香奈、退院の日

……その後、香奈の肝移植手術が行われ、手術は一応成功した。
そして香奈の面会許可が下り、叔父(香奈の父)が面会に来た。

香奈:「……父上?」
叔父:「香奈、……気が付いたか?」
香奈:「父上……、何の格好してるのじゃ?」
叔父:「ああ。これは、香奈が免疫抑制剤で免疫力が弱くなってるから……。」
香奈:「???」

叔父は、香奈が自分の顔に?マークをいくつも付けていることに気が付く。

叔父:「……香奈にバイキンが付かないようにするためだよ。
香奈は今、恐らく『日本で一番大切に扱われるべき子供』なんだから。」
香奈:「ふうん……。」

結局、叔父の言い回しは香奈には少し難しかったようだ。

香奈:「父上……、お姉ちゃんは来ないのか?」
叔父:「え?」
香奈:「加奈……お姉ちゃんのことじゃ。」

香奈は麻酔の影響で少し頭がぼうっとしているようだった。

叔父:「加奈くんは……、訳あって来れないんだ。」
香奈:「隆道兄ちゃんは?」
叔父:「隆道君は……、今、大学が忙しいだろうから……。」
香奈:「むう……。」

正確に言えば、加奈は既に死に、隆道は未だその悲しみのただ中にいた。
しかし、加奈の死後間もなく肝移植手術の準備をさせられた香奈は、
未だ加奈の死も、それを悲しむ隆道の様子も知らない。

叔父:「隆道君達のところには退院してから行けばいい。
隆道君達には元気な姿を見せてやるのが一番だからな。
……そんなことより、もう少し眠った方がいいな。
子供には『夢を見る時間』が必要だ。」(注1)
香奈:「うん……。」

叔父の言うことを聞いて……というより、麻酔が未だ効いていたのか、
香奈は程無く眠ってしまった。

叔父:「…………。」

香奈に今「真実」を告げるわけにはいかない。
肝移植手術直後の今の香奈に精神的ダメージを与えるわけにはいかないからだ。
しかし、少なくとも退院前には「真実」を告げなければなるまい。
それが、香奈の肝移植を許可した父親の務めというものだろう……。

叔父はそう考えていた。

……。
…………。
………………。
……………………。

それから暫く後、香奈は病院を退院した。
そして、香奈は叔父と一緒に隆道の家に来た。

香奈:「兄ちゃん。……お姉ちゃんは、いないのじゃ……。」

香奈は既に「真実」を知っている。
母親の死を経験した香奈は叔父が心配するようなショックは受けなかったようだが、
しかし、全く何も感傷が無いわけでもない。

隆道:「香奈、せっかく治ったんだ。もっと嬉しそうにしろよ。」
香奈:「そう言う兄ちゃんは目が赤いのじゃ。」

加奈が死んだことは隆道を悲しませる。
しかし、隆道が香奈の前で泣くことは、加奈の本意ではない。

だから、隆道は目を拭きつつ……

隆道:「ああ、……香奈が無事退院して……嬉しくてな。」
香奈:「ほんとに……そう思う?」
隆道:「もちろんだ。加奈もきっと喜んでいると思うよ……。」

そう言いつつ再び潤んだ目を、隆道は拭いた。

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注1−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
すみません。ここの部分、『銀河英雄伝説』のパクリです(^^;
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