『あのとき』はもう一度・加奈編
あれから数ヶ月後……。
俺はあのときのように加奈を自転車の後ろに乗せていた。
隆道:「俺にしっかり掴まってろよ?」
加奈:「……うん。」
加奈は心配そうにしている。
当然だ。何しろ今、加奈は……。
隆道:「出発進行!」
家の周りを一周走り、そして……。
キキーッ!
……俺はブレーキを引いた。負荷がかかる。
加奈:「きゃ!?」
一つの膨らみを、「しっかり」背中に感じた。
微笑ましい感じの成長具合を確認。
隆道:「あ、ごめんごめん。」
加奈:「……隆道さーん。」
抗議の声が自転車の後部から上がった。
隆道:「だから言ったろ、最初からしっかり掴まってろって。」
加奈:「だって……。」
隆道:「ところで、なあ……。」
加奈:「え、何?」
隆道:「腹、大きくなったな。」
加奈:「え……。」
隆道:「三ヶ月、くらいだろ?」
加奈:「……っ!」
隆道:「図星か?」
加奈:「もう……えっち。」
とん。
加奈があのときのように俺の背中を叩いた。
隆道:「あはは。」
加奈:「……図星も何も、私がこうなった理由知ってるくせに……。」
隆道:「あ?何か言ったか?」
加奈:「……あ!そ、そんなことより、お腹の子に何かあったらどうするの?」
加奈は赤くなったまま質問したが……。
隆道:「もう一度作ればいい。」
……俺は真顔で即答した。
加奈:「え?」
隆道:「もしお前とお腹の子が危険な状態になったら、俺は迷わずお前を助ける。」
俺は……いつのまにか自分の腹部をさわっていた。
隆道:「万一のことが起こる前に、お前にこれだけは言っておく。
俺が愛しているのは加奈、お前だ。この想いは誰にも邪魔させない。
……たとえ、それが自分の子供であろうとも……。」
加奈:「うん。……ありがとう、隆道さん……。」
加奈はそう言うと、俺にしっかりしがみついてきた。自転車は既に止まっているというのに……。