃないのか?」

そう聞くと、加奈の表情が少し曇る。

加奈:「……うん、私もそうしようと思ったんだけど、
みんな『用事があるから』って……。」
隆道:「ああ、そっか。」
加奈:「……みんな、気を使ってくれてるの。」
隆道:「え?」

ぎゅ。

加奈が俺の腕を掴んで、体全体で、もたれかかってきた。
傍から見れば俺と加奈は恋人同士に見えるに違いない。
……いや、気分的にも、そして肉体的にも実際「恋人同士」なのだが、
はっきり言って、薄暗い人込みの多い中で
知り合いが近くにいないからこそ出来る技だ……。

…………。

しばらく会話がとぎれて、加奈から話し出す。

加奈:「そう言えば、お兄ちゃん。」
隆道:「え?」
加奈:「『夏休みを利用して、また岡崎に来ない?』って、
ちひろちゃんに誘われてるんだけど。」
隆道:「え?『岡崎』?」
加奈:「もっとすごい花火大会があるんだって。それに……。」

その後、俺と加奈は花火を見ながら『夏休みの計画』について
しばらく語り合っていた。


加奈、DVDビデオ初体験(00/7/13)

時代の流れというものだろうか。
我が家にも「DVDビデオも見れるテレビゲーム機」がやってきた。
……と言うか、俺が買ってきたのだが、正直言って
俺も加奈も小さい頃からテレビゲームに興味があったのも事実だ。

隆道:「……で、今日はDVDビデオ見ようか。
普通のビデオより画質が良いらしいんだ。」
加奈:「うん。」
隆道:「それじゃ……。」

♪ダダダダーン……!

…………。

隆道:「な、凄いだろ?」
加奈:「…………。」

ぎゅ。

返事をする代わりに、加奈は俺の手を握っていた。
加奈の手は心なしか汗ばんでいるようだ。

隆道:「加奈?」
加奈:「…………。」

加奈はDVDビデオに集中しているようだ。

……そうこうして、その日の午後は加奈とDVDビデオを見て楽しく過ごした。
まあ今更言うことでもないが、加奈となら何をやっていても楽しいのだが……。

隆道:「……なあ、加奈?」
加奈:「…………。」
隆道:「加奈、DVDビデオ終わったぞ。」
加奈:「……え?あ……、うん。」

やれやれ……。

…………。

そして、その日の夜。

コンコン。

加奈:「入っていい?」
隆道:「あ?ああ。」

がちゃ。

加奈はパジャマ姿で立っていた。そして、数瞬の沈黙の後……

加奈:「お兄ちゃん、……一緒に寝ていい?」
隆道:「え!?」

……突然の出来事だった。

隆道:「そ、それはちょっと……。」

「親父達が居るからまずいんじゃないのか?」そう言おうとすると……。

加奈:「怖くて眠れないの。」
隆道:「は?」
加奈:「お兄ちゃんが、昼間あんな怖いもの見せるから……。」
隆道:「はあ?」

もしかして、俺はあの時誤解していたのか……?
もしかして、加奈はあの時冷や汗を出しながら恐怖で固まっていたのか……?

加奈:「……(ぶるぶる!)」

俺の返事を待つことなく、加奈は既に俺のベッドに潜り込んで震えている。

実はそのDVDビデオ、一般には人気のあるSFホラーものだったのだが、
加奈には少し……と言うか刺激が強すぎたようだ。

隆道:「ふう……。」

結局、普通の生活が出来るようになったといっても、
臆病な加奈の性格は小さい頃のままなんだなあ……。


蜜月〜ある月夜〜(00/7/16)

加奈のてるてる坊主が効いたのか、この日の夜は雲一つ無い天気になった。
そして、滅多に見られない天文ショーを見るため、珍しく加奈は遅くまで起きている。

隆道:「まあ、こればっかりは写真や俺の話じゃ実感わかないもんな。」
加奈:「うん。」

加奈は嬉しそうに返事する。「『月食観察』を口実に夜更かしする」という
加奈のアイデアも、実は見え見えなのだが。

加奈:「……月が完全に欠けるのって何時くらい?」
隆道:「十一時くらいじゃないのか?」
加奈:「それまでは、一緒に起きていられるね。」
隆道:「あ?……ああ。」

加奈はまた嬉しそうに言い、俺も嬉しくて返事した。
月食のおかげで、久しぶりに加奈の就寝時間に関するわがままが通ったのだ……。

…………。

加奈:「それじゃ、おやすみなさい。」
隆道:「ああ、おやすみ。」

ちゅ。

……赤くなった月は、加奈と俺を見守っていてくれているような気がした……。


今日は防災の日(01/9/1 3:42)

今日は防災の日。……ということで、俺は緊急時に持っていくものの点検をすることにした(注:あまり脈略がなくてすみません(笑))。

隆道:「えっと、懐中電灯、ミネラルウォーター、……。」
加奈:「…………。」

加奈は隣でじっと見ている。そんな加奈を見て、俺はいたずら心を起こす。

隆道:「ああ、これも持っていかなくちゃあな。……大事な物だからな!」
加奈:「あう……。」

そう言いつつ、俺は加奈を抱きかかえた。突然のことで加奈は驚いたようだ。一時期よりも体重の増えた加奈だが、無論抱きかかえられない重さではない。

加奈:「お兄ちゃーん……。」
隆道:「ああ、そうだな、悪い悪い。お前は物じゃないもんな。」

そのとき、加奈が返した言葉は……。

加奈:「そうだよ。……でも、私、お兄ちゃんのものだけど。」


ORGEL(01/9/7 23:04)

連絡によると今日"例のもの"が家に届くということで、俺は寄り道せずに帰宅する。

隆道:「ただいま。」
加奈:「おかえり。」

ある意味当然かもしれないが、加奈はたいてい俺より早く帰宅している。それを考慮して宅配屋には夜間届けるように指定しておいたのだが……、しかし、加奈の次の一言が、俺の心に霜を降らせる。

加奈:「お兄ちゃん、……『オルゴール館』って何?」
隆道:「ああ!?」

やられた!まったく、"宅配屋"というやつはこっちが時間指定しても配達の都合で時間を変えるというのが常なのだが(作者注:宅配屋様、すみません(笑))、よりによって今回も……!

隆道:「あ、ああ、それはな……。」
加奈:「ちょっと来て。」
隆道:「……え?」

答えに窮した俺は加奈に連れられて自分の部屋に入る。……その小包は、俺の部屋の隅のほうに置いてある。

加奈:「それ、……爆弾だと思う?」
隆道:「はあ?」
加奈:「だって、『オルゴール館』なんて知らないところから……。」

それ以上加奈は何も言わないが、その目は「まさか(クールマンの)お兄ちゃんがオルゴールなんて」と言わんばかりである。

隆道:「ふう……。」

俺はため息をついて、とりあえず何も言わずに小包を開けることにする。

中のものを見れば、たぶん加奈は本当に爆弾が入っているよりもびっくりするはずだ。何しろ、「加奈の好きな歌を元に特別注文して作らせた」オルゴールが入っているのだから……。


続ORGEL(01/9/25 23:38)

(原案/鈴北 D様)

<『加奈〜いもうと〜』スペシャルサウンドアルバム発売記念SS>

その日から加奈は暇さえあればオルゴールを聴くようになった。そしてその夜も加奈はオルゴールを聴く。

♪〜

加奈:「♪〜」
隆道:「……加奈、遅いからもう寝ろ。」
加奈:「はぁい。」

ぎり、ぎり、ぎり、……。

隆道:「?」

ぎり、ぎり、ぎり、……。

加奈はオルゴールのゼンマイを巻いている、と言ってもはっきり言って巻き過ぎだ。

隆道:「加奈、そんなにいっぱいゼンマイ巻くなよ。」
加奈:「……え?だって、私が眠るまでずっと聴いてたいから……。」

ふう……。

隆道:「でも、ここに書いてあるだろ?『ゼンマイの巻き過ぎにご注意下さい』って。」
加奈:「う……。」

加奈はしょんぼりしてそのまま寝てしまった。

…………。

ところで、その夜から何故かわからないが加奈は悲しい夢を見るようになった。「草原に俺と二人で"今生の別れ"をする夢」らしい。移植の成功した今そんな心配をする必要は無いのと思うのだが、加奈は「恐い」と言う。いったいどうしたものか……。

そんな折、あるCDが発売された。そのCDにはオルゴールで使われている曲が収録されている(作者注:この場合『愛人』とか『モンキーマジック』とかいう落ちじゃ決してないぞ!(^^;))。俺は早速そのCDを購入し、「バックアップのために」「あくまでも"個人的使用目的で"」(作者注:(^^;))CD-Rに焼くことにした。で、ついでにオルゴールの音色も一緒に録音して入れることにした。まあ、「通常CD-Rは74分まで焼けるから余った分をオルゴールに回すだけのこと」その程度の感覚だったのだが……。

…………。

……いや、ここではくどくど言わないが、その作業は困難を極めた。しかし、何とか録音に成功し、そのCD-Rは加奈にあげた(作者注:(^^;;))。で、「結局加奈はオルゴールの部分のみを連続再生するようになった」という落ち付きではあるが、まあ、これならオルゴール本体を傷めることなく永久に連続再生できるからよしとすることにした……。

そしてそれからしばらく後のこと……

加奈:「お兄ちゃん、ありがとう!」

がばっ!

隆道:「あん?」

……朝っぱらからいきなり加奈に抱き付かれた。訳を聞くと、「あのCD-Rを聴きながら眠るようになってから"悲しい夢"を見なくなった」とのこと。まあ理由は他にもあるかもしれないが、加奈としては「お兄ちゃんのおかげ」という理由で、自分で納得しているようだ。

……で、いや、ここではくどくど言わないが、まあ、それがきっかけで加奈と俺の仲がいっそう深まっただけのこと……。

…………。

それから数年後、紆余曲折を経て加奈と俺は結婚した。そして結婚披露宴の引出物として、メールソフト『加奈の郵便屋さん』とともに"例のCD-R"を焼き増しして贈ることにした。

で、基本的には法律違反なそのCD-R、あくまでも「身内の者が個人的に楽しむために」配布された(作者注:(^^;;;))のであるが……しかし、一部"不届き者"の所業によりメールソフト同様広く一般に知れ渡るようになってしまった。無論、そのCDの著作権者にも……。

そして、それはもうすぐ皆さんのもとに……。

<『加奈〜いもうと〜』スペシャルサウンドアルバム発売記念SS・完>