たこ焼きの思い出
それは、俺が妹の加奈のことを未だ「鬱陶しい存在」としか思っていなかった、
幼い日の、実は俺自身もあまり記憶に無い遠い日の出来事……。
その日、俺は珍しく家族四人で夏祭りに来ていた。
……いや、それは後でよくよく考えてみると、実は「初めて」のことだったのだ。
加奈はいつも入院していたから。
「いつも」と言えば……
隆道:「加奈、降りろよ。お父さんにメーワクかけんなよ。」
加奈:「あ……。」
加奈は「父の背中」を独占していて、俺はそれでむかついている。
……これもいつものことだった。
母:「ほら、隆道。」
隆道:「わあ、たこ焼きだあ!」
しかし、そのときは母がたこ焼きを夜店で買ってきてくれたおかげで
俺の関心がたこ焼きに向き、父のげんこつという『悲劇』には至らなかった。
母:「隆道、加奈と仲良く食べるのよ。」
隆道:「えー?」
父:「…………。」
父が俺のほうを見ている。
隆道:「ちぇ、わかったよ。……ほら、加奈。」
加奈:「あ……。」
俺はたこ焼きの入った容器を加奈に突き出した。
しかし、恐らく今までたこ焼きを食べたこともなかった加奈は為すすべを知らない。
それで、俺は……
隆道:「ほら、こうやって食うんだ。」
……と、たこ焼きに爪楊枝を突き刺し実演してみせた。
しかし……
加奈:「うん……。」
……加奈は要領を得ず、未だにたこ焼きを口まで持っていくことができない。
そして、ついに「ブチ切れた」俺は……
隆道:「……もう、うっとうしいなあ!ほら、口開けろ!」
加奈:「あ……、……んぐ。」
……加奈が驚いて口を開けたと同時に、たこ焼きを加奈の口にねじ込んでやった……。
そのとき!
どーん!……ぱらぱら。
隆道:「わあ!」
……花火が始まり、幼い俺はたこ焼きのことも加奈のこともよそ事に、
ただひたすら花火に見入っていた。
だから、そのときもし加奈、そして両親が俺の方を見ていたとしも、
俺がそれに気がつくはずが無かった。
…………。
……それから数年後、高校生になった俺は加奈を連れて夏祭りに出かけた。
そのとき、母さんは喜んで加奈に浴衣を着せたんだ。
コメント:「ココアも飲んだこと無いような奴(加奈)が何でたこ焼き知ってるんだ?」
という僕の『疑問』に対するいつもの「こじつけ」です。すみません(^^;