プロローグ・知的ルート編
俺には妹がいる。今年、十七歳になる。そして、俺にはもう一人……。
この日、俺はある重要なメッセージを加奈に伝える為に
加奈に録音機能付きペンダントを持ってきた。
隆道:「これ、お土産。」
加奈:「おみやげ?」
隆道:「面白いんだ。新製品でさ。このボタンを押してしゃべると、三分までの
メッセージを五本分録音できるんだ。友達同士でメッセージの交換したり
できるんだけど……一つでも結構楽しいから。」
加奈:「……ありがとう。」
隆道:「……確かめないのか?」
加奈:「え?」
隆道:「だから、受験結果。録音したメッセージを聞くのは、そっちのボタンだぞ。」
加奈:「うん。」
知的な加奈は俺の手短な説明を理解してボタンを押した。すると……
?:『……お姉ちゃん!合格おめでとうなのじゃーっ!!』
加奈:「きゃ!」……一瞬加奈は驚いたようだ。
無理もない。スピーカーから突然「元気な(うるさい)声」が聞こえてきたのだから。
加奈は、思わずベッドの上に放り投げてしまったペンダントを拾い、
まじまじとそれを見つめている。
隆道:「いや、さっき『香奈』にこれ見せたら、自分の声を吹き込ませてくれって
せがまれてさ。ついでだから、『合格おめでとう』って香奈に言わせたんだよ。」
加奈:「……うふふ。」
隆道:「……何かおかしいか?」
加奈:「お兄ちゃん。これ、最初の『友達』からのメッセージ。」
隆道:「あ?……ああ。」
香奈は加奈の「従姉妹」だ。しかし、恐らく加奈にとっては
香奈は加奈の「数少ない友達」に違いない。
香奈:『……お姉ちゃん!合格おめでとうなのじゃーっ!!』
加奈:「うふふ……。」
香奈:『……お姉ちゃん!合格おめでとうなのじゃーっ!!』
加奈:「うふふ……。」
…………。
こうして、いつまでも加奈は「友達からのメッセージ」を繰り返し聞いていた。
「自分が双葉に合格した」という事実を未だ加奈は認識していないが、
今の加奈にとっては恐らくそれより重要なことなのだろう。
藤堂加奈……俺の妹。そして、霧原香奈……俺の従兄妹。
これから半年後、この二人の間で俺が人生最大の衝撃に遭遇することを、
俺は未だ知らない。