ED1の「蜜月」の辺り(第一期)

サンタが街にやってきた
加奈:「お兄ちゃん、ほら、
私からのクリスマスプレゼント。」

隆道:「『クリスマスプレゼント』
って……お前、手ぶらじゃないか。
それに、何だよ、その格好は?」
加奈:「プレゼントはちゃんと
お兄ちゃんの目の前にあるよ。
……これ、お兄ちゃんが
一番欲しかったものでしょ?」

隆道:「え?」

加奈:「私がお兄ちゃんから
貰ったものと比べたら大したもの
じゃないかもしれないけど、
よかったら……。」

……だからED1が一番気に
入ってるんです!(^^ゞ
「メリークリスマス!」より、
加奈サンタ
ある愛の歌のように(99/11/19 23:19)

メリークリスマス!(99/12/23 07:01)

二人の除夜(99/12/30 02:04)

今日の夢、お母さんの夢(00/1/1 00:20)

家族の「願い」は……(00/1/2 23:08)

ある愛の小説のように(00/1/4 23:42)

加奈の『成人の日』(00/1/5 23:16)

鬼の節分(00/1/11 23:26)

涙の……・前編(00/1/30 03:42)

涙の……・後編(00/2/11 18:22)

キャンペーンガール(ED5,6ネタバレ)(00/3/2 23:15)

真・涙の……(00/3/14 01:17)

真・加奈の『大好き』(00/3/14 23:17)

『伝説の机』の上に……(00/3/22 07:22)

信頼の証し(00/4/1 03:36)

キャンペーンガール2(ED5,6ネタバレ)(00/4/3 04:42)

加奈の『仲間』・前編(00/4/4 23:13)

加奈の『仲間』・中編(00/4/9 02:56)

加奈の『仲間』・後編(00/4/10 00:24)

加奈の憂鬱(00/4/11 23:53)

禁断の兄妹(00/6/14 23:17)

父の日の出来事(00/6/15 23:35)

加奈の誕生日祝い(00/6/18 07:42)

水族館に行こう!2(00/6/18 23:43)

投票に行こう!(00/6/19 23:19)

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ある愛の歌のように(99/11/19 23:19)

加奈と俺が結ばれてから数日後のこと。

加奈:「お兄ちゃん、以前約束したこと覚えてる?」
隆道:「え?約束?」
加奈:「うまいたけのこ汁飲ませてくれるって。」
隆道:「?」
加奈:「森林公園に連れてってほしいの。」
隆道:「あ、ああ。」

それで次の休日、俺は加奈を連れて森林公園に来た。
空は快晴、白い飛行機雲の筋が見えていた。
そして、加奈は白いスニーカーを履いていた。
今やどこから見ても普通の女子高生だ。

隆道:「さあ、ついたぞ。」
加奈:「ほら!私今、生きてる!」
隆道:「え?」

加奈がいきなり叫んだ。周りの人達が一斉に俺達の方を向いた。

隆道:「か、加奈!」

俺が制止したにも関わらず、あの加奈が走り出した。

加奈:「ハアッ、ハアッ。」

案の定加奈はすぐ息切れを起こし、立ち止まってしまった。

隆道:「そら言わんこっちゃない。いくら腎移植したと言っても……。」
加奈:「お兄ちゃん、見たでしょ?……確かに私、生きてる。」
隆道:「え?」
加奈:「私が今走れるのも、息切れしていられるのも、みんなお兄ちゃんのおかげなのよ!」

俺は……唖然としていた。「何を当然のことを」そう考えた。
しかし……加奈は一度「死」を覚悟したのだ。
今の加奈にとって、何よりも「生きていること」そのものが嬉しいのか……。
俺自身蜂で死にそうな目にあったことはあるが、
加奈ほど深刻な状態になったことはないから想像するしかないんだ……。

加奈:「私、ドナーになってくれたお兄ちゃんのために生きてく!」

加奈は「当然のこと」を言っているだけなのに……。

隆道:「俺も、お前が生きていくためなら何度でもドナーになってやるよ!
心臓はちょっと無理だけど、肝臓でも骨髄でも、必要になったら何でも分けてやるよ!」

……一方俺は、聞く人が聞けば怒り出すような暴言を叫んでいた。
しかし、それが俺の本心なんだ。

隆道:「何しろ俺達は、誰も割って入ることのできない
『一心同体のミスマッチゼロの関係』なんだからな!」
加奈:「ふふふ、ありがとう、お兄ちゃん!」

俺達の暴走はもう誰にも止められない、俺達はそんな世界に入っていた。


メリークリスマス!(99/12/23 07:01)

俺と加奈が結ばれてから、数日後のある日……。

友人A:「え?お前行かないのかよ?」
友人B:「マジ!?」
隆道:「ああ、マジだよ。」

……俺は大学のサークルの友人と聖夜の予定について話し合っていた。

友人A:「でもお前、例の女とは別れたんだろ?」
隆道:「ああ。」
友人B:「だったら、青心女子大のお姉様方とのクリスマス合同コンパ、
断ることもないだろ?」
隆道:「とにかく行かない。その日は家族と過ごすことになってるから。」
友人A:「はあ!?正気か!?」
友人B:「もういい。……藤堂、あとで後悔しても知らんぞ!」
隆道:「言ってろ。」
友人A:「寂しい奴!」
友人B:「やっぱり藤堂って変わってるよなあ。」

…………。

隆道:「……ふう。」

やっと「悪魔の誘惑」を断ることが出来た。
俺はそのままクリスマスプレゼントを買いに行った。

そして、聖夜。「家族」だけの「寂しい」クリスマスが始まった。

隆道:「♪きーいよーしー、こーのよーるー。」
加奈:「…………。」

この日もちょうど両親の帰りは遅い。

隆道:「それにしても、加奈の退院が間に合ってよかった。」
加奈:「……(こくん)」

俺は、部屋を暗くして数本のろうそくに火をともし、思いっきり「雰囲気」を出していた。
やはり加奈はこういう雰囲気に慣れていないらしく、さっきから黙ったままでいる。
かく言う俺も、ろうそくに照らされた加奈の横顔を見て実はどきどきしているのだ、
……俺の『妹』なのに。

隆道:「それじゃ、……メリークリスマス。」
加奈:「……(こくん)」

かちゃん。

シャンパンのグラスと牛乳のグラスが音を立てる。
せっかくの聖夜に、わざわざ加奈の体調を悪くさせるようなことはしたくない。

隆道:「加奈、楽しいか?」
加奈:「……(こくん)」
隆道:「そうか、よかった。」
加奈:「……(こくん)」

神様、「もう一つ」お願いします。両親の帰りがもっと遅くなりますように……。


二人の除夜(99/12/30 02:04)

紅白もゴダイゴのいる白組の圧勝に終わり(僕のHPでは紅組圧勝になっていますが(笑))、
俺は加奈と「兄妹仲睦まじく」近所のお寺に『除夜の鐘』をつきに行くことにした。

隆道:「加奈、お寺にお参りに行こうか?」
加奈:「……(こくん)」
隆道:「ついでに除夜の鐘ついてこよう。一人一回つかせてくれるんだ。」
加奈:「……(こくん)」
隆道:「父さん、それじゃ行ってくる。」
父:「隆道、あまり遅くならないようにな。」
隆道:「わかってる。すぐ帰ってくるよ。」

退院直後ということで加奈はまだしばらくは自宅で休養していなければならず
(先生と美樹さんの至上命令だから仕方が無い)、
今年の正月は家族で静かに過ごすことになっている。
だから、正月中は「二人っきり」になれる機会は皆無だ。

俺は……別に、加奈が俺のそばにいれば、それで……。

…………。

俺はいつものように加奈の手を引いて歩き、しばらくして、お寺に着いた。

隆道:「加奈、鐘の方が空いてるから、先に鐘つこうか?」
加奈:「……(こくん)」

俺達は鐘の前まで来た。

……そう言えば、加奈って……?

隆道:「加奈、先につきなよ。」
加奈:「え?」
隆道:「いいから。」
加奈:「……(こくん)」

とてて……。

加奈:「う〜ん……。」

こーん。

……やっぱり加奈は鐘つきの要領を得ず……というか、それ以前に
恐らく加奈の体力自体が無いのだろう、撞木があさっての方向に行ってしまった。

隆道:「失敗しちゃったな。」
加奈:「……ほら、お兄ちゃんの番。」

加奈は、明らかに残念そうな表情をして、俺に撞木の縄を手渡そうとした。
俺は、それを受け取らず……

隆道:「加奈、……俺と一緒についてくれよ。」
加奈:「え?お兄ちゃん、一人一回つくんじゃ……?」
隆道:「いや、これでいいんだ。俺達の場合は……。」

……そのまま加奈の手を握り……

隆道:「……『一心同体』だから……な。」
加奈:「……(こくん)」
隆道:「それじゃ……!」

ごぉ〜ん……。

……来年も、二人と皆さんと僕にとっていい年でありますように。


今日の夢、お母さんの夢(00/1/1 00:20)

正月。

年始の挨拶を一通り終わらせ、お節料理が運ばれてくる。当然自家製だ。
例年より量が多いのは……

母:「加奈が突然『料理を教えてほしい』なんて言い出すんだもの。
とりあえずお節料理教えてたら、何か作り過ぎてしまったわね。」

……という訳だ。

父:「まあいいさ、母さん。」
母:「そうね。お客様がいらっしゃったときにでもお出ししましょう。」

俺は想像してみた。

…………。

美樹:『明けましておめでとうございます。』
母:『明けましておめでとうございます。
今までお世話になりました。今日もわざわざ来て下さって……。』
美樹:『いえ、看護婦として当然のことです。
今日も先生から加奈ちゃんの様子を見てくるように言われただけで……。
ところで、この料理おいしいですね。』
母:『近藤さん、これ、うちの加奈が作ったんですよ。』
美樹:『えーっ!?これを加奈ちゃんが!?……はぁ……。』

…………。

母:「それにしても何かあったのかしら。加奈に『いい人』でもできたのかしら?
……もしかして加奈、あの同級生の男の子?」
隆道:「!?」

しかし、と言うか当然……

加奈:「……(ぶんぶんぶん!)」

……加奈は首を思いっきり横に振った。

母:「あらそう。それじゃ、加奈も突然紹介してくれるのかしらね、隆道みたいに。」
隆道:「ぐっ……!」
母:「今時の若い子は簡単に結ばれたり別れたりで、結構大変みたいね、隆道。」
隆道:「……げほっ!!」
加奈:「あ、お兄ちゃん……。」
父:「…………。」

手術成功後『彼女』のことを聞かれて俺が「別れた」と答えた時、
母さんは残念そうな顔をしていた。

母:「まあ、いいわ。あんな良さそうな娘さんを手放して
苦労するのは隆道なんだから。それに、まだうちには加奈がいるし。」
加奈:「え?」
母:「今まではいろいろあってお母さんもちょっと『あれ』だったけど、
料理以外にも、これからは加奈にいろいろなこと教えてあげるわ。
……加奈と、加奈の未来の旦那様の為に。」

母さんは笑って言い、加奈の初詣の着物を取りに行った。
母さんのこんな笑顔は、正直言って今日初めて見たんだ。


家族の「願い」は……(00/1/2 23:08)

お節料理で腹と心を満足させた後、家族で神社へ初詣に出かけた。
ちなみに、「神社」とは例の「夏祭り」のある神社のことだ。
本音を言えば「二人っきり」で来たかったのだが、まあ、仕方が無い。

神社に着くと、俺達は早速本殿に向かった。
加奈がいるから、なるべく早く用事をすませたいんだ。
風邪などうつされてはたまらない。

賽銭を投入し、柏手二発、祈願。
ちなみに、賽銭はいつもより多い。

隆道:「加奈、何お願いしたんだよ?」
加奈:「教えたらお願いが叶わなくなるから、教えない。」
隆道:「けち。」

加奈は少しむっとして……

加奈:「それじゃ、お兄ちゃんは何お願いしたの?」
隆道:「教えたら願いが叶わなくなるから、教えない。」
加奈:「けち。」
隆道:「ははは……。」
両親:「…………。」

……そう、加奈の願いは何かわからないが、俺の願いは叶ってくれないと困るんだ。
いや、俺だけではない。恐らく、俺と両親の共通の願いは……

「願わくば、いつまでも加奈と一緒に楽しく過ごせますように……。」


ある愛の小説のように(00/1/4 23:42)

不覚だった。

「どうせ加奈と二人っきりになれないのなら、せめて寝正月を」と
毎晩夜更かししたのが祟ったのか、風邪を引いてしまった。

昼頃、病床で俺は美樹さんの言葉を思い出していた。

美樹:『腎臓片方無くすと、結構大変なんだからねー。』

がちゃ。

加奈:「お兄ちゃん、お昼御飯だよ。」

加奈が昼飯の雑炊を持ってきた。加奈は俺の給仕係を務めてくれている。
傍から見れば、麗しき兄妹愛だ。

隆道:「加奈、ありがとう。頂きます。」
加奈:「…………。」

俺が食べる様子を、加奈は黙って見ている。
まあ、加奈に「あ〜ん」を期待するのは無理だとしても、
黙って見ているのも何だとは思っていたが……。

……あとで母さんから聞いた話だが、雑炊は加奈が作ったものだった。
この時「旨い」の一言でも言ってやればよかったか、……本当に旨かったんだから。

俺が食べ終わると、加奈は林檎を剥きはじめる。

隆道:「林檎剥くの、本当に上手くなったな。」
加奈:「お兄ちゃん、上手くなったのは林檎剥くのだけじゃないんだよ。」
隆道:「え?」

包丁と剥きかけの林檎を置き、突然加奈は顔を上げ……。

加奈:「ん……。」

ちゅ。

……一瞬の出来事だった。

隆道:「お、おい……。」
加奈:「お兄ちゃんの風邪なら、移っても平気……。」
隆道:「あ……。」

いつもの加奈ではなかった。
こんな積極的な、色っぽい言葉を言う加奈を見たことがない。

案の定、加奈は自分が言った言葉で赤面している。

加奈:「あ、あの……、以前読んだ小説に書いてあって、
一度言ってみたかったから……。」
隆道:「え?」
加奈:「……それじゃ、お大事に!」

バタバタ……。

茫然自失の俺と昼飯の食器と包丁と剥きかけの林檎を置き去りに、
そのまま加奈は部屋を飛び出してしまった。

隆道:「……小説に書いてあったって……?」

……そう言えば、加奈はたまに『その手の小説』を美樹さんから借りていたっけ……。

隆道:(美樹さん、加奈には余計な知識吹き込んで……。)

そう思わずにはいられない、正月の「気分の良い」ある日だった。


加奈の『成人の日』(00/1/5 23:16)

加奈の看病のおかげで俺の風邪は治った。

そして、幸ある、加奈のいる日々。(この先)一ヶ月経とうが二ヶ月経とうが、
加奈が病院に戻ってしまうことはない。
加奈は既に復学しており、料理の腕前はドーナツを作れるくらいになっていた。

そしてその日、父は真剣な表情で俺に加奈を呼んでこさせた。
俺はカレンダーを見た。今日は祝日だった。

その席で、父は加奈に真実を告げた。

父:「許してくれなくても……。」
加奈:「許します。」
父:「……ゆ、許すのか?」
加奈:「今度から気をつけてね。……ね、お兄ちゃん?これでいいよね?」
隆道:「いいんじゃないか。その手の糾弾はもう俺がさんざんやったし。」
加奈:「親子だもんね。」

(珍しく)おろおろする父と泣き出す母と対照的に、加奈は落ち着いたものだった。
加奈は既に真実を知っていたようだったから。

父:「すまなかった……本当に……。」
加奈:「もういいったら、お母さんも泣かないでよ……。」

こうして告知は終わり、今日から
「加奈は養女で、俺と加奈は血の繋がらない義兄妹」
という事実を前提にした生活が始まることになる。

しかし、たぶん生活そのものに急激な変化は無いと思う。
少なくとも俺と加奈は戸籍上は紛れもない「兄妹」なのだから。

俺は、両親が今まで真実を言わなかった理由を考えていた。
恐らく「義理だからということで俺と加奈がもし『間違い』を犯したら……」
と考えたのだろう。
だとしたら、俺も加奈も両親の期待に応えなければならない。
……少なくとも、表面的には。

俺は再びカレンダーを見た。年齢的には少し早い、加奈の『成人の日』だった。


鬼の節分(00/1/11 23:26)

両親の告白から数週間後……

俺と加奈、そして両親は以前と同様に生活をしていた。
まあ正直言えば、両親の期待空しく既に俺と加奈は「一線」を越えて
しまっているんだから今更何かを変えたところで仕方が無いし、
要はバレなければいい……正に「禁忌を犯した犯罪者」の気分だった。

……その日は節分ということで、俺と加奈はそれぞれ鬼面(おにめん)を作っていた。
「この歳になって今更?」と思うかもしれないが、とにかく
「今までできなかったこと」は何でもしてやりたいんだ、……加奈のために。

ところで、鬼面は何かをイメージした方が作り易いが……

隆道:「……あ、あれ?……ははは……。」

……完成した面を見て思わず苦笑してしまった。
どことなく『例の少年』に似ているんだ!

隆道:「……ま、いいか。」

俺はその面を持って加奈の部屋に行った。

がちゃ。

隆道:「加奈ー、鬼面、出来たかー?」
加奈:「うん。」
隆道:「え?」

加奈の持っていた面は、どことなく『例の女性』に似ていた……。

隆道:「加奈……一応言っとくけど、確かに俺も以前は『その女』のことを
嫌いだと思ったけど、……結局俺は加奈でなければ嫌だったから……。」
加奈:「ふぇ?……私だって……一応言うけど、私も以前は『その男の子』のことを
嫌いだと思ったけど、……結局私はお兄ちゃんじゃなきゃ嫌だったから……。」
隆道:「え?……ははは……。」
加奈:「ふふふ……。」

そうなんだ。だから俺も加奈も「彼」や「彼女」をお互いに遠ざけようとしたんだ。
「取られたくなかった」から、「取られるかもしれない」と思ったから……。

……で、結局その面は両親に被ってもらうことにした。
例の告白の後でもあり、「加奈の頼み」なら両親は喜んで聞いた。

それにしても、俺も加奈も豆まきに妙に力が入ってしまったことは、
反省を要するところだ。


涙の……・前編(00/1/30 03:42)

俺が大学から帰ってくると、加奈はいつも家にいる。
既に加奈は高校に復学しているが、どうせ出席日数不足で留年するし、
「大事をとる」ということで(冗談ではなく、加奈はほんの数ヶ月前まで
本当に「死にそうな状態」だったのだ)学校が終わればすぐ家に帰ってくる。

そして、ある金曜日のこと……。

隆道:「ただいま。」
加奈:「お帰り。」

台所のほうから返事が聞こえた。俺は台所に行く。

隆道:「加奈、またドーナツ作ってるのか?」
加奈:「うん。」
隆道:「それじゃ、……え?」

俺は出来立てのドーナツに手を伸ばしたが、……ドーナツは真っ黒だった。

隆道:「加奈、ドーナツ真っ黒になってるぞ。」
加奈:「うん。良く出来てるでしょ?」
隆道:「『良く出来てる』って……、真っ黒になってるのにか?」
加奈:「え?」
隆道:「まあ、いいか。愛する加奈が作ったんだし、多少失敗してても……。」
加奈:「うう……。」
隆道:「……え?」

気がつくと、加奈の瞳は潤み、そして……

加奈:「もういいよ!お兄ちゃんのバカぁ!」

……そのまま加奈は二階に上がってしまった。

隆道:「何なんだよ、まったく……。」

突然の出来事に俺は訳も分らず、「出来損ないの」ドーナツをかじった。
しかし、それは……

隆道:「……これ、チョコレートドーナツ……?」

……うかつだった!『その日』とはまるっきり縁の無かった俺は
本当に気がつかなかったのだ!!(ちなみに「例の女」とは四月に再会して
十月過ぎに別れているから、彼女から貰ったことはない)

後悔と自責の念にとらわれながら、とりあえず俺は加奈の部屋に向かう。

隆道:「おーい、加奈ー。」
加奈:「…………。」

加奈はすねてしまったらしく、鍵を掛けたまま返事もしない。
正直言って、こういう状態の女の子の対処の仕方も俺自身よくわからないのだ。
「加奈も普通の女の子になったんだなあ」という感慨が起こる前に、
俺も本当に困ってしまった。

隆道:「やれやれ……。」

……長い一日になりそうだった。

(続く)


涙の……・後編(00/2/11 18:22)

がちゃ。

しばらくして加奈が部屋から出てきた。とにかく、この場は謝らなければ……

加奈:「…………。」
隆道:「ごめん、加奈。あれ、チョコレートドーナツだったんだな。
上手く出来てたよ。」
加奈:「うん、ありがとう。」
隆道:「いや、お礼を言うのは俺だよ。俺のために、バレンタインデーの……。」
加奈:「え?……ばれんたいんでぇ?」
隆道:「え?」

何故か加奈が驚き、その反応を見て俺も驚いた。

加奈:「ううん、あれ、ちょっと作ってみたかっただけなの。
でも、我ながら上手く出来たから、病院でお世話になった人に持って行こうと思って。
……やっぱり下手なもの持っていけないでしょ?特にお世話になった美樹さんには。」
隆道:「は?……あ……。」

俺は力が抜けてしまった。てっきり俺に作ってくれたものとばかり……。

加奈:「あの、ところで、お兄ちゃん。」
隆道:「な、何だよ?」
加奈:「バレンタインデーのチョコレート、欲しいのなら今あげるよ。」
隆道:「え?」
加奈:「もう買ってあるし、『月曜日』にあげようと思ってたけど
何か『催促』してるみたいだから……。」
隆道:「はあ!?……い、いいよ……。」
加奈:「?」

……まあ、とにかく、今回は俺の勇み足だったんだ。
しかし、世が世なら他人の加奈に、こうも左右される俺の人生……。

 

コメント:あーあ、結局いいオチが思い付きませんでした(^^;


キャンペーンガール(ED5,6ネタバレ)(00/3/2 23:15)

その電話は、ある日突然かかってきた。

女性:『もしもし?藤堂隆道様ですか?』
隆道:「はい。」
女性:『この度は、腎移植成功おめでとうございました。
遅れ馳せながら、心からお祝いを申し上げさせていただきます。』
隆道:「は?……どうも。」

もちろん、お祝いの言葉を貰うこと自体は嬉しいのだが……

隆道:「……ところで、あなたはどなたですか?」
女性:『あ、失礼しました。私、臓器移植コーディネーターの織笠と申します。』
隆道:「え!?」

これって「知的ルート」じゃないよなあ……?

織笠:『藤堂様、当方は脳死肝移植のみを扱っている訳ではありません。』
隆道:「え、ええ、それは知っていますけど……。」
織笠:『今回のこと、私もたいへん感動いたしました。そこで、ぜひ
「キャンペーン」に使わせていただきたく思い、今回、電話をいたした訳です。』
隆道:「はあ。」
織笠:『詳細は後程そちらに直接お伺いしてからということで、
アポイント、よろしいでしょうか?』
隆道:「あ、はい。」
織笠:『ありがとうございます。それでは日時と場所ですが……。』

数日後、俺は加奈と一緒に織笠という人物に会った。
初対面だからその人について細かい所まではわからなかったが、
とにかく「悪い人」ではない、ということだ。
織笠さんの話では、初対面は普通身内を亡くした直後になるので
そういう人の目には自分は鬼や悪魔のように映るのだという。
因果な役回りらしい。

結局このキャンペーンに俺と加奈は参加することにした。
何より加奈が賛成したからなのだが(その辺は織笠さんの「作戦勝ち」か)、
暫く後……

加奈:「私、日本に生まれてよかった。」

……「お雛様」の衣装を纏った加奈が俺の前に現れた。

織笠:「藤堂様、今回のご参加ありがとうございました。」
隆道:「いえ、どういたしまして。」
織笠:「それで『次回』の予定ですが……。」
隆道:「はあ!?」

そしてその二週間後、加奈は「郵便配達」の衣装を着せられ……、
その帽子には、当然のように「意思表示カードのハートマーク」が付いていた。


真・涙の……(00/3/14 01:17)

今日は3/14。つまりホワイトデー。
大学帰りに適当に選んでしまったが、『これ』で良かったのだろうか……?

隆道:「ただいま。」

…………。

……あれ?返事が無い。時間的には加奈は既に帰宅しているはずなのに……。

隆道:「おーい、加奈ー?」

とりあえず二階の加奈の部屋に行く。

がちゃ。

隆道:「あ……。」

果たして、そこに加奈はいた。そして……

加奈:「うう……。」

……泣いていた。

隆道:「ど、どうしたんだよ!また誰かにいじめられたのか!?」
加奈:「ぐすっ……ううん、今日高校で卒業式があって……。」
隆道:「まさか、卒業生の誰かと別れるのが辛くて泣いてたのか?」

「加奈はあまり高校には行ってないはずなのに」
その疑問に答えるように、加奈の返事は……

加奈:「……貰い泣き……。」
隆道:「はあ?」
加奈:「うう……。」
隆道:「ふう、……あ、そうだ!」

「加奈のやつ、ここまで涙腺が弱かったのか」と思いながらも、
俺はプレゼントを渡す。

隆道:「ほら、『これ』で涙ふけよ。」
加奈:「う……うん。」

早速役に立ったようで、俺も何故だか嬉しくなって……

加奈:「うう……。」

……い、いや、嬉しがってる場合ではない!
とりあえず今は加奈を慰めなくては……。


真・加奈の『大好き』(00/3/14 23:17)

一応、今日は加奈の高校、双葉学園高校の終業式。

隆道:「ただいま。」
加奈:「おかえり。」

既に終業式を終えて帰宅していた加奈は、やけににこにこして俺を出迎える。
この一年あまり学校に行ってなかった(と言うより学校どころではなかった)加奈は
特に「センチな気分に浸る」ということはないようだ。

加奈:「お兄ちゃん、これ、ちょっと読んで。」
隆道:「あ?」

加奈から手渡されたものは、いわゆる『学級文集』だった。

隆道:「えっと……、『私の兄、藤堂加奈』……?」
加奈:「ふふふ……。」

加奈:『私には兄がいます。私にとって、世界中で誰よりも大切な兄です。
この一年、学校の思い出はあまりありませんが、
それ以上に大切な『思い出』が私には残っています。
それは私の兄との思い出です。

(中略)

私を透析という束縛から解放してくれた兄。
私はそんな兄が大好きです!』

隆道:「お、おい、加奈……。」
加奈:「うん、みんなからブラコンって言われちゃった。」

慌てる俺をよそに、加奈は嬉しそうに言う。

加奈:「ところでお兄ちゃん、明日からまた学校休みなんだけど……。」
隆道:「あ、ああ。」
加奈:「……また『思い出』作ろうね!」
隆道:「ああ、そうだな。」

俺も、加奈に負けないくらい嬉しそうに応えた。
正直言って、俺もずっと加奈と一緒にいたいと思っているんだ。


『伝説の机』の上に……(00/3/22 07:22)

春休みのある日、加奈は自習する為に高校に行くことにした。
春休みの間、そういう生徒の為に校舎は開放されているのだが……

隆道:「……でも、何もわざわざ学校に行かなくても……。」
加奈:「家にいると勉強がはかどらないから。」
隆道:「……え?」
加奈:「お兄ちゃんがいて……。」
隆道:「あ……、ああ。」

加奈は少し赤くなってうつむき、理由がわかる隆道もそれ以上言えなかった。

そして、高校にて。

男性:「おい!お前ら、練習だからって手を抜くな!」

体育館の近くを通り過ぎる時、中からボールの跳ねる音と怒鳴り声が
聞こえてきたので加奈はそうっと覗いた。中には見覚えのある男性が
仁王立ちしてメガホンを持っていたが、加奈は今日の目的を達成するために
すぐそこを離れた。

そして、校舎を歩いていると……

教師:「あら、藤堂さん、自習に来たの?」
加奈:「はい、先生。」
教師:「しっかり返事が出来て、よろしい。」
加奈:「はい、ありがとうございます。」

……あの日隆道が会わせてくれた教師に会い、二、三会話する。
そして……

加奈:「あ、あった。これこれ。」

……幾つかの教室を周り、遂に、『クールマン藤堂』と書かれた机を見つけた。

加奈:「それじゃ……。」

早速加奈は油性ペンで加筆修正する。

まず「傘」を描き、その隣りに……

加奈:「……『藤堂』……あ。」

「カ」を書いた時点で手を止める。幾ら何でもこれでは余りにも直接的過ぎる。

加奈:「あ、そうだ。」

暫く思案して、考えついたものは……

加奈:「……『かな』……そして……『?』……と。」

こうして、「クールマン藤堂−藤堂かな?」の相合傘は完成した。

加奈:「ふふふ……。」

これで、この落書きが残っている間、「伝説」は語り継がれるのだ。


信頼の証し(00/4/1 03:36)

今日、加奈は突然俺に言ってきた。

加奈:「お兄ちゃん!私、お父さんから聞いたんだけど、
お兄ちゃんと私って本当は実の兄妹だったんだって!」
隆道:「え?」

今日はエイプリルフール、当然そんなものは嘘に決まっている。
しかし、一応俺は加奈に合わせてみる。

隆道:「そっか、父さん、本当のこと加奈に喋っちゃったのか。
あれは父さんと母さんと俺の三人だけの秘密だったのに。」
加奈:「え?」
隆道:「だいたい、そうでなけりゃ手術が成功するはずないよな。なあ、加奈?」
加奈:「う、うん……。」
隆道:「そう言えば、加奈も一応普通の暮らしが出来るようになったし、
俺も、もうそろそろ妹離れしなければな。」
加奈:「…………。」
隆道:「とりあえず、合コンで新しい彼女でも作るか……。」
加奈:「うう……。」
隆道:「……え?」

俺の言葉を黙って聞いていた加奈の目に、ついに涙が溢れ出してきた。

隆道:「お、おい、嘘だよ。加奈ー。」
加奈:「で、でも……。」
隆道:「だいたい、最初に嘘言ってきたの加奈のほうだろ?」
加奈:「……お兄ちゃんが私に嘘言うはずないと思ってたから……。」
隆道:「え!?」
加奈:「うう……。」

……そう言い残し、加奈は本格的に泣き出してしまった。

隆道:「加奈ー、ごめん!もう嘘言わないから!」

「信頼されているということは結構気を使うものだ」と思いつつ、
とりあえず俺は加奈を慰めることにする。
それにしても、当分、というか一生俺は加奈に嘘はつけない……と思った。


キャンペーンガール2(ED5,6ネタバレ)(00/4/3 04:42)

その日、俺は球場で高校野球(地方大会)の開会式を見ていた。
その日は初日で、俺は特に高校野球ファンという訳ではないのだが
開会式から見ていた理由はちゃーんとある。
それは……

場内アナウンス:「続きまして、始球式です。」

……実は、今回のことも例の「織笠さん」の企画(策略)なのだが、
キャンペーンの一環で「あの」加奈に高校野球の始球式をやらせることになったのだ。

両親は賛成した。両親は臓器バンクに登録したにも関わらず結局ドナーは「身内」
以外に現れなかったという苦しい体験しているのだから、俺には何も言う資格はない。

俺が心配なのは加奈の体調だけなので、俺も球場まで付いてきた、と言うわけだ。
それにしても、こんなことまで出来てしまう「織笠さん」って一体……?
(注:この物語はフィクションであり、実際の団体・出来事等とは
一切関係ありません(笑))

そうこうしているうちに、双葉学園高校のユニフォームを着た加奈が
マウンドに現れて……

ぺこ。

……ぎこちなくお辞儀をした。そして暫く下腹部に手を当てた後……

ふわ……。

……キャッチャーに向かってボールを投げた。しかし、と言うか当然……

ぽと。

……ボールはキャッチャーに届く前に途中で落ちてしまった。そして……

ブン!

主審:「ストライク!」

パチパチパチ……!!

……場内から拍手が起こった。「同情の拍手」かもしれないが、俺も加奈の為に……

隆道:「加奈……、よくやったな!」

……思いっきり拍手をしてやった。

加奈が後で俺のところに来たら思いっきり誉めてやりたいと思った。
人前で精一杯プレイした加奈を……。


加奈の『仲間』・前編(00/4/4 23:13)

そして春。今日は始業式だから加奈は早く帰ってくる。
俺は駅から我が家まで文字通り走って帰った。

隆道:「ただいま……あれ?」

しかし、加奈はまだ帰ってなかった。

隆道:「加奈のやつ、どうしたんだろ。」

暫くして加奈は帰ってきた。

加奈:「ただいま。」
隆道:「か……。」

俺は加奈を出迎えて絶句した。それは……

三人:「失礼しまーす!」

……俺の知らない女子三人組が一緒に入ってきたからだ。

少女A:「……加奈ちゃん、これがお兄ちゃん?」
加奈:「うん。」
少女B:「へえ……わざわざお出迎えしてくれるんだ……。」
少女C:「正に妹想いの兄ですね。」

そして呆然とする俺をよそにひそひそ話す。

隆道:「な、何だよ?いきなり。」
加奈:「お兄ちゃん、この子達私のクラスメイトだよ。」
隆道:「え?」

加奈はあっさり言ったが、あの加奈がいきなりクラスメートを作ったのだ。
それも三人も。俺はまじまじと三人を見つめる。

少女A:「ごめんなさい、自己紹介遅れました。私はちひろと言います。」
少女B:「あかねです。よろしくお願いします。」
少女C:「みづきです。お兄さんのことは加奈ちゃんから色々伺いました。」
隆道:「はあ。」

俺はただ適当に相づちを打つしかない。

加奈:「この子達、噂の妹想いな兄を見てみたかったんだって。」
隆道:「はあ?」
ちひろ:「はい、とりあえず去年の学級文集を読ませてもらって……。」
あかね:「それから加奈ちゃんに伝説の机を見せてもらって……。」
みづき:「その後、フェスタとか一緒に廻りました。加奈ちゃん
私達より年上なのにそういう場所行ったこと無いって言うから。」

正確に言うと「俺が加奈を連れていったことが無いから」なのだが。

隆道:「それはどうも……って、え?『フェスタ』はともかく
何だよ?その『伝説の机』って……。」
加奈:「あ、お兄ちゃん、それは……。」
三人:「ふふふ……秘密でーす!」

綺麗な三重唱だった。

ちなみに、その後この四人組がクラスで『四天王レディース』と
名乗ったかどうかは俺は詳しくは知らない。


加奈の『仲間』・中編(00/4/9 02:56)

ところで、今日(双葉学園高校の始業式の日)彼女ら(ちひろ・あかね・みづき)が
うちに来た理由はもう一つあった。
それは、「四人が親睦を深めるためのある計画」を俺に知らせるためだ。
つまり……

ちひろ:「ほら、加奈ちゃん。岡崎の桜も奇麗でしょ?」
加奈:「う、うん。」

……俺と加奈は、その次の土日を利用して、三人と一緒にちひろの両親に
連れられてちひろの祖父の家のある岡崎に来ていた。

隆道:「それにしても、何故俺が……。」
あかね:「お兄さんは加奈ちゃんの『保護者』ですから当然です。」
隆道:「え?」
みづき:「加奈ちゃんにもしものことがあっても、私達では
対処できませんから。」
隆道:「はあ。」
ちひろ:「それにしても、加奈ちゃん。お兄さんって正に『クールマン』だね。
車の中でずっと黙ったままだったもん。」
加奈:「そ、そう?」
隆道:「…………。」

そういう問題でもないが、やはり俺は同性のほうが喋りやすい。

隆道:「加奈、お前が小さかった時俺の親友とすぐに馴染めなかった理由も、
何となくわかるよ。」
加奈:「え?」

……加奈は覚えていないようで、きょとんとしている。

そうこうして、ちひろの祖父の家に着く。

がらがら。

全員:「おじゃまします。」
ちひろの祖父:「ああ、皆さん、いらっしゃい。」

……よく考えれば、これは、今まで同年代の女の友人のいなかった加奈が
初めて「友人の家」にお呼ばれされた、初めてのことだったんだ。


加奈の『仲間』・後編(00/4/10 00:24)

その翌日俺と加奈は、ちひろ、あかね、みづきと桜の奇麗な公園に行った。
その道中。

ちひろ:「実は今日、行列があるの。」
加奈:「行列?」
みづき:「今連続ドラマでやってる時代劇のですね?」
ちひろ:「うん、そう、それ。」

ちひろは嬉しそうに言う。昨日の夜ちひろの祖父から聞かされた話だが、
そのドラマの主人公は岡崎で最も尊敬されている近世の人物だそうだ。

あかね:「それで交通規制やってたんだ。」
ちひろ:「うん。時間的にはもう来ると思うけど……、あ、来た!」

♪ダダダン、ダダダン、ダダダン、……

パトカーを先導に鼓笛隊が続き……

行列の和装のお姫様:「……(にこ)」
ちひろ:「あ、あの人奇麗。」
隆道:「あの格好なら前に加奈もやったよな。……なあ、加奈?」
加奈:「……お兄ちゃん、見えない。」
隆道:「え?」

加奈は俺の横で一生懸命つま先立ちをしている。
しかし、前の人の頭で見えないらしい。

隆道:「加奈、……それじゃ背負ってやるよ。」
加奈:「ふぇ?」

ひょい。

隆道:「ほら、これでよく見えるだろ?」
加奈:「う、うん……。」

加奈は恥かしそうに返事する。実は俺も恥かしい。何しろ……

ちひろ・あかね・みづき:「……(じー)」
隆道:「お、おい、行列見てろよ。」
ちひろ・あかね・みづき:「はーい!」

……しかし、人前でこんなことするのも何より「加奈の為」だ……。

加奈:「……ありがとう、よく見えるよ……。」

そして、行列は続き……

行列の馬上の武将:「あっぱれ、あっぱれじゃ……。」

…………。

加奈:「すう……。」

帰りの車中、加奈は疲れたのか眠ってしまった。

隆道:「あの、今回は加奈を誘ってくれてありがとう。」
ちひろ:「いえいえ、私こそ『いいもの』を見せて頂いて、ふふふ……。」
隆道:「……そっか。」

はっきり言って「岡崎」という街は遠い。
しかし、今なら来ようと思えば何度でも来ることができるんだ。

『隆道の一生は加奈を負(おい)て遠き道をゆくが如し……』


加奈の憂鬱(00/4/11 23:53)

手術後数ヶ月経ったある日のこと。

加奈:「あの、お兄ちゃん。……私、変わった?」
隆道:「え?」

突然加奈は妙なことを聞く

加奈:「……何か最近太ったみたい。」
隆道:「は?」
加奈:「それに、何か顔が丸くなってきたみたいで。」

加奈は今にも泣きそうな顔になっている。
体重増加や「ムーンフェイス」はステロイド系の免疫抑制剤の副作用
だからどうしようもないが、「今」の加奈にはそれが大問題らしい。

加奈:「もし私がぶくぶくに太っちゃっても、私のこと嫌いにならないでね。」
隆道:「……ふう。」

ぎゅ。

俺はいつものように加奈を抱きしめる。

隆道:「俺がお前のことを嫌いになるわけないじゃないか。」
加奈:「う、うん。」

この言葉を聞いて、加奈はやっと安心したらしい。

隆道:「この先お前がどうなろうと、俺は一生お前を守っていくからな。」
加奈:「あ、ありがと……。」

俺の珍しく「キザ」なセリフに、加奈は微笑んだ。
しかし、俺の言葉も強ち大袈裟でもない。
何しろ、俺の腎臓で奇跡的に助かった俺の愛する妹なんだ。
それを簡単に手放すことができるか……。

隆道:「でも、体重は自分の努力次第で減らせるけどな。」
加奈:「う、うん。」

と、加奈は今度は恥かしげに返事した。
恐らく加奈自身にも思い当たることがあるのだろう。
何しろ加奈は、食事制限が「ほぼ」無くなった、
育ち盛りの女子高校生なんだから。


禁断の兄妹(00/6/14 23:17)

〜元ネタ『加奈の郵便屋さん』の加奈からの手紙〜

ところで、手術後の加奈は常に体を清潔にしていなければならず、
また、早めに就寝しなければならないので、
加奈はいつも夕方ごろ風呂に入る(注:という設定らしいです(^^;)。

そして、この日の夕方……

がちゃ。

加奈:「あの、お兄ちゃん。ちょっと相談があるんだけど……。」
隆道:「あ?何だ?」
加奈:「実は、お風呂場にゴキブリが出ちゃって、恐くて入れないの。」
隆道:「ゴキブリ?」
加奈:「うん。」

「ゴキブリが恐い」なんて加奈もかわいいこと言うじゃないか。
……と言うより、加奈は昔からかわいいか。兄の欲目かもしれないが……。

隆道:「そっか、それじゃ……。」

「銭湯に行くか」俺がそう言おうとした矢先……

加奈:「恐くて一人で入れないから、
……お兄ちゃんに一緒に入ってもらおうと思って、お風呂。」

ぶーっ!

隆道:「はあ!?」
加奈:「それに、どうせだから小さい頃を懐かしんで、またお兄ちゃんと一緒に
お風呂に入るのもいいかな……なんて。私達、仲の良い兄妹だから。」

ま、待てぇーっ!確かに以前「シャワーを浴びている加奈」を
想像したことはあるが、一緒にお風呂に入った覚えはないぞ!?
第一、仲の良い「思春期の」兄妹は普通そんなことしないんだぁーっ!!

……。
…………。
………………。
……………………。

はっ!

隆道:「……何だ、夢だったのか。」

……ふう、今日は特に危なかったんだ。
加奈から「ゴキブリが恐くて風呂に入れない」なんて手紙を貰うから。
最近両親の手前加奈とはストイックな生活を続けていたから、
「禁断症状」でも出たのだろうか……。


父の日の出来事(00/6/15 23:35)

その日の夕食も親子四人揃ったものだった。
当然「あのとき」のような重苦しさは微塵も感じられない。

そして夕食後、加奈はあのときのように自室で双葉学園高校の制服に着替えてきた。

父:「……加奈、何やってるんだ?」

その日は「父の日」だった。表面上はどう見えても、
例え義理だとしても「父親」というものは何かしら期待しているものである。

父の問いかけに対し、加奈は父の前でくるっと一回転して……

加奈:「お父さん、あのときはありがとう。」
父:「え?」

何について感謝されているのか、父は良く分らなかったらしい。

加奈:「院長先生からお父さんを説得するように、鹿島さんに頼んでくれたのは
お兄ちゃんだったけど、最終的に手術を認めてくれたのはお父さんだったから。」
隆道:「うん、そうそう。」

俺は他人事にように相づちを打つ。当時一番熱くなっていたのは俺だったし、
紛れも無く俺の腎臓があってこその手術だったのだが、今は傍観者の気分だ。

加奈:「実は、私ももうちょっと早くお礼を言えば良かったんだけど、
手術直後は『父親だから当然だ』とも思ってたし、後で逆に謝られちゃうし……。」

加奈は再びくるっと一回転した。
「週三回の透析」から解放された心の余裕が加奈をそうさせるのか……。

加奈:「お父さん、私の手術を許可してくださって、ありがとうございました。」
父:「あ、ああ。」

父親としては感無量のことだったろう。しかし、加奈はさらに追い討ちをかける。

加奈:「あの、私、お父さんにもう一言だけ言いたいことがあるんだけど……。」
父:「え?」
加奈:「お父さん、私をここまで育ててくださって、ありがとうございました。」

と言いつつ、三たび父の前でくるっと一回転した。

……これに対し隆道の父がどう反応したかは、皆さんの想像にお任せします(^^;


加奈の誕生日祝い(00/6/18 07:42)

少し時間はさかのぼって、その日は加奈の誕生日。

以前の「退院祝い」の時と違って、俺と両親の精神的な重圧と
加奈の肉体的な重圧(厳しい食事制限)はない。

三人:「お誕生日おめでとう、加奈。」
加奈:「ありがとう。」

そして、俺はプレゼントを加奈に渡す。

加奈:「あの、お兄ちゃん。実はお願いがあるんだけど……。」
隆道:「あ?……加奈、プレゼントあげたのに、まだ俺に何か要求するのか?」

俺はつい反発してしまうが、きっと俺の顔はにこにこしていたに違いない。

加奈:「あの、これから毎年、私の誕生日を祝ってほしいの。」
隆道:「は?」
加奈:「私も『また無事に一つ年を取ることができたんだ』って自覚できるから。」

と、加奈はにこにこして答えた。

普通の年頃の女の子は年を取ることを嫌う傾向にあるらしいが、
加奈にとってはそう考えることが「普通」なんだろう。

隆道:「ああ、俺も毎年出来る限り盛大に祝ってやるからな。」


水族館に行こう!2(00/6/18 23:43)

加奈の手術の件以来俺の優柔不断な性格は改善されてきた様だったが、
俺のデートの計画性の無さが改善された訳ではない。
その休みの日も、その場の思い付きで加奈を水族館に連れてきていた。

1.餌付け係のお姉さんはグラマー
2.イルカ・ショーだな
3.館内をゆったりと回ろう

『3を選択』

加奈:「あの、お兄ちゃん。」
隆道:「え?」
加奈:「お願いだから、今日は『ミノカサゴ』とにらめっこしないでね。
……恥かしいから。」
隆道:「くっ!」

「加奈は(この場合『俺も』か)三年以上前のことも覚えてるのか?」というより、
加奈は本気で「既に大学生の俺」がそんなことをすると思ったのか……?

ちなみに、俺達がミノカサゴの水槽の前を通過する間
ミノカサゴは俺の方を向いていた……様に見えた。

そうこうして、俺達はふれあい水槽のコーナーの前を「通過」する。

加奈:「…………。」

「免疫抑制剤が効いているので生き物に直接接触するのは控えた方が良い」というのは
ケース・バイ・ケースらしいのだが、加奈の場合は神経質にならざるを得ない。

「やっぱりイルカショーとか見に行った方が良かったか」そう考えていると……

?:「あ、加奈ちゃん!」
?:「偶然だねー!」
?:「もしかして、お兄さんとデート?」
二人:「え?」

……良く見ると、「ちひろ・あかね・みづき」という加奈の三人の友達が
ふれあい水槽のコーナーで遊んでいた。

ちひろ:「加奈ちゃん!こっち来てみんなで遊ぼう!」
あかね:「ほら!『たこさん』も呼んでるよ!」
みづき:「……って、あんたは平気で手掴み……?」
加奈:「……うん!」

結局、今の加奈にとっては「新たな第四の選択肢」が一番良い様だ。

『4.加奈の友達と一緒に館内を見てまわる』

加奈:「お兄ちゃん、みんなが呼んでるよ?」
隆道:「え?」
加奈:「みんな、たこ焼きが欲しいんだって。」
隆道:「は?……で、何で俺呼ぶんだ?」
加奈:「みんなが『お兄さんは良いスポンサーだから』って……。」

 

注:「ちひろ・あかね・みづき」というのは
『加奈の郵便屋さん』のマニュアルに載っていた名前です、一応(^^;


投票に行こう!(00/6/19 23:19)

ところで、双子座生まれで今年大学二回生になった俺は、今回の選挙から投票出来る
ようになった(注:この物語はフィクションであり、一応公職選挙法等を調べましたが
もし僕が勘違いしていましたら「そういう話だ」と思ってくださればいいです(^^;)。

一方、投票率の向上のため最近不在者投票が簡単に出来るようになった。
俺としても、せっかくの「加奈と過ごす日曜日」を投票で潰されたくないので
平日の不在者投票で済ませてしまうことにした(「大学での貴重な修学時間を
潰してもいいのか」というツッコミをされると弱いが(^^;)。

……ということで、一応その前に俺は加奈と次の日曜日の予定を立てる。

隆道:「なあ、次の日曜どこ行く?」
加奈:「お兄ちゃん、次の日曜日って、選挙の投票日でしょ?」
隆道:「あ?……ああ。」」
加奈:「私、一緒に行ってもいいよ、投票。」
隆道:「え?」

俺は加奈の「意外な」言葉に一瞬驚くが……

隆道:「そっか。それじゃ、一緒に行こう。」
加奈:「うん。」

一応(と言うか当然)俺と加奈は以前はノンポリだったのだが、加奈の手術の件以来
「ある一点」に於いて政治に感心を持たざるを得なくなったのかもしれないな……。